半導体26【電験3種 理論】各種ダイオード(可変容量・定電圧・レーザ)のバイアスの向きを判別する!平成19年度 A問題11 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(半導体等) 平成19年度 A問題11 順方向か逆方向か!ダイオードごとの使い方を判別

今回は平成19年度 理論科目 A問題11を解説します。可変容量ダイオード・定電圧ダイオード・レーザダイオードについて、pn接合に加える電圧が順方向か逆方向かを判別する穴埋め問題です。

各ダイオードの動作原理が判別のカギです。可変容量ダイオードは逆方向で空乏層(=静電容量)を変え、定電圧ダイオード(ツェナー)は逆方向の降伏を利用し、レーザダイオードは順方向で発光します。

目次

平成19年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 半導体等 平成19年度 A問題11 問題文
平成19年度 理論科目 A問題11 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11

電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成19年度 A問題11

 次の文章は、それぞれのダイオードについて述べたものである。

a. 可変容量ダイオードは、pn接合に(ア)電圧を加えて使用し、空乏層の幅(静電容量)を変化させる。通信機器の同調回路などに用いられる。

b. 定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)は、pn接合に(イ)電圧を加えて降伏現象を起こし、電圧をほぼ一定に保つ。

c. レーザダイオードは、pn接合に(ウ)電圧を加えて電子と正孔を再結合させ、発光させる。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

(ア)(イ)(ウ)
(1)逆方向順方向逆方向
(2)順方向逆方向順方向
(3)逆方向逆方向逆方向
(4)順方向順方向逆方向
(5)逆方向逆方向順方向

出題のポイント:「光るものだけ順方向」

3種類のダイオードに、順方向と逆方向のどちらの電圧を加えるかを問う問題です。それぞれが何の現象を使っているかを考えれば、迷わず決まります

いちばん簡単な覚え方は「光るものだけ順方向」です。レーザダイオードとLEDは順方向可変容量ダイオードとツェナーダイオードは逆方向——これで3つとも決まります

バイアスの向きと働き
$$\text{順方向}:\text{電流が流れる}\ \Rightarrow\ \text{再結合して発光}\qquad\text{逆方向}:\text{空乏層が広がる}$$

逆方向で使うのは「電流を流さずに何かをしたい」とき——容量を変える、電圧を一定に保つです。

可変容量ダイオードは、空乏層をコンデンサの誘電体として使います逆電圧を大きくすると空乏層が広がり、容量が小さくなる——平行平板コンデンサの \(C=\varepsilon S/d\) と同じ理屈です。

可変容量ダイオードは逆方向で空乏層幅を変えて接合容量を制御し、定電圧ダイオードは逆方向降伏を利用し、レーザダイオードは順方向注入で発光することを比較した解説
容量は空乏層、定電圧は逆方向降伏、発光は順方向注入という物理現象から、逆・逆・順を判定します。

解説:3つのダイオードを順に判定する

ダイオードバイアス理由
a可変容量ダイオード逆方向空乏層の幅を電圧で変え、容量として使う
b定電圧ダイオード逆方向降伏領域で電圧がほぼ一定になる性質を使う
cレーザダイオード順方向電流を流して電子と正孔を再結合させ発光

aの可変容量ダイオードは「バリキャップ」とも呼ばれますラジオの同調回路で、つまみを回す代わりに電圧で周波数を変える——電子同調を可能にした素子です。

bの定電圧ダイオードは、逆電圧をどんどん上げていくと、ある電圧で急に電流が流れ始めますこの「降伏」が起きると、電流が変わっても電圧はほぼ一定——基準電圧源として使えます

cのレーザダイオードは順方向です。電流を流して電子と正孔をぶつけ、そのエネルギーを光として取り出します——LEDと同じ原理です。

可変容量ダイオードの逆方向電圧、空乏層幅、接合容量CjイコールεS割るW、LC同調周波数までを段階的に導く解説
逆方向電圧を大きくすると空乏層幅Wが広がり、接合容量Cjが小さくなるため、電圧で同調周波数を調整できます。
定電圧ダイオードの逆方向降伏とレーザダイオードの順方向キャリア注入を回路、I-V特性、活性層と共振器で比較する解説
定電圧ダイオードは直列抵抗で電流を制限しながら逆方向降伏を使い、レーザダイオードは順方向で電子と正孔を注入して発光させます。
答え(ア) 逆方向、(イ) 逆方向、(ウ) 順方向 → 選択肢(5)

誤答の正体:どれを順方向にしてしまうか

選択肢(ア)(イ)(ウ)判定
(1)逆方向順方向逆方向×((イ)(ウ)が逆)
(2)順方向逆方向順方向×((ア)が誤り)
(3)逆方向逆方向逆方向×((ウ)が誤り)
(4)順方向順方向逆方向×(全部逆)
(5)逆方向逆方向順方向

(3)が最も惜しい誤答です。(ア)(イ)は正しいのに、(ウ)まで逆方向にしてしまった——「ダイオードといえば逆方向で特殊な使い方」という思い込みでしょう。

(4)は3つとも逆になっています。「整流ダイオードは順方向」というイメージから、特殊なダイオードも順方向だと考えたケースかもしれません。

⚠️ よくある間違い
「発光するものは順方向」——電流を流さないと発光しないからです。逆方向では電流が流れないので、光りようがありませんこの一点で(ウ)が決まります

☝️ ひっかけの作り方:フォトダイオードは逆方向です。「光」がつくから順方向と早合点しないでください。光を【出す】のがLED・LD(順方向)、光を【受ける】のがフォトダイオード(逆方向)——向きが逆です。

深掘り①:主なダイオードを一覧で整理する

ダイオードは種類が多く、それぞれ使うバイアスが違います一覧で押さえておけば、どれを聞かれても対応できます。

ダイオードバイアス使う現象用途
整流ダイオード順方向で通す整流作用電源回路
可変容量ダイオード逆方向空乏層の幅=静電容量同調回路・PLL
定電圧ダイオード逆方向降伏(ツェナー・なだれ)基準電圧・保護
発光ダイオード(LED)順方向再結合による発光照明・表示
レーザダイオード(LD)順方向誘導放出光通信・光ディスク
フォトダイオード逆方向光生成キャリヤ光検出

順方向なのは「電流を流して仕事をさせるもの」——整流・発光です。逆方向なのは「電流を流さずに性質を使うもの」——容量・降伏・光検出です。

この分類で覚えれば、知らないダイオードが出てきても推測できます。「何をさせたいのか」から逆算してください。

深掘り②:可変容量ダイオードのしくみ

pn接合に逆電圧を加えると、接合部の空乏層が広がります空乏層にはキャリヤがないので絶縁体——つまりコンデンサの誘電体として働きます。

空乏層の幅と静電容量
$$C=\frac{\varepsilon S}{d}\qquad(d:\text{空乏層の幅})$$

逆電圧を大きくすると \(d\) が広がり、\(C\) は小さくなります電圧で容量を制御できるのが利点です。

逆電圧空乏層の幅静電容量
小さい狭い大きい
大きい広い小さい

「逆電圧を上げると容量が減る」——これは頻出の出題ポイントです。「増える」と書いてあったら誤りです。

この性質でLC共振回路の周波数を電圧制御できます。カーラジオの選局、テレビのチューナ、携帯電話のPLL——電子同調の心臓部です。

深掘り③:定電圧ダイオードの2つの降伏

定電圧ダイオードの「降伏」には2種類あります。降伏電圧によって、どちらが主に働くかが変わります

現象しくみ起きやすい電圧温度係数
ツェナー降伏強電界で共有結合が直接切れる(トンネル効果)約6 V以下負(温度上昇で電圧低下)
なだれ降伏加速された電子が次々に衝突電離約6 V以上正(温度上昇で電圧上昇)

約6 V付近では2つの温度係数が打ち消し合い、温度変化に強くなりますだから基準電圧源には5〜6 V級のツェナーダイオードがよく使われます

「ツェナーダイオード」は総称として使われますが、厳密にはツェナー降伏を使うものだけを指します高電圧品は実際にはなだれ降伏です——試験では区別を問われることがあります

深掘り④:レーザダイオードとLEDの違い

どちらも順方向で発光しますが、光の性質がまったく違います用途も分かれます

LEDレーザダイオード(LD)
発光のしくみ自然放出誘導放出(共振器で増幅)
光の方向広がる細く絞られる
波長の幅広い(数十 nm)非常に狭い(単色)
位相ばらばらそろっている(コヒーレント)
用途照明・表示光通信・光ディスク・測距

LDは「共振器」を持つのが決定的な違いです。両端に反射面を作って光を往復させ、誘導放出で増幅——これがレーザ(LASER=Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)の語源です。

光ファイバ通信には、波長がそろったLDが不可欠です。波長が広がると分散でパルスが崩れる——長距離を高速で送るには単色光が必要になります。

⏱️ 本番での進め方
❶ 「光るものだけ順方向」——LED・LDが順方向、あとは逆方向。
❷ 逆方向は「電流を流さずに性質を使う」——容量・降伏・光検出。
❸ 可変容量:逆電圧↑ → 空乏層↑ → 容量↓——「増える」は誤り。
❹ フォトダイオードは逆方向——光を受けるほうは逆。

💡 覚え方
「出す(発光)は順、受ける・変えるは逆」——光を出すLED・LDは順方向光を受けるフォトダイオード、容量を変えるバリキャップ、電圧を保つツェナーは逆方向です。

★重要:令和4年度下期にそのまま再出題された

令和4年度下期A問題11は、本問と完全に同一の問題です。3つの記述も、5つの選択肢の並びも、正答番号(5)まですべて同じ——15年の時を経ての再出題でした。

本問(平成19年度 A問題11)令和4年度下期 A問題11
a可変容量ダイオード → 逆方向完全に同一
b定電圧ダイオード → 逆方向完全に同一
cレーザダイオード → 順方向完全に同一
選択肢の並び5組同じ
正答番号(5)(5)

選択肢の並びさえ変えずに再出題されました。当サイトで確認している「完全同一ペア」はこれで8組目です。

⚠️ よくある間違い
半導体分野は用語問題が多く、出題パターンが限られていますだから過去問がそのまま再利用されやすい——古い年度でも必ず目を通しておく価値があります

出題履歴:ダイオードの種類は毎年のように問われる

各種ダイオードの用途とバイアスの向きは、半導体分野の最頻出テーマです。一覧表を一度作っておけば、どの組合せで聞かれても対応できます。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】令和4年度下期A問題11(完全に同一の問題)【理論】平成30年度A問題11(半導体素子の正誤)

★重要:令和7年度下期にも出題され、正答番号が変わった

この問題は令和4年度下期に続き、令和7年度下期にも出題されました。内容は3回ともまったく同じで、選択肢の並びだけが変えられています

年度答えの中身正答番号
本問(平成19年度 A11)逆・逆・順(5)
令和4年度下期 A11逆・逆・順(同じ)(5)
令和7年度下期 A11逆・逆・順(同じ)(2)

答えの中身は3回とも「逆方向・逆方向・順方向」です。ところが正答番号は (5)(5)(2) と変わりました——令和7年度で選択肢の順序が入れ替えられたためです。

⚠️ よくある間違い
番号で覚えることの危険性を示す決定的な例です。「この問題は(5)」と記憶していると、令和7年度下期では外します必ず「逆・逆・順」という中身で覚えてください

あわせて解いておきたい記事:【理論】令和7年度下期A問題11(同じ問題・正答(2))

まとめ

可変容量D逆方向(空乏層で容量可変)
定電圧D逆方向(ツェナー降伏)
レーザD順方向(再結合で発光)
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・同型のダイオード問題(半導体8):【理論】令和4年度下期 A問題11

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