今回は平成29年度 理論科目 B問題17を解説します。比透磁率の異なる2つの鉄心(μr1=2000、μr2=1000)と空隙δからなる磁気回路について、(a)磁界の強さの比H/H0の分布、(b)空隙の磁界を所定値以上にする必要な巻数Nを求める問題です。
断面積が等しく漏れ磁束がないため、各区間の磁束密度Bは共通です。H=B/μより、鉄心内はH/H0=1/μr、空隙は1です。(b)はアンペアの法則NI=ΣHlを用い、2か所の空隙を忘れずに加えます。
平成29年度 理論科目 B問題17:問題文と選択肢
まずは、平成29年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題17
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成29年度 B問題17
巻数Nのコイルを巻いた鉄心1と、空隙(エアギャップ)を隔てて置かれた鉄心2からなる図1のような磁気回路がある。この二つの鉄心の比透磁率はそれぞれμr1=2000、μr2=1000であり、それらの磁路の平均の長さはそれぞれl1=200mm、l2=98mm、空隙長はδ=1mmである。ただし、鉄心1及び鉄心2のいずれの断面も同じ形状とし、磁束は断面内で一様で、漏れ磁束や空隙における磁束の広がりはないものとする。このとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)空隙における磁界の強さH0に対する、磁路に沿った磁界の強さHの比H/H0を表すおおよその図(片対数)として、最も近いものを図中の(1)〜(5)のうちから一つ選べ(x=0mmから時計回りに進む距離をxとする)。
(b)コイルに電流I=1Aを流すとき、空隙における磁界の強さH0を2×104A/m以上とするのに必要なコイルの最小巻数Nの値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)24 (2)44 (3)240 (4)4 400 (5)40 400


出題のポイント:磁束密度が共通なら、磁界の強さは \(1/\mu_r\) に比例する
断面積が同じで漏れ磁束もないので、磁束 \(\varPhi\) は磁路のどこでも同じ——したがって磁束密度 \(B\) も共通です。ここが出発点になります。
\(H=B/\mu\) なので、\(B\) が共通なら \(H\) は透磁率に反比例します。鉄心の中では \(H\) が小さく、空隙では \(H\) が大きい——比透磁率が2000なら、空隙の2000分の1です。この極端な差が(a)のグラフになり、(b)の計算を支配します。

(a) の解説:3段の階段になる
| 区間 | 比透磁率 \(\mu_r\) | \(H/H_0\) | グラフの高さ |
| 鉄心1 | 2000 | \(1/2000=0.0005\) | 最も低い |
| 鉄心2 | 1000 | \(1/1000=0.001\) | 鉄心1の2倍 |
| 空隙 | 1 | 1 | 圧倒的に高い |
グラフの縦軸は対数目盛(片対数)です。0.0005 と 0.001 と 1 という3桁の開きがあるので、通常の目盛では描けません。対数にすることで、3段の階段として表せます。
判別のポイントは2つです。❶ 空隙が突出して高いこと、❷ 鉄心2が鉄心1のちょうど2倍の高さになること。比透磁率が2000と1000で2倍違うので、\(H\) は逆に2倍の差がつきます。
空隙は2か所あることにも注意してください。磁路を一周すると、鉄心1 → 空隙 → 鉄心2 → 空隙 と進みます。グラフには高いピークが2本現れるはずです。

(b) の解説:空隙が起磁力の9割を食う
アンペアの法則 \(NI=\sum Hl\) を使います。磁路を一周しながら、各区間の「磁界の強さ×長さ」を足し合わせるだけです。
空隙は2か所なので \(2\delta\)
「以上」なので切り上げ
注目すべきは各項の大きさです。鉄心1が2.00 A、鉄心2が1.96 A、空隙が40.0 A——合計43.96 A のうち、空隙だけで91%を占めています。
空隙の長さは合計2 mm しかありません。一方、鉄心は合計298 mm——約150倍の長さがあるのに、起磁力の負担は10分の1です。これが「わずかな空隙が磁気回路を支配する」ということの、具体的な数値です。

誤答の正体:空隙が2か所あることを見落とす
| 誤り方 | 計算 | 値 | 選択肢 |
| 空隙を1か所として数える | \(2.00+1.96+20.0\) | 23.96 → 24 | (1) |
| 正しい計算(2か所) | \(2.00+1.96+40.0\) | 43.96 → 44 | (2) ◎ |
選択肢(1)の24 は、空隙を1か所だけ数えた答えにぴったり一致します。図をよく見て、空隙がいくつあるかを数える——この確認が合否を分けます。
鉄心1と鉄心2が向かい合っている構造なら、接合部は必ず2か所です。磁路は閉じたループなので、行きと帰りの両方で空隙をまたぎます。
⚠️ よくある間違い
「空隙は小さいから無視できる」と考えるのは致命的です。本問では空隙が起磁力の91%を占めています。磁気回路では、空隙こそが主役——長さがどれだけ短くても、\(\mu_r\) が1であることの影響が圧倒的です。
深掘り:なぜ空隙がこれほど効くのか
磁気抵抗で考えると、なぜ空隙が支配的になるかがはっきりします。
\(\mu_r\) が分母にある
空隙のほうが20倍も磁気抵抗が大きい
長さは100分の1なのに、比透磁率が2000分の1——差し引き20倍です。直列につながった抵抗では、大きいほうが電圧を多く分担しますから、空隙が起磁力の大半を受け持つことになります。
| 区間 | 長さ | 比透磁率 | 起磁力の分担 | 割合 |
| 鉄心1 | 200 mm | 2000 | 2.00 A | 4.5% |
| 鉄心2 | 98 mm | 1000 | 1.96 A | 4.5% |
| 空隙(2か所) | 2 mm | 1 | 40.0 A | 91% |
この事実は実務に直結します。電動機や変圧器の設計では、空隙の長さを 0.1 mm 単位で管理します。わずかに広がるだけで励磁電流が跳ね上がり、効率が落ちるからです。
逆に、空隙をあえて設ける場合もあります。直流を重畳するリアクトルでは、空隙を入れて磁気飽和しにくくします。空隙の磁気抵抗は磁束密度によらず一定なので、回路全体の特性が安定するのです。
💡 覚え方
「空隙長 × 比透磁率」が実質的な鉄心長——この換算を覚えておくと便利です。本問なら \(2\;\mathrm{mm}\times2000=4\,000\;\mathrm{mm}\)、つまり4 m ぶんの鉄心に相当します。鉄心の実長は0.3 m ですから、圧倒的です。
⏱️ 本番での進め方
❶ 空隙の数を図で数える。2か所あるのが定番。ここを落とすと(1)に着地する。
❷ \(H=H_0/\mu_r\) で各区間の磁界を出す。\(B\) は共通なので比だけで済む。
❸ \(NI=\sum Hl\) は長さを m に統一してから。mm のままだと1000倍ずれる。
❹ 「以上」なら切り上げ。43.96 → 44。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 鉄心1のH/H0 | 1/2000=5×10-4 |
| 鉄心2のH/H0 | 1/1000=1×10-3 |
| (a)分布 | 長い区間低・短い区間高・空隙100 …(2) |
| (b)巻数 | H0·Σ(l/μ)÷I≒44 …(2) |
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