今回は平成26年度 理論科目 A問題13を解説します。演算増幅器(オペアンプ)を用いた能動回路で、非反転入力(+)に5Vの基準電圧を与えた回路に直流入力電圧Vin=3Vを加えたときの出力電圧Voutを求める問題です。
理想オペアンプではバーチャルショートにより反転入力(−)の電位は非反転入力(+)と等しくなります。ここでは+入力が5Vなので−入力も5V。あとは各抵抗を流れる電流から出力電圧を求めます。
平成26年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成26年度 A問題13
図のような、演算増幅器を用いた能動回路がある。直流入力電圧Vin[V]が3Vのとき、出力電圧Vout[V]として、最も近いVoutの値を次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、演算増幅器は理想的なものとする。
直流入力電圧Vin=3Vのとき、出力電圧Vout[V]として最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、演算増幅器は理想的なものとする。
(1)1.5 (2)5 (3)5.5 (4)6 (5)6.5 V

解説①:まず基準電圧を確認する

理想オペアンプに負帰還がかかるため、入力電流は零で、イマジナリショートにより反転入力の電位は非反転入力と同じ5 Vです。反転入力ノードで電流則を立てると、(3-5)/20+(Vout-5)/10=0。よってVout-5=1 V、Vout=6 Vとなり、正解は選択肢(4)です。
解説②:5 Vのノードで電流則を使う

負帰還がかかっているので成立
入力端子へは流れ込まない
kΩ のまま計算してよい
マイナス×マイナスでプラス
意味を読み取ると——入力 3 V は基準 5 V より 2 V 低い。反転増幅なので出力は基準より高くなり、増幅度 \(10/20=0.5\) 倍で 1 V だけ上。5+1=6 V です。
解説③:計算結果を選択肢と照合する

この式に入れれば \(V_{out}=5+\frac{10}{20}(5-3)=5+1=6\ \mathrm{V}\)——1行です。\(V_+=0\) なら普通の反転増幅の式に戻ります。
公式を覚えるより「基準からのズレを増幅する」というイメージのほうが応用が利きます。センサ回路では、この形で「0点をずらした増幅」をよく使います。
誤答の正体:基準の5 Vをどう扱うかで分かれる
| 選択肢 | 値 | どう考えると出るか |
| (1) | \(1.5\ \mathrm{V}\) | 普通の反転増幅 \(-0.5\times3\) の絶対値 |
| (2) | \(5\ \mathrm{V}\) | \(V_+\) をそのまま出力と考えた(帰還を忘れた) |
| (3) | \(5.5\ \mathrm{V}\) | ズレ \(2\ \mathrm{V}\) を \(0.25\) 倍してしまった |
| (4) | \(6\ \mathrm{V}\) | ◎ 正解 |
| (5) | \(6.5\ \mathrm{V}\) | 抵抗比を \(0.75\) などと取り違えた |
(1)は基準5 Vを完全に無視した場合です。「反転増幅だから \(-R_f/R_1\times V_{in}\)」と反射的に書くとここに落ちます——回路図の \(+\) 端子を必ず確認してください。
⚠️ よくある間違い
符号を落として \(V_{out}=5-1=4\ \mathrm{V}\) としてしまう誤りもあります。入力が基準より「低い」なら出力は基準より「高い」——反転だから逆向き。数式を追う前に、増減の向きを頭で決めておくと検算になります。
深掘り①:イマジナリショートはなぜ成り立つのか
理想オペアンプの開ループ利得は無限大です。出力が有限の値に落ち着いているなら、\(V_{out}=A(V_+-V_-)\) の \(A\) が無限大なので \(V_+-V_-\) はゼロでなければならない——これがイマジナリショートです。
「仮想的に短絡している」という意味で、実際に電流が流れる短絡ではありません。電位だけが等しい——だから「バーチャル(仮想)ショート」と呼びます。
成り立つ条件は「負帰還がかかっていること」です。出力が反転入力に戻っている回路でだけ使えます。正帰還のシュミットトリガ回路では成立しません——ここは要注意です。
💡 覚え方
負帰還=出力が \(-\) 端子へ戻る=イマジナリショート成立。正帰還=出力が \(+\) 端子へ戻る=コンパレータ(比較器)として働き、成立しない。回路図で「出力がどちらの端子に戻っているか」を最初に見るのがコツです。
深掘り②:オペアンプ基本回路の一覧
| 回路 | 出力の式 | 特徴 |
| 反転増幅 | \(-\dfrac{R_f}{R_1}V_{in}\) | 入力Zは \(R_1\) |
| 非反転増幅 | \(\left(1+\dfrac{R_f}{R_1}\right)V_{in}\) | 入力Zが非常に大きい |
| ボルテージホロワ | \(V_{in}\) | インピーダンス変換専用 |
| 加算回路 | \(-R_f\left(\dfrac{V_1}{R_1}+\dfrac{V_2}{R_2}\right)\) | 複数入力を足す |
| 差動増幅 | \(\dfrac{R_f}{R_1}(V_2-V_1)\) | 差だけを増幅 |
| 積分回路 | \(-\dfrac{1}{CR}\displaystyle\int V_{in}dt\) | \(R_f\) をコンデンサに置換 |
本問の回路は「差動増幅の片側に固定電圧5 Vを入れた形」とも読めます。どの基本回路の変形かを見抜けば、式を暗記していなくても対応できます。
深掘り③:なぜ基準電圧をずらすのか
単電源(0〜5 Vなど)でオペアンプを使うとき、出力は負の電圧を出せません。そこで「真ん中」を基準にして、そこから上下に振らせます。
本問の5 Vはまさにその基準です。入力が基準より低ければ出力は基準より高く、高ければ低くなる——0 Vをまたがずに反転増幅ができます。
センサの微小信号を扱う回路では、この「レベルシフト」がほぼ必ず入ります。試験問題としても、単なる公式暗記では解けない良問です。
⏱️ 本番での進め方
❶ まず \(+\) 端子の電位を確認——ここが0 Vでなければ公式は使えない。
❷ \(V_-=V_+\) と書く——イマジナリショート。
❸ \(V_-\) ノードで電流の和=0——これだけで必ず解ける。
★検算:入力が基準より低い→反転だから出力は基準より高い。6 V は 5 V より高い ✓
出題履歴:演算増幅器は毎年のように出る
演算増幅器は理論科目でほぼ毎年出題されます。反転・非反転の公式暗記だけでは対応できない変形が増えているので、イマジナリショート+電流則という原理で解く練習をしておいてください。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| V− | バーチャルショートで5V |
| 20kΩの電流 | (3−5)/20k=−0.1mA |
| 10kΩの電圧降下 | 0.1mA×10k=1V |
| Vout | 5+1=6V→(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・演算増幅器の特徴と2段反転増幅回路(電子回路26):【理論】平成27年度 B問題18

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