電子回路37【電験3種 理論】トランジスタの3つの接地方式(エミッタ・コレクタ・ベース接地)の特徴を攻略する!平成20年度 A問題13 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 平成20年度 A問題13 エミッタ・コレクタ・ベース接地!特徴の違いは?

今回は平成20年度 理論科目 A問題13を解説します。トランジスタの接地方式が異なる3つの基本増幅回路(図1:エミッタ接地、図2:コレクタ接地、図3:ベース接地)について、記述a〜dの正誤を判定し、正しいものの組合せを選ぶ問題です。

エミッタ接地は入出力が逆位相(180°)、コレクタ接地は電圧増幅度がほぼ1でエミッタホロワと呼ばれ、ベース接地は電流増幅率|ΔIC/ΔIE|(=α)が約1、という各方式の特徴がポイントです。

目次

平成20年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 平成20年度 A問題13 問題文
平成20年度 理論科目 A問題13 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成20年度 A問題13

 トランジスタの接地方式の異なる3つの基本増幅回路(図1・図2・図3)について、次の記述a〜dのうち正しいものの組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、図1はエミッタ接地増幅回路、図2はコレクタ接地増幅回路、図3はベース接地増幅回路である。

次の記述a〜dのうち正しいものの組合せを、下の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
a. 図1の回路では、入出力信号の位相差は180°である。
b. 図2の回路は、エミッタ接地増幅回路である。
c. 図2の回路は、エミッタホロワとも呼ばれる。
d. 図3の回路で、エミッタ電流及びコレクタ電流の変化分の比|ΔIC/ΔIE|の値は、約100である。

(1)aとb
(2)aとc
(3)aとd
(4)bとd
(5)cとd

解説①:3つのトランジスタ接地方式を比べる

GPT Image 2で作成した3つのトランジスタ接地方式比較図
共通端子・入出力端子・位相・増幅特性を3方式で比較します。

エミッタ接地だけが入出力逆相で、コレクタ接地はエミッタホロワとも呼ばれます。ベース接地の電流増幅率α=|ΔIC/ΔIE|は約1であり、約100なのはβ=|ΔIC/ΔIB|です。したがってaとcが正しく、選択肢(2)です。

解説②:記述a〜dを理由とともに判定する

GPT Image 2で作成した記述aからdの正誤判定図
aとcが正しく、bとdは誤りです。

a. 図1(エミッタ接地)の入出力の位相差は180° → 正しい

ベース電圧が上がる→コレクタ電流が増える→\(R_C\) の電圧降下が増える→コレクタ電位が下がる入力が上がると出力が下がる=逆相(180°)です。

3つの接地方式のうち、入出力が逆相になるのはエミッタ接地だけ——ここは確実に覚えてください。

b. 図2はエミッタ接地増幅回路である → 誤り

問題文に「図2はコレクタ接地増幅回路である」と明記されています。読み落とさなければ即座に消せる肢です。

c. 図2はエミッタホロワとも呼ばれる → 正しい

コレクタ接地=エミッタホロワ(エミッタフォロワ)です。エミッタ電位が入力電位に「ついていく(follow)」からこの名があります。

d. 図3(ベース接地)の \(|\Delta I_C/\Delta I_E|\) は約100 → 誤り

\(I_E=I_B+I_C\)\(I_B\) は \(I_C\) の約1/100 ですから、\(I_C\) は \(I_E\) よりわずかに小さいだけ——比は約1です。約100になるのは \(|\Delta I_C/\Delta I_B|\) です。

答え正しいのは a と c → 選択肢(2)

解説③:αとβを区別して選択肢を照合する

GPT Image 2で作成したαとβの導出および選択肢照合図
αは約1、βは約100なので正しい組合せは選択肢(2)です。
記述内容判定誤りの作り方
aエミッタ接地は逆相
b図2はエミッタ接地×問題文の指定を無視させる
c図2=エミッタホロワ
dベース接地で \(|\Delta I_C/\Delta I_E|\fallingdotseq100\)×\(\alpha\) と \(\beta\) の取り違え

bが誤りとわかれば、(1)(4)は消えますdが誤りとわかれば(3)(5)も消え、残るのは(2)だけ——2つ判定するだけで確定します。

逆に、aが正しいとわかっていれば(4)は即消し(bとdの組合せ)です。1つでも確実な肢があれば選択肢を大きく絞れます

⚠️ よくある間違い
\(\alpha\) と \(\beta\)(\(h_{fe}\))の取り違えが最頻です。分母を見るクセをつけてください——分母が \(I_E\) なら約1、分母が \(I_B\) なら約100\(I_E\) は一番大きい電流だから比は1未満、\(I_B\) は一番小さいから比は大きい——大小関係で確認できます。

深掘り①:3つの接地方式を1枚で比べる

「接地」とは、入力にも出力にも共通で使う端子のことです。エミッタ・コレクタ・ベースのどれを共通にするかで3種類できます。

接地方式別名電圧増幅電流増幅位相入力Z出力Z使いどころ
エミッタ接地逆相(180°)いちばん普通の増幅
コレクタ接地エミッタホロワ約1倍同相バッファ(Z変換)
ベース接地約1倍同相高周波増幅

エミッタ接地は電圧も電流も増幅できる万能型で、増幅段の主力です。コレクタ接地は電圧増幅しない代わりに入力Zが高く出力Zが低い——インピーダンス変換専用と考えてください。

ベース接地は入力Zが低く高周波特性に優れるため、アンテナ直後の高周波増幅などに使われます

深掘り②:エミッタホロワはなぜ役に立つのか

電圧増幅度が約1倍なら意味がないのでは——と思えますが、役割は「電圧を増やすこと」ではなく「電流を供給できるようにすること」です。

出力インピーダンスが高い信号源に、抵抗の小さい負荷を直接つなぐと電圧が下がってしまいます間にエミッタホロワを入れると、入力側から見た負荷が \(h_{fe}\) 倍軽くなり、電圧が落ちません

エミッタホロワは帰還率100%の負帰還回路でもあります。出力電圧がそのまま入力に戻るので、ひずみが小さく、周波数特性も広いという長所がつきます。

「電圧利得1・入力Z大・出力Z小・ひずみ小・広帯域」——この5点セットがエミッタホロワ(=ボルテージホロワ)の性格です。オペアンプのボルテージホロワとまったく同じ役割です。

深掘り③:位相が反転するのはなぜエミッタ接地だけか

出力を「コレクタから取る」か「エミッタから取る」かで決まります

エミッタ接地はコレクタから取ります電流が増えると \(R_C\) での電圧降下が増え、コレクタ電位は下がる——だから逆相です。

コレクタ接地はエミッタから取ります電流が増えれば \(R_E\) の電圧降下が増え、エミッタ電位は上がる——だから同相です。

ベース接地はコレクタから取りますが、入力もエミッタ(電流を吸い出す向き)なので、2回ひっくり返って結局同相になります。

💡 覚え方
「出力を取る場所が抵抗の上側なら同相、下側(電源側の抵抗)なら逆相」エミッタ接地だけが電源側の \(R_C\) から取っている——だからエミッタ接地だけ逆相です。

深掘り④:\(\alpha\) と \(\beta\) の関係を式で押さえる

$$I_E=I_B+I_C$$
❶ キルヒホッフ
3端子に出入りする電流の和は0
$$\alpha=\frac{I_C}{I_E}=\frac{I_C}{I_B+I_C}$$
❷ ベース接地の増幅率
分母が最大の \(I_E\)
$$\beta=\frac{I_C}{I_B}=\frac{\alpha}{1-\alpha}$$
❸ エミッタ接地の増幅率
分母が最小の \(I_B\)
\(\alpha\)\(\beta=\alpha/(1-\alpha)\)感覚
0.909性能の低いトランジスタ
0.9849
0.9999ごく標準的
0.995199高 \(h_{fe}\) 品

\(\alpha\) が1に近づくほど \(\beta\) は急激に大きくなります0.99→0.995 と 0.005 変わるだけで \(\beta\) は倍——\(h_{fe}\) の個体ばらつきが大きい理由もここにあります。

⏱️ 本番での進め方
❶ 組合せ問題は「確実な1つ」から。本問なら b(問題文に書いてある)が最速。
❷ bが誤り → (1)(4)が消える。残りは(2)(3)(5)。
❸ dが誤り → (3)(5)が消える。答えは(2)。
★4つ全部を判定する必要はない——選択肢が絞れた時点で終了。

出題履歴:接地方式の比較は繰り返し問われる

3つの接地方式の性格の違いは、電子回路分野の基礎中の基礎です。「エミッタホロワの特徴として誤っているもの」「ベース接地の用途」など、切り口を変えて何度も出題されています。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

図1(エミッタ接地)入出力位相差180°→a正
図2(コレクタ接地)エミッタホロワ→c正、b誤
図3(ベース接地)|ΔIC/ΔIE|=α≒1→d誤
正しい組合せaとc→(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・エミッタ接地トランジスタのhパラメータ(電子回路36):【理論】平成21年度 B問題18

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