今回は平成23年度 理論科目 A問題14を解説します。電気及び磁気に関係する量とその単位記号の組合せのうち、誤っているものを1つ選ぶ問題です。
判定の決め手はインダクタンスの単位H(ヘンリー)=Wb/Aです。一般式はL=λ/I=NΦ/I(λ:磁束鎖交数)です。一方、1 Wb=1 V·sなので、選択肢(3)のWb/Vはs(秒)となり、インダクタンスの単位ではありません。
平成23年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、平成23年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成23年度 A問題14
電気及び磁気に関係する量とその単位記号(他の単位による表し方を含む)との組合せとして、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
量 単位記号 (1) 導電率 S/m (2) 電力量 W·s (3) インダクタンス Wb/V (4) 磁束密度 T (5) 誘電率 F/m
出題のポイント:Wb/V は「秒」になってしまう
インダクタンスの単位は \(\mathrm{Wb/A}\)(=H)です。本問の(3)は\(\mathrm{Wb/V}\) と書いてあります。アンペアではなくボルトで割っている——これが誤りです。
この誤りが巧妙なのは、\(\mathrm{Wb/V}\) が意味のある単位になってしまうところです。\(\mathrm{Wb}=\mathrm{V\cdot s}\) なので、\(\mathrm{Wb/V}=\mathrm{s}\)——秒です。まったくのでたらめではないぶん、見過ごしやすくなっています。

5つの組合せを1つずつ確かめる
| 量 | 単位記号 | もとになる式 | 判定 | |
| (1) | 導電率 | S/m | \(\sigma=1/\rho\)、\(\rho\) は \(\Omega\cdot\mathrm{m}\) | ◎ 正しい |
| (2) | 電力量 | W·s | \(W=Pt\)(=J) | ◎ 正しい |
| (3) | インダクタンス | Wb/V | 正しくは Wb/A。Wb/V は「秒」 | × 誤り |
| (4) | 磁束密度 | T | \(B=\varPhi/S\)(=Wb/m²) | ◎ 正しい |
| (5) | 誘電率 | F/m | \(C=\varepsilon S/d\;\Rightarrow\;\varepsilon=Cd/S\) | ◎ 正しい |
(1)と(5)は「/m」がついている点に注目してください。導電率も誘電率も、材料そのものの性質を表す量です。長さや面積に依存しない値にするため、単位に「/m」が入ります。
この「材料の性質は /m」というパターンは3点セットで覚えられます。導電率 \(\mathrm{S/m}\)、誘電率 \(\mathrm{F/m}\)、透磁率 \(\mathrm{H/m}\)——電気・静電気・磁気の3分野で完全に対応しています。


なぜ Wb/V が「秒」になるのか
ファラデーの法則 \(\mathrm{V}=\mathrm{Wb/s}\) から
V が約分されて秒だけが残る
\(\mathrm{Wb}=\mathrm{V\cdot s}\) を知っていれば、この誤りは一瞬で見抜けます。逆に言えば、この関係を押さえていない人だけが引っかかるように作られています。
実際、\(L/R\) は時定数〔s〕です。\(L\) が \(\mathrm{Wb/A}\)、\(R\) が \(\mathrm{V/A}\) なので、割ると \(\mathrm{Wb/V}=\mathrm{s}\)——\(\mathrm{Wb/V}\) はまさにRL回路の時定数の単位です。無意味な単位ではないぶん、余計にまぎらわしくなっています。
⚠️ よくある間違い
「Wb が入っているからインダクタンスっぽい」という感覚で判断すると引っかかります。必ず定義式に戻ってください。\(\varPhi=LI\) なら \(L=\varPhi/I\)——割る相手は電流です。
深掘り:材料の性質を表す3つの単位
(1)(5)で登場した導電率・誘電率に、透磁率を加えた3点セットは、電験3種で繰り返し問われます。
| 量 | 単位 | もとになる式 | 何を表すか |
| 導電率 \(\sigma\) | S/m | \(R=\dfrac{l}{\sigma A}\) | 電流の通しやすさ |
| 誘電率 \(\varepsilon\) | F/m | \(C=\dfrac{\varepsilon A}{d}\) | 電束の通しやすさ |
| 透磁率 \(\mu\) | H/m | \(R_m=\dfrac{l}{\mu A}\) | 磁束の通しやすさ |
3つとも「〈素子の単位〉/m」という形になっています。導電率はジーメンス(コンダクタンスの単位)、誘電率はファラド(静電容量)、透磁率はヘンリー(インダクタンス)——それぞれ対応する素子の単位を長さで割った形です。
この規則性に気づくと、単位を忘れても復元できます。「誘電率はコンデンサに関係する量だから F、材料の性質だから /m を付けて F/m」——という道筋でたどり着けます。
💡 覚え方
「材料の性質は素子の単位を長さで割る」——この一文で3つとも作れます。抵抗率だけは逆数なので \(\Omega\cdot\mathrm{m}\)(掛ける)になる点に注意してください。
⏱️ 本番での進め方
❶ Wb を含む肢を疑う。磁束・磁束密度・インダクタンスの区別が狙われる。
❷ \(\mathrm{Wb}=\mathrm{V\cdot s}\) を使って書き換える。Wb/V なら秒。
❸ 定義式に戻る。\(\varPhi=LI\) なら \(L=\varPhi/I\)。割る相手は電流。
❹ 「/m」は材料の性質。S/m・F/m・H/m の3点セット。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (1) 導電率 | J=σEよりS/m:正 |
| (2) 電力量 | E=PtよりW·s=J:正 |
| (3) インダクタンス | L=λ/IよりWb/A=H。Wb/V=sなので誤り |
| (4) 磁束密度 | Wb/m2=T:正 |
| (5) 誘電率 | F/m:正 |
| 公式正答 | (3) |
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