磁気・電磁力25【電験3種 理論】ヒステリシスループの面積は周波数・電圧でどう変わる?令和元年 A問題3 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 令和元年度 A問題3 ループの面積が鉄損の正体!周波数を上げるとどうなる?

今回は令和元年度 理論科目 A問題3を解説します。鉄心にコイルを巻いたリアクトルのヒステリシスループについて、電流最大の点や、周波数・電源電圧を変えたときのループの面積の変化を答える空欄補充問題です。

磁束密度の最大値はBmax∝V/f(V=4.44fNΦmaxより)です。電流はH(磁界の強さ)に対応します。V一定でf低下ならBmax増(面積大)、電流一定ならH一定でループはほぼ不変です。

目次

令和元年度 理論科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、令和元年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 令和元年度 A問題3 問題文
令和元年度 理論科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和元年度 A問題3

 図は積層した電磁鋼板の鉄心の磁化特性(ヒステリシスループ)を示す。図中のB〔T〕及びH〔A/m〕はそれぞれ磁束密度及び磁界の強さを表す。この鉄心にコイルを巻きリアクトルを製作し、商用交流電源に接続した。実効値V〔V〕の電源電圧を印加すると図中に矢印で示す軌跡が確認された。コイル電流が最大のときの点は(ア)である。次に、電源電圧実効値が一定に保たれたまま、周波数がやや低下したとき、ヒステリシスループの面積は(イ)。一方、周波数が一定で、電源電圧実効値が低下したとき、ヒステリシスループの面積は(ウ)。最後に、コイル電流実効値が一定で、周波数がやや低下したとき、ヒステリシスループの面積は(エ)。

上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)1大きくなる小さくなる大きくなる
(2)2大きくなる小さくなるあまり変わらない
(3)3あまり変わらないあまり変わらない小さくなる
(4)2小さくなる大きくなるあまり変わらない
(5)1小さくなる大きくなるあまり変わらない
図 鉄心の磁化特性(ヒステリシスループ)と点1・2・3(問題図)
図 鉄心の磁化特性(ヒステリシスループ)と点1・2・3(問題図)

出題のポイント:\(B_{\max}\propto V/f\) と \(H\propto I\) の2本柱

ヒステリシスループの縦軸 \(B\) と横軸 \(H\) が、それぞれ何で決まるか——これさえ押さえれば、4つの空欄はすべて機械的に埋まります。

この問題が難しく感じるのは、電圧・周波数・電流という3つの量が入れ替わり立ち替わり登場するからです。しかし「縦軸を決めるのは電圧と周波数、横軸を決めるのは電流」と整理してしまえば、あとは分母か分子かを見るだけになります。

2本の柱
$$V=4.44\,f\,N\,\varPhi_{\max}\quad\Longrightarrow\quad B_{\max}=\frac{\varPhi_{\max}}{A}\propto\frac{V}{f}$$$$H=\frac{NI}{l}\quad\Longrightarrow\quad H\propto I$$

縦軸 \(B\) は電圧に比例・周波数に反比例横軸 \(H\) は電流に比例。この2行がすべてです。

ヒステリシスループの点2とBmax比例V毎fおよびHmax比例Iの関係を示す図
電流最大はH最大の点2です。Bmax∝V/f、Hmax∝Imaxを使って面積変化を判断します。

(ア)コイル電流が最大の点はどこか

コイル電流は磁界の強さ \(H\) に対応します。\(H=NI/l\) で、巻数 \(N\) と磁路長 \(l\) は変わらないからです。

したがって電流が最大になるのは \(H\) が最大の点——ヒステリシスループの最も右側、右上の頂点です。図では点2がこれにあたります。

「磁束密度が最大の点」と混同しないでください。\(B\) が最大の点も右上付近にありますが、厳密には \(H\) が最大の点とは限りません。問われているのは電流=横軸です。

(イ)(ウ)電圧と周波数を変えたとき

変圧器の起電力の式 \(V=4.44fN\varPhi_{\max}\) を \(\varPhi_{\max}\) について解くと、\(\varPhi_{\max}=V/(4.44fN)\) となります。鉄心断面積が一定なら \(B_{\max}\propto V/f\) です。

条件\(B_{\max}\) の変化ループの縦方向面積
(イ)\(V\) 一定、\(f\) が低下分母が減る → 増加上下に広がる大きくなる
(ウ)\(f\) 一定、\(V\) が低下分子が減る → 減少上下に縮む小さくなる

数値で見ると実感できます。\(V=100\;\mathrm{V}\)、\(f=50\;\mathrm{Hz}\) を基準として、\(f\) を45 Hz に下げるだけで \(B_{\max}\) は約1.11倍になります。周波数をわずか1割下げただけで、磁束密度は1割強も増えるのです。

これは実務でも重要な事実です変圧器を定格より低い周波数で使うと、磁束密度が上がって磁気飽和を起こし、励磁電流が急増して過熱します50 Hz 用の変圧器を60 Hz で使うのは問題ないが、逆は危険——という有名な話の根拠がここにあります。

(エ)電流を一定に保ったまま周波数を下げたら

今度は電流が一定という条件です。\(H=NI/l\) なので、電流が一定なら \(H_{\max}\) も一定——ループの横幅は変わりません

横幅が変わらなければ、B-H曲線上の動作範囲もほぼ同じになります。したがって面積はあまり変わりません

(イ)との違いに注意してください。(イ)は電圧一定だったので \(B_{\max}\) が動きました。(エ)は電流一定なので \(H_{\max}\) が固定され、結果として \(B_{\max}\) も動きません。何を一定に保つかで、答えが正反対になります

電圧周波数電流の各条件からヒステリシスループ面積の変化を比較する図
V一定でf低下なら面積大、f一定でV低下なら面積小、I一定なら変化は小さいと判断します。
答え(ア)点2 (イ)大きくなる (ウ)小さくなる (エ)あまり変わらない → 選択肢(2)
令和元年度理論問3の4空欄を点2大きくなる小さくなるあまり変わらないで埋める解答図
空欄は点2・大きくなる・小さくなる・あまり変わらないで、公式正答は(2)です。

誤答の正体

誤り方どこを間違えるか結果
(イ)(ウ)を逆にする\(B_{\max}\propto V/f\) の分母・分子(4)(5)に着地
(エ)を「大きくなる」とする電流一定=\(H\) 一定を見落とす(1)に着地
(ア)で点1や点3を選ぶ電流=\(H\)(横軸)の対応(1)(3)(5)に着地
正しい判断(2) ◎

最も多いのは(イ)(ウ)の取り違えです。\(f\) は分母なので、\(f\) が減れば \(B_{\max}\) は増える——分数の感覚を落ち着いて確認してください。

⚠️ よくある間違い
ループの「面積」と「ヒステリシス損」を混同しないでください。面積は1周期・単位体積あたりの損失エネルギー〔J/m³〕です。電力としてのヒステリシス損は、これに周波数を掛けた量になります。周波数が下がれば、面積が増えても損失電力は減ることがある——本問は面積だけを聞いているので、そこまでは考えません。

💡 覚え方
「電圧を上げるか周波数を下げると、鉄心は苦しくなる」と覚えてください。どちらも \(B_{\max}\) を増やす方向で、行き着く先は磁気飽和です。\(V/f\) 一定制御(インバータの基本)は、まさに \(B_{\max}\) を一定に保つための制御方式です。

⏱️ 本番での進め方
❶ 2本柱を余白に書く:\(B_{\max}\propto V/f\)、\(H\propto I\)。これで全部埋まる。
❷ 何が一定かを確認する。電圧一定か、電流一定かで答えが正反対になる。
❸ 分母か分子か。\(f\) は分母、\(V\) は分子。
❹ 電流=横軸 \(H\)。(ア)は横軸が最も右の点を選ぶ。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

(ア)電流最大点2(H最大)
(イ)V一定f低下Bmax増→大きくなる
(ウ)f一定V低下Bmax減→小さくなる
(エ)電流一定/答H一定→あまり変わらない、答(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・磁性体・鉄損の関連問題:【理論】平成29年度A問題4

📚 次に解くべき関連問題
【理論】令和元年度A問題4(磁気・電磁力26)
【理論】令和3年度A問題3(磁気・電磁力21)
【理論】令和3年度A問題4(磁気・電磁力22)
◀ 磁気・電磁力24:【理論】令和2年度A問題4磁気・電磁力26:【理論】令和元年度A問題4
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次