今回は令和7年度下期 理論科目 A問題8を解説します。R1=20 Ωを直列に、C・L・R2=30 Ωを並列に接続した回路で、実効値Vを一定に保ったまま周波数を10 Hzから10 MHzへ変えたときのR1電流の比I10Hz/I10MHzを求めます。
10 HzではCとLのアドミタンスの虚数成分が打ち消し合います。ただしC・L・R2全体が開放になるのではなく、並列部にはR2が残るため合成インピーダンスは30 Ωです。10 MHzではC枝のアドミタンスが支配的になり、並列部は約5 µΩまで小さくなります。
令和7年度下期 理論科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題8
電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 令和7年度下期 A問題8
図のように、R1=20ΩとR2=30Ωの抵抗、静電容量C=1/(100π)〔F〕のコンデンサ、インダクタンスL=1/(4π)〔H〕のコイルからなる回路に周波数f〔Hz〕で実効値V〔V〕が一定の交流電圧を加えた。f=10HzのときにR1を流れる電流の大きさをI10Hz〔A〕、f=10MHzのときにR1を流れる電流の大きさをI10MHz〔A〕とする。このとき、電流比I10Hz/I10MHzの値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)2.5 (2)1.7 (3)1.0 (4)0.6 (5)0.4

出題のポイント:極端な周波数では \(L\) と \(C\) が「消える」
10 Hzと10 MHz——100万倍も離れた2つの周波数で比べさせる問題です。これだけ離れていれば、コイルとコンデンサは極端な振る舞いをします。
回路は \(R_1=20\ \Omega\) が直列、その先に \(C\)・\(L\)・\(R_2=30\ \Omega\) の3枝が並列という構成です。並列部のインピーダンス \(\dot Z_p\) さえ分かれば、全体は \(R_1+\dot Z_p\) です。
電源電圧 \(V\) は両方の条件で同じなので、電流比を取れば \(V\) が消えます。求めるのはインピーダンスの比の逆数——\(\dfrac{I_{10\mathrm{Hz}}}{I_{10\mathrm{MHz}}}=\dfrac{|\dot Z_{10\mathrm{MHz}}|}{|\dot Z_{10\mathrm{Hz}}|}\) です。

解説:10 Hzは「ちょうど並列共振」
並列共振!
並列部は \(R_2\) だけ
\(X_L=X_C=5\ \Omega\) がぴたりと一致します。これは偶然ではなく、共振周波数が \(f_0=\dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}=10\ \mathrm{Hz}\) になるよう素子値が仕組まれているからです。
並列共振では \(L\) と \(C\) のアドミタンスが相殺して開放と同じになります。電流の逃げ道がなくなり、\(R_2\) だけを通る——並列部のインピーダンスは最大の30 Ωです。
5 µΩ
5 MΩ
\(R_1\) だけ
10 MHzでは \(C\) が5 µΩという極小のインピーダンスになります。\(R_2=30\ \Omega\) や \(L\) の5 MΩと並列なので、電流はすべて \(C\) を通る——並列部は事実上の短絡です。



誤答の正体:比の向きと \(R_1\) の扱い
| 選択肢 | 値 | どんな誤りか |
| (1) | 2.5 | 比を逆に取った(\(50/20\)) |
| (2) | 1.7 | \(50/30\)——\(R_1\) と \(R_2\) を取り違える |
| (3) | 1.0 | 「どちらもLCが消えるから同じ」と誤る |
| (4) | 0.6 | \(30/50\)——\(R_1\) を足し忘れる |
| (5) | 0.4 | 正解 |
最も多いのが(1)2.5——比を逆に取る誤りです。問われているのは \(I_{10\mathrm{Hz}}/I_{10\mathrm{MHz}}\)で、インピーダンスが大きい10 Hzのほうが電流は小さい——だから比は1より小さくなります。
(3)1.0も危険です。「両方ともLCが効かないなら同じでは?」と考えてしまう——ところが10 Hzでは \(R_2\) が残り、10 MHzでは \(R_2\) が短絡でバイパスされるので、まったく違う値になります。
⚠️ よくある間違い
並列共振は「開放」、直列共振は「短絡」です。10 Hzで \(L\) と \(C\) が消えるのは「開放になって電流が流れない」から——短絡と勘違いすると \(R_2\) までゼロにしてしまいます。
☝️ ひっかけの作り方:10 MHzで \(C\) が短絡すると \(R_2\) も \(L\) も無関係になります。「並列に何かがあるのに無視していいのか」と迷うかもしれませんが、5 µΩと30 Ωの並列は、ほぼ5 µΩ——桁が6つ違えば無視して構いません。
深掘り①:周波数を変えると回路はどう見えるか
同じ回路でも、周波数によって「見える形」が変わります。3つの領域に分けて整理しておきましょう。
| 周波数 | \(C\) の状態 | \(L\) の状態 | 並列部 | 全体 |
| 直流〜低周波 | 開放 | 短絡 | 0 Ω | 20 Ω |
| 10 Hz(共振点) | 5 Ω | 5 Ω | 30 Ω(最大) | 50 Ω |
| 高周波 | 短絡 | 開放 | 0 Ω | 20 Ω |
共振点だけが特異点です。低周波側でも高周波側でも、並列部は短絡されて全体は20 Ω——共振点でだけインピーダンスが跳ね上がって50 Ωになります。
この性質を利用したのが「帯域除去フィルタ」です。特定の周波数だけ電流を通しにくくする——ノイズ除去などに使われます。
深掘り②:数値を入れて電流を追ってみる
\(V=100\ \mathrm{V}\) と仮定して、各枝の電流を実際に計算してみましょう。相殺のしくみが見えてきます。
逆向きで相殺
電源電流と同じ
\(L\) と \(C\) の枝には12 Aずつ流れているのに、電源から見ると2 Aしか流れていません。12 Aは \(L\) と \(C\) の間をぐるぐる回っているだけ——これが並列共振の「循環電流」です。
電力も検算できます。\(R_1\) で \(2^{2}\times20=80\ \mathrm{W}\)、\(R_2\) で \(2^{2}\times30=120\ \mathrm{W}\)、合計200 W——電源が供給する \(100\times2=200\ \mathrm{W}\) と一致します。
10 MHzでは電流が \(100/20=5\ \mathrm{A}\) に増えます。並列部が短絡されて \(R_2\) の30 Ωが消えるためです。\(2/5=0.4\)——選択肢(5)が確かめられます。
深掘り③:\(f_0\) を先に計算しておくと見通しが立つ
素子値が \(\pi\) を含む分数で与えられているときは、共振周波数を先に計算しておくと全体が見通せます。
\(\pi^{2}\) が出る
問題の10 Hzと一致
\(\pi\) がきれいに約分されて10 Hzが出ます。問題文の「10 Hz」がまさに共振点だと分かれば、\(L\) と \(C\) が相殺することが即座に見抜けます。
素子値に \(\pi\) が入っているのは、共振周波数をきれいな値にするためです。\(C=1/(100\pi)\)、\(L=1/(4\pi)\) という不自然な値には必ず意図があります。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(\pi\) を含む素子値を見たら \(f_0\) を計算——共振点が問題の周波数と一致することが多い。
❷ 極端な周波数では \(L\) と \(C\) を「開放・短絡」に置き換える——計算せずに回路が単純化する。
❸ 電流比は インピーダンス比の逆数——分母分子を取り違えない。
❹ 並列共振=開放、直列共振=短絡——ここを混同すると全部ずれる。
💡 覚え方
「電流の比=インピーダンスの逆比」——同じ電圧なら、抵抗が大きいほうが電流は小さいという当たり前の関係です。10 Hzのほうがインピーダンス50 Ωと大きいので、電流は小さく、比は1未満——これだけで(1)(2)(3)が消えます。
出題履歴:周波数の極端な比較は近年の流行
「低周波と高周波を比べる」出題は、\(L\) と \(C\) の周波数特性を理解しているかを問うものです。細かい計算より、極限での振る舞いを把握しているかが決め手になります。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成30年度A問題9(並列共振で電源電流が最小)/【理論】令和6年度下期A問題9(周波数を変えたときの電流)
まとめ
| 並列部 | Yp=1/R2+j(ωC−1/ωL) |
| 10 Hz | Zp=30 Ω、I10Hz=V/50 |
| 10 MHz | |Zp|≈5 µΩ、I10MHz≈V/20 |
| 電流比 | (V/50)/(V/20)=0.4 |
| 令和7年度下期の答え | (5) |
問題文・回路・数値・選択肢は試験センター公式問題PDF(理論 問8)、正答(5)は公式解答PDFで照合しました。
▼あわせて解きたい関連問題
・共振・周波数特性の関連問題:【理論】令和5年度下期A問題8

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