今回は平成27年度 理論科目 B問題18(選択問題)を解説します。(a)演算増幅器(オペアンプ)の特徴に関する空欄補充、(b)2段の反転増幅回路の出力電圧Voと電圧利得Av[dB]を求める問題です。
オペアンプは差動成分を高利得で増幅し、入力インピーダンスが大きく(入力端子電流はほぼ零)、出力インピーダンスが小さい(負荷の影響を受けにくい)のが特徴です。反転増幅回路の増幅度は−Rf/Rinで、多段は各段の積になります。
平成27年度 理論科目 B問題18:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題18
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成27年度 B問題18
演算増幅器(オペアンプ)について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 演算増幅器は、その二つの入力端子に加えられた信号の(ア)を高い利得で増幅する回路である。演算増幅器の入力インピーダンスは極めて(イ)ため、入力端子電流は(ウ)とみなしてよい。一方、演算増幅器の出力インピーダンスは非常に(エ)ため、その出力端子電圧は負荷による影響を(オ)。さらに、演算増幅器は利得が非常に大きいため、抵抗などの部品を用いて負帰還をかけたときに安定した有限の電圧利得が得られる。
(b) 図の直流増幅回路に入力電圧0.5Vを加えたとき、出力電圧Vo[V]と電圧利得Av[dB]を求める。ただし、演算増幅器は理想的なものとし、log102=0.301、log103=0.477とする。
(a) 演算増幅器の特徴に関する記述の空欄(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 差動成分 大きい ほぼ零 小さい 受けにくい (2) 差動成分 小さい ほぼ零 大きい 受けやすい (3) 差動成分 大きい 極めて大きな値 大きい 受けやすい (4) 同相成分 大きい ほぼ零 小さい 受けやすい (5) 同相成分 小さい 極めて大きな値 大きい 受けにくい (b) 図の直流増幅回路に入力電圧0.5Vを加えたときの出力電圧Vo[V]と電圧利得Av[dB]の組合せとして、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、演算増幅器は理想的なものとし、log102=0.301、log103=0.477とする。
Vo[V] Av[dB] (1) 7.5 12 (2) −15 12 (3) −7.5 24 (4) 15 24 (5) 7.5 24

解説(a):理想オペアンプの5つの特徴

理想オペアンプは差動成分を増幅し、入力インピーダンスが大きいため入力端子電流はほぼ零、出力インピーダンスが小さいため負荷の影響を受けにくく、(a)は(1)です。(b)は1段目が-100/20=-5、2段目が-90/30=-3で、全体は+15。入力0.5Vから出力7.5V、20log10(15)=23.52≈24dBなので(5)です。
解説(b):2段反転増幅の出力電圧を求める

| 空欄 | 答え | 理由 |
| (ア) | 差動成分 | 2入力の【差】だけを増幅する差動増幅器 |
| (イ) | 大きい | 入力インピーダンスは理想では無限大 |
| (ウ) | ほぼ零 | 入力Zが大きいから電流は流れ込まない |
| (エ) | 小さい | 出力インピーダンスは理想では0 |
| (オ) | 受けにくい | 出力Zが小さいから負荷で電圧が下がらない |
(ア)が「差動成分」か「同相成分」か——2入力に同じ電圧が乗っても出力に出ないのがオペアンプの特徴です。同相成分は捨て、差動成分だけを増幅します。
この性質のおかげで、両方の線に等しく乗った雑音は出力に現れません。これを同相除去比(CMRR)と呼び、差動伝送がノイズに強い理由になっています。
解説(b):電圧利得をdBへ直して選択肢を照合

マイナスが付く
これもマイナス
マイナス×マイナスでプラス
\(15=30/2\) と分解
\(\log_{10}15\) の作り方:\(15=3\times5\)、そして \(5=10/2\)——\(\log_{10}15=\log_{10}3+1-\log_{10}2\)。与えられていない対数は、与えられた値の足し引きで必ず作れます。
誤答の正体:符号と、20倍か10倍か
| 選択肢 | \(V_o\) | \(A_v\) | どこを間違えたか |
| (1) | 7.5 V | 12 dB | \(10\log_{10}15\) としてしまった(電力の式) |
| (2) | -15 V | 12 dB | 両方とも誤り |
| (3) | -7.5 V | 24 dB | 反転2段でもマイナスと思った |
| (4) | 15 V | 24 dB | 入力 0.5 V を掛け忘れた |
| (5) | 7.5 V | 24 dB | ◎ 正解 |
(1)の12 dBは \(10\log_{10}15\fallingdotseq11.8\)——電力の式(10倍)を電圧に使った誤りです。電圧・電流は20倍、電力は10倍——電力が電圧の二乗に比例するからです。
(4)の15 Vは、増幅度15をそのまま出力電圧にした形です。入力 0.5 V を掛けるのを忘れています——「倍」と「V」は違う、と単位で気づけます。
⚠️ よくある間違い
反転増幅を2段つなぐと同相(プラス)になります。「反転だからマイナス」を機械的に当てはめると(3)に落ちます——何段あるかを必ず数えてください。奇数段なら逆相、偶数段なら同相です。
深掘り①:デシベルの計算を自在にする
| 電圧増幅度 | 電圧利得 | 覚え方 |
| 1倍 | 0 dB | 変化なし |
| \(\sqrt2\fallingdotseq1.41\) 倍 | 3 dB | 電力が2倍 |
| 2倍 | 6 dB | 2倍で6 dB |
| 10倍 | 20 dB | 桁が1つで20 dB |
| 15倍 | 約23.5 dB | \(20+6-2.5\)(\(15=10\times2/1.33\)) |
| 100倍 | 40 dB | — |
暗算のコツは「10倍=20 dB、2倍=6 dB」の2つだけ覚えることです。\(15=10\times1.5\)、\(1.5\) は約 3.5 dB——\(20+3.5=23.5\ \mathrm{dB}\) と出せます。
デシベルを使う最大の利点は、多段の計算が足し算になることです。本問なら 1段目14 dB+2段目9.5 dB=23.5 dB——掛け算より楽です。
深掘り②:多段増幅の設計思想
なぜ1段で15倍にせず、5倍と3倍の2段にするのか——1段あたりの増幅度を下げると、周波数特性が良くなり安定するからです。
オペアンプには「利得帯域幅積」という制約があります。増幅度を大きくすると、その分だけ扱える周波数の上限が下がる——だから低い増幅度の段を重ねます。
また、段間を反転増幅にすると入力インピーダンスが抵抗で決まって扱いやすいという利点もあります。本問の1段目の入力インピーダンスは 20 kΩです。
2段とも反転なら出力は同相——結果として「同相で15倍」という、非反転増幅と同じ働きを、反転増幅2段で実現しています。
深掘り③:理想オペアンプの5つの性質
| 性質 | 理想値 | そこから導かれること |
| 開ループ利得 | \(\infty\) | イマジナリショート(2入力が同電位) |
| 入力インピーダンス | \(\infty\) | 入力端子に電流が流れない |
| 出力インピーダンス | 0 | 負荷をつないでも出力電圧が変わらない |
| 周波数帯域 | \(\infty\) | どんな周波数でも同じ増幅度 |
| 同相除去比 | \(\infty\) | 差動成分だけを増幅する |
(a)の5つの空欄は、この表の1〜3行目と5行目をそのまま文章にしたものです。理想オペアンプの定義を知っていれば、迷う余地がありません。
⏱️ 本番での進め方
❶ (a)は「差動・大きい・零・小さい・受けにくい」——理想の定義そのまま。
❷ (b)は各段の増幅度を出して掛ける:\((-5)\times(-3)=+15\)。
❸ 出力は増幅度×入力:\(15\times0.5=7.5\ \mathrm{V}\)。
❹ 電圧は \(20\log\)、電力は \(10\log\)——ここを間違えると(1)に落ちる。
★\(\log15=\log3+1-\log2\)——与えられていない対数は分解して作る。
出題履歴:演算増幅器は理論科目の最頻出テーマ
演算増幅器はほぼ毎年出題されます。本問のように「特徴の穴埋め+計算」の2段構えはB問題の定番——平成22年度B問題18、令和6年度下期B問題18も同じ形式です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (a) | 差動成分・大・ほぼ零・小・受けにくい→(1) |
| 1段目 | −100/20=−5 |
| 2段目 | −90/30=−3 |
| 全体 | (−5)×(−3)=+15 |
| (b)Vo | 15×0.5=7.5V |
| (b)Av | 20log15≒24dB→(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・バイポーラトランジスタ電力増幅回路(電子回路25):【理論】平成27年度 A問題13

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