今回は令和5年度下期 機械科目 A問題13を解説します。比例要素Kと積分要素1/(jωT)を直列につないだフィードバック制御系の閉ループ周波数伝達関数W(jω)=C(jω)/R(jω)について、そのボード線図の折線近似ゲイン特性を選ぶ問題です。
ブロック線図から等式を立ててW(jω)=1/(1+jω(T/K))の形に整理すると、低域ゲイン0dB、折れ点角周波数K/T、高域で-20dB/decの下りという典型的な一次遅れ要素の折線近似になります。
令和5年度下期 機械科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題13
電験3種 機械科目 【自動制御】 令和5年度下期 A問題13
図に示すようなフィードバック制御系がある。閉ループ周波数伝達関数W(jω)=C(jω)/R(jω)のボード線図の折線近似ゲイン特性として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし,ωは角周波数[rad/s]を表す。
(1)折れ点1/Tで0dBから20log10Kの高さから下降開始(低域ゲイン20log10K,折れ点角周波数1/T,-20dB/dec)
(2)折れ点T/K,0dB水平線から下降(低域ゲイン0dB,折れ点T/K,-20dB/dec)
(3)折れ点T,20log10Kの高さから下降(低域ゲイン20log10K,折れ点T,-20dB/dec)
(4)折れ点K/T,0dB水平線から下降(低域ゲイン0dB,折れ点K/T,-20dB/dec)
(5)折れ点K/T,20log10Kの高さから下降(低域ゲイン20log10K,折れ点K/T,-20dB/dec)

出題のポイント:積分要素を閉じると一次遅れになる
比例K と積分1/(jωT) を直列にして、単位フィードバックで閉じる——この形は制御工学の最も基本的な構成です。
G/(1+G)
—
★標準形に直す
結果は時定数 T/K の一次遅れ要素になりました。積分要素を負帰還で囲むと一次遅れになる——覚えておくと計算が速くなる形です。
| 読み取る項目 | 標準形から | ボード線図では |
| 低域ゲイン | 分子が1 | ★0 dB |
| 時定数 | T/K | — |
| 折れ点角周波数 | その逆数 | ★K/T |
| 高域の傾き | 一次遅れ | −20 dB/dec |



⚠️ よくある間違い
低域ゲインを20log10K としている選択肢が3つあります——最も多い誤りです。開ループなら確かに K が効きますが、閉じたら分子が1 になる——ここが引っかけどころです。
折れ点を T/K としている(2)は逆数を取り忘れたもの。時定数が T/K なら折れ点はその逆数の K/Tです。
直流で考えれば低域ゲインは即座に分かります——ω→0 で積分要素のゲインが無限大、無限大を閉じれば1(=0 dB)になるからです。
なぜ閉じると低域ゲインが0 dB になるのか
これは偶然ではなく、積分要素を含む制御系の重要な性質です。「定常偏差が0 になる」ということと同じ意味を持っています。
| 前向き要素 | ω→0 でのゲイン | 閉ループの低域ゲイン | 定常偏差 |
| 比例のみ K | K(有限) | K/(1+K)(1 より小さい) | ★残る |
| 積分を含む K/(jωT) | ★無限大 | 1(=0 dB) | ★0 |
閉ループゲインが1 ということは、出力が入力とぴったり一致するということ——つまり定常偏差が0です。PID制御のI動作が定常偏差を消す理由が、ここでも確かめられます。
制御工学では、前向き経路に含まれる積分要素の数で「型」を分類します。0型は定常偏差が残り、1型はステップ入力に対して偏差0——本問は1型の制御系にあたります。
K を大きくするとどうなるか
折れ点角周波数が K/Tですから、K を大きくすると折れ点が高周波側へ動きます。
| K | 時定数 T/K | 折れ点 K/T | 応答 |
| 小さい | 大きい | 低い | 遅い |
| 大きい | 小さい | ★高い | 速い |
K を大きくすれば応答が速くなる——広い周波数帯域まで追従できるようになるからです。低域ゲインは0 dB のまま変わりません。
この構成では、K をいくら大きくしても不安定にはなりません——一次遅れは位相が90°までしか遅れないからです。実際の制御対象にはもっと多くの遅れがあるので、そこで K の上限が決まってくることになります。
⏱️ 本番での進め方
① 閉ループ公式 G/(1+G) に G=K/(jωT) を入れる。
② 整理すると 1/(1+jωT/K)。★分子は1。
③ だから低域は0 dB。20log10K ではない。
④ 時定数T/K の逆数=折れ点K/T。
💡 覚え方
「積分を閉じると一次遅れ、低域は必ず0 dB」——分子が1 になるから。そして「時定数の逆数が折れ点」——T/K と K/T を取り違えないことです。

ボード線図の折線近似はなぜ使えるのか
本問は「折線近似」のゲイン特性を選ぶ問題でした。なぜ曲線を直線で近似してよいのかを確認しておきましょう。
| 角周波数 | 正確な値 | 折線近似 | 誤差 |
| ω=0.1ωc | −0.04 dB | 0 dB | わずか |
| ω=ωc | −3.01 dB | 0 dB | ★最大3 dB |
| ω=10ωc | −20.04 dB | −20 dB | わずか |
誤差が最大になるのは折れ点で、そこでも3 dB しかずれません——それ以外の周波数では誤差はもっと小さいのです。
3 dB は振幅で1.41倍(1/√2)——制御系の設計では十分な精度だと言えます。だから手描きでも設計の見当をつけられるのがボード線図の実用的な価値です。
折線近似なら、要素ごとの線を足し合わせるだけで全体が描けます。掛け算が足し算になる——これが対数目盛りを使う最大の理由です。
位相特性も同様に近似できます。0.1ωc から 10ωc にかけて直線的に0°から−90°へ——折れ点でちょうど−45°を通るという近似が使われます。
この構成が実際に使われる場面
比例+積分を直列にして単位フィードバックで閉じる——これは速度制御や位置制御の基本形です。
| 制御対象 | 積分要素の正体 | 出力 |
| 位置制御 | 速度を積分すると位置 | 位置 |
| 速度制御 | トルクを積分すると速度(慣性) | 速度 |
| タンクの液位 | 流量を積分すると液位 | 液位 |
「量の変化率を操作すると、その量そのものが制御される」——こういう対象は自然に積分要素をもちます。だから本問の構成は、机上の想定ではなく実在する形なのです。
積分要素を含むおかげで、定常偏差が0 になる——位置決めが正確にできる理由がここにあります。制御器にI 動作を入れなくても、対象自体が積分特性をもっていれば偏差は消えるのです。
まとめ
| W(jω) | 1/(1+jω(T/K)) |
| 低域ゲイン | 0dB |
| 折れ点角周波数 | K/T |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
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