今回は令和5年度下期 理論科目 A問題11を解説します。FET(電界効果トランジスタ)の制御方式や分類、そして図記号が接合形のnチャネルかpチャネルかを判別する穴埋め問題です。
FETはゲート電圧で生じる電界で多数キャリヤを制御する素子で、接合形とMOS形に分類されます。図記号のゲート矢印の向きで、nチャネル(内向き)かpチャネル(外向き)かを見分けます。
令和5年度下期 理論科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 令和5年度下期 A問題11
FETは、半導体の中を移動する多数キャリヤを(ア)電圧により生じる電界によって制御する素子であり、接合形と(イ)形がある。上の図記号は接合形の(ウ)チャネルFETを示す。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) ゲート MOS n (2) ドレイン MSI p (3) ソース DIP n (4) ドレイン MOS p (5) ゲート DIP n

出題のポイント:FETの分類と図記号の矢印
FETの制御端子は「ゲート」——門を開け閉めするという意味です。電流の出入口はドレーンとソースで、制御はゲートが担当します。
(イ)は「接合形と対になる分類」を答えます。FETは接合形(JFET)とMOS形(MOSFET)の2種類——MSIやDIPはまったく別の分類です。
(ウ)は図記号の矢印の向きで決まります。矢印はpn接合の順方向(p→n)を表す——内向きならゲートがp形、チャネルがn形なのでnチャネルです。

解説:3つの空欄を順に埋める
| 空欄 | 答え | 根拠 |
| (ア) | ゲート | 電界を作って制御する端子。ドレーン・ソースは電流の出入口 |
| (イ) | MOS | FETは接合形とMOS形の2つに分類される |
| (ウ) | n | 矢印が内向き=ゲートがp形=チャネルがn形 |
(イ)の「MSI」は Medium Scale Integration(中規模集積)——ICの集積度の分類です。「DIP」は Dual In-line Package——ICのパッケージ形状で、どちらもFETの分類ではありません。
(ウ)の矢印の向きは「pn接合の順方向」と覚えます。ダイオードの記号と同じ考え方——矢印はp形からn形へ向きます。


誤答の正体:無関係な略語が紛れ込んでいる
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | 判定 |
| (1) | ゲート | MOS | n | ◎ |
| (2) | ドレイン | MSI | p | × |
| (3) | ソース | DIP | n | × |
| (4) | ドレイン | MOS | p | × |
| (5) | ゲート | DIP | n | ×((イ)だけ誤り) |
(5)が最も惜しい誤答です。(ア)(ウ)は正しいのに、(イ)が「DIP」——パッケージの名前をFETの分類だと思ってしまったケースです。
(ア)で「ドレイン」「ソース」を選ばないでください。この2つは電流が出入りする端子——制御するのはゲートです。水路にたとえれば、門がゲートです。
⚠️ よくある間違い
半導体分野は略語が多いので、元の英語を知っておくと判別できます。MOS=Metal-Oxide-Semiconductor(構造)、MSI=Medium Scale Integration(集積度)、DIP=Dual In-line Package(外形)——指しているものがまったく違います。
☝️ ひっかけの作り方:図記号の矢印は「チャネルの種類」を表すと覚えてください。内向き(ゲート→チャネル)ならnチャネル、外向き(チャネル→ゲート)ならpチャネルです。
深掘り①:FETの図記号を読み解く
FETの図記号は、矢印の向きと本数で種類が分かります。代表的なものを整理しておきましょう。
| 種類 | 矢印の向き | 縦線 | 特徴 |
| 接合形 nチャネル | 内向き(ゲート→チャネル) | 実線 | 本問の図記号 |
| 接合形 pチャネル | 外向き(チャネル→ゲート) | 実線 | — |
| MOS形(エンハンスメント) | 基板側の矢印 | 破線(3分割) | チャネルが最初はない |
| MOS形(デプレション) | 基板側の矢印 | 実線 | チャネルが最初からある |
MOS形は縦線が実線か破線かで区別します。破線=チャネルが途切れている=エンハンスメント形(ノーマリオフ)、実線=チャネルがつながっている=デプレション形(ノーマリオン)——絵が状態を表しています。
矢印の向きはどちらも「pn接合の順方向」です。接合形ではゲートとチャネルの間、MOS形では基板とチャネルの間——場所は違っても意味は同じです。
深掘り②:ゲート・ドレーン・ソースの役割
3つの端子の名前には、それぞれ意味があります。水の流れにたとえると分かりやすいです。
| 端子 | 英語 | 意味 | 役割 |
| ゲート(G) | gate | 門 | 電界でチャネルの幅・濃さを制御 |
| ドレーン(D) | drain | 排水口 | キャリヤの出口 |
| ソース(S) | source | 源 | キャリヤの供給源 |
「源から排水口へ流れるキャリヤを、門で調節する」——名前がそのまま動作を表しています。門は水を通さない(ゲート電流は流れない)のもイメージどおりです。
バイポーラトランジスタとの対応も押さえておきましょう。ゲート↔ベース、ドレーン↔コレクタ、ソース↔エミッタ——役割が対応しています。
深掘り③:接合形FETとMOSFETの構造の違い
「接合形」と「MOS形」を分けるのは、ゲートの作り方です。ここが違うだけで、性能が大きく変わります。
| 接合形FET(JFET) | MOSFET | |
| ゲートの構造 | pn接合(逆バイアスで使う) | 酸化膜(\(\mathrm{SiO_2}\))で絶縁 |
| ゲート電流 | わずかに流れる(逆方向漏れ電流) | ほぼ完全にゼロ |
| 入力インピーダンス | \(10^{8}\ \Omega\) 程度 | \(10^{14}\ \Omega\) 程度 |
| 静電気 | 比較的強い | 弱い(絶縁膜が破壊されやすい) |
| 主な用途 | アナログ・低雑音増幅 | IC・デジタル・パワー |
MOSFETのゲート酸化膜は非常に薄い(数 nm)ので、静電気で簡単に破壊されます。だから取り扱いには静電気対策が必須です。
逆に、絶縁されているからこそ入力インピーダンスが極めて高い——長所と短所は表裏一体です。
深掘り④:半導体分野の略語を整理する
(イ)で紛れ込んだMSI・DIPのように、半導体には似た略語が多いです。「何を分類しているのか」で整理しておきましょう。
| 分類の軸 | 略語 | 意味 |
| 素子の構造 | MOS | Metal-Oxide-Semiconductor |
| 集積度 | SSI/MSI/LSI/VLSI | Small/Medium/Large/Very Large Scale Integration |
| パッケージ | DIP/QFP/BGA | Dual In-line/Quad Flat/Ball Grid Array |
| 回路方式 | CMOS/TTL | Complementary MOS/Transistor-Transistor Logic |
「集積度」の略語には Integration が入っています。MSI・LSI・VLSI——SI が共通です。これに気づけば、FETの分類ではないと分かります。
「パッケージ」の略語には Package や外形の特徴が入ります。DIP は「2列のピン」——ICを基板に挿すときの形です。
⏱️ 本番での進め方
❶ FETの分類は「接合形」と「MOS形」——MSI・DIPは別の分類。
❷ 制御端子はゲート——ドレーン・ソースは電流の出入口。
❸ 図記号の矢印はpn接合の順方向——内向きならnチャネル。
❹ 略語は「何を分類しているか」で整理——構造・集積度・パッケージ。
💡 覚え方
「矢印はゲートからチャネルへ向かうならnチャネル」——ゲートがp形、チャネルがn形だからです。ダイオードの記号と同じで、矢印はp→n——これだけ覚えれば判定できます。
出題履歴:FETの基礎は頻出
FETの分類・端子名・図記号は、半導体分野で繰り返し問われます。図記号から種類を読み取る問題も出るので、矢印の向きの意味を必ず押さえておきましょう。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和6年度下期A問題11(FETの正誤問題)/【理論】令和4年度上期A問題11(接合形FETの動作)
まとめ
| (ア) | ゲート(電界で制御) |
| (イ) | MOS(接合形とMOS形) |
| (ウ) | n(矢印内向き) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・FETの分類(半導体3):【理論】令和6年度下期 A問題11

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