今回は令和4年度上期 理論科目 A問題4を解説します。磁束密度B=0.02Tの一様磁界中で、長さ0.5mの直線導体が磁界と直角を保ちつつ、磁界に対して60°の方向に0.5m/sで移動するときの誘導起電力e〔mV〕を求める問題です。
運動起電力の一般式はe=∫(v×B)・dℓです。本問では導体方向がv×Bと平行になる配置なので、e=Blv sinθを使えます。θは速度vと磁束密度Bのなす角です。
令和4年度上期 理論科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、令和4年度上期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和4年度上期 A問題4
図1のように、磁束密度B=0.02Tの一様な磁界の中に長さ0.5mの直線状導体が磁界の方向と直角に置かれている。図2のようにこの導体が磁界と直角を維持しつつ磁界に対して60°の角度で、二重線の矢印の方向に0.5m/sの速さで移動しているとき、導体に生じる誘導起電力eの値〔mV〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、静止した座標系から見て、ローレンツ力による起電力が発生しているものとする。
(1)2.5 (2)3.0 (3)4.3 (4)5.0 (5)8.6

出題のポイント:\(\sin\theta\) を忘れない。角度は「速度と磁界の間」
公式 \(e=Blv\) は覚えている人が多いですが、斜めに動くときは \(\sin\theta\) が付きます。この1文字を落とすと選択肢(4)に着地します。

なぜ \(\sin\theta\) が付くのか
起電力を生むのは「磁界を横切る動き」だけです。磁界に沿って動く成分は、磁束を切らないので何も生みません。
これだけが有効
磁束を切らないので寄与しない
速度を「磁界に平行な成分」と「垂直な成分」に分解する——これが本質です。磁界に沿って動いても磁束は切れませんから、その成分は捨てます。
💡 覚え方
「磁力線を何本切ったか」で考えると直感的です。磁力線に沿って動けば1本も切りませんし、直角に横切れば最も多く切ります。切った本数の割合が \(\sin\theta\) です。
解説:数値を代入する
\(B=0.02\;\mathrm{T}\)、\(l=0.5\;\mathrm{m}\)、\(v=0.5\;\mathrm{m/s}\)
\(\sin60^\circ=\dfrac{\sqrt3}{2}=0.866\)
設問がmVを聞いている
\(0.02\times0.5\times0.5=0.005\) まで暗算で出せます。あとは \(0.866\) を掛けるだけです。


誤答の正体:選択肢が角度の間違いを網羅している
| 誤り方 | 掛ける値 | 結果〔mV〕 | 選択肢 |
| \(\sin\theta\) を掛け忘れる | 1(=90°扱い) | 5.0 | (4) |
| \(\cos60^\circ\) を掛ける | 0.5 | 2.5 | (1) |
| 角度を30°と取り違える | \(\sin30^\circ=0.5\) | 2.5 | (1) |
| 2倍してしまう | \(2\sin60^\circ\) | 8.66 | (5) |
| 正しい計算 | \(\sin60^\circ=0.866\) | 4.33 | (3) ◎ |
(4)5.0 が最も引っかかりやすい誤りです。\(e=Blv\) だけを覚えていると、\(0.02\times0.5\times0.5=0.005\;\mathrm{V}=5\;\mathrm{mV}\) できれいな数字が出てしまい、疑わずに選んでしまいます。
⚠️ よくある間違い
\(\sin\) と \(\cos\) の取り違えにも注意してください。「磁界と \(60^\circ\) の方向へ動く」なら \(\sin60^\circ\) です。「磁界と垂直な方向から \(30^\circ\) 傾いて」と書かれたら \(\cos30^\circ\)——どちらも同じ0.866ですが、基準がどちらかを必ず確認してください。
深掘り:ローレンツ力から見ると何が起きているか
問題文に「ローレンツ力による起電力が発生している」と書かれています。これは導体中の自由電子が受ける力のことです。
動く電荷が磁界から受ける力
片側が負、反対側が正に帯電
この電位差が起電力
導体を動かすと、中の電子が \(q\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{B}\) の力で押しやられます。電子が片側に偏ると電界が生じて逆向きの力が働き、やがてつり合います。そのときの電位差が \(e=Blv\sin\theta\) です。
\(e=-Nd\varPhi/dt\)(ファラデーの法則)と \(e=Blv\)(運動起電力)は同じ現象の2つの見方です。回路の面積変化に注目するか、電子に働く力に注目するかの違いにすぎません。
起電力の向きはフレミングの右手の法則で決まります。親指=運動、人差し指=磁界、中指=起電力——左手(電動機)と右手(発電機)を混同しないことが重要です。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(Blv\) を先に計算する。\(0.02\times0.5\times0.5=0.005\)。ここまでは暗算。
❷ \(\sin\theta\) を必ず掛ける。掛け忘れの答えが選択肢に用意されている。
❸ 角度の基準を確認する。「磁界に対して60°」なら \(\sin60^\circ\)。
❹ 単位を合わせる。答えはmV。\(4.33\times10^{-3}\;\mathrm{V}=4.33\;\mathrm{mV}\)。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 一般式 | e=∫(v×B)・dℓ |
| 有効速度 | v⊥=0.5×sin60°=0.4330 m/s |
| 本問 | e=Bℓv⊥ |
| 結果 | 4.330×10−3 V=4.330 mV |
| 答え | (3) |
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