今回は平成27年度 理論科目 A問題13を解説します。バイポーラトランジスタを用いた電力増幅回路(コレクタ損失、A級・B級・C級増幅回路)に関する5つの記述のうち、誤っているものを選ぶ問題です。
コレクタ損失はコレクタで消費される電力で、コレクタ電流とコレクタ・エミッタ間電圧の積で表されます。A級は効率が低いが忠実、B級は無信号時に電流が流れず効率が良い、C級は高周波の電力増幅に使われるのがポイントです。
平成27年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成27年度 A問題13
バイポーラトランジスタを用いた電力増幅回路に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)コレクタ損失とは、コレクタ電流とコレクタ・ベース間電圧との積である。
(2)コレクタ損失が大きいと、発熱のためトランジスタが破壊されることがある。
(3)A級電力増幅回路の電源効率は、50%以下である。
(4)B級電力増幅回路では、無信号時にコレクタ電流が流れず、電力の無駄を少なくすることができる。
(5)C級電力増幅回路は、高周波の電力増幅に使用される。
解説①:コレクタ損失はVCEとICの積

コレクタ損失はコレクタ・エミッタ間電圧とコレクタ電流の積PC=VCEICです。VCBを使う(1)は電圧を取る端子が違うため誤りです。(2)は損失が熱となるため正しく、(3)はA級の効率が50%以下、(4)はB級が無信号時電流0、(5)はC級が高周波電力増幅に使われるため、いずれも正しい記述です。したがって正解は(1)です。
解説②:A級・B級・C級を導通角で理解する

(1) コレクタ損失=\(I_C\times\) コレクタ・ベース間電圧 → ★誤り
正しくは \(P_C=V_{CE}I_C\) です。コレクタからエミッタへ電流が流れ、その経路にかかっている電圧が \(V_{CE}\)——掛け算すれば消費電力になります。
コレクタ・ベース間電圧 \(V_{CB}\) は \(V_{CE}-V_{BE}\) で、\(V_{BE}\fallingdotseq0.7\ \mathrm{V}\) の分だけ小さい値です。電流の経路とも一致しません。
(2) コレクタ損失が大きいと熱で破壊されることがある → 正しい
損失はすべて熱になります。接合部温度が許容値(シリコンで150〜175 ℃程度)を超えると破壊します。だから放熱器(ヒートシンク)を付けます。
(3) A級電力増幅回路の電源効率は50 %以下である → 正しい
A級は無信号のときも動作点の電流が流れ続けます。理論上の最大効率は50 %で、実際にはさらに低く20〜30 %程度です。
(4) B級では無信号時にコレクタ電流が流れない → 正しい
B級は動作点を遮断点に置きます。信号がなければ電流はゼロ=無駄な電力を消費しません。理論最大効率は78.5 %です。
(5) C級電力増幅回路は高周波の電力増幅に使用される → 正しい
C級は動作点を遮断点よりさらに深く置き、信号の一部の期間しか電流を流しません。効率は非常に高い(80 %以上)反面、波形は大きくひずみます。
ひずんでも、出力に共振回路(同調回路)を入れれば必要な周波数成分だけを取り出せます——だから高周波の電力増幅に使えるのです。
解説③:5つの記述を判定して誤りを選ぶ

| 選択肢 | 内容 | 判定 | 見分けの決め手 |
| (1) | 損失=コレクタ・ベース間電圧×電流 | × | ◎ 正しくは \(V_{CE}\) |
| (2) | 損失が大きいと熱破壊 | ○ | 損失は全部熱になる |
| (3) | A級の効率は50 %以下 | ○ | 理論最大が50 % |
| (4) | B級は無信号時に電流ゼロ | ○ | 動作点が遮断点 |
| (5) | C級は高周波電力増幅 | ○ | 共振回路で波形を戻す |
(1)は「コレクタ・エミッタ間」を「コレクタ・ベース間」に変えただけです。ひらがなを1語入れ替える形の誤り——語句問題では「どの2点間か」を必ず確認してください。
☝️ ひっかけの作り方:電力の式は「電圧×電流」ですが、電圧と電流が同じ場所のものでないと意味がありません。\(I_C\) はコレクタ→エミッタと流れる電流——だから電圧も \(V_{CE}\)。この対応が崩れている式は必ず誤りです。
深掘り①:増幅級(A級・B級・C級)を一覧で
| 級 | 動作点の位置 | 電流が流れる期間 | 理論最大効率 | ひずみ | 用途 |
| A級 | 負荷線の中央 | 全周期(360°) | 50 % | 小さい | 小信号増幅・高音質 |
| B級 | 遮断点 | 半周期(180°) | 78.5 % | 大きい | プッシュプル出力段 |
| AB級 | 遮断点のやや上 | 半周期より少し長い | 50〜78 % | 中 | オーディオ出力段 |
| C級 | 遮断点より深い | 半周期未満 | 80 %以上 | 非常に大きい | 高周波電力増幅 |
効率とひずみはトレードオフです。電流を流す期間が短いほど効率は上がるが、波形は崩れる——この関係が表の背骨になっています。
B級の弱点は、0 V 付近で両方のトランジスタが休む「クロスオーバひずみ」です。そこでわずかにバイアスをかけて常時少し流しておくのがAB級——オーディオアンプの主流です。
深掘り②:なぜC級はひずんでも使えるのか
C級のコレクタ電流はパルス状で、正弦波とはまるで違う形です。それでも高周波増幅に使えるのは、出力に共振回路(同調回路)を入れるからです。
パルス波はフーリエ級数で見ると、基本波+多数の高調波の和です。共振回路は基本波だけに大きなインピーダンスを示し、高調波は素通しさせます——結果として出力は正弦波に戻ります。
この手が使えるのは、増幅する信号が単一周波数に近いときです。オーディオのように広い帯域を扱う用途ではC級は使えません——用途が「高周波(無線送信機)」に限られる理由です。
💡 覚え方
A級=きれいだが効率が悪い、B級=効率と品質の折衷、C級=効率最優先で共振回路が必須。「電流を流す期間の長さ」で並べれば全部つながります。
深掘り③:コレクタ損失と最大定格
トランジスタのデータシートには「最大コレクタ損失 \(P_{C\mathrm{max}}\)」が必ず書かれています。\(V_{CE}I_C\) がこの値を超えないように使うのが基本です。
\(V_{CE}\)-\(I_C\) 平面に \(V_{CE}I_C=P_{C\mathrm{max}}\) の曲線(双曲線)を描いたものが最大損失曲線です。負荷線がこの曲線の内側に収まっていれば安全です。
A級増幅では、無信号時(動作点)の損失が最大になります。信号が入ると出力が取り出される分、損失はむしろ減る——直感に反しますが、これがA級の特徴です。
熱になる分
直流電源が供給
A級は最大50 %
⏱️ 本番での進め方
❶ 「損失」を見たら電圧と電流の場所が一致しているか確認——(1)はここで落ちる。
❷ A級50 %/B級78.5 % は数字ごと覚える。
❸ 「無信号時に電流が流れるか」で級を判別:流れればA級、流れなければB級以下。
★C級=高周波専用。共振回路とセットで出題される。
出題履歴:電力増幅回路は語句問題の定番
増幅級の効率と特徴は、機械科目のパワーエレクトロニクスとも重なるテーマです。数値(50 %・78.5 %)と用途をセットで覚えておくと、どの切り口でも対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (1)誤り | コレクタ損失=IC×VCE(エミッタ間電圧) |
| (2) | 発熱で破壊されることがある(正) |
| (3) | A級効率は50%以下(正) |
| (4) | B級は無信号時電流0で効率良(正) |
| (5) | C級は高周波電力増幅(正) |
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