今回は平成25年度 理論科目 A問題9を解説します。R・L・Cの並列回路に交流電圧vを加えたとき、電圧v̇と電流İのベクトル図(図2)と時間波形(図3)の正しい組合せを選ぶ問題です。ただしR≫ωL、ωL=2/(ωC)とします。
並列回路の電流はİ=V̇·Y、Y=1/R+j(ωC−1/(ωL))。条件からサセプタンス(虚部)の符号が容量性か誘導性かを調べ、R≫ωLで抵抗分の電流が無視できることを使って、ベクトルと波形を決めます。
平成25年度 理論科目 A問題9:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問9)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・回路図・選択図は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成25年度 A問題9
図1のように、R〔Ω〕の抵抗、インダクタンスL〔H〕のコイル、静電容量C〔F〕のコンデンサからなる並列回路がある。この回路に角周波数ω〔rad/s〕の交流電圧v〔V〕を加えたところ、この回路に流れる電流はi〔A〕であった。電圧v及び電流iのベクトルをそれぞれ電圧V̇、電流İとした場合、両ベクトルの関係を示す図2(ア、イ、ウ)及びv〔V〕とi〔A〕の時間変化を示す図3(エ、オ、カ)の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、R≫ωL 及び ωL=2/(ωC) とし、一切の過渡現象は無視するものとする。
図2 図3 (1) ア オ (2) ア カ (3) イ エ (4) ウ オ (5) ウ カ


出題のポイント:サセプタンスの符号で進み・遅れが決まる
並列回路のアドミタンスは \(\dot Y=1/R+j(\omega C-1/\omega L)\)。虚部(サセプタンス)の符号が正なら容量性=電流が進む、負なら誘導性=電流が遅れる—この判定が第一歩です。
与えられた条件 \(\omega L=2/(\omega C)\) を書き換えると \(\omega C=2/(\omega L)\) になります。これを代入すればサセプタンスの符号がすぐ分かります。

条件からサセプタンスの符号を出す
正=容量性
サセプタンスが正なので、この回路は容量性です。電流は電圧より進みます——これでベクトル図と波形の向きが決まりました。
数値で確かめると分かりやすいでしょう。\(\omega L=1\) とすると \(\omega C=2\)、\(1/(\omega L)=1\)——\(B=2-1=1>0\) です。コンデンサのほうが電流を多く流しているということになります。
\(R\gg\omega L\) の条件が意味すること
もう一つの条件 \(R\gg\omega L\) は、コンダクタンス \(1/R\) が小さいことを意味します。\(1/R\ll1/(\omega L)=B\) なので、アドミタンスはほぼ純虚数になります。
| \(R/(\omega L)\) | \(1/R\)(実部) | \(B\)(虚部) | 位相差 |
| 10 | 0.1 | 1 | 84° |
| 100 | 0.01 | 1 | 89° |
| 1000 | 0.001 | 1 | 89.9° |
\(R\) が大きいほど位相差は90°に近づきます。抵抗にはほとんど電流が流れず、ほぼコンデンサとコイルだけの回路とみなせるからです。
したがってベクトル図は「電流が電圧よりほぼ90°進んでいる」形になります。波形では、電流のピークが電圧のピークより約1/4周期だけ早く来ます。


ベクトル図と波形の対応を確認する
ベクトル図と波形は、同じ内容を別の形で表したものです。片方が決まれば、もう片方も自動的に決まります——整合していない組合せは除外できます。
| ベクトル図での様子 | 波形での様子 |
| \(\dot I\) が \(\dot V\) より反時計回りに先(上) | \(i\) のピークが \(v\) より時間的に早い(左) |
| 90°進み | 1/4周期ぶん早い |
| 同相 | ピークの位置が一致 |
「反時計回りに先=時間的に早い」——ベクトルは反時計回りに回転していると考えると納得できます。先に進んでいるベクトルは、先に基準位置を通過するからです。
波形問題では「どちらのピークが左にあるか」を見るのが確実です。電流のピークが左なら電流が進み——本問はこの形になります。
⚠️ よくある間違い
「進み」を「波形が上にある」と勘違いしないでください。進み・遅れは横軸(時間)方向のずれです。縦方向の大きさは振幅であって、位相とは無関係です。
深掘り①:条件文を式に翻訳する練習
本問のように、条件が言葉と式で与えられる問題では「翻訳」が鍵になります。与えられた条件を、使いやすい形に変形しておくのが定石です。
| 与えられた条件 | 翻訳した意味 | 使い方 |
| \(\omega L=2/(\omega C)\) | \(X_L=2X_C\) | \(\omega C=2/(\omega L)\) としてサセプタンスに代入 |
| \(R\gg\omega L\) | 抵抗の電流が無視できる | 位相差が90°に近い |
| 過渡現象は無視 | 定常状態のみ考える | フェーザで扱える |
\(\omega L=2/(\omega C)\) は「誘導性リアクタンスが容量性リアクタンスの2倍」という意味です。直列回路なら誘導性ですが、並列回路では逆——リアクタンスが小さいほうが電流を多く流すからです。
ここが並列回路の落とし穴です。\(X_L>X_C\) なのに容量性——直列の感覚をそのまま持ち込むと逆になります。
深掘り②:直列と並列で「性質」の判定が逆になる
| 直列回路 | 並列回路 | |
| 比べるもの | リアクタンスの大きさ | 電流の大きさ(=リアクタンスの逆数) |
| 誘導性になる条件 | \(X_L>X_C\) | \(X_L<X_C\) |
| 容量性になる条件 | \(X_L<X_C\) | \(X_L>X_C\) |
| 本問(\(X_L=2X_C\)) | 誘導性になるはず | 容量性 ◎ |
直列では「大きいリアクタンスが電圧を多く分担する」ので、大きいほうの性質が出ます。並列では「小さいリアクタンスが電流を多く流す」ので、小さいほうの性質が出ます——まったく逆です。
本問では \(X_L=2X_C\)、つまり \(X_C\) のほうが小さい——だからコンデンサに多くの電流が流れ、容量性になります。直列だと思い込むと誘導性と判断してしまい、答えが逆になります。
💡 覚え方
「直列は大きいほうが勝つ、並列は小さいほうが勝つ」——電圧を分担するか、電流を流すかの違いです。抵抗の分圧・分流と同じ理屈だと考えると腑に落ちます。
⏱️ 本番での進め方
❶ サセプタンスの符号を出す。正なら容量性=進み、負なら誘導性=遅れ。
❷ 条件を使いやすい形に変形する。\(\omega L=2/(\omega C)\;\to\;\omega C=2/(\omega L)\)。
❸ 並列では小さいリアクタンスが勝つ。直列の感覚を持ち込まない。
❹ ベクトル図と波形は整合する。片方が決まればもう片方も決まる。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| Y | 1/R+j(ωC−1/(ωL)) |
| サセプタンス | ωC−1/(ωL)=1/(ωL)>0 |
| 位相 | R≫ωLで電流π/2進み |
| 答え | ウ・カ …(5) |
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