今回は平成19年度 理論科目 A問題11を解説します。可変容量ダイオード・定電圧ダイオード・レーザダイオードについて、pn接合に加える電圧が順方向か逆方向かを判別する穴埋め問題です。
各ダイオードの動作原理が判別のカギです。可変容量ダイオードは逆方向で空乏層(=静電容量)を変え、定電圧ダイオード(ツェナー)は逆方向の降伏を利用し、レーザダイオードは順方向で発光します。
平成19年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成19年度 A問題11
次の文章は、それぞれのダイオードについて述べたものである。
a. 可変容量ダイオードは、pn接合に(ア)電圧を加えて使用し、空乏層の幅(静電容量)を変化させる。通信機器の同調回路などに用いられる。
b. 定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)は、pn接合に(イ)電圧を加えて降伏現象を起こし、電圧をほぼ一定に保つ。
c. レーザダイオードは、pn接合に(ウ)電圧を加えて電子と正孔を再結合させ、発光させる。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (1) 逆方向 順方向 逆方向 (2) 順方向 逆方向 順方向 (3) 逆方向 逆方向 逆方向 (4) 順方向 順方向 逆方向 (5) 逆方向 逆方向 順方向
出題のポイント:「光るものだけ順方向」
3種類のダイオードに、順方向と逆方向のどちらの電圧を加えるかを問う問題です。それぞれが何の現象を使っているかを考えれば、迷わず決まります。
いちばん簡単な覚え方は「光るものだけ順方向」です。レーザダイオードとLEDは順方向、可変容量ダイオードとツェナーダイオードは逆方向——これで3つとも決まります。
可変容量ダイオードは、空乏層をコンデンサの誘電体として使います。逆電圧を大きくすると空乏層が広がり、容量が小さくなる——平行平板コンデンサの \(C=\varepsilon S/d\) と同じ理屈です。

解説:3つのダイオードを順に判定する
| ダイオード | バイアス | 理由 | |
| a | 可変容量ダイオード | 逆方向 | 空乏層の幅を電圧で変え、容量として使う |
| b | 定電圧ダイオード | 逆方向 | 降伏領域で電圧がほぼ一定になる性質を使う |
| c | レーザダイオード | 順方向 | 電流を流して電子と正孔を再結合させ発光 |
aの可変容量ダイオードは「バリキャップ」とも呼ばれます。ラジオの同調回路で、つまみを回す代わりに電圧で周波数を変える——電子同調を可能にした素子です。
bの定電圧ダイオードは、逆電圧をどんどん上げていくと、ある電圧で急に電流が流れ始めます。この「降伏」が起きると、電流が変わっても電圧はほぼ一定——基準電圧源として使えます。
cのレーザダイオードは順方向です。電流を流して電子と正孔をぶつけ、そのエネルギーを光として取り出します——LEDと同じ原理です。


誤答の正体:どれを順方向にしてしまうか
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | 判定 |
| (1) | 逆方向 | 順方向 | 逆方向 | ×((イ)(ウ)が逆) |
| (2) | 順方向 | 逆方向 | 順方向 | ×((ア)が誤り) |
| (3) | 逆方向 | 逆方向 | 逆方向 | ×((ウ)が誤り) |
| (4) | 順方向 | 順方向 | 逆方向 | ×(全部逆) |
| (5) | 逆方向 | 逆方向 | 順方向 | ◎ |
(3)が最も惜しい誤答です。(ア)(イ)は正しいのに、(ウ)まで逆方向にしてしまった——「ダイオードといえば逆方向で特殊な使い方」という思い込みでしょう。
(4)は3つとも逆になっています。「整流ダイオードは順方向」というイメージから、特殊なダイオードも順方向だと考えたケースかもしれません。
⚠️ よくある間違い
「発光するものは順方向」——電流を流さないと発光しないからです。逆方向では電流が流れないので、光りようがありません。この一点で(ウ)が決まります。
☝️ ひっかけの作り方:フォトダイオードは逆方向です。「光」がつくから順方向と早合点しないでください。光を【出す】のがLED・LD(順方向)、光を【受ける】のがフォトダイオード(逆方向)——向きが逆です。
深掘り①:主なダイオードを一覧で整理する
ダイオードは種類が多く、それぞれ使うバイアスが違います。一覧で押さえておけば、どれを聞かれても対応できます。
| ダイオード | バイアス | 使う現象 | 用途 |
| 整流ダイオード | 順方向で通す | 整流作用 | 電源回路 |
| 可変容量ダイオード | 逆方向 | 空乏層の幅=静電容量 | 同調回路・PLL |
| 定電圧ダイオード | 逆方向 | 降伏(ツェナー・なだれ) | 基準電圧・保護 |
| 発光ダイオード(LED) | 順方向 | 再結合による発光 | 照明・表示 |
| レーザダイオード(LD) | 順方向 | 誘導放出 | 光通信・光ディスク |
| フォトダイオード | 逆方向 | 光生成キャリヤ | 光検出 |
順方向なのは「電流を流して仕事をさせるもの」——整流・発光です。逆方向なのは「電流を流さずに性質を使うもの」——容量・降伏・光検出です。
この分類で覚えれば、知らないダイオードが出てきても推測できます。「何をさせたいのか」から逆算してください。
深掘り②:可変容量ダイオードのしくみ
pn接合に逆電圧を加えると、接合部の空乏層が広がります。空乏層にはキャリヤがないので絶縁体——つまりコンデンサの誘電体として働きます。
| 逆電圧 | 空乏層の幅 | 静電容量 |
| 小さい | 狭い | 大きい |
| 大きい | 広い | 小さい |
「逆電圧を上げると容量が減る」——これは頻出の出題ポイントです。「増える」と書いてあったら誤りです。
この性質でLC共振回路の周波数を電圧制御できます。カーラジオの選局、テレビのチューナ、携帯電話のPLL——電子同調の心臓部です。
深掘り③:定電圧ダイオードの2つの降伏
定電圧ダイオードの「降伏」には2種類あります。降伏電圧によって、どちらが主に働くかが変わります。
| 現象 | しくみ | 起きやすい電圧 | 温度係数 |
| ツェナー降伏 | 強電界で共有結合が直接切れる(トンネル効果) | 約6 V以下 | 負(温度上昇で電圧低下) |
| なだれ降伏 | 加速された電子が次々に衝突電離 | 約6 V以上 | 正(温度上昇で電圧上昇) |
約6 V付近では2つの温度係数が打ち消し合い、温度変化に強くなります。だから基準電圧源には5〜6 V級のツェナーダイオードがよく使われます。
「ツェナーダイオード」は総称として使われますが、厳密にはツェナー降伏を使うものだけを指します。高電圧品は実際にはなだれ降伏です——試験では区別を問われることがあります。
深掘り④:レーザダイオードとLEDの違い
どちらも順方向で発光しますが、光の性質がまったく違います。用途も分かれます。
| LED | レーザダイオード(LD) | |
| 発光のしくみ | 自然放出 | 誘導放出(共振器で増幅) |
| 光の方向 | 広がる | 細く絞られる |
| 波長の幅 | 広い(数十 nm) | 非常に狭い(単色) |
| 位相 | ばらばら | そろっている(コヒーレント) |
| 用途 | 照明・表示 | 光通信・光ディスク・測距 |
LDは「共振器」を持つのが決定的な違いです。両端に反射面を作って光を往復させ、誘導放出で増幅——これがレーザ(LASER=Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)の語源です。
光ファイバ通信には、波長がそろったLDが不可欠です。波長が広がると分散でパルスが崩れる——長距離を高速で送るには単色光が必要になります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「光るものだけ順方向」——LED・LDが順方向、あとは逆方向。
❷ 逆方向は「電流を流さずに性質を使う」——容量・降伏・光検出。
❸ 可変容量:逆電圧↑ → 空乏層↑ → 容量↓——「増える」は誤り。
❹ フォトダイオードは逆方向——光を受けるほうは逆。
💡 覚え方
「出す(発光)は順、受ける・変えるは逆」——光を出すLED・LDは順方向、光を受けるフォトダイオード、容量を変えるバリキャップ、電圧を保つツェナーは逆方向です。
★重要:令和4年度下期にそのまま再出題された
令和4年度下期A問題11は、本問と完全に同一の問題です。3つの記述も、5つの選択肢の並びも、正答番号(5)まですべて同じ——15年の時を経ての再出題でした。
| 本問(平成19年度 A問題11) | 令和4年度下期 A問題11 | |
| a | 可変容量ダイオード → 逆方向 | 完全に同一 |
| b | 定電圧ダイオード → 逆方向 | 完全に同一 |
| c | レーザダイオード → 順方向 | 完全に同一 |
| 選択肢の並び | 5組 | 同じ |
| 正答番号 | (5) | (5) |
選択肢の並びさえ変えずに再出題されました。当サイトで確認している「完全同一ペア」はこれで8組目です。
⚠️ よくある間違い
半導体分野は用語問題が多く、出題パターンが限られています。だから過去問がそのまま再利用されやすい——古い年度でも必ず目を通しておく価値があります。
出題履歴:ダイオードの種類は毎年のように問われる
各種ダイオードの用途とバイアスの向きは、半導体分野の最頻出テーマです。一覧表を一度作っておけば、どの組合せで聞かれても対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和4年度下期A問題11(完全に同一の問題)/【理論】平成30年度A問題11(半導体素子の正誤)
★重要:令和7年度下期にも出題され、正答番号が変わった
この問題は令和4年度下期に続き、令和7年度下期にも出題されました。内容は3回ともまったく同じで、選択肢の並びだけが変えられています。
| 年度 | 答えの中身 | 正答番号 |
| 本問(平成19年度 A11) | 逆・逆・順 | (5) |
| 令和4年度下期 A11 | 逆・逆・順(同じ) | (5) |
| 令和7年度下期 A11 | 逆・逆・順(同じ) | (2) |
答えの中身は3回とも「逆方向・逆方向・順方向」です。ところが正答番号は (5)(5)(2) と変わりました——令和7年度で選択肢の順序が入れ替えられたためです。
⚠️ よくある間違い
番号で覚えることの危険性を示す決定的な例です。「この問題は(5)」と記憶していると、令和7年度下期では外します。必ず「逆・逆・順」という中身で覚えてください。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和7年度下期A問題11(同じ問題・正答(2))
まとめ
| 可変容量D | 逆方向(空乏層で容量可変) |
| 定電圧D | 逆方向(ツェナー降伏) |
| レーザD | 順方向(再結合で発光) |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同型のダイオード問題(半導体8):【理論】令和4年度下期 A問題11

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