今回は令和元年度 理論科目 A問題8を解説します。交流電源Eaと直流電源Edが混在する回路で、電源を流れる電流Iの実効値〔A〕を求める問題です。
交流と直流が混在する回路は重ね合わせで解きます。交流分(コンデンサは通す)と直流分(コンデンサは開放)を別々に求め、最後に実効値I=√(I交流²+I直流²)で合成します。
令和元年度 理論科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、令和元年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題8
電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 令和元年度 A問題8
図の回路において、正弦波交流電源と直流電源を流れる電流Iの実効値〔A〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、Eaは交流電圧の実効値〔V〕(=100V)、Edは直流電圧の大きさ〔V〕(=100V)、Xcは正弦波交流電源に対するコンデンサの容量性リアクタンス(=10Ω)、Rは抵抗値(=10Ω)とする。
(1)10.0 (2)14.1 (3)17.3 (4)20.0 (5)40.0〔A〕

出題のポイント:交流と直流は別々に解いて、最後に2乗和で合成
交流電源と直流電源が混ざった回路は、重ね合わせの理で解きます。交流だけの回路と直流だけの回路を別々に計算し、最後に合成します。
合成のとき、単純に足してはいけません。周波数が違うので直交している——2乗和の平方根で合成します。ひずみ波の実効値と同じ考え方です。

交流分を求める
交流に対しては、コンデンサも電流を通します。\(R\) と \(X_C\) が並列になっているので、合成インピーダンスを計算します。
\(R=X_C=10\;\Omega\)
\(R=X_C\) のとき、並列合成インピーダンスは \(R/\sqrt2\) になります。2つの経路に同じだけ電流が流れ、90°ずれて合成される——だから \(\sqrt2\) 倍の電流です。
直流分を求める
直流に対しては、コンデンサは開放です。電流の通り道は \(R\) だけになります。
コンデンサは無関係
コンデンサは充電が完了すれば電流を通しません。定常状態では開放と同じ——だから直流分は \(R\) だけで決まります。
2つを合成する
\(=10\sqrt3\)
\(\sqrt{300}=10\sqrt3=17.32\)——きれいな値になります。問題の数値が \(R=X_C=10\;\Omega\)、\(E_a=E_d=100\;\mathrm{V}\) とそろえてあるのは、この形にするためです。



誤答の正体:合成の仕方と、交流分の計算
| 誤り方 | 計算 | 値〔A〕 | 選択肢 |
| 直流分だけ | \(100/10\) | 10.0 | (1) |
| 交流分だけ | \(100/7.07\) | 14.1 | (2) |
| 交流分も10 A として合成 | \(\sqrt{100+100}\) | 14.1 | (2) |
| 単純に足す | \(14.14+10\) | 24.1 | 選択肢になし |
| 正しい計算 | \(\sqrt{200+100}\) | 17.3 | (3) ◎ |
(2)の14.1 には2通りの到達経路があります。「交流分だけを答えた」場合と、「交流分も10 A と誤って合成した」場合——どちらも同じ値になるのが厄介です。
交流側は \(R\) と \(X_C\) の並列なので、電流は \(R\) だけのときより多く流れます。\(10\;\mathrm{A}\) ではなく \(14.14\;\mathrm{A}\)——ここを見落とすと(2)に着地します。
⚠️ よくある間違い
交流分と直流分を単純に足すのは誤りです。周波数が違う成分は直交しているので、2乗和の平方根で合成します。24.1 A という値は選択肢にないので、そこで気づけるはずです。
深掘り①:なぜ2乗和の平方根なのか
実効値の定義に戻ると分かります。実効値は「2乗の平均の平方根」です。交流分と直流分を足した波形を2乗して平均してみましょう。
交流+直流
交差項が出る
交差項は消える
交差項に含まれる \(\sin\omega t\) の平均はゼロです。だから交流分と直流分の2乗だけが残ります——これが2乗和の平方根になる理由です。
同じ理屈がひずみ波にも当てはまります。基本波と高調波、直流分——すべて周波数が違えば直交し、実効値は2乗和の平方根になります。
深掘り②:コンデンサの「直流を通さない」性質の使い道
コンデンサが直流を通さない性質は、実務で広く使われています。
| 用途 | 働き |
| 結合コンデンサ(カップリング) | 直流分を除いて交流信号だけを次段へ渡す |
| 平滑コンデンサ | 交流分(リプル)をバイパスして直流を残す |
| 直流阻止 | 測定器の入力で直流成分を切る(AC結合) |
本問の回路も「直流と交流を分ける」構造になっています。コンデンサ側には交流だけ、抵抗側には両方が流れる——電流の内訳を考えると面白い回路です。
オシロスコープの「AC結合」も同じ原理です。入力に直列にコンデンサを入れて直流成分をカットし、小さな交流変動だけを拡大して観測できるようにしています。
💡 覚え方
「コンデンサは交流を通し、コイルは直流を通す」——正反対の性質です。この2つを組み合わせると、周波数で信号を分けられます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 交流分と直流分を別々に解く。重ね合わせの理。
❷ 直流ではコンデンサは開放。抵抗だけの回路になる。
❸ 合成は2乗和の平方根。単純に足さない。
❹ 交流側の回路構成を確認する。並列なら電流が増える。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 交流分 | √(102+102)=14.1A |
| 直流分 | 100/10=10A(C開放) |
| 合成 | √(14.12+102) |
| 答え | √300≒17.3A …(3) |
問題文・回路図・選択肢は試験センター公式問題PDF(理論 問8)、正答(3)は公式解答PDFで確認しています。
▼あわせて解きたい関連問題
・重ね合わせ・実効値の関連問題:【理論】令和4年度下期A問題8

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