電子回路32【電験3種 理論】トランジスタ非安定マルチバイブレータの動作(充放電とスイッチング)を理解する!平成23年度 A問題13 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 平成23年度 A問題13 2つのトランジスタが交互にON!発振の仕組み

今回は平成23年度 理論科目 A問題13を解説します。トランジスタを用いた非安定(無安定)マルチバイブレータ回路について、スイッチSの開閉によるコンデンサCの充放電とトランジスタのオン・オフ動作の空欄を補充する問題です。

Sはもう一方のトランジスタの代わりのスイッチです。S開放時はR2を介してベースに正電圧が加わりTrはオン。S閉時はCの電荷でベースが負になりTrはオフ、その後CがR2を通して放電し、ベースは負から正へ戻ってTrが再びオンになる、という動作を追います。

目次

平成23年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 平成23年度 A問題13 問題文
平成23年度 理論科目 A問題13 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成23年度 A問題13

 図のように、トランジスタを用いた非安定(無安定)マルチバイブレータ回路の一部分がある。ここで、Sはトランジスタの代わりの動作をするスイッチ、R1・R2・R3は抵抗、Cはコンデンサ、VCCは直流電源電圧、Vbはベースの電圧、Vcはコレクタの電圧である。初期条件としてコンデンサCの初期電荷は零、スイッチSは開いている状態と仮定する。

a. スイッチSが開いている状態(オフ)のときは、トランジスタTrのベースには抵抗R2を介して(ア)の電圧が加わるので、トランジスタTrは(イ)となっている。ベースの電圧Vbは電源電圧VCCより低いので、電流iは図の矢印「右」の向きに流れてコンデンサCは充電されている。

b. 次に、スイッチSを閉じる(オン)と、その瞬間はコンデンサCに充電されていた電荷でベースの電圧は負となるので、コレクタの電圧Vcは瞬時に高くなる。電流iは矢印「(ウ)」の向きに流れ、コンデンサCは(エ)を始め、やがてベースの電圧は(オ)に変化し、コレクタの電圧Vcは下がる。上記の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)オン放電負から正
(2)オフ充電正から負
(3)オン充電正から零
(4)オフ充電負から正
(5)オフ放電零から正
図 トランジスタ非安定マルチバイブレータ回路の一部(R1・R2・R3・C・Tr・スイッチS・VCC)(問題図)
図 トランジスタ非安定マルチバイブレータ回路の一部(R1・R2・R3・C・Tr・スイッチS・VCC)(問題図)

解説①:スイッチSが開いている状態を追う

GPT Image 2で作成したスイッチ開放時のトランジスタ動作説明図
ベースが正なのでTrはオン、(ア)正・(イ)オンです。

S開放時はR2を介してベースに正電圧が加わりTrはオンです。Sを閉じた瞬間はコンデンサ電圧が変化できないためベースが負になり、Trはオフ、電流は左向き、Cは放電します。その後Vbは負から正へ戻ります。空欄は正・オン・左・放電・負から正で、正解は(1)です。

解説②:スイッチSを閉じた瞬間を追う

GPT Image 2で作成したスイッチ閉時のコンデンサ放電とトランジスタ動作図
電流は左向きでCは放電するため、(ウ)左・(エ)放電です。

(ア)(イ) スイッチが開いているとき

ベースは \(R_2\) を介して \(V_{CC}\) につながっていますしたがってベースには【正】の電圧が加わり、トランジスタは【オン】になります。

トランジスタがオンなのでコレクタ電圧 \(V_c\) は低い状態です。コンデンサ \(C\) は矢印「右」の向きの電流で充電されていきます

(ウ)(エ) スイッチを閉じた瞬間

コンデンサに蓄えられた電荷は瞬時には動けませんスイッチ側の端子が 0 V に引き下げられると、その分だけベース側の端子が負に振られます——ベース電圧が一気に負になります。

ベースが負ならトランジスタはオフ——コレクタ電圧 \(V_c\) は瞬時に高くなります電流 \(i\) はそれまでと逆の【左】向きに流れ、コンデンサは【放電】を始めます

(オ) しばらく経つと

放電が進むにつれてベース電圧は上がっていきます【負から正】へ変化してトランジスタが再びオンになり、コレクタ電圧 \(V_c\) が下がります——ここで1周期が終わります。

答え(ア)正 (イ)オン (ウ)左 (エ)放電 (オ)負から正 → 選択肢(1)

解説③:放電後の変化と選択肢を照合する

GPT Image 2で作成した放電後のベース電圧変化と選択肢照合表
Vbは負から正へ変化し、5空欄の組合せは選択肢(1)です。
選択肢(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)判定
(1)オン放電負から正◎ 正解
(2)オフ充電正から負\(R_2\) は \(V_{CC}\) 側=正のはず
(3)オン充電正から零(エ)(オ)が誤り
(4)オフ充電負から正(ア)が零では動作しない
(5)オフ放電零から正(ア)が誤り

(4)(5)の「(ア)零」は、ベースに何もつながっていないのと同じです。回路図には \(R_2\) が \(V_{CC}\) から降りてきているので、正の電圧が加わらないはずがありません。

(3)は「充電」と「正から零」がおかしいです。スイッチを閉じてベースが負になった後、コンデンサは放電して電圧が戻る——「零で止まる」のではなく正まで上がるからこそ、トランジスタが再びオンになります

☝️ ひっかけの作り方:(ア)と(イ)は物理的にセットです。「ベースが正ならオン、負または零ならオフ」——この整合が取れていない肢は、他を読まずに消せます。組合せ問題ではこの絞り込みが最速です。

深掘り①:非安定マルチバイブレータとは何か

2個のトランジスタが交互にオン・オフを繰り返し、方形波を作り続ける回路です。安定した状態が1つもないので「非安定(無安定)」と呼ばれます。

片方がオンになると、コンデンサを通してもう片方のベースを負に引き下げてオフにします放電が進んでベース電圧が戻ると立場が入れ替わる——これが延々と続きます。

本問はその半分だけを取り出し、もう片方のトランジスタをスイッチ \(S\) に置き換えた図です。「スイッチが閉じる」=「相方のトランジスタがオンになる」と読み替えてください。

種類安定状態の数動作用途
非安定(無安定)0個勝手に発振し続ける方形波発生・クロック
単安定1個トリガで一定時間だけ反転パルス幅の整形・遅延
双安定(フリップフロップ)2個入力があるまで保持記憶・カウンタ

深掘り②:発振周期は \(CR\) で決まる

ベース電圧が戻る速さは、コンデンサ \(C\) と抵抗 \(R_2\) の時定数で決まります時定数 \(\tau=CR_2\) が大きいほどゆっくり戻り、周期が長くなります

$$v=V_{CC}\left(1-2e^{-t/CR_2}\right)$$
❶ 放電の途中経過
\(-V_{CC}\) から出発して上がる
$$v=0\ \text{になる時刻}:\ t=CR_2\ln2$$
❷ 反転する瞬間
\(\ln2\fallingdotseq0.693\)
$$T=2\times CR_2\ln2\fallingdotseq1.4CR_2$$
❸ 発振周期
左右2回分

\(C\) や \(R_2\) を変えるだけで周波数を自由に変えられます——電子ブザー、LEDの点滅、簡易クロックなど、身近な用途がたくさんあります。

ただし周波数の安定度は高くありません正確なクロックが要るところでは水晶発振回路を使います——用途に応じた使い分けです。

深掘り③:コンデンサが「電圧を急に変えられない」意味

\(i=C\,dv/dt\) を書き換えると \(dv/dt=i/C\)——電圧を急に変えるには無限大の電流が必要です。現実には電流は有限なので、電圧は連続的にしか変わりません

だからスイッチを閉じた瞬間、コンデンサの「両端の電位差」はそのままです。片側が \(V_{CC}\) から 0 V へ落ちれば、もう片側も同じだけ下がる——結果としてベースが負になります

コイルなら「電流が急に変わらない」——コンデンサは電圧、コイルは電流という対応です。過渡現象の問題でも同じ考え方が使えます

💡 覚え方
コンデンサ=電圧の記憶装置スイッチの前後で「両端の電位差は変わらない」と置いて、片側の電位から反対側の電位を計算する——過渡現象を解く共通のコツです。

深掘り④:スイッチ回路としてのトランジスタ

増幅回路では動作点を活性領域の真ん中に置きますが、スイッチとして使うときは飽和領域と遮断領域だけを行き来させます。

領域\(V_{BE}\)\(I_C\)\(V_{CE}\)状態
遮断領域0 V 以下ほぼ0\(V_{CC}\) に近いオフ(開いたスイッチ)
活性領域約0.7 V\(h_{FE}I_B\)中間増幅
飽和領域0.7 V 以上負荷で決まる0.1〜0.2 Vオン(閉じたスイッチ)

スイッチとして使うと、オフでは電流が流れず、オンでは \(V_{CE}\) がほぼ0——どちらも損失(\(V_{CE}I_C\))が小さいのが利点です。これがディジタル回路や電力変換回路の基礎になっています。

⏱️ 本番での進め方
❶ (ア)と(イ)の整合を見る——正ならオン、負・零ならオフ。ここで3つ消える。
❷ スイッチを閉じた瞬間はコンデンサの電位差が保存される、と置く。
❸ ベースが負→オフ→\(V_c\) が上がる、という因果を順に追う。
❹ 放電が進めばベースは正へ戻る——だから(オ)は「負から正」。
★組合せ問題は全部の空欄を埋めなくてよい。決まりやすい空欄から絞る。

出題履歴:マルチバイブレータは動作の理解を問う

計算ではなく「回路がどう動くか」を追わせる出題です。コンデンサの充放電とトランジスタのオン・オフを結びつけて考えられるかがポイントになります。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

(ア)R2からVCC側の正電圧
(イ)正電圧でTrオン
(ウ)放電で電流は左向き
(エ)Cは放電を始める
(オ)ベースは負から正→(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・接合形FET増幅回路のRSと電圧増幅度(電子回路31):【理論】平成24年度 B問題18

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