今回は平成26年度 理論科目 A問題8を解説します。Cと(1Hのコイル・100Ωの抵抗の直列)の並列回路で、電源電流Iが最小となるようにCを調整したときの回路の力率を求める問題です。
電源電流が最小になるのは並列共振の状態です。このとき回路のアドミタンスの虚部が0になり、電源から見て純抵抗的になります。純抵抗なら力率は1です。
平成26年度 理論科目 A問題8:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問8)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・回路図・選択肢は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成26年度 A問題8
図の交流回路において、電源を流れる電流I〔A〕の大きさが最小となるように静電容量C〔F〕の値を調整した。このときの回路の力率の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.11 (2)0.50 (3)0.71 (4)0.87 (5)1

出題のポイント:「電源電流が最小」=並列共振=力率1
計算はほとんど不要な問題です。「電源を流れる電流が最小になるように調整した」という一文が、そのまま並列共振を意味しています。
並列共振では、回路全体のアドミタンスの虚部がゼロになります。電源から見ると純抵抗(純コンダクタンス)に見えるので、電圧と電流が同相=力率は1です。

なぜ電流最小と力率1が同じことなのか
アドミタンスを実部と虚部に分けて考えます。\(\dot Y=G+jB\) とすると、大きさは \(|\dot Y|=\sqrt{G^2+B^2}\) です。
\(G\) は \(C\) を変えても変わらない
\(B^2\ge0\) なので、\(B=0\) のとき最小
完全に同相
\(C\) を変えても、RL直列部分のコンダクタンス \(G\) は変わりません。変わるのは虚部 \(B\) だけ——だから \(B\) をゼロにしたときが最小になります。
この論法は「\(\sqrt{G^2+B^2}\) を最小にするには \(B=0\)」という中学レベルの話です。難しい計算は一切要りません。


直列共振との違いを整理する
| 直列共振 | 並列共振 | |
| 条件 | \(\omega L=\dfrac{1}{\omega C}\)(リアクタンスが等しい) | アドミタンスの虚部がゼロ |
| インピーダンス | 最小(=\(R\)) | 最大 |
| 電流 | 最大 | 最小 |
| 力率 | 1 | 1 |
| 別名 | 電圧共振 | 電流共振 |
直列共振では電流が最大、並列共振では電流が最小——正反対です。力率がどちらも1になる点は共通ですが、電流の挙動を取り違えると別の問題で失点します。
本問は「並列」の回路なので、電流最小=共振です。回路図を見て、直列か並列かを最初に確認してください。
⚠️ よくある間違い
力率を0.71(=\(1/\sqrt2\))と考えてしまう誤りがあります。これは位相差45°のときの値で、共振とは無関係です。共振なら位相差ゼロ=力率1——選択肢(3)は、この混同を狙った肢です。
💡 覚え方
「共振=同相=力率1」——直列でも並列でも、共振していれば力率は必ず1です。共振という言葉を見たら、力率を聞かれている問題は即答できます。
実務での意味:進相コンデンサによる力率改善
この回路は「力率改善」の原理そのものです。工場やビルの負荷は、電動機など誘導性のものが多く、力率が0.8前後まで下がります。
そこで負荷と並列にコンデンサを入れると、誘導性の無効電力を容量性の無効電力が打ち消し、力率が1に近づきます。本問の \(C\) がまさにこの役割です。
| 力率改善前 | 力率改善後 | |
| 力率 | 0.8 程度 | 0.95〜1.0 |
| 同じ電力を送るのに必要な電流 | 多い | 少ない |
| 線路の損失 \(I^2R\) | 大きい | 小さい |
| 電気料金 | 力率割増 | 力率割引 |
電流が減れば、線路の損失 \(I^2R\) も減ります。電力会社が力率に応じて料金を割り引くのは、設備を効率よく使えるからです。理論科目のこの1問が、法規や電力科目の力率改善の計算につながっています。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「電流最小」を見たら共振を疑う。並列回路なら並列共振。
❷ 共振なら力率1。計算せずに答えが決まる。
❸ 直列と並列で電流の挙動が逆。直列共振は電流最大。
❹ 0.71 は位相差45°の値。共振とは無関係なので選ばない。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
深掘り:共振周波数を実際に計算してみる
本問は力率だけを聞いていますが、実際に共振する静電容量を求めることもできます。電源の角周波数を \(\omega\) として、アドミタンスの虚部をゼロにする条件を書いてみましょう。
共役複素数を掛ける
これが共振条件
抵抗 \(R\) が入っているぶん、単純な \(C=1/(\omega^2L)\) にはなりません。抵抗のないLC並列回路なら \(\omega=1/\sqrt{LC}\) ですが、コイルに抵抗が直列に入ると条件がずれます。
ただし \(\omega L\gg R\) のとき(=コイルの品質がよいとき)は、\(C\approx1/(\omega^2L)\) に近づきます。実際のコイルは抵抗が小さいので、多くの場合この近似で足ります。
共振時の電流はどこを流れているのか
電源から流れる電流は最小になりますが、コイルとコンデンサの間には大きな電流が循環しています。外から見えないだけです。
| 共振時の状態 | |
| 電源から流れる電流 | 最小(コンダクタンス分のみ) |
| コイルを流れる電流 | 大きい(\(E/|R+j\omega L|\)) |
| コンデンサを流れる電流 | 大きい(\(\omega CE\)) |
| 両者の関係 | 虚部が打ち消し合い、外から見ると消える |
この「内部で循環する電流」が、力率改善用コンデンサの働きそのものです。コンデンサが供給する進み無効電流が、負荷が必要とする遅れ無効電流を肩代わりする——その結果、電源側の線路には無効分が流れなくなります。
💡 覚え方
「無効電力は電源まで運ばず、近くで供給する」——これが力率改善の考え方です。本問の \(C\) は、まさにその役割を果たしています。
まとめ
| 電流 | I=V|Y| |
| 最小条件 | 虚部=0(並列共振) |
| 回路 | 純抵抗的(電圧電流同相) |
| 答え | 力率=1 …(5) |
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