今回は平成18年度 機械科目 B問題18を解説します。有接点スイッチのチャタリングを防止できる回路を2つ選ぶ(a)と、共通クロックで動作する3個のJK-FF回路について、出力(Q3,Q2,Q1)から入力(J3,J2,J1)を順に追跡する(b)の問題です。
(a)はRSフリップフロップ回路とシュミット・トリガ回路がヒステリシス特性によりチャタリングを吸収する仕組みを理解します。(b)はJKフリップフロップの真理値表(J=1,K=1で反転)に基づき、入力パルスを1つずつ加えて(Q3,Q2,Q1)の状態を順に追跡します。
平成18年度 機械科目 B問題18:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題18
電験3種 機械科目 【情報】 平成18年度 B問題18
フリップフロップを含む回路を考える。その入力は,手動式パルス発生回路からの信号パルスである。次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 手動式パルス発生回路において,有接点スイッチSWを切り換えてパルスを発生させると,出力信号にチャタリングが発生する場合がある。そのため,手動式パルス発生回路にはチャタリング防止回路が必要になる。図A,図B,図C及び図Dが示す回路のうち,スイッチの切り換えによるチャタリングが出力に出ないパルス発生回路は二つある。その二つは下記の選択肢のうちどれか。ただし,図Cの図記号は,シュミットトリガNOTゲートである。なお,各論理素子には+5〔V〕の電源電圧が加えられているものとする。
(b) フリップフロップを含む回路として,図に示すような3個のJK-FF(JK-フリップフロップ)を考える。入力信号パルスは,JK-FFの各C端子に同時に加わり,JK-FFの出力(Q3,Q2,Q1)に信号が現れる。JK-FFは初期状態において,出力(Q3,Q2,Q1)の値は,(0,0,0)2であるとする。図の回路に一つめの入力信号パルスが加わると,そのとき(J3,J2,J1)の値は,(ア)2になる。また,二つめの入力信号パルスが加わると,そのとき(J3,J2,J1)の値は,(イ)2になる。以下,三つめ,四つめの入力信号パルスが加わり,五つめの入力信号パルスが加わった後の(J3,J2,J1)の値は,(ウ)2になる。上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)図AとB (2)図AとC (3)図AとD (4)図BとC (5)図CとD
(ア) (イ) (ウ) (1) 0,0,1 0,1,1 0,0,1 (2) 0,0,1 0,1,1 0,1,0 (3) 0,1,1 0,0,1 1,0,1 (4) 1,0,0 1,1,0 1,0,1 (5) 0,1,1 0,0,1 0,0,1
(a) チャタリングとは何か
機械式スイッチは、切り替わる瞬間に接点が何度も跳ね返ります——この間、信号は0 と1 を細かく往復します。これがチャタリングです。
時間にすればわずか数ミリ秒——人間には一瞬ですが、ナノ秒単位で動く論理回路にとっては十分に長い時間です。「1回押しただけなのに何回も数えられる」という誤動作になります。
止められる回路と止められない回路
| 回路 | 仕組み | 判定 |
| 図A | ゲートを通すだけ | ✕ そのまま通過 |
| 図B(RSラッチ) | ★最初の1回で状態が確定し保持 | ○ |
| 図C(シュミットトリガ) | ★CR で鈍らせ、ヒステリシスで判定 | ○ |
| 図D | 保持もヒステリシスもない | ✕ |
図B のRSラッチは、最初に接点が触れた瞬間に状態が決まります——その後どれだけ跳ね返っても、S̄ が0 のままなら出力は変わりません。「保持」という性質がチャタリングを吸収しているのです。
図C は考え方が違います——CR回路で信号をゆっくり変化させ、シュミットトリガで判定。コンデンサが充放電する時間が、跳ね返りより長いので、細かい振動は平均化されて消えます。
シュミットトリガのヒステリシス
ふつうのNOT は、しきい値が1つだけ——そのあたりで入力が揺れると、出力もばたつきます。
| ふつうのNOT | シュミットトリガNOT | |
| しきい値 | 1つ | ★2つ(上がるとき/下がるとき) |
| 入力が揺れると | 出力もばたつく | ★出力は変わらない |
いったん0 →1 になったら、かなり下がるまで1 のまま——この「戻りにくさ」がヒステリシスです。小さな揺れを無視できるようになります。

(b) 3個のJK-FF を同時に追う
すべてのFF に同じクロックが入る同期回路——3段が同時に判定して同時に変わります。
| FF | J 入力 | K 入力 |
| FF1 | Q3‾ | 1 |
| FF2 | Q1 | Q1 |
| FF3 | Q1·Q2 | 1 |
まず配線を読み取って表にする——これをせずにタイムチャートを追うと必ず混乱します。
パルスごとの状態
| パルス | (Q3,Q2,Q1) | そのときの(J3,J2,J1) |
| 初期 | 000 | 001 |
| 1つめ後 | 001 | ★011=(ア) |
| 2つめ後 | 010 | ★001=(イ) |
| 3つめ後 | 011 | 111 |
| 4つめ後 | 100 | 000 |
| 5つめ後 | 000 | ★001=(ウ) |
Q は0 →1 →2 →3 →4 →0 と数えています——5進カウンタです。Q3 が1 になると J1=Q3‾=0、K1=1 でFF1 がリセット——これで5 で折り返します。
問われているのはQ ではなくJ——ここが最大の注意点です。Q を求めてから、配線表を使ってJ に変換する2段構えになります。

⚠️ よくある間違い
Q の値をそのまま答えてしまうのが最も多い誤り——設問が問うているのは(J3, J2, J1) です。
1つめのパルス後、Q=001 ですが、そこから J1=Q3‾=1、J2=Q1=1、J3=Q1·Q2=0——(J3,J2,J1)=011 となります。Q=001 と答えると選択肢(1)や(2)に引っかかります。
表を2列(Q とJ)に分けて書く——これだけで取り違えを防げます。
⏱️ 本番での進め方
①(a) 保持(RSラッチ)かヒステリシス(シュミット)があればOK。
②単にゲートを通すだけの回路では止まらない。
③(b) まず配線からJ、K の式を表にする。
④★問われているのはQ ではなくJ。表を2列に分けて書く。
💡 覚え方
「チャタリング対策は保持かヒステリシス」——RSラッチかシュミットトリガ。そして「Q を求めてからJ に変換」——2段構えを忘れないことです。
NAND形RSラッチそのものは平成19年度 A問題14で問われています(情報:NANDベースRSフリップフロップの真理値表)。本問(a)の図B の中身にあたります。

チャタリングを止める他の方法
本問の図B・図C 以外にも、対策はいくつかあります——実務でよく使われるものを挙げておきます。
| 方法 | 仕組み | 特徴 |
| RSラッチ(図B) | 最初の1回で状態を確定 | ★双投スイッチが必要 |
| CR+シュミット(図C) | 時定数で鈍らせる | 単投スイッチでも使える |
| ソフトウェア処理 | 数ミリ秒待って再確認 | ★部品が不要 |
図B のRSラッチ方式は、切換式(双投)スイッチが前提——接点がどちらにも触れていない瞬間があっても、ラッチが状態を覚えているからです。
図C のCR 方式は、時定数の選び方が肝心——短すぎると跳ね返りを吸収できず、長すぎると反応が鈍くなります。チャタリングが数ミリ秒なので、その数倍を目安にします。
マイコンを使う機器では、ソフトウェアで処理するのが主流——「変化を検出したら10 ms 待って、まだ同じ値なら確定」という手順です。部品が増えないので安価になります。
なぜ接点は跳ね返るのか
金属どうしがぶつかると、弾性で跳ね返ります——ボールが床で何度もバウンドするのと同じ。接点も同じことが起きているのです。
跳ね返るたびに接触と開放を繰り返す——その回数は数回から数十回。機械的な現象なので、回路側で吸収するしかありません。
同期式カウンタの状態を追う手順
(b)のような同期回路は、手順を決めれば機械的に解けます——迷いどころをなくしておきましょう。
| 手順 | やること | 注意点 |
| ① | 配線からJ、K の式を書き出す | ★図を見るのはここだけ |
| ② | 現在のQ からJ、K を計算 | 3段分をまとめて |
| ③ | JK の表で次のQ を決める | ★3段同時に更新 |
| ④ | 新しいQ から再びJ、K を計算 | ②へ戻る |
③がとくに大切——FF1 を更新してからFF2 を判定するのではありません。3段とも、更新前のQ を見て同時に動くのです。
順序を誤ると、まったく違う状態遷移になります。「変化前の値で全段が判定する」——同期回路の鉄則です。
なぜ5進になるのか
J1=Q3‾ という配線が効いています——Q3 が1 になると J1=0、K1=1。つまりFF1 は次のクロックでリセットされます。
Q=100(=4)の次が000 に戻る——0、1、2、3、4 の5通りを巡回する5進カウンタです。帰還のかけ方1つで進数が決まる——ここが同期式カウンタのおもしろいところでしょう。
まとめ
| (a) 答え | 図BとC((4)) |
| (b) 初期状態 | (Q3,Q2,Q1)=(0,0,0) |
| (b)(ア) 1つめ | (0,1,1) |
| (b)(イ) 2つめ | (0,0,1) |
| (b)(ウ) 5つめ後 | (0,0,1) |
| 答え | (a)-(4),(b)-(5) |
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