今回は平成19年度 機械科目 A問題14を解説します。2個のNANDゲートを交差接続(クロスカップル)したRSフリップフロップの回路について、入力A及びBと出力Xの関係を表す正しい真理値表を選ぶ問題です。
左端のNAND出力と、それをもう一度反転した信号を求め、アクティブLow入力のNAND形RSラッチへ当てはめます。2つのラッチ入力は常に反対になるため、保持や禁止状態を考える必要はなく、入力A,Bだけで出力Xが一意に決まります。
平成19年度 機械科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題14
電験3種 機械科目 【情報】 平成19年度 A問題14
図に示す論理回路において,入力A及びBの論理レベルと,出力Xの論理レベルの関係を表している正しい真理値表は次のうちどれか。
A,B (1) (2) (3) (4) (5) 00 0 0 0 1 1 01 1 0 0 1 1 10 1 1 0 0 1 11 1 1 1 0 0
出題のポイント:前段の2信号は常に反対
まず交差接続の手前を整理します——ここが分かれば、後は基本表に当てはめるだけです。
A とB のNAND
2入力とも P に接続=NOT
NAND の2つの入力を同じ信号につなぐと、NOT として働きます——P·P=P なので、出力は P の否定だからです。これはNAND だけで回路を作るときの定番テクニックでもあります。
結果、ラッチへ入る2信号は A·B‾ と A·B——必ず互いに反対になります。この事実が本問を簡単にしています。

NAND形RSラッチは「0 で効く」
交差接続した2個のNAND がRSラッチ——入力が0 のときに動作するアクティブLow です。
| S̄ | R̄ | 動作 | 出力X |
| 0 | 1 | セット | 1 |
| 1 | 0 | リセット | 0 |
| 1 | 1 | 保持 | 前の値 |
| 0 | 0 | ★禁止 | 不定 |
NOR形なら「1 で効く」——アクティブHigh です。NAND形とNOR形で有効レベルが逆——ここを取り違えると答えが真逆になります。
見分け方は簡単——入力名に上線(S̄、R̄)が付いていればNAND形。回路図でNAND の記号(先端に○)を確認してもよいでしょう。
本問では保持も禁止も起こらない
2つの入力が常に反対なので、「両方1(保持)」も「両方0(禁止)」も現れません。必ずセットかリセットのどちらかです。
| A | B | A·B | S̄=A·B‾ | R̄=A·B | X |
| 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
| 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 |
| 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
| 1 | 1 | 1 | 0 | 1 | ★1 |
出力X は A·B とまったく同じ——つまりこの回路全体は、ただのAND ゲートです。記憶素子として使われていないのがおもしろいところ。
「フリップフロップだから前の状態が関係するはず」と身構える必要はありません——入力A、B だけで出力が一意に決まります。

⚠️ よくある間違い
NOR形の真理値表を当てはめてしまうのが最も多い誤り——NAND形は0 で効く、NOR形は1 で効く。
逆にすると、X が0 と1 で入れ替わった選択肢を選ぶことになります。本問なら 1110 のような並び——まさに用意されているので要注意です。
もう1つ、2段目のNAND を「2入力のNAND」と誤読しない——2本とも同じ信号なのでNOT です。配線をたどって、どこから来ているかを確認してください。
なぜ交差接続すると記憶できるのか
2個のNAND の出力を互いの入力へ戻す——これだけで状態が保たれます。
仮に X=1 になったとしましょう。この1 がもう一方のNAND へ入り、その出力を0 にします。その0 が戻ってきて、X を1 に保つ——互いに支え合って動かなくなるのです。
これが「双安定」——0 と1 のどちらでも安定していられるという意味です。フリップフロップの語源でもあります。
| 用途 | 使われ方 |
| チャタリング防止 | ★スイッチの接点の跳ね返りを吸収 |
| 1ビットの記憶 | レジスタ、SRAM の基本単位 |
| 同期式FF の土台 | クロック入力を加えてD-FF などに |
機械式スイッチは、切り替わる瞬間に何度も接触と開放を繰り返します——これがチャタリング。RSラッチを通せば、最初の1回で状態が決まり、以降の跳ね返りは無視されます。
⏱️ 本番での進め方
①NAND の2入力を短絡するとNOT。前段はA·B。
②ラッチ入力は常に反対→保持・禁止は起こらない。
③★NAND形は0 で効く(アクティブLow)。
④結局X=A·B。00、01、10 で0、11 で1 の表を選ぶ。
💡 覚え方
「NAND形は0 で効き、NOR形は1 で効く」——入力名の上線が目印。そして「2入力を短絡したNAND はNOT」——NAND だけで回路を組むときの基本テクニックです。
チャタリング防止回路として同じラッチが平成18年度 B問題18にも登場します(情報:チャタリング防止回路とJK-FFカウンタ)。

禁止入力がなぜ危険なのか
NAND形RSラッチで S̄=R̄=0 は禁止——その理由を確かめておきましょう。
両方0 にすると、2つのNAND の出力がどちらも1 になります——X と X̄ が両方1。「互いに反対であるべき2つの出力」が同じ値になってしまうのです。
それだけなら「変な状態」で済みますが、問題はここから両方を1 へ戻したとき——どちらが先に反応するかで、X が0 になるか1 になるかが決まります。
ゲートのわずかな速度差で結果が変わる——つまり出力が予測できません。だから「禁止」とされているのです。
| 入力 | 状態 | 問題点 |
| S̄=R̄=1 | 保持 | 問題なし |
| S̄=R̄=0 | ★禁止 | X と X̄ が同時に1 |
| 0 →1 へ同時に戻す | ★不定 | どちらに落ち着くか分からない |
この欠点をなくしたのがJK-FF——両方1 に「反転」という動作を割り当てたので、禁止状態がありません。本問のRS ラッチが、すべてのフリップフロップの出発点だと言えます。
D-FF への発展
入力を1本にして、S̄ とR̄ が必ず反対になるようにしたのがD-FF——本問の回路と発想が同じです。
本問でも、前段のNOT によって2つの入力が必ず反対になっていました。だから禁止状態が起こらない——D-FF が禁止入力を持たない理由も、まったく同じ仕組みです。
回路図から式を起こす手順
本問のような回路図の問題は、手順を固定してしまうのが確実です。
| 手順 | やること | 本問での中身 |
| ① | ゲートの出口に記号を振る | 左端のNAND 出力を P |
| ② | 入力側から1段ずつ式にする | P=A·B‾、次段でP‾=A·B |
| ③ | ★配線がどこから来ているか確かめる | 2段目は2本とも P |
| ④ | 4通りの入力で表を作る | 選択肢と照合 |
③がとくに大切——2本の線が同じところから出ているのを見落とすと、まったく違う式になります。分岐点には黒丸が打たれているので、そこを追ってください。
本問は2入力なので4通りしかありません——式を立てるのが面倒なら、0 と1 を図に書き込んで直接追うほうが速い場合もあります。
A問題は1問5点
A問題は14問で各5点——1問あたり4〜5分が目安です。本問は前段さえ整理できれば2分で解けます。
論理回路は電験3種の機械科目で毎年のように出題されます——計算問題より時間がかからないので、確実に取っておきたい分野です。
まとめ
| overline(S) | overline(A・B) |
| overline(R) | A・B |
| X(00,01,10) | 0 |
| X(11) | 1 |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・EX-OR・EX-NOR混成回路の真理値表を求める:【機械】平成30年度A問題14
・RS・JK・T・D各種フリップフロップの正誤判定とタイムチャート:【機械】令和3年度B問題18

コメント