パワエレ53【電験3種 機械】サイリスタは逆方向には流せない!自己保持と逆阻止を混同しない 令和7年度下期 A問題10 完全解説

電験3種 機械科目 パワーエレクトロニクス 令和7年度下期 A問題10 サイリスタは逆向きに流せない!自己保持との違い

今回は令和7年度下期 機械科目 A問題10を解説します。パワー半導体デバイスの定常的な動作について、誤っている記述を1つ選ぶ問題です。

この手の問題は「オンにできるか/オフにできるか/逆向きに流せるか」の3点でデバイスを整理しておけば確実に得点できます。サイリスタは『一度オンにしたら自分では止められない』が『逆方向には流せない』——この2つを混同させるのが本問の仕掛けです。

目次

令和7年度下期 機械科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 パワーエレクトロニクス 令和7年度下期 A問題10 問題文
令和7年度下期 機械科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題10

電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 令和7年度下期 A問題10

 電力変換装置では,各種のパワー半導体デバイスが使用されている.パワー半導体デバイスの定常的な動作に関する記述として,誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.

 (1) IGBTと逆並列ダイオードを組み合わせたパワー半導体デバイスは,IGBTにとって順方向の電流を流すことができる期間をIGBTのオンのゲート電圧を与えることで決めることができる.IGBTにとって逆方向の電圧が印加されると,IGBTのゲート状態にかかわらずIGBTにとって逆方向の電流が逆並列ダイオードに流れる.

 (2) ダイオードの導通,非導通は,そのダイオードに印加される電圧の極性で決まり,導通時は回路電圧と負荷などで決まる順電流が流れる.

 (3) サイリスタは,オンのゲート電流が与えられて順方向の電流が流れている状態であれば,その後にゲート電流を取り去っても,順方向の電流に続く逆方向の電流を流すことができる.

 (4) オフしているパワーMOSFETは,ボディーダイオードを内蔵しているのでオンのゲート電圧が与えられなくても逆電圧が印加されれば逆方向の電流が流れる.

 (5) オフしているIGBTは,順電圧が印加されていてオンのゲート電圧を与えると順電流を流すことができ,その状態からゲート電圧を取り去ると非導通となる.

電力変換装置では、各種のパワー半導体デバイスが使用されている。パワー半導体デバイスの定常的な動作に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) IGBTと逆並列ダイオードを組み合わせたパワー半導体デバイスは、IGBTにとって順方向の電流を流すことができる期間をIGBTのオンのゲート電圧を与えることで決めることができる。IGBTにとって逆方向の電圧が印加されると、IGBTのゲート状態にかかわらずIGBTにとって逆方向の電流が逆並列ダイオードに流れる。

(2) ダイオードの導通、非導通は、そのダイオードに印加される電圧の極性で決まり、導通時は回路電圧と負荷などで決まる順電流が流れる。

(3) サイリスタは、オンのゲート電流が与えられて順方向の電流が流れている状態であれば、その後にゲート電流を取り去っても、順方向の電流に続く逆方向の電流を流すことができる。

(4) オフしているパワーMOSFETは、ボディーダイオードを内蔵しているのでオンのゲート電圧が与えられなくても逆電圧が印加されれば逆方向の電流が流れる。

(5) オフしているIGBTは、順電圧が印加されていてオンのゲート電圧を与えると順電流を流すことができ、その状態からゲート電圧を取り去ると非導通となる。

出題のポイント:サイリスタは逆方向には流せない

(3)の記述が誤りです。サイリスタはいったん導通すればゲート電流を切っても導通を続けますが、それは「順方向の電流が流れ続けている限り」——逆方向の電流を流すことはできません

デバイス順方向逆方向制御できるもの
ダイオード順電圧で導通阻止制御不能(電圧の極性しだい)
サイリスタゲート電流でオン。以後は自己保持阻止(逆阻止)オンのタイミングのみ(オフはできない)
IGBTゲート電圧でオン/オフ阻止(逆並列ダイオードがあれば導通)オンもオフも自在
パワーMOSFETゲート電圧でオン/オフボディーダイオードで導通オンもオフも自在

「自己保持」と「逆阻止」を混同させるのが(3)の狙いです。自己保持はゲートを切っても順電流が流れ続けること逆阻止は逆電圧を加えても電流が流れないこと——まったく別の性質です。

むしろサイリスタは、順電流が0になった時点でオフします電流が減って保持電流を下回れば導通が止まる——だから交流回路では、電流が0になる瞬間に自然にオフするのです。これを自然転流(線転流)と呼びます

正しい4つの記述を確認する

(1) IGBTと逆並列ダイオードの組合せ

IGBT単体は逆方向の電流を流せませんところがインバータでは、誘導性負荷の電流を還流させる経路が必要——そこで逆並列にダイオードを付けます

順方向の期間はIGBTがゲート電圧で制御し、逆方向はダイオードが自動的に導通する——ゲートの状態に関係なく流れるのがダイオードの性質です。記述はこの動作を正確に述べています

(2) ダイオードは電圧の極性で決まる

ダイオードに制御端子はありません順電圧がかかれば導通し、逆電圧なら阻止する——回路の都合で勝手に決まります流れる電流の大きさは、回路電圧と負荷で決まる——正しい記述です。

(4) パワーMOSFETのボディーダイオード

パワーMOSFETは構造上、ソースとドレインの間に寄生ダイオード(ボディーダイオード)を持ちますこれは意図して作ったものではなく、構造から必然的に生じるもの——だからゲート電圧がなくても逆方向には電流が流れます

IGBTでは外付けの逆並列ダイオードが要るのに対し、MOSFETは内蔵している——この違いは回路設計上の重要な特徴です。

(5) IGBTはゲート電圧でオン・オフできる

IGBTは自己消弧形デバイスです。ゲート電圧を与えればオン、取り去ればオフ——サイリスタと違って、オフのタイミングも自由に決められますだからPWM制御ができるのです。

答え誤っているのは (3)です。サイリスタは逆阻止デバイス——「順方向の電流に続く逆方向の電流を流すことができる」は誤りです。

デバイスを2つの軸で整理する

オフできないオフできる(自己消弧)
逆方向を阻止するダイオード(オンも制御不能)、サイリスタIGBT単体、GTO
逆方向にも流せるトライアック(双方向サイリスタ)逆並列ダイオード付きIGBT、パワーMOSFET

「オン/オフを制御できるか」と「逆方向に流せるか」の2軸で整理すると、デバイスの位置づけがはっきりします本問の5つの記述は、まさにこの2軸を1つずつ確認する内容になっています。

逆方向にも流せる制御デバイスが必要なら、トライアックを使う——これは交流電力調整(調光器など)で使われますサイリスタを2個逆並列にしたのと同じ働きです。

⏱️ 本番での進め方
①「サイリスタ=逆阻止」。逆方向には絶対に流せない。
②「自己保持」はゲートを切っても順電流が続くこと。逆方向とは無関係。
③ IGBTは外付け、MOSFETは内蔵(ボディーダイオード)。
④ 論説の誤り探しは「別の性質にすり替える」型が定番。

💡 覚え方
「サイリスタはオンだけ制御でき、オフは電流しだい。逆は絶対に流れない」——この一文で(3)が誤りだと分かります逆方向に流したければ、もう1個逆向きに付ける(トライアック/逆並列接続)しかないのです。

デバイスは「電圧・電流・周波数」で使い分ける

本問に登場した4種類のデバイスは、それぞれ得意な領域が違いますどれが優れているという話ではなく、用途で選ばれているのです。

デバイス扱える電圧・電流スイッチング周波数主な用途
ダイオード制限なし(整流専用)整流回路、還流
サイリスタ非常に大きい(数kV・数kA)低い(商用周波数程度)直流送電、大容量整流、位相制御
IGBT大きい(〜数kV・数百A)中程度(数kHz〜数十kHz)インバータ、電車、産業用
パワーMOSFET小さい(〜数百V)高い(数十kHz〜MHz)スイッチング電源、小容量

大電力ほどサイリスタ寄り、高周波ほどMOSFET寄り——IGBTはその中間で、最も守備範囲が広いのが特徴です。だから電車のインバータやエアコンの制御にはIGBTが使われます

サイリスタが今も使われる理由

サイリスタはオフできないという大きな欠点を持ちます。それでも直流送電(HVDC)や大容量整流では今も現役——扱える電力が桁違いに大きいからです。

構造が単純で、1個で数千ボルト・数千アンペアを扱えますIGBTでは同じ容量を出そうとすると多数を並列にする必要があり、割に合いません——「オフできない」という制約を受け入れてでも、容量を取るという選択です。

オフできない問題は、回路側で解決します交流回路なら電流が自然に0になる(自然転流)直流回路なら強制的に逆電圧をかける(強制転流)——本問の(3)が「順方向の電流に続く逆方向の電流」と述べているのは、この転流の話とすり替えて混乱させる狙いとも読めます。

近年はSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった新材料も実用化され、高電圧・高周波・低損失を同時に実現しつつありますデバイスの選択肢は広がり続けている——それでも「オンだけ制御/オンもオフも制御」「逆阻止/逆導通」という基本の分類は変わりません

まとめ

ダイオード制御端子なし。導通は印加電圧の極性で決まる
サイリスタゲート電流でオンのみ制御。自己保持する。オフは自分でできない
サイリスタの逆方向逆阻止(流せない)※双方向に流せるのはトライアック
IGBTゲート電圧でオン・オフとも制御(自己消弧)。逆並列ダイオードを外付け
パワーMOSFET自己消弧。ボディーダイオードを内蔵し逆方向には流れる
誤りの箇所(3)の「順方向の電流に続く逆方向の電流を流すことができる」
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
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