今回は令和7年度上期 理論科目 A問題8を解説します。電流i(t)=4√2 sin(120πt) Aが、t=0以降に初めて4 Aになる時刻t₁を求めます。同じ4 Aになる時刻が1周期に2回あるため、「最初」という条件まで確認することが大切です。
瞬時値の式へ4 Aを代入するとsin(120πt)=1/√2です。最初の位相π/4から時刻を求め、周期T=1/60 sによる別解、全選択肢の代入、波形の傾きでも検算します。
令和7年度上期 理論科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題8
電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 令和7年度上期 A問題8
ある回路に、i=4√2 sin120πt〔A〕の電流が流れている。この電流の瞬時値が、時刻t=0s以降に初めて4Aとなるのは、時刻t=t₁〔s〕である。t₁〔s〕の値として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)1/120 (2)1/160 (3)1/240 (4)1/360 (5)1/480
出題のポイント:\(4\sqrt2\) は最大値、\(4\) は実効値
\(i=4\sqrt2\sin120\pi t\) という式で、\(4\sqrt2\) が最大値です。実効値はこれを \(\sqrt2\) で割った \(4\ \mathrm{A}\)——つまり問題が聞いている「4 A」は、実効値と同じ数値の瞬時値です。
瞬時値が実効値と等しくなる瞬間を求めよ、という問題だと読み替えられます。\(\sin\) の値が \(1/\sqrt2\) になるとき——角度でいえば45°です。
「初めて」という条件が付いているのを見逃さないでください。\(\sin\) の値が \(1/\sqrt2\) になる角度は45°だけではありません——135°でも同じ値になります。最初に到達するのは45°のほうです。

解説:角度を求めてから時間に直す
\(4/(4\sqrt2)=1/\sqrt2\)
45°
\(1/480\ \mathrm{s}\)
❸で \(\pi\) がきれいに約分されます。\(\dfrac{1}{4}\div120=\dfrac{1}{480}\)——電卓なしで暗算できる形です。
周期で確認すると分かりやすいです。\(f=60\ \mathrm{Hz}\)、\(T=1/60\ \mathrm{s}\)——\(1/480=T/8\)、つまり1周期の8分の1です。1周期が360°なので、その1/8は45°——ぴたりと合います。



誤答の正体:(2)は「2回目」の時刻
本問は選択肢を代入して検算するのが速いです。各選択肢の時刻で電流がいくらになるかを並べてみましょう。
| 選択肢 | \(t\)〔s〕 | 角度 \(120\pi t\) | \(i=4\sqrt2\sin\)〔A〕 | 判定 |
| (1) | \(1/120\) | 180° | 0 | × |
| (2) | \(1/160\) | 135° | 4 | △(2回目) |
| (3) | \(1/240\) | 90° | \(4\sqrt2\fallingdotseq5.66\) | ×(最大値) |
| (4) | \(1/360\) | 60° | 4.90 | × |
| (5) | \(1/480\) | 45° | 4 | ◎(初めて) |
(2)の \(1/160\) でも電流はちょうど4 Aになります。ところが角度は135°で、45°より後——「初めて」という条件を満たしません。最も巧妙な引っかけです。
(3)の \(1/240\) は角度90°で、電流が最大値 \(4\sqrt2\fallingdotseq5.66\ \mathrm{A}\) になる時刻です。\(4\sqrt2\) と \(4\) を取り違えた人が選ぶようになっています。
☝️ ひっかけの作り方:「初めて」「最初に」という語には必ず反応してください。\(\sin\theta=1/\sqrt2\) の解は \(\theta=45^\circ,135^\circ,405^\circ,\ldots\) と無数にあります。最小の正の解を選ぶのが答えです。
⚠️ よくある間違い
\(4\sqrt2\) を実効値だと思ってしまうと、最大値は \(8\ \mathrm{A}\) となり、\(\sin=1/2\)、角度30°、\(t=1/720\)——選択肢にありません。\(\sin\) の前の係数は常に最大値です。
深掘り①:最大値・実効値・平均値を整理する
正弦波には3つの「代表値」があります。混同すると計算が丸ごと狂うので、関係を押さえておきましょう。
| 名称 | 記号 | 正弦波での値 | 意味 |
| 最大値 | \(I_m\) | \(I_m\) | 波形の頂点 |
| 実効値 | \(I\) | \(I_m/\sqrt2\fallingdotseq0.707I_m\) | 同じ熱を出す直流の値 |
| 平均値 | \(I_a\) | \(2I_m/\pi\fallingdotseq0.637I_m\) | 半周期の平均 |
実効値の定義は「二乗平均平方根」です。抵抗で消費される電力 \(i^{2}R\) の平均が \(I^{2}R\) になるように決められています——だから「同じ熱を出す直流の値」という意味になります。
\(\sqrt2\) の正体
\(\sin^{2}\theta\) の平均が \(1/2\) になるのは、\(\sin^{2}\theta=\dfrac{1-\cos2\theta}{2}\) と変形すれば分かります。\(\cos2\theta\) の平均はゼロなので、\(1/2\) だけが残ります。
「\(\sqrt2\) はどこから来たのか」が説明できるようになると、ひずみ波の実効値や計測分野の波形率・波高率も自然につながります。
深掘り②:位相と時間の変換に慣れる
交流の問題では「角度」と「時間」を行き来します。変換の関係を体に入れておくと、計算が速くなります。
| 角度 | 周期に対する割合 | 60 Hzでの時間 | \(i=4\sqrt2\sin\theta\) |
| 30° | \(T/12\) | 1/720 s | 2.83 A |
| 45° | \(T/8\) | 1/480 s | 4.00 A ★ |
| 60° | \(T/6\) | 1/360 s | 4.90 A |
| 90° | \(T/4\) | 1/240 s | 5.66 A(最大) |
| 135° | 3\(T/8\) | 1/160 s | 4.00 A |
| 180° | \(T/2\) | 1/120 s | 0 |
この表を見れば、5つの選択肢すべてが「特徴的な角度」に対応していることが分かります。作問者は角度を先に決めて、それを時間に直して選択肢にしたわけです。
逆に言えば、選択肢の分母(120・160・240・360・480)から角度を逆算するのが最速です。\(120\pi t=\theta\) より \(\theta=120\pi/480\times180/\pi=45^\circ\)——暗算で確かめられます。
深掘り③:\(\omega=120\pi\) が意味するもの
\(\omega=120\pi\) を見た瞬間に「60 Hzだ」と分かるようにしておきましょう。電験3種では50 Hzと60 Hzが頻出です。
| 周波数 | \(\omega=2\pi f\) | 数値 | 周期 |
| 50 Hz | \(100\pi\) | 約314 rad/s | 20 ms |
| 60 Hz | \(120\pi\) | 約377 rad/s | 約16.7 ms |
314と377という数字は、リアクタンスの計算で頻繁に出てきます。\(\omega L\) や \(1/(\omega C)\) を計算するとき、この2つは覚えておくと速いです。
本問では \(\pi\) が約分されて消えるので、314や377を使う必要はありません。\(\pi\) を残したまま計算するほうがきれい——数値に直すのは最後の最後という鉄則が生きる場面です。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(\sin\) の前の係数は最大値——実効値はその \(1/\sqrt2\)。
❷ 「初めて」に反応——\(\sin\theta=1/\sqrt2\) の解は45°と135°の2つある。
❸ \(\pi\) は約分される——数値に直さず分数のまま進める。
❹ 選択肢を代入して検算——本問は5秒で確かめられる。
💡 覚え方
「実効値と同じ瞬時値になるのは45°」——\(\sin45^\circ=1/\sqrt2\) だから当然です。1周期の1/8の時刻と覚えておけば、周波数が変わっても即答できます。
出題履歴:瞬時値と時刻の問題は基本の確認
瞬時値の式から時刻を求める問題は、交流の基礎が身についているかを問うものです。最大値と実効値の区別、角度と時間の変換——この2点さえ確実なら得点源になります。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和5年度下期A問題9(ひずみ波の電力と実効値)
まとめ
| 波形の定数 | Im=4√2 A、I=4 A、f=60 Hz、T=1/60 s |
| 目標値 | sin(120πt)=1/√2 |
| 1回目の位相 | 120πt₁=π/4(上昇中) |
| 2回目の位相 | 120πt=3π/4 → 1/160 s(下降中、条件外) |
| 令和7年度上期の答え | t₁=1/480 s=約2.083 ms …(5) |
問題文は試験センター公式問題PDF(理論 問8、印刷ページ-8-)、正答(5)は公式解答PDFで照合しました。
▼あわせて解きたい関連問題
・正弦波交流の瞬時値の関連問題:【理論】令和3年度A問題8

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