磁気・電磁力51【電験3種 理論】環状ソレノイドの起磁力と鉄心中の磁束を求める!平成20年 A問題3 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 平成20年度 A問題3 環状ソレノイドの起磁力!鉄心を通る磁束は何Wb?

今回は平成20年度 理論科目 A問題3を解説します。磁路の平均の長さ l、断面積 S、透磁率 μ、巻数 N の環状鉄心(磁気抵抗 l/(μS))にコイル電流 I を流したときの、起磁力(ア)磁束(イ)を求める空欄補充問題です。

環状鉄心を1本の磁気回路として扱い、「起磁力=磁気抵抗×磁束」を使います。まずF=NIとRm=l/(μS)を整理し、φ=F/Rmへ代入すれば、式の分子・分母を取り違えません。

目次

平成20年度 理論科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、問題文と選択肢を確認しましょう。図中の赤い破線は平均磁路を示す補助線です。磁束は鉄心内を円周に沿って閉じて通り、半径方向へ流れるものではありません。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 平成20年度 A問題3 問題文
平成20年度 理論科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成20年度 A問題3

 磁路の平均の長さ l〔m〕、断面積 S〔m2〕で透磁率 μ〔H/m〕の環状鉄心に巻数 N のコイルが巻かれている。この場合、環状鉄心の磁気抵抗は l/(μS)〔A/Wb〕である。いま、コイルに流れている電流を I〔A〕としたとき、起磁力は(ア)〔A〕であり、したがって、磁束は(イ)〔Wb〕となる。ただし、鉄心及びコイルの漏れ磁束はないものとする。

上記の記述中の空白箇所(ア)・(イ)に当てはまる式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)起磁力〔A〕(イ)磁束〔Wb〕
(1)IlI/(μS)
(2)IμSI/l
(3)NIlNI/(μS)
(4)NIμSNI/l
(5)N2IμSN2I/l

出題のポイント:起磁力は \(NI\)、磁束は「起磁力÷磁気抵抗」

磁気回路のオームの法則を、そのまま当てはめるだけの問題です。電気回路で \(I=V/R\) と書くのと同じように、磁気回路では \(\varPhi=F/R_m\) と書きます。

迷いどころは2つだけです。起磁力に巻数 \(N\) が入るかと、磁気抵抗を掛けるのか割るのか——この2点を押さえれば、選択肢は1つに絞れます。

磁気回路のオームの法則
$$F=NI\;\mathrm{[A]}\qquad\varPhi=\frac{F}{R_m}\;\mathrm{[Wb]}\qquad R_m=\frac{l}{\mu S}$$

電気回路の \(V=E\)、\(I=V/R\)、\(R=\rho l/A\) と完全に対応します。磁気抵抗は割る側です。

環状ソレノイドの平均磁路長l、断面積S、透磁率μ、巻数N、電流Iを示し、起磁力、磁気抵抗、磁束を順に求める図
起磁力F=NI、磁気抵抗Rₘ=l/(μS)、磁束φ=F/Rₘ=μSNI/lの順に整理すると、正しい組合せ(4)を選べます。

(ア)起磁力は「巻数×電流」

起磁力 \(F=NI\) です。コイルを1回巻くごとに、電流 \(I\) が磁束を押し出す力に加わる——だから巻数を掛けます。

単位は〔A〕です。「アンペアターン」と呼ばれることもありますが、ターン(巻数)は無次元なので、SI単位としてはアンペアになります。この単位の扱いが、単位の問題でも問われます

この時点で(1)(2)が消えます。どちらも起磁力を単に \(I\) としているからです。(5)の \(N^2I\) も誤り——\(N^2\) が出てくるのはインダクタンス \(L=\mu SN^2/l\) のほうで、起磁力は \(N\) の1乗です。

(イ)磁束は起磁力を磁気抵抗で「割る」

$$\varPhi=\frac{F}{R_m}=\frac{NI}{\;l/(\mu S)\;}$$
❶ 定義どおりに書く
分数の分母に分数がある形
$$\varPhi=NI\times\frac{\mu S}{l}=\frac{\mu SNI}{l}\;\mathrm{[Wb]}$$
❷ 逆数を掛ける
分母の分数はひっくり返して掛ける

残った(3)と(4)は、磁気抵抗を掛けるか割るかの違いだけです。(3)は \(lNI/(\mu S)\)——これは起磁力に磁気抵抗を掛けてしまった形で誤りです。

迷ったら次元で確認できます。\(\mu S/l\) の単位は \((\mathrm{H/m})\times\mathrm{m^2}\div\mathrm{m}=\mathrm{H}=\mathrm{Wb/A}\)。これに起磁力〔A〕を掛けると〔Wb〕——確かに磁束の単位になります。

電気回路と磁気回路の対応、およびアンペールの周回積分から磁束φイコールμSNI割るlを導く解説図
磁気回路ではV=RIに対応してF=Rₘφが成り立ちます。NI=Hl、B=μH、φ=BSからもφ=μSNI/lを確認できます。
答え(ア)\(NI\) (イ)\(\dfrac{\mu SNI}{l}\) → 選択肢(4)
平成20年度理論A問題3を、起磁力NI、磁束μSNI割るl、組合せ4の3段階で解く図
磁束はNIを磁気抵抗l/(μS)で割るためμSNI/lとなります。(ア)NI、(イ)μSNI/lに一致する正答は(4)です。

選択肢の消し方

(ア)起磁力(イ)磁束判定
(1)\(I\) ×\(lI/(\mu S)\)巻数がない
(2)\(I\) ×\(\mu SI/l\)巻数がない
(3)\(NI\)\(lNI/(\mu S)\) ×磁気抵抗を掛けている
(4)\(NI\)\(\mu SNI/l\)◎ 正解
(5)\(N^2I\) ×\(\mu SN^2I/l\)インダクタンスと混同

(ア)で3つ、(イ)で1つ消えて、実質2ステップです。(5)の \(N^2\) は、インダクタンスの式を思い出した人を狙った肢——「起磁力は1乗、インダクタンスは2乗」と区別しておいてください。

⚠️ よくある間違い
「磁気抵抗」という言葉から、掛け算をしたくなることがあります。しかし抵抗は「割る」ものです。電気回路で \(I=V/R\) と書くように、磁気回路でも \(\varPhi=F/R_m\)——抵抗が大きいほど流れにくいのですから、割るのが自然です。

💡 覚え方
電気回路との対応を1度書いておくと、この種の問題はすべて解けます。起電力↔起磁力、電流↔磁束、電気抵抗↔磁気抵抗——この3組が磁気回路のすべてです。

⏱️ 本番での進め方
❶ (ア)を先に決める。起磁力は \(NI\)。これで3肢が消える。
❷ 磁気抵抗は割る。掛けるのではない。
❸ 次元で確認。\(\mu S/l\) は \(\mathrm{H}\)、掛けると \(\mathrm{Wb}\)。
❹ \(N^2\) はインダクタンス。起磁力と混同しない。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

深掘り:磁気回路を実際に計算してみる

本問は文字式のままでしたが、具体的な数値を入れてみると、磁気回路の感覚がつかめます。ここでは典型的な環状鉄心を例に、実際に磁束を求めてみましょう。

磁路長 \(l=0.5\;\mathrm{m}\)、断面積 \(S=4\times10^{-4}\;\mathrm{m^2}\)、比透磁率 \(\mu_r=1\,000\)、巻数 \(N=200\)、電流 \(I=0.5\;\mathrm{A}\) とします。

$$\mu=\mu_0\mu_r=4\pi\times10^{-7}\times1\,000=1.257\times10^{-3}\;\mathrm{H/m}$$
❶ 透磁率
比透磁率を掛ける
$$R_m=\frac{l}{\mu S}=\frac{0.5}{1.257\times10^{-3}\times4\times10^{-4}}=9.95\times10^{5}\;\mathrm{H^{-1}}$$
❷ 磁気抵抗
$$F=NI=200\times0.5=100\;\mathrm{A}$$
❸ 起磁力
巻数×電流
$$\varPhi=\frac{F}{R_m}=\frac{100}{9.95\times10^{5}}=1.01\times10^{-4}\;\mathrm{Wb}$$
❹ 磁束
起磁力÷磁気抵抗

磁束密度に直すと \(B=\varPhi/S=1.01\times10^{-4}\div4\times10^{-4}=0.25\;\mathrm{T}\) です。鉄心の飽和磁束密度は1.5〜2 T 程度なので、この条件なら十分に線形領域で使えています。

本問の式 \(\varPhi=\mu SNI/l\) に直接代入しても同じです。\(1.257\times10^{-3}\times4\times10^{-4}\times200\times0.5\div0.5=1.01\times10^{-4}\;\mathrm{Wb}\) ✓。磁気抵抗を経由してもしなくても、結果は変わりません

この式から読み取れる4つの関係

\(\varPhi=\dfrac{\mu SNI}{l}\) という1本の式には、設計に直結する情報が詰まっています。分子と分母に何があるかを見るだけで、各要素の効き方が分かります。

変えるもの磁束への影響実務での意味
巻数 \(N\) を2倍2倍同じ電流で倍の磁束が得られる
電流 \(I\) を2倍2倍ただし銅損は4倍になる
断面積 \(S\) を2倍2倍鉄心が重く・高価になる
透磁率 \(\mu\) を2倍2倍良質な鉄心材料を使う
磁路長 \(l\) を2倍1/2鉄心を小型化すると磁束は増える

すべて1乗で効きますインダクタンスが \(N^2\) に比例するのとは対照的です。磁束は「起磁力を磁気抵抗で割ったもの」なので、起磁力に含まれる \(N\) が1回だけ効く——という違いになります。

⚠️ よくある間違い
\(\varPhi\propto N\) と \(L\propto N^2\) を混同しないでください。磁束は \(N\) の1乗、インダクタンスは \(N\) の2乗です。インダクタンスは「磁束 × 巻数 ÷ 電流」なので、\(N\) がもう一度掛かる——ここが2乗になる理由です。

💡 覚え方
「\(\varPhi\) は1乗、\(L\) は2乗」と対で覚えておくと、どちらの問題が来ても対応できます。起磁力 \(NI\) も \(N\) の1乗——2乗になるのはインダクタンスだけです。

まとめ

起磁力FNI [A]
磁気抵抗Rml/(μS) [A/Wb]
磁束φF/Rm=μSNI/l [Wb]
物理式での確認NI=Hl、B=μH、φ=BS
正答(4)

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