電子回路24【電験3種 理論】エミッタ接地増幅回路の電圧利得から入力電流ibを計算する!平成28年度 A問題13 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 平成28年度 A問題13 電圧利得から逆算!入力電流ibは何μA?

今回は平成28年度 理論科目 A問題13を解説します。エミッタ接地トランジスタ増幅回路の簡易小信号等価回路で、電圧利得40dBのとき、入力電圧10mVを加えたときのベース入力電流ibを求める問題です。

電圧利得[dB]を電圧増幅度(真数)に直し、増幅度の式 Av=hfe·R’L/hie から入力インピーダンスhieを求め、ib=vi/hieで計算します。

目次

平成28年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 平成28年度 A問題13 問題文
平成28年度 理論科目 A問題13 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成28年度 A問題13

 図は、エミッタ(E)を接地したトランジスタ増幅回路の簡易小信号等価回路である。コレクタ抵抗RCと負荷抵抗RLの合成抵抗がR’L=1kΩのとき、電圧利得は40dBであった。入力電圧vi=10mVを加えたときにベース(B)に流れる入力電流ib[μA]を求める。ただし、voはR’Lの両端電圧、icはコレクタ出力電流、hieは入力インピーダンス、小信号電流増幅率hfe=100とする。

合成抵抗R’L=1kΩ、電圧利得40dB、入力電圧vi=10mV、hfe=100のとき、ベースに流れる入力電流ibの値[μA]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)0.1 (2)1 (3)10 (4)100 (5)1000 μA

図 エミッタ接地トランジスタ増幅回路の簡易小信号等価回路(hie・hfe·ib・RC・RL)(問題図)
図 エミッタ接地トランジスタ増幅回路の簡易小信号等価回路(hie・hfe·ib・RC・RL)(問題図)

解説の全体像:利得からベース電流まで一本道でたどる

GPT Image 2で作成した電圧利得からベース電流までの解法ロードマップ図
40dBを真数へ直し、出力電圧、コレクタ電流、ベース電流の順にたどります。

電圧利得40dBは電圧増幅度100倍です。入力電圧10mVから出力電圧は1V、合成負荷抵抗1kΩからコレクタ電流は1mAとなります。小信号電流増幅率hfe=100なので、ベース電流はib=1mA/100=10μAです。入力インピーダンスを使う別解でもhie=1kΩ、ib=10mV/1kΩ=10μAとなり、正解は(3)です。

解説:40 dBを真数に直して4ステップで計算する

GPT Image 2で作成したエミッタ接地増幅回路のベース電流を4ステップで求める解説図
40dB→100倍→1V→1mA→10μAと単位を確認しながら計算します。
$$40=20\log_{10}A_v\ \Rightarrow\ A_v=10^{2}=100\ \text{倍}$$
❶ 利得を増幅度に
桁が1つで20 dB
$$v_o=A_vv_i=100\times10\ \mathrm{mV}=1\ \mathrm{V}$$
❷ 出力電圧
$$i_c=\frac{v_o}{R_L’}=\frac{1}{1\times10^{3}}=1\ \mathrm{mA}$$
❸ コレクタ電流
\(R_L’=1\ \mathrm{k\Omega}\)
$$i_b=\frac{i_c}{h_{fe}}=\frac{1\ \mathrm{mA}}{100}=10\ \mu\mathrm{A}$$
❹ ベース電流

❷で単位に注意してください。\(100\times10\ \mathrm{mV}=1000\ \mathrm{mV}=1\ \mathrm{V}\)——ミリのままだと桁を見誤ります

❹で \(1\ \mathrm{mA}\div100=10\ \mu\mathrm{A}\)——ミリの1/100はマイクロの10です。\(10^{-3}\div10^{2}=10^{-5}=10\times10^{-6}\) と指数で追うと確実です。

答え\(i_b=10\ \mu\mathrm{A}\) → 選択肢(3)

別解で検算し、選択肢を照合する

GPT Image 2で作成した入力インピーダンスによる検算と選択肢照合図
別解でもib=10μAとなり、正解は選択肢(3)です。
選択肢\(i_b\)〔µA〕何を間違えたか
(1)0.1さらに100で割る(\(h_{fe}\) を2回使う)
(2)1\(v_o\) を \(0.1\ \mathrm{V}\) と誤る(利得20 dBと読む)
(3)10正解
(4)100\(i_c\) をそのまま答える(\(h_{fe}\) で割り忘れ)
(5)1000桁を2つ誤る

選択肢がすべて10倍刻みなので、桁を1つ間違えると別の選択肢に着地します。単位換算を丁寧に行ってください。

(4)の100 µAは \(i_c=1\ \mathrm{mA}\) を \(\mu\mathrm{A}\) に直したときの桁違いあるいは \(h_{fe}\) で割り忘れた場合に出てきます。

⚠️ よくある間違い
\(40\ \mathrm{dB}\) は100倍です。「40だから40倍」としないでください。\(A=10^{G/20}=10^{2}=100\)——20で割ってから10のべき乗です。

☝️ ひっかけの作り方:\(h_{ie}\)(入力インピーダンス)は本問では使いません与えられた記号を全部使おうとすると、かえって混乱します。必要な情報だけを拾ってください

深掘り①:小信号等価回路の読み方

エミッタ接地の簡易小信号等価回路は、入力側が抵抗、出力側が電流源という形をしています。

部分要素意味
入力側\(h_{ie}\)(抵抗)ベース・エミッタ間の入力インピーダンス
出力側\(h_{fe}i_b\)(電流源)ベース電流に比例したコレクタ電流
負荷\(R_L’\)\(R_C\) と \(R_L\) の並列合成

「入力電流を \(h_{fe}\) 倍して出力に流す」——これがトランジスタの動作の本質です。等価回路はこれを電流源で表現しています。

電圧増幅度は \(A_v=\dfrac{h_{fe}R_L’}{h_{ie}}\) と書けます。本問なら \(100\times1000/h_{ie}=100\) から \(h_{ie}=1\ \mathrm{k\Omega}\)——逆算もできます

深掘り②:\(h\) パラメータとは何か

\(h_{ie}\)、\(h_{fe}\) といった記号は、トランジスタの特性を表す「\(h\) パラメータ(ハイブリッドパラメータ)」です。

記号名称意味典型値
\(h_{ie}\)入力インピーダンス\(v_{be}/i_b\)1〜5 kΩ
\(h_{fe}\)電流増幅率\(i_c/i_b\)100〜500
\(h_{re}\)電圧帰還率\(v_{be}/v_{ce}\)非常に小さい(無視)
\(h_{oe}\)出力アドミタンス\(i_c/v_{ce}\)非常に小さい(無視)

「簡易」等価回路では \(h_{re}\) と \(h_{oe}\) を無視します。どちらも非常に小さいので、実用上は \(h_{ie}\) と \(h_{fe}\) だけで十分です。

添字の意味も知っておくと便利です。1文字目:i=input、f=forward、r=reverse、o=output2文字目:e=emitter(エミッタ接地)です。

深掘り③:電圧増幅度・電流増幅度・電力増幅度

増幅には3種類あります。本問は電圧利得から電流を求めた——両者の関係を整理しておきましょう。

増幅度定義本問での値
電圧増幅度 \(A_v\)\(v_o/v_i\)100倍(40 dB)
電流増幅度 \(A_i\)\(i_c/i_b=h_{fe}\)100倍
電力増幅度 \(A_p\)\(A_vA_i\)10000倍(40 dB)

電力利得はデシベルでは \(10\log_{10}A_p\) です。\(10\log_{10}10000=40\ \mathrm{dB}\)——電圧利得と同じ40 dBになりました。

これは偶然ではありません\(A_p=A_vA_i\) で、電力利得 \(=10\log A_vA_i=10\log A_v+10\log A_i\)——本問は \(A_v=A_i\) なので \(20\log A_v\) と一致します。

深掘り④:デシベルから増幅度への変換

本問の第一歩は「40 dB → 100倍」です。よく出る値を覚えておけば暗算できます。

電圧利得増幅度覚え方
0 dB1倍変化なし
6 dB2倍2倍で6 dB
20 dB10倍桁が1つ
40 dB100倍桁が2つ(本問)
60 dB1000倍桁が3つ

「20 dBごとに桁が1つ」——これだけ覚えれば、40 dBが100倍だと即座に分かります電卓を使う必要はありません

中間の値は6 dB(2倍)と組み合わせます。26 dB=20+6=10×2=20倍34 dB=40−6=100÷2=50倍です。

⏱️ 本番での進め方
❶ 40 dB → 100倍——20 dBごとに桁が1つ。
❷ \(v_o=A_vv_i\) → \(i_c=v_o/R_L’\) → \(i_b=i_c/h_{fe}\)——3ステップ。
❸ \(h_{ie}\) は使わない——与えられた記号を全部使う必要はない。
❹ 単位を指数で追う——\(\mathrm{mA}\div100=10\ \mu\mathrm{A}\)。

💡 覚え方
「利得 → 電圧 → 電流 → 電流」と一方通行にたどる——途中で迷う分岐はありません各ステップで単位を確認すれば、桁のミスも防げます。

出題履歴:等価回路からの計算は定番

小信号等価回路を使った計算問題は、電子回路分野の主力です。\(h_{fe}\) による電流増幅と、\(R_L’\) による電流→電圧変換——この2つの関係を押さえれば解けます

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】令和5年度下期A問題13(縦続接続とデシベル)【理論】令和3年度A問題13(FETの小信号等価回路)

まとめ

40dBAv=10^(40/20)=100
増幅度Av=hfe·R’L/hie
hie100=100×1000/hie→hie=1000Ω
ibvi/hie=10mV/1kΩ=10μA→(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・非反転増幅とウィーンブリッジ発振(電子回路23):【理論】平成29年度 B問題18

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