磁気・電磁力32【電験3種 理論】空隙のある磁気回路の磁界分布と必要な巻数を求める!平成29年 B問題17 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 平成29年度 B問題17 鉄心に空隙があると?必要な巻数はいくつ?

今回は平成29年度 理論科目 B問題17を解説します。比透磁率の異なる2つの鉄心(μr1=2000、μr2=1000)と空隙δからなる磁気回路について、(a)磁界の強さの比H/H0の分布、(b)空隙の磁界を所定値以上にする必要な巻数Nを求める問題です。

断面積が等しく漏れ磁束がないため、各区間の磁束密度Bは共通です。H=B/μより、鉄心内はH/H0=1/μr、空隙は1です。(b)はアンペアの法則NI=ΣHlを用い、2か所の空隙を忘れずに加えます。

目次

平成29年度 理論科目 B問題17:問題文と選択肢

まずは、平成29年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 平成29年度 B問題17 問題文
平成29年度 理論科目 B問題17 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題17

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成29年度 B問題17

 巻数Nのコイルを巻いた鉄心1と、空隙(エアギャップ)を隔てて置かれた鉄心2からなる図1のような磁気回路がある。この二つの鉄心の比透磁率はそれぞれμr1=2000、μr2=1000であり、それらの磁路の平均の長さはそれぞれl1=200mm、l2=98mm、空隙長はδ=1mmである。ただし、鉄心1及び鉄心2のいずれの断面も同じ形状とし、磁束は断面内で一様で、漏れ磁束や空隙における磁束の広がりはないものとする。このとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)空隙における磁界の強さH0に対する、磁路に沿った磁界の強さHの比H/H0を表すおおよその図(片対数)として、最も近いものを図中の(1)〜(5)のうちから一つ選べ(x=0mmから時計回りに進む距離をxとする)。

(b)コイルに電流I=1Aを流すとき、空隙における磁界の強さH0を2×104A/m以上とするのに必要なコイルの最小巻数Nの値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)24 (2)44 (3)240 (4)4 400 (5)40 400

図1 巻数Nのコイルを巻いた鉄心1と鉄心2、空隙δの磁気回路(問題図)
図1 巻数Nのコイルを巻いた鉄心1と鉄心2、空隙δの磁気回路(問題図)
(a)の選択肢:磁界の強さの比H/H₀の分布を表す図(1)〜(5)
(a)の選択肢:磁界の強さの比H/H₀の分布を表す図(1)〜(5)

出題のポイント:磁束密度が共通なら、磁界の強さは \(1/\mu_r\) に比例する

断面積が同じで漏れ磁束もないので、磁束 \(\varPhi\) は磁路のどこでも同じ——したがって磁束密度 \(B\) も共通です。ここが出発点になります。

\(H=B/\mu\) なので、\(B\) が共通なら \(H\) は透磁率に反比例します。鉄心の中では \(H\) が小さく、空隙では \(H\) が大きい——比透磁率が2000なら、空隙の2000分の1です。この極端な差が(a)のグラフになり、(b)の計算を支配します

この問題で使う2本の式
$$H=\frac{B}{\mu}=\frac{B}{\mu_0\mu_r}\;\Longrightarrow\;\frac{H}{H_0}=\frac{1}{\mu_r}$$$$NI=\sum H\,l\quad(\text{アンペアの法則})$$

\(H_0\) は空隙の磁界(\(\mu_r=1\))です。鉄心内は \(1/\mu_r\) 倍に下がります

2種類の鉄心と2か所の空隙からなる磁気回路およびH毎H0の片対数分布図
鉄心1は5×10⁻⁴、鉄心2は10⁻³、2か所の空隙は1となり、(a)は(2)です。

(a) の解説:3段の階段になる

区間比透磁率 \(\mu_r\)\(H/H_0\)グラフの高さ
鉄心12000\(1/2000=0.0005\)最も低い
鉄心21000\(1/1000=0.001\)鉄心1の2倍
空隙11圧倒的に高い

グラフの縦軸は対数目盛(片対数)です。0.0005 と 0.001 と 1 という3桁の開きがあるので、通常の目盛では描けません対数にすることで、3段の階段として表せます

判別のポイントは2つです。❶ 空隙が突出して高いこと❷ 鉄心2が鉄心1のちょうど2倍の高さになること比透磁率が2000と1000で2倍違うので、\(H\) は逆に2倍の差がつきます。

空隙は2か所あることにも注意してください。磁路を一周すると、鉄心1 → 空隙 → 鉄心2 → 空隙 と進みます。グラフには高いピークが2本現れるはずです。

空隙付き磁気回路の磁界比と区間順序と必要巻数を3段階で示す解説図
起磁力式には2か所の空隙を2δとして含め、N=43.96を最小整数44へ切り上げます。
答え(a) 空隙で1、鉄心2で \(1/1000\)、鉄心1で \(1/2000\) の階段状 → 選択肢(2)

(b) の解説:空隙が起磁力の9割を食う

アンペアの法則 \(NI=\sum Hl\) を使います。磁路を一周しながら、各区間の「磁界の強さ×長さ」を足し合わせるだけです。

$$H_0=2\times10^4\;\mathrm{A/m}\;(\text{空隙})$$
❶ 与えられた条件
$$H_1=\frac{H_0}{\mu_{r1}}=\frac{2\times10^4}{2000}=10\;\mathrm{A/m}$$
❷ 鉄心1の磁界
$$H_2=\frac{H_0}{\mu_{r2}}=\frac{2\times10^4}{1000}=20\;\mathrm{A/m}$$
❸ 鉄心2の磁界
$$NI=10\times0.200+20\times0.098+2\times10^4\times(2\times0.001)$$
❹ 各区間を足す
空隙は2か所なので \(2\delta\)
$$NI=2.00+1.96+40.0=43.96\;\mathrm{A}$$
❺ 合計
$$I=1\;\mathrm{A}\;\Rightarrow\;N=43.96\;\Rightarrow\;N_{\min}=44$$
❻ 最小巻数
「以上」なので切り上げ

注目すべきは各項の大きさです。鉄心1が2.00 A、鉄心2が1.96 A、空隙が40.0 A——合計43.96 A のうち、空隙だけで91%を占めています

空隙の長さは合計2 mm しかありません。一方、鉄心は合計298 mm——約150倍の長さがあるのに、起磁力の負担は10分の1です。これが「わずかな空隙が磁気回路を支配する」ということの、具体的な数値です

平成29年度理論問17の磁界分布と最小巻数44および両小問の正答2を示す解答図
(a)の分布図は(2)、(b)の最小巻数は44で(2)が公式正答です。
答え(b) \(N_{\min}=44\) → 選択肢(2)

誤答の正体:空隙が2か所あることを見落とす

誤り方計算選択肢
空隙を1か所として数える\(2.00+1.96+20.0\)23.96 → 24(1)
正しい計算(2か所)\(2.00+1.96+40.0\)43.96 → 44(2) ◎

選択肢(1)の24 は、空隙を1か所だけ数えた答えにぴったり一致します。図をよく見て、空隙がいくつあるかを数える——この確認が合否を分けます。

鉄心1と鉄心2が向かい合っている構造なら、接合部は必ず2か所です。磁路は閉じたループなので、行きと帰りの両方で空隙をまたぎます

⚠️ よくある間違い
「空隙は小さいから無視できる」と考えるのは致命的です。本問では空隙が起磁力の91%を占めています。磁気回路では、空隙こそが主役——長さがどれだけ短くても、\(\mu_r\) が1であることの影響が圧倒的です。

深掘り:なぜ空隙がこれほど効くのか

磁気抵抗で考えると、なぜ空隙が支配的になるかがはっきりします

$$R_m=\frac{l}{\mu_0\mu_r A}$$
磁気抵抗
\(\mu_r\) が分母にある
$$\frac{R_{m,\text{空隙}}}{R_{m,\text{鉄心1}}}=\frac{2\;\mathrm{mm}}{200\;\mathrm{mm}}\times2000=20$$
空隙と鉄心1の比
空隙のほうが20倍も磁気抵抗が大きい

長さは100分の1なのに、比透磁率が2000分の1——差し引き20倍です。直列につながった抵抗では、大きいほうが電圧を多く分担しますから、空隙が起磁力の大半を受け持つことになります。

区間長さ比透磁率起磁力の分担割合
鉄心1200 mm20002.00 A4.5%
鉄心298 mm10001.96 A4.5%
空隙(2か所)2 mm140.0 A91%

この事実は実務に直結します電動機や変圧器の設計では、空隙の長さを 0.1 mm 単位で管理します。わずかに広がるだけで励磁電流が跳ね上がり、効率が落ちるからです。

逆に、空隙をあえて設ける場合もあります直流を重畳するリアクトルでは、空隙を入れて磁気飽和しにくくします空隙の磁気抵抗は磁束密度によらず一定なので、回路全体の特性が安定するのです。

💡 覚え方
「空隙長 × 比透磁率」が実質的な鉄心長——この換算を覚えておくと便利です。本問なら \(2\;\mathrm{mm}\times2000=4\,000\;\mathrm{mm}\)、つまり4 m ぶんの鉄心に相当します。鉄心の実長は0.3 m ですから、圧倒的です。

⏱️ 本番での進め方
❶ 空隙の数を図で数える。2か所あるのが定番。ここを落とすと(1)に着地する。
❷ \(H=H_0/\mu_r\) で各区間の磁界を出す。\(B\) は共通なので比だけで済む。
❸ \(NI=\sum Hl\) は長さを m に統一してから。mm のままだと1000倍ずれる。
❹ 「以上」なら切り上げ。43.96 → 44。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

鉄心1のH/H01/2000=5×10-4
鉄心2のH/H01/1000=1×10-3
(a)分布長い区間低・短い区間高・空隙100 …(2)
(b)巻数H0·Σ(l/μ)÷I≒44 …(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・磁気回路の関連問題:【理論】令和5年度上期A問題3

📚 次に解くべき関連問題
【理論】平成29年度A問題4(磁気・電磁力31)
【理論】平成28年度A問題4(磁気・電磁力34)
【理論】平成28年度A問題8(磁気・電磁力35)
◀ 磁気・電磁力31:【理論】平成29年度A問題4磁気・電磁力33:【理論】平成28年度A問題3
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次