今回は令和7年度上期 理論科目 A問題3を解説します。同一の環状鉄心に巻いたコイル1(巻数N、自己インダクタンスL)とコイル2(巻数n、自己インダクタンス9L)について、巻数nを求める問題です。
同じ環状鉄心では磁気抵抗ℜmが共通です。起磁力NIによって磁束Φ=NI/ℜmが生じ、N巻すべてに鎖交するので、磁束鎖交数はλ=NΦ=N2I/ℜmです。したがって自己インダクタンスはL=λ/I=N2/ℜmとなります。インダクタンス比9は巻数比の2乗なので、n/N=√9=3です。
令和7年度上期 理論科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、令和7年度上期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和7年度上期 A問題3
図のように、環状鉄心に二つのコイルが巻かれている。コイル1の巻数はNであり、その自己インダクタンスはL〔H〕である。コイル2の巻数はnであり、その自己インダクタンスは9L〔H〕である。巻数nの値を表す式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、鉄心は均一で一定断面積をもち、コイル及び鉄心の漏れ磁束はなく、鉄心の磁気飽和もないものとする。
(1)N/9 (2)N/3 (3)3N (4)9N (5)81N

出題のポイント:インダクタンスは巻数の2乗。逆に使うので平方根
同じ環状鉄心に巻かれているので、磁気抵抗 \(R_m\) は共通です。すると \(L=N^2/R_m\) となり、インダクタンスは巻数の2乗に比例します。
本問は「9倍のインダクタンスなら巻数は何倍か」と、2乗の関係を逆向きに使わせています。\(\sqrt9=3\) 倍——「9倍だから9倍」と考えると選択肢(4)に着地します。

解説:平方根を取る
\(R_m\) が共通なので約分される
9倍のインダクタンス=3倍の巻数
問題で「9倍」という平方数が選ばれているのは、巻数比がきれいな整数になるようにするためです。4倍なら2倍、9倍なら3倍、16倍なら4倍——この対応を覚えておくと即答できます。
常識でも2肢消せます。インダクタンスが大きいコイル2は、巻数も多いはずです。\(N/9\) や \(N/3\) は明らかに小さすぎるので除外できます。


誤答の正体:1乗と2乗、掛けるか割るか
| 誤り方 | 考え方 | 答え | 選択肢 |
| \(L\propto N\) と考える | 1乗だと思う | \(9N\) | (4) |
| 2乗をさらに掛ける | \(9^2=81\) | \(81N\) | (5) |
| 逆に使う | 巻数が減ると考える | \(N/3\) | (2) |
| 逆かつ1乗 | — | \(N/9\) | (1) |
| 正しい計算 | \(\sqrt9=3\) | \(3N\) | (3) ◎ |
選択肢が \(N/9\)、\(N/3\)、\(3N\)、\(9N\)、\(81N\) と並んでいるのは、「1乗か2乗か」「掛けるか割るか」の全パターンを網羅しているからです。
⚠️ よくある間違い
2乗の関係を逆向きに使うときが最も混乱しやすい場面です。「\(L\) が9倍 → \(N\) は \(\sqrt9\) 倍」と、その場で1行書いてから答える習慣をつけてください。
★平成20年度A問題4は「4倍版」の同じ問題
平成20年度A問題4は、まったく同じ設定で「4倍のインダクタンス」を問う問題です。倍率が違うだけで、解き方は完全に同じです。
| 平成20年度 A問題4 | 本問(令和7年度上期 A問題3) | |
| インダクタンスの比 | 4倍 | 9倍 |
| 巻数の比 | \(\sqrt4=2\) 倍 | \(\sqrt9=3\) 倍 |
| 答え | \(2N\) | \(3N\) |
| 選択肢の並び | \(N/4,\;N/2,\;2N,\;4N,\;16N\) | \(N/9,\;N/3,\;3N,\;9N,\;81N\) |
| 正答番号 | (3) | (3) |
選択肢の並びも「同じパターンで倍率を差し替えた」形になっています。今回はたまたま正答番号がどちらも(3)ですが、これは偶然です。数値が変われば番号も変わり得るので、解き方で覚えてください。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成20年度A問題4
⏱️ 本番での進め方
❶ \(L\propto N^2\) を余白に書く。同じ鉄心という条件がその根拠。
❷ 逆に使うときは平方根。9倍なら3倍。
❸ 常識で2肢消す。\(L\) が大きい=巻数が多い。
❹ 平方数が出るように作られている。4・9・16 なら整数比。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
深掘り:なぜ2乗になるのか、そして相互インダクタンスとの違い
インダクタンスが巻数の2乗に比例する理由は、2つの効果が掛け算になるからです。順を追って確認しておきましょう。
\(\varPhi=NI/R_m\)
合わせて \(N^2\) 倍
同じコイルが「作る側」と「受け取る側」の両方を兼ねている——だから効果が2回効きます。これが2乗の正体です。
相互インダクタンスでは事情が変わります。\(M\propto N_1N_2\)——作る側と受け取る側が別のコイルなので、それぞれの巻数が1回ずつ掛かります。\(N_1=N_2=N\) とすれば \(N^2\) になり、自己インダクタンスと辻褄が合います。
| 式 | 巻数の効き方 | |
| 自己インダクタンス | \(L=\dfrac{N^2}{R_m}\) | 同じ \(N\) が2回 |
| 相互インダクタンス | \(M=\dfrac{N_1N_2}{R_m}\)(完全結合) | \(N_1\) と \(N_2\) が1回ずつ |
本問の2つのコイルの相互インダクタンスも計算できます。\(N_1=N\)、\(N_2=3N\) なので、完全結合なら \(M=3N^2/R_m=3L\)。\(\sqrt{L_1L_2}=\sqrt{L\times9L}=3L\) と一致します ✓
問題文の条件は何のためにあるか
| 条件 | なぜ必要か |
| 鉄心は均一で一定断面積 | 磁路のどこでも \(\mu\)、\(S\) が同じ=\(R_m\) が計算できる |
| 漏れ磁束はない | 全巻数に同じ磁束が鎖交する=\(\varPsi=N\varPhi\) と書ける |
| 磁気飽和もない | \(\mu\) が一定=\(L\propto N^2\) が成り立つ |
3つの条件はすべて「2つのコイルで \(R_m\) を共通とみなすため」にあります。とくに磁気飽和が起きると \(\mu\) が磁束密度によって変わってしまい、\(L\propto N^2\) が崩れます。
💡 覚え方
「作る側で \(N\) 倍、受け取る側で \(N\) 倍、合わせて \(N^2\)」——この一文で理由まで覚えられます。公式を丸暗記するより、相互インダクタンスとの違いも同時に整理できます。
まとめ
| 共通条件 | 同じ環状鉄心、磁気抵抗ℜmが共通 |
| 基本式 | L=N2/ℜm |
| インダクタンス比 | L2/L1=9 |
| 巻数比 | n/N=√9=3 |
| 答え | n=3N、選択肢(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・自己インダクタンスの関連問題:【理論】令和7年度下期A問題3

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