半導体23【電験3種 理論】ホール素子の動作原理(ホール効果・p形とn形の電界・ホール電圧)を判別する!平成22年度 A問題11 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(半導体等) 平成22年度 A問題11 p形とn形で電界が逆向き!ホール効果を見極める

今回は平成22年度 理論科目 A問題11を解説します。ホール素子(ホール効果)の原理図(p形の図1・n形の図2)をもとに、電極に分布する電荷の正負・p形とn形での電界の向き・ホール電圧の式を問う穴埋め問題です。

電流と磁界が加わると、キャリヤはローレンツ力(フレミングの左手の法則)で進路を曲げられ、一方の面に電荷がたまってホール電圧が生じます。p形とn形ではキャリヤの正負が逆なので電界の向きが反対になる点、ホール電圧がV_H=R_H·BI/dとなる点がポイントです。

目次

平成22年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 半導体等 平成22年度 A問題11 問題文
平成22年度 理論科目 A問題11 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11

電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成22年度 A問題11

 次の文章は、図1及び図2に示す原理図を用いてホール素子の動作原理について述べたものである。

 図1に示すように、p形半導体に直流電流I[A]を流し、半導体の表面に対して垂直に下から上向きに磁束密度B[T]の平等磁界を半導体にかけると、半導体内の正孔は進路を曲げられ、電極①には(ア)電荷、電極②には(イ)電荷が分布し、半導体の内部に電界が生じる。また、図2のn形半導体の場合は、電界の方向はp形半導体の方向と(ウ)である。この電界により、電極①-②間にホール電圧VH=RH×(エ)[V]が発生する。

 ただし、d[m]は半導体の厚さを示し、RHは比例定数[m³/C]である。

上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)同じB/(Id)
(2)同じId/B
(3)同じd/(BI)
(4)反対BI/d
(5)反対BI/d
図1・図2 p形半導体(図1)とn形半導体(図2)のホール素子原理図(問題図)
図1・図2 p形半導体(図1)とn形半導体(図2)のホール素子原理図(問題図)

出題のポイント:キャリヤの符号が電界の向きを決める

ホール効果は、磁界中の導体(半導体)に電流を流すと、両者に直角な方向に電圧が生じる現象です。ローレンツ力でキャリヤが片側に寄る——それだけの話です。

p形とn形で電界の向きが逆になる——これが本問の核心です。キャリヤは同じ側に寄るのに、電荷の符号が逆だからです。

ホール電圧
$$V_H=R_H\frac{BI}{d}\qquad(R_H:\text{ホール係数}\ \mathrm{[m^3/C]},\ d:\text{厚さ})$$

幅 \(w\) は導出の途中で約分されて消え、厚さ \(d\) だけが分母に残ります

(エ)は次元(単位)で決められます\(R_H\) の単位が \(\mathrm{m^3/C}\) なので、これに掛けてボルトになるのは \(BI/d\) だけです。

平成22年度理論問11のホール効果について、p形は電極1が正、n形は極性と電界が反対、ホール電圧はRHBI/d、公式解答5と示す解説
p形では電極①が正、②が負となり、n形では極性が逆になります。ホール電圧の大きさはBとIに比例し、厚さdに反比例します。

解説:4つの空欄を順に埋める

空欄答え根拠
(ア)p形のキャリヤは正孔(正電荷)。電極①側に偏る
(イ)正孔が去った反対側は負に帯電
(ウ)反対n形のキャリヤは電子(負電荷)。同じ側に寄るが符号が逆
(エ)\(BI/d\)次元がボルトになる唯一の組合せ

(ウ)がこの問題の白眉です。p形の正孔もn形の電子も、ローレンツ力で同じ側へ押されます——電流の向きが同じで、電荷の符号と動く向きが両方逆だからです。

ところが寄ってくる電荷の符号が逆なので、できる電界の向きは反対になります。これがホール効果でキャリヤの種類が判別できる理由です。

正孔と電子の移動方向、ローレンツ力の外積、p形とn形の電荷分布と電界方向、電気力とのつり合いを比較するホール効果解説
キャリヤはp形・n形とも電極①側へ偏りますが、電荷の符号が逆なのでホール電界の向きは反対です。電子の移動と慣用電流を区別します。
電流とホール電圧の直交配置を示し、力のつり合い、電流密度、ホール係数からVH=RHBI/dを単位付きで導く解説
電流Iは長手方向、ホール電圧VHは横方向、磁界Bは面に垂直です。幅wが導出中に消え、厚さdが分母に残ります。
答え(ア) 正、(イ) 負、(ウ) 反対、(エ) \(\dfrac{BI}{d}\) → 選択肢(5)

誤答の正体:次元チェックで3つ消える

(エ)の候補を単位で確かめると、正しいものは1つだけです。\(R_H\) の単位 \(\mathrm{m^3/C}\) に掛けてボルトになるかを見ます。

選択肢(エ)\(R_H\times\) (エ) の単位判定
(1)\(B/(Id)\)\(\mathrm{m^3/C}\times\mathrm{T/(A\cdot m)}\)×
(2)\(Id/B\)\(\mathrm{m^3/C}\times\mathrm{A\cdot m/T}\)×
(3)\(d/(BI)\)\(\mathrm{m^3/C}\times\mathrm{m/(T\cdot A)}\)×
(4)\(BI/d\)ボルト△((ア)(イ)が誤り)
(5)\(BI/d\)ボルト

次元チェックで(1)(2)(3)が消えます残る(4)と(5)は(ア)(イ)の符号だけの違い——p形のキャリヤが正孔(正電荷)だと分かれば決まります

(4)は「電極①が負、②が正」としています。p形なのに負電荷が寄る——キャリヤの符号を取り違えたケースです。

⚠️ よくある間違い
「p形のキャリヤは正孔(正電荷)」——だから正孔が寄った側が正に帯電します。n形なら電子(負電荷)が寄るので、その側が負——正反対になります。

☝️ ひっかけの作り方:「電界の向き」と「キャリヤが寄る向き」は別です。キャリヤはp形もn形も同じ側に寄ります——変わるのは、寄った電荷の符号(=電界の向き)だけです。

深掘り①:なぜキャリヤは同じ側に寄るのか

ここが最も混乱しやすいところです。正孔と電子で、電荷も動く向きも逆——2回逆になるので力の向きは同じになります。

p形(正孔)n形(電子)
電荷\(+e\)\(-e\)
動く向き(電流に対して)同じ
ローレンツ力 \(q\vec v\times\vec B\)ある向き同じ向き(2回反転)
寄る側電極①側電極①側(同じ)
①側の帯電

\(q\) の符号が逆、\(\vec v\) の向きも逆——掛け算すると符号が2回変わって元に戻るので、力の向きは同じです。

これは当然のことでもあります。電流の向きが同じなら、導体全体が受ける力(\(F=BIl\))も同じ——キャリヤの種類によらないからです。

違うのは「寄ってきた電荷の符号」だけ——だからホール電圧の極性でキャリヤの種類が分かるのです。

深掘り②:ホール電圧の式を導く

\(V_H=R_H\dfrac{BI}{d}\) がどこから来るかを追っておきましょう。力の釣り合いから導けます

$$\text{ローレンツ力}\ qvB=\text{電界の力}\ qE_H\ \Rightarrow\ E_H=vB$$
❶ 平衡状態
キャリヤの偏りが止まる
$$V_H=E_Hw=vBw\qquad(w:\text{幅})$$
❷ 電圧に直す
$$I=qnvwd\ \Rightarrow\ v=\frac{I}{qnwd}$$
❸ 電流の定義から速度
$$V_H=\frac{I}{qnwd}Bw=\frac{IB}{qnd}=R_H\frac{BI}{d}$$
❹ 代入
\(w\) が約分、\(R_H=1/(qn)\)

❹で幅 \(w\) がきれいに約分されます幅が広いと電圧は上がるが、同時に電流密度が下がる——ちょうど打ち消し合うのです。

厚さ \(d\) だけが分母に残るので、薄いほどホール電圧が大きい——だからホール素子は薄い膜で作られます

\(R_H=\dfrac{1}{qn}\) という関係も重要です。キャリヤ濃度 \(n\) が小さいほどホール係数が大きい——だから金属より半導体のほうが感度が高いのです。

深掘り③:ホール素子の応用

ホール素子は磁界センサとして広く使われています身の回りにも意外なほど多いです。

用途何を検出しているか
ブラシレスモータ回転子の磁極位置
スマートフォンのカバー検知カバーに仕込んだ磁石
クランプ式電流計電流が作る磁界(非接触で電流を測る)
自動車の回転数センサ歯車の通過による磁界の変化

クランプメータは電験の実務でも使う道具です。電線を挟むだけで電流が測れる——回路を切らずに測定できるのは、ホール素子のおかげです。

直流も測れるのがホール式の強みです。変流器(CT)方式は交流しか測れません——直流を測るクランプメータは必ずホール素子式です。

深掘り④:ホール効果でキャリヤの種類が分かる

ホール効果の学術的な価値は「キャリヤの符号が分かる」ことにあります。半導体研究の基本的な測定法です。

測定結果分かること
ホール電圧の極性キャリヤが正孔か電子か(p形かn形か)
ホール係数 \(R_H=1/(qn)\)キャリヤ濃度 \(n\)
\(R_H\) と導電率 \(\sigma\)移動度 \(\mu=\sigma R_H\)

1つの測定から、キャリヤの種類・濃度・移動度の3つが分かります半導体材料の評価には欠かせない手法です。

金属でもホール効果は起きますが、キャリヤ濃度が桁違いに大きいので \(R_H\) は極めて小さい——だから実用的なホール素子は半導体(InSb、GaAsなど)で作られます

⏱️ 本番での進め方
❶ 次元チェックで(エ)を決める——\(R_H\times BI/d\) だけがボルトになる。
❷ p形のキャリヤは正孔(正電荷)——寄った側が正。
❸ キャリヤはp形もn形も同じ側に寄る——符号だけが逆。
❹ 幅 \(w\) は消え、厚さ \(d\) だけが分母に残る

💡 覚え方
「電荷も向きも逆だから、力は同じ向き」——マイナス×マイナス=プラスです。だから寄る側は同じで、帯電の符号だけが逆になります。

出題履歴:ホール効果は数年に一度出る

ホール効果の原理と式は、半導体分野で繰り返し問われるテーマです。「キャリヤは同じ側、符号が逆」「\(V_H=R_HBI/d\)」——この2点を押さえれば確実です。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】平成29年度A問題11(ホール効果はpn接合と無関係)【理論】平成19年度A問題13(ローレンツ力と円運動)

★重要:この問題は3回出題されている

ホール素子の問題は、本問を含めて3回出題されています。令和5年度上期は本問と完全に同一令和7年度上期は(エ)の問い方だけが違う改題です。

年度(エ)の問い方答え正答番号
本問(平成22年度 A11)\(V_H=R_H\times\) ?\(BI/d\)(5)
令和5年度上期 A11同じ(完全同一問題)\(BI/d\)(5)
令和7年度上期 A11\(V_H\) は \(I\) にほぼ?比例(4)

(ア)(イ)(ウ)は3回とも同じ「正・負・反対」です。令和5年度上期は選択肢の並びまで本問と同一——当サイトで確認している「完全同一ペア」の9組目になります。

⚠️ よくある間違い
\(V_H=R_H\dfrac{BI}{d}\) という式を1本覚えておけば、どの問い方にも答えられます式そのものを聞かれても、比例関係を聞かれても対応可能——公式を覚えるのが最短です。

あわせて解いておきたい記事:【理論】令和5年度上期A問題11(完全に同一の問題)【理論】令和7年度上期A問題11((エ)だけ違う改題)

まとめ

(ア)(イ)電極①正・電極②負(p形)
(ウ)n形は電界が反対
(エ)V_H=R_H·BI/d
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・ホール効果(半導体6):【理論】令和5年度上期 A問題11

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