磁気・電磁力34【電験3種 理論】中空球体鉄心を磁界中に置くと内部の磁束密度は?磁気遮へい!平成28年 A問題4 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 平成28年度 A問題4 中空の鉄球の内部は磁界ゼロ?磁気遮へいの効果

今回は平成28年度 理論科目 A問題4を解説します。磁極N・Sの間に中空球体鉄心を置いたときの磁束の通り方と、内部(中空部分)の点Aの磁束密度について、空欄(ア)〜(ウ)を埋める問題です。

中空球体鉄心は空気より透磁率が大きく、磁気抵抗が小さいため、磁束は鉄心中を通ります。その結果、中空部分の磁束密度は極めて低くなります。この磁束を回り込ませる作用が磁気遮へいです。有限の透磁率では内部磁束密度を厳密な0とはせず、「極めて低い」と判断します。

目次

平成28年度 理論科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、平成28年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 平成28年度 A問題4 問題文
平成28年度 理論科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成28年度 A問題4

 図のように、磁極N、Sの間に中空球体鉄心を置くと、NからSに向かう磁束は、(ア)ようになる。このとき、球体鉄心の中空部分(内部の空間)の点Aでは、磁束密度は極めて(イ)なる。これを(ウ)という。ただし、磁極N、Sの間を通る磁束は、中空球体鉄心を置く前と置いた後とで変化しないものとする。

上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)
(1)鉄心を避けて通る低く磁気誘導
(2)鉄心中を通る低く磁気遮へい
(3)鉄心を避けて通る高く磁気遮へい
(4)鉄心中を通る低く磁気誘導
(5)鉄心中を通る高く磁気誘導
図 磁極N・Sの間に置いた中空球体鉄心と内部の点A(問題図)
図 磁極N・Sの間に置いた中空球体鉄心と内部の点A(問題図)

出題のポイント:磁束は「通りやすい道」を選ぶ

鉄は空気より圧倒的に磁束を通しやすい——この一点がすべてです。磁束は鉄心の殻を回り込み、中空部分にはほとんど入りません

磁気抵抗で考える
$$R_m=\frac{l}{\mu A}\;\propto\;\frac{1}{\mu_r}$$

鉄の比透磁率は数百〜数千、空気は1です。同じ形状なら鉄の磁気抵抗は空気の数百〜数千分の一——磁束はほぼ全部そちらへ流れます。

N極とS極の間に置いた中空球体鉄心で磁束が鉄心中を通り中空部を迂回する磁気遮へいの図
高透磁率の鉄心は磁気抵抗が小さいため磁束が集中し、中空部の磁束密度は極めて低くなります。正解は(2)です。

空欄を1つずつ埋める

(ア)磁束は 鉄心中を通る ようになる

電流が抵抗の小さい経路を選ぶのと同じです。鉄心と中空部が並列になっていると考えると、磁気抵抗の小さい鉄心側にほとんどの磁束が流れます

経路比透磁率 \(\mu_r\)磁気抵抗の相対値流れる磁束
鉄心(殻)数百〜数千非常に小さいほぼ全部
中空部(空気)1鉄心の数百〜数千倍ごくわずか

(イ)中空部分の磁束密度は極めて 低く なる

磁束が殻を回り込むので、内部にはほとんど到達しません。したがって点Aの磁束密度は極めて低くなります。

⚠️ よくある間違い
問題文が「極めて低く」と書いて「零に」と書いていないことに注目してください。鉄の透磁率は有限(無限大ではない)ので、わずかな磁束は中空部にも入り込みます完全にゼロにはできない——これが磁気遮へいの特徴です。

(ウ)これを 磁気遮へい という

透磁率の大きい材料で囲んで、内部を磁界から守る——これが磁気遮へいです。精密機器や計測器の保護に使われます。

「磁気誘導」は別の現象です。磁界の中に置かれた磁性体が磁化されることを指します。磁気誘導は原因、磁気遮へいは結果——という関係にあります。

透磁率と磁気抵抗の関係から中空球体鉄心による磁気遮へいを説明する3段階の図
磁気抵抗は透磁率に反比例します。磁束は磁気抵抗の小さい鉄心側へ迂回し、内部の磁束密度が低下します。
答え(ア)鉄心中を通る (イ)低く (ウ)磁気遮へい → 選択肢(2)
平成28年度理論科目A問題4の空欄を鉄心中を通る・低く・磁気遮へいで埋め正答2を示す解説図
(ア)鉄心中を通る、(イ)低く、(ウ)磁気遮へいの組合せなので、正解は(2)です。

静電遮へいとの違い:ここが繰り返し問われる

静電遮へい磁気遮へい
守る対象電界磁界
使う材料導体透磁率の大きい材料(鉄など)
必要な処置接地が必要接地は不要
効果内部の電界を完全に0にできる0にはできない(極めて低くなるだけ)
原理導体内部の電界が0(静電平衡)磁気抵抗の小さい経路へ磁束を逃がす

最大の違いは「完全にできるかどうか」です。静電遮へいは接地すれば完全ですが、磁気遮へいは透磁率が有限なので原理的に不完全です。

「磁気遮へいには接地が必要」と書かれていたら誤り「静電遮へいは接地しなくてもよい」と書かれていたら誤り——この2つは定番のひっかけです。

💡 覚え方
「電気は逃がす、磁気は迂回させる」と覚えてください。静電遮へいは電荷を接地へ逃がす磁気遮へいは磁束を殻に回り道させるやっていることが根本的に違うので、必要な処置も効果も違います。

選択肢の消し方

(ア)(イ)(ウ)判定
(1)鉄心を避けて通る ×低く磁気誘導 ×2か所誤り
(2)鉄心中を通る低く磁気遮へい◎ すべて正しい
(3)鉄心を避けて通る ×高く ×磁気遮へい2か所誤り
(4)鉄心中を通る低く磁気誘導 ×1か所誤り
(5)鉄心中を通る高く ×磁気誘導 ×2か所誤り

(ア)「鉄心中を通る」だけで(1)(3)が消え(ウ)「磁気遮へい」で(4)(5)も消えます実質2ステップで正解に届きます。

いちばん惜しいのは(4)です。(ア)(イ)は合っているのに、(ウ)を「磁気誘導」としてしまう——用語の区別だけで落とす典型的なパターンです。

⏱️ 本番での進め方
❶ 「磁束は通りやすい道を選ぶ」と唱える。(ア)はこれで即決。
❷ 「極めて低く」と「零に」の違いに注意。磁気遮へいは完全にはならない。
❸ 遮へい=守ること、誘導=磁化されること。用語をセットで整理しておく。
❹ 静電遮へいとの対比で覚える。接地の要否と、完全にできるかどうかが違う。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

実際の磁気遮へい:材料と多重構造

磁気遮へいは実務でも精密機器の保護に欠かせない技術です。

材料比透磁率の目安使われ方
一般的な鉄数百〜数千変圧器の外箱、大まかな遮へい
けい素鋼板数千〜1万鉄心、中程度の遮へい
パーマロイ(ニッケル鉄合金)数万〜十万計測器・医療機器の高精度な遮へい

比透磁率が高いほど磁気抵抗が小さく、磁束を効率よく殻へ逃がせます。ただしパーマロイは磁束密度が高いと飽和してしまうため、強い磁界の場所では使えません

そこで実務では多重シールド——外側に飽和しにくい鉄、内側にパーマロイという構成が使われます。外側で磁界を弱め、内側で仕上げるという役割分担です。

⚠️ よくある間違い
「透磁率が高い材料ほど常に遮へい効果が高い」とは限りません磁気飽和すると透磁率が急落し、遮へい効果が失われます強い磁界には飽和磁束密度の高い材料が必要——ここが静電遮へいと決定的に違う点です。

なぜ静電遮へいは完全にできるのか

導体の中に自由電子があるからです。外部電界がかかると電子が瞬時に移動して、内部の電界を打ち消す向きに電荷が並びます打ち消しきるまで電子は動き続けるので、最終的に内部の電界は厳密にゼロになります。

磁界にはこれに相当する仕組みがありません磁荷(磁気単極子)が存在しないので、内部の磁界を打ち消すように並ぶものがないのです。だから「回り道をさせて減らす」ことしかできず、完全にはゼロにできません

静電遮へい磁気遮へい
打ち消す仕組み自由電子が移動して電荷が並ぶ存在しない(磁荷がないため)
できること内部の電界を厳密に0にする磁束を迂回させて減らす
限界接地しないと外部へ影響が漏れる磁気飽和すると効果が落ちる

「なぜ磁気遮へいは不完全なのか」を説明できると、この分野の理解は一段深まります。答えは「磁気単極子が存在しないから」——これが本問の(イ)が「零に」ではなく「極めて低く」と書かれている本当の理由です。

まとめ

(ア)鉄心中を通る
(イ)低く
(ウ)磁気遮へい
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・磁気遮へいの関連問題:【理論】令和5年度下期A問題3

📚 次に解くべき関連問題
【理論】平成29年度B問題17(磁気・電磁力32)
【理論】平成27年度A問題3(磁気・電磁力36)
【理論】平成28年度A問題8(磁気・電磁力35)
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