過渡現象22【電験3種 理論】RL直列回路のスイッチ投入後の電流・電圧の変化を選ぶ!平成20年度 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 平成20年度 A問題10 RL直列にスイッチON!電流と電圧の変化はどれ?

今回は平成20年度 理論科目 A問題10を解説します。RL直列回路でスイッチを閉じた直後の、電流・抵抗の端子電圧・コイルの端子電圧の時間変化の組合せを選ぶ問題です。

投入直後はコイルが電流を妨げて電流0、時間とともにコイルが短絡に近づき電流はE/Rへ増加します。電流に伴い抵抗電圧は上昇、コイル電圧はEから低下します。

目次

平成20年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

言葉の組合せを選ぶ問題ですが、実は物理を考える前に3つの選択肢が構造だけで消せます。使うのはオームの法則とキルヒホッフの電圧則だけです。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 平成20年度 A問題10 問題文
平成20年度 理論科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成20年度 A問題10

 開いたスイッチS、抵抗R〔Ω〕、インダクタンスL〔H〕のコイル、直流電源E〔V〕からなる直列回路がある。スイッチSを閉じた直後の過渡現象において、回路に流れる電流、抵抗の端子電圧、コイルの端子電圧の時間的変化として正しい組合せを、次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

回路電流抵抗電圧コイル電圧
(1)大きくなる低下する上昇する
(2)小さくなる上昇する低下する
(3)大きくなる上昇する上昇する
(4)小さくなる低下する上昇する
(5)大きくなる上昇する低下する
図 E・S・R・LのRL直列回路(問題図・自作)
図 E・S・R・LのRL直列回路(問題図・自作)

出題のポイント:計算せずに、3つの選択肢を「構造」で消せる

この問題は言葉の組合せを選ぶだけですが、物理を考える前に、式の形だけで3つの選択肢が消せます。使うのは次の2つの制約です。

制約意味
① オームの法則\(v_R=iR\)電流と抵抗電圧は必ず同じ向きに動く(Rは定数)
② キルヒホッフの電圧則\(v_R+v_L=E\)和が一定だから、一方が上がれば他方は必ず下がる

この2つは回路の中身がどうであれ絶対に成り立つ関係です。過渡現象かどうかすら関係ありません。だからこそ、強力な足切り条件になります。

RL直列回路のスイッチ投入時について、電流、抵抗電圧、コイル電圧の初期値と最終値を回路図と表で説明
投入後、電流は0からE/R、抵抗電圧は0からEへ増え、コイル電圧はEから0へ減ります。

実際に3つ消してみる

5つの選択肢を、上の2つの制約に照らして機械的に判定しました。

選択肢電流抵抗電圧 v_Rコイル電圧 v_L判定
(1)大きくなる低下する上昇する①違反(iが増えるのにv_Rが減る) ×
(2)小さくなる上昇する低下する①違反(iが減るのにv_Rが増える) ×
(3)大きくなる上昇する上昇する②違反(両方上がったら和がEを超える) ×
(4)小さくなる低下する上昇する構造的にはOK(残る)
(5)大きくなる上昇する低下する構造的にはOK(残る)

ここまで物理をひとつも使っていません。それでも5択が2択になりました。あとは「電流が増えるのか減るのか」だけを決めれば終わりです。

問題の解説:コイルは電流の変化に逆らう

使う公式:RL直列回路の投入応答
$$i(t)=\frac{E}{R}\left(1-e^{-t/\tau}\right),\qquad v_R=iR,\qquad v_L=E-v_R=E\,e^{-t/\tau},\qquad \tau=\frac{L}{R}$$

投入直後 \(i=0\)、十分後 \(i=E/R\)。電流は0から増える一方です。

STEP1 t=0での値を決める

スイッチを閉じる直前、コイルに流れていた電流は0 Aです。そしてコイル電流は瞬時に変化できません

$$v_L=L\frac{di}{dt}$$
❶ コイルの定義式
電流が飛べば \(di/dt=\infty\) → 無限大の電圧が必要
$$i(0)=0\;[\mathrm{A}]$$
❷ だから電流は0のまま
コイルは一瞬だけ「開放」と同じ
$$v_R(0)=0\times R=0\;[\mathrm{V}],\qquad v_L(0)=E-0=E\;[\mathrm{V}]$$
❸ KVLで残りが決まる
電源電圧の全部がコイルにかかる

STEP2 t=∞での値を決める

$$i(\infty)=\frac{E}{R}$$
❹ 定常状態
Lは短絡になり、Rだけが電流を決める
$$v_R(\infty)=E,\qquad v_L(\infty)=0$$
❺ KVLで残りが決まる
コイルの電圧はゼロに

STEP3 向きを確定する

t=0t=∞向き
電流 i0E/R大きくなる
抵抗電圧 v_R0E上昇する
コイル電圧 v_LE0低下する
RL直列回路にKVLを適用し、時定数L割るRと電流i(t)の指数応答を初期条件から導出
KVLからi(t)=(E/R){1−exp(−t/τ)}、τ=L/Rを導き、電流が単調に増加することを確認します。
答え電流:大きくなる/抵抗電圧:上昇する/コイル電圧:低下する → 選択肢(5)

数値での確認(E=100 V、R=10 Ω、L=1 H、τ=0.1 s):t=0で \(i=0,\;v_R=0,\;v_L=100\)。t=τで \(i=6.32,\;v_R=63.2,\;v_L=36.8\)。t=∞で \(i=10,\;v_R=100,\;v_L=0\)。どの時刻でも \(v_R+v_L=100\;\mathrm{V}\) ✓

オームの法則を使って抵抗電圧vRが0からEへ指数上昇する式、代表時刻の値、物理的意味を説明
v_R(t)=E{1−exp(−t/τ)}なので、抵抗電圧は電流とともに0からEへ上昇します。
KVLとコイルの基本式からコイル電圧vLがE exp(−t/τ)となり、Eから0へ低下することを二通りに導出
v_L(t)=E exp(−t/τ)であり、投入直後のEから定常状態の0へ低下します。
回路電流、抵抗電圧、コイル電圧の時間変化を公式の五つの選択肢と照合し、数値例でも選択肢5を確認
増加・上昇・低下の三項目がすべて一致する正答は選択肢(5)です。

残った(4)は何の回路の答えなのか

構造的に生き残った(4)(電流が小さくなる・v_Rが低下・v_Lが上昇)は、デタラメな選択肢ではありません。実際にこうなる状況が存在します。

状況電流v_RL/C の電圧本問との違い
本問:RL直列にスイッチ投入0→E/R(増)E→0(減)
RC直列にスイッチ投入E/R→0(減)0→E(増)Cに置き換えると(4)の形
RL回路の電源を外して還流I₀→0(減)電流が減る側

つまり(4)はRC回路の答えです。「LとCのどちらの話だったか」を取り違えた人がぴったり着地します。この2つは互いの誤答として使い回されるので、必ず対で覚えてください。

コイル Lコンデンサ C
急変できない量電流電圧
スイッチ投入直後(初期電流・初期電荷が0なら)開放と同じ短絡と同じ
直流定常状態短絡開放
時定数\(\tau=L/R\)\(\tau=RC\)
蓄積エネルギー\(\frac12LI^2\)(電流で決まる)\(\frac12CV^2\)(電圧で決まる)

コイルが「電流の変化に逆らう」ことの実感

この性質はレンツの法則そのものです。コイルに流れる電流が増えようとすると磁束が増え、その変化を打ち消す向きに誘導起電力が生じる——結果として電流の増加にブレーキがかかります。

身近な例では蛍光灯の安定器があります。放電が始まると電流が急増しようとしますが、直列のコイルがそれを抑えて適正値に保ちます。コイルは「電流の慣性」——重い物が急に動き出さないのと同じ振る舞いです。

逆に電流を急に止めようとすると危険です。\(v_L=L\,di/dt\) で \(di/dt\) が負の大きな値になると、コイルは巨大な逆電圧を発生します。これがリレーやモータのスイッチを切ったときに接点で火花が飛ぶ原因で、対策として還流ダイオードを並列に入れて電流の逃げ道を作ります。

「投入直後にコイルへ全電圧がかかる」という本問の結論も、同じ性質の裏返しです。電流を通したくないコイルが、電源電圧を全部引き受けて踏ん張っている状態と言えます。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 言葉の組合せ問題は、まず\(v_R=iR\) で「電流とv_Rが逆向き」の選択肢を消す
② 次に\(v_R+v_L=E\) で「両方上がる/両方下がる」の選択肢を消す
③ ここまでで大半が消える。残りは電流の初期値だけで決着
RLの電流は0から増える、RCの電流はE/Rから減る——対で覚える
⑤ 「投入直後にコイルへ全電圧」は電流0だからv_Rも0というKVLの帰結

💡 覚え方
「コイルは電流の慣性」。重い台車が急に動き出せないのと同じで、電流は0からゆっくり増えます。v_Rは電流の影武者(\(v_R=iR\) で常に同じ動き)、v_Lは残り物(\(v_L=E-v_R\))——この3つの関係だけで全部決まります。

⚠️ よくある間違い
RL回路とRC回路の電流を取り違えるのが最大のミスで、選択肢(4)がそれを待っています。「Lは電流を妨げる→最初は流れない」「Cは電圧0=短絡→いきなり流れる」と、理由とセットで覚えてください。またv_Rを電流と逆向きにする誤り(選択肢(1)(2))は、\(v_R=iR\) を思い出せば起きません。

まとめ

電流0→E/R(大きくなる)
vR0→E(上昇)
vLE→0(低下)
答え(5)

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