今回は令和元年度 理論科目 A問題1を解説します。点電荷Qを置いた点Pと、直線上の点A・点Bについて、A-B間の電位差の絶対値|VAB|が、4つの実験(a)〜(d)のうち最小・最大となる組合せを求める計算問題です。
点電荷がつくる電位はV=kQ/r(rは点電荷からの距離)です。|VAB|=k|Q||1/rA−1/rB|を各実験で計算し、大小を比べます。
令和元年度 理論科目 A問題1:問題文と選択肢
4つの配置を比べますが、計算すべき量は\(|1/r_A-1/r_B|\) ひとつだけ。「A-B間が長いほど電位差が大きい」という直感が通用しない問題です。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和元年度 A問題1
図のように、真空中に点P、点A、点Bが直線上に配置されている。点PはQ〔C〕の点電荷を置いた点とし、A-B間に生じる電位差の絶対値を|VAB|〔V〕とする。次の(a)〜(d)の四つの実験を個別に行ったとき、|VAB|〔V〕の値が最小となるものと最大となるものの実験の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
次の(a)〜(d)の四つの実験を個別に行ったとき、|VAB|の値が最小となるものと最大となるものの実験の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。(実験内容:(a) P-A間2m・A-B間1m、(b) P-A間1m・A-B間2m、(c) P-A間0.5m・A-B間1m、(d) P-A間1m・A-B間0.5m)
(1)(a)と(b) (2)(a)と(c) (3)(a)と(d) (4)(b)と(c) (5)(c)と(d)

出題のポイント:電位差を決めるのは「1/rの差」
4つの配置を比べる問題ですが、計算すべき量は1つだけです。
電位は距離に反比例します。だから点電荷に近い場所ほど電位が急激に変化し、遠ざかるとほとんど変わらなくなります。
この性質から、「Pに近い配置ほど電位差が大きい」という見通しが立ちます。実際に計算して確かめましょう。

問題の解説:4通りを同じ土俵で計算する
STEP1 各実験の \(r_A\) と \(r_B\) を整理する
\(r_B\) は「P-A間+A-B間」です。A-B間の距離をそのまま \(r_B\) にしないよう注意してください。
| 実験 | P-A間 | A-B間 | \(r_A\) | \(r_B=r_A+\)A-B間 |
| (a) | 2 m | 1 m | 2 m | 3 m |
| (b) | 1 m | 2 m | 1 m | 3 m |
| (c) | 0.5 m | 1 m | 0.5 m | 1.5 m |
| (d) | 1 m | 0.5 m | 1 m | 1.5 m |
STEP2 \(|1/r_A-1/r_B|\) を計算する
| 実験 | \(1/r_A\) | \(1/r_B\) | 差の絶対値 | 順位 |
| (a) | 0.500 | 0.333 | 1/6 ≒ 0.167 | 最小 |
| (d) | 1.000 | 0.667 | 1/3 ≒ 0.333 | 2番目 |
| (b) | 1.000 | 0.333 | 2/3 ≒ 0.667 | 3番目 |
| (c) | 2.000 | 0.667 | 4/3 ≒ 1.333 | 最大 |
最小と最大の比は8倍(1/6と4/3)——配置を変えるだけでこれだけ差がつきます。
STEP3 組合せを選ぶ


なぜ(c)が突出して大きいのか
結果を眺めると、(c)だけが際立っています。理由は \(1/r\) の性質にあります。
他の実験の2〜4倍
\(r_A=0.5\;\mathrm{m}\) と最も近いため、\(1/r_A\) が突出します。他の実験の \(1/r_A\) は0.5または1.0なので、(c)だけが2.0と飛び抜けています。
逆に(a)は \(r_A=2\;\mathrm{m}\) と最も遠い。遠い場所では \(1/r\) の変化が緩やかなので、AとBの差も小さくなります。
| 距離r | 1/r | rが1 m増えたときの1/rの減少 |
| 0.5 m | 2.000 | 2.000 → 0.667(1.333減) |
| 1 m | 1.000 | 1.000 → 0.500(0.500減) |
| 2 m | 0.500 | 0.500 → 0.333(0.167減) |
| 4 m | 0.250 | 0.250 → 0.200(0.050減) |
同じ「1 m離れる」でも、近くでは大きく、遠くでは小さくしか変わりません。この非線形性が本問の本質です。
「A-B間の距離が長いほど電位差が大きい」とは限らない点にも注意してください。(b)はA-B間が2 mと最長ですが、電位差は(c)の半分です。大事なのは「どこにあるか」であって「どれだけ離れているか」ではありません。
誤答の正体:最小と最大の判定ミス
| 選択肢 | 組合せ | 実際の値 | 判定 |
| (1) | (a)と(b) | (a)は最小○だが、(b) 0.667 は最大ではない((c)が1.333) | × |
| (2) | (a)と(c) | 最小0.167、最大1.333 | ○ |
| (3) | (a)と(d) | (a)は最小○だが、(d) 0.333 は2番目に小さい値 | × |
| (4) | (b)と(c) | (c)は最大○だが、(b)は最小ではない(3番目) | × |
| (5) | (c)と(d) | (c)は最大だが順序が逆で、(d)も最小ではない | × |
(a)を含むのは(1)(2)(3)、(c)を含むのは(2)(4)(5)——両方を含むのは(2)だけです。つまり「最小は(a)」と「最大は(c)」のどちらか一方が分かれば、候補が3つに絞れます。
時間がないときは最大だけを探すのが効率的です。最も近い \(r_A=0.5\) を持つ(c)が最大だと当たりをつければ、(2)(4)(5)に絞れます。
「A-B間が最も長い(b)が最大だろう」と直感で選ぶと(1)や(4)を掴みます。距離の長さではなく1/rの差で決まることを忘れないでください。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 電位は距離に反比例(\(V\propto1/r\))。電界の \(1/r^2\) と混同しない
② \(r_B\)=P-A間+A-B間。A-B間をそのまま \(r_B\) にしない
③ 共通係数 \(Q/(4\pi\varepsilon_0)\) は無視して\(|1/r_A-1/r_B|\) だけ比較する
④ 点電荷に近いほど電位差が大きい——\(r_A\) の最小を探すのが近道
⑤ 組合せ問題は片方(最大)だけ確定させれば候補が3つに絞れる
💡 覚え方
「近いほど効く、それも急激に」。\(1/r\) は近距離で急変し、遠距離では平坦。だからPに最も近い配置が最大、最も遠い配置が最小——計算前に見当がつきます。
⚠️ よくある間違い
「A-B間の距離が長いほど電位差が大きい」という直感が最大の罠です。(b)はA-B間2 mと最長ですが最大ではありません。また\(r_B\) をA-B間の距離だと勘違いするミスも多いので、Pからの距離であることを図で確認してください。
まとめ
| (a) | 1/2−1/3=0.167(最小) |
| (b) | 1−1/3=0.667 |
| (c) | 2−1/1.5=1.333(最大) |
| (d) | 1−1/1.5=0.333、答(2) |
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