今回は令和4年度下期 理論科目 B問題17を解説します。大きさの等しい2つの導体球A、Bについて、(a)クーロン力の比例定数を実測値から求め、(b)電荷を持たない導体球CをA・Bに順に接触させて電荷を分配した後、Cに働く力が釣り合う位置を求める計算問題です。
(a)はF=kqAqB/r2に代入します。(b)は同じ大きさの導体球を接触させると電荷が等分されることを使い、Cの電荷を順に求めてからA・Bから受ける力が等しくなる位置を解きます。
ほぼ同じ問題が 【理論】令和7年度上期B問題17 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和4年度下期 理論科目 B問題17:問題文と選択肢
導体球を順番に接触させる問題です。接触のたびに電荷を書き換える——この一手間を省くと、用意された誤答にぴったり着地します。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題17
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和4年度下期 B問題17
大きさが等しい二つの導体球A、Bがある。両導体球に電荷が蓄えられている場合、両導体球の間に働く力は、導体球に蓄えられている電荷の積に比例し、導体球の中心間距離の2乗に反比例する。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)この場合の比例定数を求める目的で、導体球Aに+2×10-8C、導体球Bに+3×10-8Cの電荷を与えて、導体球の中心間距離で0.3m隔てて両導体球を置いたところ、両導体球間に6×10-5Nの反発力が働いた。この結果から求められる比例定数〔N・m2/C2〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、導体球A、Bの初期電荷は零とする。また、両導体球の大きさは0.3mに比べて極めて小さいものとする。
(1)3×109 (2)6×109 (3)8×109 (4)9×109 (5)15×109
(b)上記(a)の導体球A、Bを、電荷を保持したままで0.3mの中心間距離を隔てて固定した。ここで、導体球A、Bと大きさが等しく電荷を持たない導体球Cを用意し、導体球Cをまず導体球Aに接触させ、次に導体球Bに接触させた。この導体球Cを導体球Aと導体球Bの間の直線上に置くとき、導体球Cが受ける力が釣り合う位置を導体球Aとの中心間距離で表したとき、その距離の値〔m〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.095 (2)0.105 (3)0.115 (4)0.124 (5)0.135
出題のポイント:接触のたびに電荷を書き換える
(b)は接触の順序を追う問題です。CをAに接触させ、次にBに接触させる——各段階で電荷を書き換えないと最後まで合いません。
| 前提 | 起きること | 式 |
| 大きさが等しい導体球どうし | 電荷が等分される | \(q_1’=q_2’=\dfrac{q_1+q_2}{2}\) |
| なぜ等分か | 接触すると1つの導体になり全体が等電位。同じ大きさなら電荷も同じ | \(V=Q/C\)、Cが同じ → Qも同じ |
| 大きさが違う場合 | 容量の比で分かれる(等分ではない) | \(q\propto C\propto r\) |
電荷の追跡表を作るのが確実な方法です。実際に追ってみましょう。
| 段階 | 球A | 球B | 球C | 何が起きたか |
| 初期 | \(2\times10^{-8}\) | \(3\times10^{-8}\) | 0 | Cは帯電していない |
| Aに接触後 | \(1\times10^{-8}\) | \(3\times10^{-8}\) | \(1\times10^{-8}\) | \(2\times10^{-8}\) を2等分 |
| Bに接触後 | \(1\times10^{-8}\) | \(2\times10^{-8}\) | \(2\times10^{-8}\) | \(3+1=4\)、これを2等分 |
最終的にA=\(1\times10^{-8}\)、B=\(2\times10^{-8}\) となります。接触前はAのほうが小さくBが大きい——この関係が釣合い位置を決めます。
Aの電荷が半分に減っている点に注意してください。Cに電荷を分け与えたからです。「Aは元のまま」と思い込むと答えが変わります。

(a) の解説:クーロンの法則を逆に使う
指数の計算に注意
おなじみの値が出る
答えが \(9\times10^9\) になるのは偶然ではありません。これは真空中のクーロン定数 \(1/(4\pi\varepsilon_0)\) そのもの——問題文の数値は、この値になるよう逆算して作られています。
この事実を知っていれば、(a)は計算せずに答えられます。「真空中の実験なのだから、比例定数はクーロン定数のはず」——選択肢に \(9\times10^9\) があれば、それが答えです。

(b) の解説:力が釣り合う位置を求める
Cが受ける2つの力(Aから、Bから)が大きさで等しくなる位置を探します。
\(k\) も \(q_C\) も約分で消える
2乗のまま扱わない
\(q_C\) が式から消えるのが重要です。Cの電荷がいくらであっても釣合い位置は同じ——(b)ではCの電荷の値は使いません(追跡はA・Bの電荷を知るために必要でした)。
Bの電荷のほうが大きいので、釣合い点はA寄りになります。中点の0.15 mより小さい0.124 m——方向として正しいことが確認できます ✓

検算:この位置で \(F_A=1.1657\times10^{-4}\;\mathrm{N}\)、\(F_B=1.1657\times10^{-4}\;\mathrm{N}\)——完全に一致します ✓

誤答の正体:どこで手を抜くとどの値になるか
典型的な誤りを実際に計算し、選択肢と照合しました。
| 誤り方 | 使った電荷 | 得られる \(x\) | 選択肢との対応 |
| 電荷を等分しない(A=\(2\times10^{-8}\)、B=\(3\times10^{-8}\) のまま) | 元のまま | 0.135 m | (5) 0.135 に一致 |
| 接触を1回だけと誤解(Bへの接触を忘れる) | A=1、B=3 | 0.110 m | どれとも一致せず |
| 平方根を取り忘れ(\(x=R/(1+q_B/q_A)\)) | 正しい電荷 | 0.100 m | どれとも一致せず |
| 正しく計算 | A=1、B=2 | 0.124 m | (4) に一致 |
(5)の0.135が「電荷を等分し忘れた場合」の答えだと特定できました。接触という操作を読み飛ばすと、ちょうどここに着地します。
逆に言えば、0.135を選んでしまった人は「計算は正しいが、電荷の追跡を忘れた」ということです。クーロンの法則も平方根の処理も正しくできているのに、問題文の「接触させた」という一文を計算に反映していない——非常に惜しいミスです。
平方根を取り忘れると0.100——これは選択肢にありません。「計算値が選択肢にない」ときは、式の変形を見直すサインです。
釣合い位置の一般的な性質
求めた式 \(x=\dfrac{R}{1+\sqrt{q_B/q_A}}\) を眺めると、いくつかの性質が読み取れます。
| \(q_B/q_A\) | \(\sqrt{q_B/q_A}\) | \(x/R\) | 釣合い点の位置 |
| 1(等しい) | 1 | 0.500 | ちょうど中点 |
| 2(本問) | 1.414 | 0.414 | A寄り |
| 4 | 2 | 0.333 | さらにA寄り |
| 100 | 10 | 0.091 | Aのすぐそば |
電荷が大きいほうから遠ざかるのが基本です。強い電荷から離れることで、力の大きさを弱いほうと釣り合わせています。
効き方は平方根なので緩やかです。電荷が4倍違っても、釣合い点は中点から \(0.333R\) へ移るだけ——2倍の距離差にはなりません。距離の2乗で効くぶん、平方根で戻るからです。
なお、この釣合いは「不安定」です。Cが少しでもA側へずれるとAからの力が強まってさらに押され、B側へずれればBからの力が強まる——元に戻る復元力がありません。同符号の3電荷では安定な釣合い点は作れない(アーンショーの定理)という一般的な性質の一例です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 接触が出てきたら電荷の追跡表を書く(初期→1回目→2回目)
② 同じ大きさの球なら電荷は等分(\((q_1+q_2)/2\))
③ 釣合い条件では\(k\) も \(q_C\) も消える——A・Bの電荷だけで決まる
④ \(x=R/(1+\sqrt{q_B/q_A})\)——平方根を忘れない
⑤ 電荷が大きいほうから遠い——中点より近いか遠いかで検算
💡 覚え方
「接触したら書き換える」。導体球を接触させるたびにその2球の電荷を等分して表を更新します。Aの電荷も減っていることを見落とさないでください。
⚠️ よくある間違い
電荷を等分せず元のまま計算するのが最頻出で、選択肢(5)の0.135に着地します。また平方根を取り忘れると0.100となり選択肢にありません。釣合いの式は2乗で立てて、必ず平方根を取ることを忘れないでください。
★重要:この問題は3回出題され、答えは同じなのに選択肢番号が変わる
同じ設定の問題が平成20年度・令和4年度下期・令和7年度上期の3回、B問題17として出題されています。平成20年度と令和4年度下期は数値も選択肢も完全に同一、令和7年度上期は電荷が2倍になっただけです。
| 平成20年度 B17 | 令和4年度下期 B17 | 令和7年度上期 B17 | |
| 初期電荷 \(q_A,\;q_B\) | \(2\times10^{-8},\;3\times10^{-8}\) | 同左(完全に同一) | \(4\times10^{-8},\;6\times10^{-8}\)(2倍) |
| 測定した力 \(F\) | \(6\times10^{-5}\,\mathrm{N}\) | 同左 | \(2.4\times10^{-4}\,\mathrm{N}\)(4倍) |
| 接触後 \(q_A,\;q_B\) | \(1\times10^{-8},\;2\times10^{-8}\) | 同左 | \(2\times10^{-8},\;4\times10^{-8}\) |
| 電荷の比 \(q_B/q_A\) | 2 | 2 | 2(すべて同じ) |
| (a) の答えの値 | \(9\times10^9\) | \(9\times10^9\) | \(9\times10^9\)(同じ) |
| (a) の選択肢番号 | (4) | (4) | (3) ←違う |
| (b) の答えの値 | \(0.124\,\mathrm{m}\) | \(0.124\,\mathrm{m}\) | \(0.124\,\mathrm{m}\)(同じ) |
| (b) の選択肢番号 | (4) | (4) | (5) ←違う |
電荷を2倍にすると力は \(2\times2=4\) 倍になりますが、\(k=Fr^2/(q_Aq_B)\) は分子分母がともに4倍になるので\(k\) は変わりません。(b)も電荷の「比」だけで決まるので、両方を2倍しても釣り合い位置は同一です。
⚠️ よくある間違い
3回とも答えの数値は (a) \(9\times10^9\)、(b) 0.124 m でまったく同じです。それなのに令和7年度上期だけ番号が (4)(4) から (3)(5) に変わっています。「番号で覚える」勉強法が破綻する、これ以上ないほど明確な実例です。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成20年度B問題17/【理論】令和7年度上期B問題17
まとめ
| (a)比例定数 k | 9×109 …(4) |
| Cの電荷(A接触後) | 1×10-8C |
| Cの電荷(B接触後) | 2×10-8C |
| (b)釣合い位置 x | 0.3/(1+√2)≒0.124m …(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同型の関連問題:【理論】令和7年度上期B問題17

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