磁気・電磁力26【電験3種 理論】環状鉄心の磁束密度から鉄心の透磁率を求める!令和元年 A問題4 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 令和元年度 A問題4 環状鉄心の磁束密度!透磁率はいくつになる?

今回は令和元年度 理論科目 A問題4を解説します。磁路長0.2m・断面積1×10-4m2の環状鉄心に巻数8000のコイルを巻き、0.1Aを流したときの磁束密度1.28Tから、鉄心の透磁率μ〔H/m〕を求める問題です。

環状鉄心の平均磁路にアンペールの法則 ∮Hdl=NI を適用すると、H=NI/lです。次にB=μHをμについて解いたμ=B/Hへ進みます。B=1.28 Tが直接与えられているため、断面積Sを使って磁束Φを求める必要はありません。

目次

令和元年度 理論科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、令和元年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 令和元年度 A問題4 問題文
令和元年度 理論科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和元年度 A問題4

 図のように、磁路の長さl=0.2m、断面積S=1×10-4m2の環状鉄心に巻数N=8000の銅線を巻いたコイルがある。このコイルに直流電流I=0.1Aを流したとき、鉄心中の磁束密度はB=1.28Tであった。このときの鉄心の透磁率μの値〔H/m〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、コイルによって作られる磁束は、鉄心中を一様に通り、鉄心の外部に漏れないものとする。

(1)1.6×10-4 (2)2.0×10-4 (3)2.4×10-4 (4)2.8×10-4 (5)3.2×10-4

図 磁路長l・断面積Sの環状鉄心に巻数Nのコイルを巻いたもの(問題図)
図 磁路長l・断面積Sの環状鉄心に巻数Nのコイルを巻いたもの(問題図)

出題のポイント:断面積 \(S\) は使わない。使うのは磁路長だけ

与えられた数値をすべて使おうとすると迷います。この問題では磁束密度 \(B\) が直接与えられているので、断面積 \(S\) を経由する必要がありません

環状鉄心で使う2つの式
$$H=\frac{NI}{l}\quad(\text{アンペールの法則})\qquad\qquad \mu=\frac{B}{H}$$

磁界の強さ \(H\) を先に出し、\(B=\mu H\) を \(\mu\) について解く——たった2ステップです。

環状鉄心の磁路とH等号NI毎lおよびμ等号B毎Hの計算を示す図
H=NI/l=4000 A/m、μ=B/H=3.2×10⁻⁴ H/mより正答は(5)です。

解説:アンペールの法則から \(H\) を出す

環状鉄心の平均磁路に沿って一周する経路を考えます。この経路はコイルの巻数 \(N\) 回ぶんの電流 \(I\) を貫いています。

$$\oint \boldsymbol{H}\cdot d\boldsymbol{l}=NI$$
❶ アンペールの周回積分の法則
右辺は「経路が囲む全電流」=巻数×電流
$$H\,l=NI\;\Longrightarrow\;H=\frac{NI}{l}$$
❷ 磁路上で \(H\) は一様
環状なのでどこでも同じ強さとみなせる
$$H=\frac{8\,000\times0.1}{0.2}=\frac{800}{0.2}=4\,000\;\mathrm{A/m}$$
❸ 数値を代入
$$\mu=\frac{B}{H}=\frac{1.28}{4\,000}=3.2\times10^{-4}\;\mathrm{H/m}$$
❹ \(B=\mu H\) を解く

\(NI\) は「起磁力」と呼ばれ、磁気回路では電気回路の起電力にあたる量です。それを磁路長で割ったものが磁界の強さになります。

アンペールの法則から環状鉄心の磁界と透磁率を3段階で求める解説図
起磁力NI、磁路長l、B=μHの順に整理すると透磁率を求められます。
答え\(\mu=3.2\times10^{-4}\;\mathrm{H/m}\) → 選択肢(5)
令和元年度理論問4の透磁率計算と選択肢5を示す解答図
透磁率は3.2×10⁻⁴ H/mで、公式正答は(5)です。

検算:比透磁率で桁を確かめる

答えが妥当かどうかは、真空の透磁率と比べれば分かります

$$\mu_0=4\pi\times10^{-7}=1.257\times10^{-6}\;\mathrm{H/m}$$
真空の透磁率
暗記必須の値
$$\mu_r=\frac{\mu}{\mu_0}=\frac{3.2\times10^{-4}}{1.257\times10^{-6}}\approx255$$
比透磁率

鉄心の比透磁率は数百〜数千が普通です。255 という値は十分に妥当——この確認ができれば、計算ミスの多くを本番で潰せます。

💡 覚え方
もし答えが \(10^{-6}\) 台なら「鉄心なのに真空とほぼ同じ」となり明らかにおかしい、\(10^{-2}\) 台なら比透磁率が1万を超えて大きすぎる——\(10^{-4}\) 前後が鉄心の相場だと知っていると、選択肢の桁がそろっていても安心できます。

誤答の正体:磁路長で割り忘れる

誤り方\(H\) の値得られる \(\mu\)選択肢との対応
\(H=NI\) とする(\(l\) で割り忘れ)800\(1.6\times10^{-3}\)選択肢になし(桁違い)
\(H=NIl\) とする(掛けてしまう)160\(8.0\times10^{-3}\)選択肢になし
断面積で割ってしまう桁が大きくずれる選択肢になし
正しい計算 \(H=NI/l\)4 000\(3.2\times10^{-4}\)(5) に一致

選択肢はすべて \(10^{-4}\) 台にそろえてあります。つまり桁を間違えると選択肢のどれにも当てはまらない——逆に言えば、\(10^{-4}\) 台の答えが出た時点で手順は合っていると判断できます。

⚠️ よくある間違い
断面積 \(S=1\times10^{-4}\;\mathrm{m^2}\) を使いたくなるのが最大の罠です。\(S\) は磁束 \(\varPhi=BS\) を求めるときに必要な量で、本問では聞かれていません。「与えられた数値を全部使う」とは限らないのが電験の問題です。

もし磁束 \(\varPhi\) が与えられていたら

問題によっては\(B\) ではなく \(\varPhi\) が与えられることがあります。その場合は断面積で割って \(B\) に直すワンステップが増えるだけです。

$$B=\frac{\varPhi}{S}$$
磁束 → 磁束密度
ここで初めて \(S\) を使う
$$\varPhi=BS=1.28\times1\times10^{-4}=1.28\times10^{-4}\;\mathrm{Wb}$$
本問の場合の磁束
参考値

本問で \(S\) が与えられているのは、この「もう一段階ある版」と区別させるためです。何が与えられ、何を聞かれているかを最初に整理すれば惑わされません。

⏱️ 本番での進め方
❶ 聞かれている量から逆算する。\(\mu\) を出すなら \(B\) と \(H\)。\(B\) はもらっているので、必要なのは \(H\) だけ。
❷ \(H=NI/l\) は「起磁力÷磁路長」。電気回路の \(E/R\) にあたる形と覚える。
❸ 使わない数値があってよい。断面積 \(S\) はダミー。
❹ 比透磁率で検算する。鉄心なら数百〜数千。桁が合えば手順は正しい。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

磁界HNI/l=8000×0.1/0.2=4000A/m
磁束密度B1.28T
透磁率μB/H=1.28/4000
答え3.2×10-4H/m …(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・環状ソレノイドの関連問題:【理論】平成20年度A問題3

📚 次に解くべき関連問題
【理論】令和元年度A問題3(磁気・電磁力25)
【理論】令和3年度A問題3(磁気・電磁力21)
【理論】令和3年度A問題4(磁気・電磁力22)
◀ 磁気・電磁力25:【理論】令和元年度A問題3磁気・電磁力27:【理論】平成30年度A問題3
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次