単相交流38【電験3種 理論】交流回路の基本記述の正誤を判定する!平成26年度 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(単相交流) 平成26年度 A問題10 実効値・位相・力率の基本!記述の正誤を判定

今回は平成26年度 理論科目 A問題10を解説します。交流回路に関する5つの記述(平均値・周期・位相・共振・力率)のうち、誤っているものを選ぶ問題です。

平均値・周期・位相・共振の記述は正しく、力率の定義がポイントです。力率cosθは有効電力Pを皮相電力Sで割った値(P/S)であり、S/Pではありません。

目次

平成26年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問10)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像と5つの記述は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 単相交流 平成26年度 A問題10 問題文
平成26年度 理論科目 A問題10 問題文

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成26年度 A問題10

 交流回路に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、抵抗R〔Ω〕、インダクタンスL〔H〕、静電容量C〔F〕とする。

(1)正弦波交流起電力の最大値をEm、平均値をEaとすると、Ea=2Em/π≒0.637Emと表される。

(2)ある交流起電力の瞬時値がe=100sin100πt〔V〕であるとすると、この起電力の周期は20msである。

(3)RLC直列回路にωの交流電圧を加えたとき、ωL>1/(ωC)なら電流の位相は電圧より遅れ、ωL<1/(ωC)なら進む。

(4)RLC直列回路でωL=1/(ωC)のとき、Z=Rとなり電圧と電流は同相になる(共振状態)。

(5)RLC直列回路のインピーダンスZ、電力P、皮相電力Sを使うと、力率cosθ=R/Z、cosθ=S/Pの関係がある。

出題のポイント:力率は \(P/S\)。\(S/P\) では1を超えてしまう

誤りは(5)の後半です。\(\cos\theta=R/Z\) は正しいのですが、\(\cos\theta=S/P\) は逆——正しくは \(\cos\theta=P/S\) です。

定義域からしてあり得ないことに気づけます。\(\cos\theta\) は0以上1以下ですが、\(S\ge P\) なので \(S/P\) は必ず1以上になります。1を超える力率は存在しません

力率の定義
$$\cos\theta=\frac{P}{S}=\frac{\text{有効電力}}{\text{皮相電力}}=\frac{R}{|\dot Z|}\qquad(0\le\cos\theta\le1)$$

「実際に使えた割合」と考えると分かりやすいです。送った電力(\(S\))のうち、仕事をした分(\(P\))の割合——割合なので1を超えません

平成26年度理論問10の出題ポイント。平均値、周期、位相、共振の記述を正しいと判定し、力率をS/Pとする5を誤りとして正答5を示す図
(1)〜(4)は正しく、力率の分子と分母を逆にした(5)が誤りです。

各記述の判定

記述の内容判定根拠
(1)平均値 \(E_a=2E_m/\pi\approx0.637E_m\)◎ 正しい正弦波の半周期平均
(2)\(e=100\sin100\pi t\) の周期は20 ms◎ 正しい\(T=2\pi/\omega=2\pi/100\pi=0.02\;\mathrm{s}\)
(3)\(\omega L>1/\omega C\) なら電流は遅れる◎ 正しい誘導性なら電流が遅れる
(4)\(\omega L=1/\omega C\) なら \(Z=R\) で同相◎ 正しい直列共振の定義
(5)\(\cos\theta=R/Z\)、\(\cos\theta=S/P\)× 誤り後半が逆。正しくは \(P/S\)

(1)の 0.637 は「平均値」です。実効値の 0.707 と混同しないでください平均値は \(2E_m/\pi\)、実効値は \(E_m/\sqrt2\)——どちらも0.6〜0.7台で紛らわしいので、値だけでなく式で覚えることをおすすめします。

(2)は \(\omega=100\pi\) から周波数50 Hzと分かります。周期は \(1/50=0.02\;\mathrm{s}=20\;\mathrm{ms}\)——日本の東日本の商用周波数です。

力率cosθ=P/S=R/Z、有効電力P、皮相電力Sを電力三角形で示し、S/Pが誤りであることを説明するポイント解説図
力率は有効電力Pを皮相電力Sで割った値で、0〜1の範囲です。
答え誤っているのは 選択肢(5) (力率は \(P/S\)、\(S/P\) ではない)
平成26年度理論問10の問題解説。5記述を段階的に正誤判定し、cosθ=S/Pだけを誤りとして答え5を示す図
正しくはcosθ=P/Sなので、誤っている記述は(5)です。

正弦波の3つの値を整理する

(1)で登場した平均値は、実効値・最大値と混同しやすい量です。3つまとめて整理しておきましょう。

\(E_m\) に対する比どこで使うか
最大値 \(E_m\)1.000波形の頂点。絶縁設計
実効値 \(E\)\(E_m/\sqrt2\)0.707電圧計・電流計の指示値
平均値 \(E_a\)\(2E_m/\pi\)0.637整流回路の直流出力

「交流100 V」と言うときの100 V は実効値です。最大値は \(100\sqrt2\approx141\;\mathrm{V}\)——絶縁を設計するときはこちらを使います

平均値が使われるのは整流回路です。全波整流した波形を平滑せずに直流として使うと、その値は平均値になります。機械科目のパワーエレクトロニクスで必ず出てきます

定義正弦波での値
波形率実効値 ÷ 平均値\(0.707/0.637=1.11\)
波高率最大値 ÷ 実効値\(1/0.707=1.414=\sqrt2\)

波形率1.11、波高率1.41——正弦波を特徴づける2つの数字です。波形がひずむとこれらの値が変わるので、波形の判別に使えます

(3)の「遅れる・進む」を確実に覚える

誘導性か容量性かで、電流の位相が変わりますここは符号を間違えやすいので、覚え方を決めておくのが有効です。

条件回路の性質電流の位相力率
\(\omega L>1/\omega C\)誘導性電圧より遅れる遅れ力率
\(\omega L=1/\omega C\)共振(純抵抗)同相1
\(\omega L<1/\omega C\)容量性電圧より進む進み力率

💡 覚え方
「コイルは電流が遅れる、コンデンサは電流が進む」——コイルは電流の変化を嫌がる(=立ち上がりが遅い)、コンデンサは電圧が上がる前に電流が流れ込むとイメージすると腑に落ちます。「ELI the ICE man」(L では E が I より先、C では I が E より先)という語呂もよく使われます。

⏱️ 本番での進め方
❶ 力率は必ず1以下。\(S/P\) は1以上なのであり得ない。
❷ 平均値0.637と実効値0.707を区別する。式で覚える。
❸ \(\omega=100\pi\) は50 Hz、\(120\pi\) は60 Hz。
❹ 「誤っているもの」を選ぶ問題。正しい記述に印をつけて消していく。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

深掘り:平均値が \(2E_m/\pi\) になる理由

(1)で出てきた \(0.637E_m\) という値は、積分から出てきます正弦波の半周期にわたって平均を取ると、この値になります。

$$E_a=\frac{1}{\pi}\int_0^{\pi}E_m\sin\theta\,d\theta$$
❶ 半周期の平均
1周期だとゼロになるので半周期
$$=\frac{E_m}{\pi}\Bigl[-\cos\theta\Bigr]_0^{\pi}=\frac{E_m}{\pi}(1+1)=\frac{2E_m}{\pi}$$
❷ 積分を実行
\(\approx0.637E_m\)

1周期で平均すると、正の半周期と負の半周期が打ち消し合ってゼロになります。だから「平均値」というときは半周期(または全波整流した波形)の平均を指します。

実効値も同じように積分から出ます\(E=\sqrt{\dfrac{1}{2\pi}\displaystyle\int_0^{2\pi}(E_m\sin\theta)^2d\theta}=\dfrac{E_m}{\sqrt2}\)——2乗してから平均し、平方根を取るので RMS(Root Mean Square)と呼ばれます。

なぜ実効値を使うのか

実効値は「同じ熱を発生させる直流の値」として定義されています。抵抗に流したとき、同じ発熱をもたらす直流電流の大きさ——それが実効値です。

$$\overline{i^2R}=I^2R\;\Longrightarrow\;I=\sqrt{\overline{i^2}}$$
実効値の定義
電力は電流の2乗に比例するので、2乗の平均を取る

電力が電流の2乗に比例するため、単純な平均では意味を持ちません2乗の平均の平方根=実効値なら、そのまま \(P=I^2R\) に代入できます

波形実効値/最大値平均値/最大値波形率
正弦波0.7070.6371.11
方形波1.0001.0001.00
三角波0.5770.5001.15

波形が変わると、実効値と平均値の比(波形率)も変わります可動鉄片形の電流計は実効値を、整流形の計器は平均値を測ります——整流形は正弦波の波形率1.11 を掛けて実効値目盛りにしてあるので、ひずみ波では誤差が出ます

💡 覚え方
「実効値は熱、平均値は整流出力」——用途で覚えると混同しません。電圧計・電流計が示すのは実効値整流回路の直流出力は平均値です。

まとめ

(1)平均値2Em/π→正しい
(2)周期20ms→正しい
(4)共振Z=R→正しい
答え(5)cosθ=S/Pは誤り

▼あわせて解きたい関連問題
・交流電力・力率の関連問題:【理論】平成27年度A問題8

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