今回は平成25年度 理論科目 A問題10を解説します。L・C・Rの直列回路に周波数f・実効値V(≠0)の電源を加えたとき、抵抗の端子電圧の実効値VRが零となる周波数fの条件をすべて列挙する問題です。
VR=I·Rなので、VR=0は電流I=0を意味します。I=V/|Z|でV≠0だから、I=0にはインピーダンス|Z|が無限大になる必要があります。どんな周波数で|Z|が∞になるかを考えます。
平成25年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問10)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・回路図・選択肢は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成25年度 A問題10
図は、インダクタンスL〔H〕のコイルと静電容量C〔F〕のコンデンサ、並びにR〔Ω〕の抵抗の直列回路に、周波数がf〔Hz〕で実効値がV(≠0)〔V〕である電源電圧を与えた回路を示している。この回路において、抵抗の端子間電圧の実効値VR〔V〕が零となる周波数f〔Hz〕の条件を全て列挙したものとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)題意を満たす周波数はない (2)f=0 (3)f=1/(2π√(LC)) (4)f=0, f→∞ (5)f=1/(2π√(LC)), f→∞

出題のポイント:\(V_R=0\) は「電流ゼロ」——共振とは真逆
\(V_R=IR\) なので、\(V_R=0\) は \(I=0\) を意味します。電源電圧はゼロでないので、電流をゼロにするにはインピーダンスが無限大になるしかありません。
ここで共振周波数を答えてしまうのが最大の罠です。直列共振ではインピーダンスが最小になり、電流は最大——\(V_R\) も最大になります。聞かれているのと真逆です。

3つの特徴的な周波数を調べる
| 周波数 | 何が起きるか | \(|\dot Z|\) | \(V_R\) |
| \(f=0\)(直流) | \(1/(2\pi fC)\to\infty\)=コンデンサが開放 | ∞ | 0 ◎ |
| \(f=f_r\)(共振) | リアクタンスが打ち消し合う | \(R\)(最小) | 最大 × |
| \(f\to\infty\) | \(2\pi fL\to\infty\)=コイルが開放 | ∞ | 0 ◎ |
直流ではコンデンサが電流を通しません。コンデンサは「充電が終われば電流ゼロ」——これが \(f=0\) で \(V_R=0\) になる理由です。
周波数が無限に高くなると、今度はコイルが電流を通さなくなります。\(\omega L\) が無限大になるからです。コイルは高周波を通しにくいという性質そのものです。
両端で \(V_R=0\)、中間の共振点で \(V_R\) が最大——山型の特性になります。これが帯域フィルタ(バンドパスフィルタ)の原理です。


誤答の正体:共振周波数を答えてしまう
| 選択肢 | 判定 | 理由 | |
| (1) | 題意を満たす周波数はない | × | \(f=0\) と \(f\to\infty\) で満たす |
| (2) | \(f=0\) | × | \(f\to\infty\) が抜けている |
| (3) | \(f=1/(2\pi\sqrt{LC})\) | × | 共振周波数。\(V_R\) は最大になる(真逆) |
| (4) | \(f=0,\;f\to\infty\) | ◎ | 正解 |
| (5) | \(f=1/(2\pi\sqrt{LC}),\;f\to\infty\) | × | 共振周波数を含めてしまっている |
(3)と(5)は共振周波数を含んでいます。「LC回路と言えば共振周波数」という反射で選んでしまうのですが、本問が聞いているのは \(V_R\) が「零」になる条件です。
(2)は \(f=0\) だけ——「すべて列挙せよ」という問題文を読み落とすと、ここで止まってしまいます。両端を確認する習慣をつけてください。
⚠️ よくある間違い
「\(V_R\) が零」と「\(V_L\) や \(V_C\) が零」を混同しないでください。共振時に零になるのは \(V_L+V_C\)(合計)であって、\(V_R\) はむしろ電源電圧と等しくなります。
深掘り:この回路は帯域フィルタそのもの
抵抗の端子電圧を出力と考えると、この回路は「特定の周波数だけを通す」フィルタになります。
| 周波数 | \(V_R\)(出力) | フィルタとしての働き |
| 低い | 小さい | 低周波を遮断 |
| 共振周波数付近 | 最大(電源電圧に等しい) | 通過帯域 |
| 高い | 小さい | 高周波を遮断 |
共振周波数の周りだけを通し、その外は減衰させる——これが帯域フィルタ(バンドパスフィルタ)です。ラジオの同調回路は、この原理で特定の放送局だけを選び出しています。
通過する帯域の広さは \(R\) で決まります。\(R\) が小さいほど尖鋭度 \(Q=\omega_rL/R\) が高く、鋭く選択できます。\(R\) が大きいと山がなだらかになり、広い範囲の周波数を通します。
💡 覚え方
「直流はコンデンサが止め、高周波はコイルが止める」——この2つの性質を押さえておけば、両端で電流が流れないことが直感的に分かります。間の周波数だけが通り抜けるのです。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(V_R=0\) を \(I=0\) に読み替える。そこから \(|\dot Z|\to\infty\) を探す。
❷ 共振は \(V_R\) が最大。零ではない。ここが最大の罠。
❸ 両端を確認する。\(f=0\) と \(f\to\infty\) の両方。
❹ 「すべて列挙」を読み落とさない。片方だけで止まらない。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
\(V_L\) や \(V_C\) が零になる周波数も考えてみる
本問は \(V_R\) について聞いていますが、\(V_L\) や \(V_C\) についても同じように考えられます。比較しておくと理解が深まります。
| 求める電圧 | 零になる条件 | そのときの周波数 |
| \(V_R=IR\) | \(I=0\) | \(f=0\)、\(f\to\infty\) |
| \(V_L=I\omega L\) | \(I=0\) または \(\omega=0\) | \(f=0\) のみ |
| \(V_C=I/(\omega C)\) | \(I=0\) かつ \(\omega\ne0\) | \(f\to\infty\) のみ |
\(V_L\) は \(f=0\) で零になります。電流も零、\(\omega L\) も零だからです。ところが \(f\to\infty\) では、電流が零に近づく一方で \(\omega L\) が無限大に発散——積は有限値に収束します。
逆に \(V_C\) は \(f=0\) で電源電圧に等しくなります。直流ではコンデンサが電圧をすべて受け持つからです。\(f\to\infty\) では \(V_C\to0\) になります。
3つの電圧が周波数によってどう分配されるか——この視点を持つと、フィルタ回路の理解につながります。\(V_C\) を出力にすれば低域通過、\(V_L\) なら高域通過、\(V_R\) なら帯域通過フィルタになります。
同じ回路が3種類のフィルタになる
| 出力を取る場所 | 低周波 | 共振周波数付近 | 高周波 | フィルタの種類 |
| \(V_C\)(コンデンサ) | 大 | 中 | 小 | 低域通過(ローパス) |
| \(V_R\)(抵抗) | 小 | 大 | 小 | 帯域通過(バンドパス) |
| \(V_L\)(コイル) | 小 | 中 | 大 | 高域通過(ハイパス) |
まったく同じ回路でも、どこから出力を取るかで働きが変わります。本問が \(V_R\) を扱っているのは、帯域通過フィルタの特性を問うていると読むこともできます。
💡 覚え方
「コンデンサは低周波を通さないので、低周波では電圧が大きい」——通しにくい素子ほど電圧を多く負担すると考えると、3つの分配が直感的に分かります。
まとめ
| VR=0 | I=0=V/|Z|→|Z|=∞ |
| f=0 | 1/(ωC)→∞(C開放) |
| f→∞ | ωL→∞(L開放) |
| 答え | f=0, f→∞ …(4) |
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