今回は平成18年度 理論科目 B問題15を解説します。抵抗Rと誘導性リアクタンスXからなり力率80%(遅れ)の平衡三相負荷について、(a)Y結線・線間210V・線電流14/√3AのときのリアクタンスXと、(b)同じ負荷をΔ結線し電源相電圧200Vとしたときの全消費電力を求めるB問題です。
(a)はY結線なので相電圧=線間/√3、相電流=線電流。|Z|=相電圧/相電流を出し、力率0.8からX=|Z|×0.6。(b)はΔ結線なので各枝に線間電圧(=相電圧×√3)がかかる点に注意し、P=3×枝電流²×Rで求めます。
平成18年度 理論科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 【電気回路(三相交流)】 平成18年度 B問題15
抵抗R〔Ω〕と誘導性リアクタンスX〔Ω〕からなり、力率が80%(遅れ)の平衡三相負荷に、対称三相交流電源を接続する。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)Y結線し、線間電圧210V・線電流14/√3Aであった。負荷の誘導性リアクタンスX〔Ω〕の値として、正しいのは次のうちどれか。
(1)4 (2)5 (3)9 (4)12 (5)15〔Ω〕
(b)(a)と同じ負荷をΔ結線し、電源の相電圧を200Vとした。この平衡三相負荷の全消費電力〔kW〕の値として、正しいのは次のうちどれか。
(1)8 (2)11.1 (3)13.9 (4)19.2 (5)33.3〔kW〕
出題のポイント:測定値から負荷定数を割り出す
(a) はY結線の測定値から負荷の \(X\) を求め、(b) は同じ負荷をΔ結線したときの電力を問います。負荷そのものは変わらず、つなぎ方だけが変わるという構成です。
与えられているのは線間電圧210 V、線電流 \(14/\sqrt3\ \mathrm{A}\)、力率80 %です。Y結線なら線電流=相電流なので、相電圧を相電流で割ればインピーダンスが出ます。
\(\sqrt3\) が分子と分母の両方に現れるのが本問の親切なところです。約分できるので、\(\sqrt3\) の数値計算は不要——\(210\div14=15\) だけで済みます。

(a) の解説:\(\sqrt3\) が消える計算
Yは線電流=相電流
\(\sqrt3\) が約分
\(\sin\phi=0.6\)
❹は三平方でも出せます。\(X=\sqrt{15^{2}-12^{2}}=\sqrt{225-144}=\sqrt{81}=9\)——\(12:9:15\) は \(4:3:5\) の3倍ですから、暗算で確認できます。
力率0.8を見たら「4:3:5」と反射してください。抵抗が4、リアクタンスが3、インピーダンスが5の比——\(|\dot Z|=15\) ならそれぞれ12、9 です。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題15
(b) の解説:\(\sqrt3\) を2回使う
電源の相電圧が200 V——この電源はY結線なので、線間電圧は \(\sqrt3\) 倍になります。そしてΔ負荷には、その線間電圧がまるごとかかります。
1回目の \(\sqrt3\)
2回目の \(\sqrt3\) が効く
\(=19.2\ \mathrm{kW}\)
\(23.09^{2}=533.3\) は \(\left(\dfrac{200\sqrt3}{15}\right)^{2}=\dfrac{120000}{225}=533.3\) と分数で持つと正確です。\(3\times533.3\times12=19200\)——きれいに割り切れます。
もし同じ負荷をY結線して相電圧200 Vをかけたら、\(P=3\times\left(\dfrac{200}{15}\right)^{2}\times12=6400\ \mathrm{W}\)——Δのちょうど \(1/3\) です。

誤答の正体:\(\sqrt3\) を何回掛けるか
| 1相にかかる電圧 | 枝電流〔A〕 | \(P\)〔kW〕 | 何を間違えたか |
| 346.4 V(正しい) | 23.1 | 19.2 | 正解 |
| 200 V | 13.3 | 6.4 | 電源の \(\sqrt3\) を忘れる |
| 115.5 V | 7.70 | 2.1 | 逆に \(\sqrt3\) で割る |
選択肢(1)8や(2)11.1、(5)33.3は、こうした誤りの受け皿です。特に(5)33.3 kWは、さらに \(\sqrt3\) を掛けてしまった場合に近い値になります。
⚠️ よくある間違い
「電源の相電圧」と書かれていたら、電源の結線を確認してください。Y電源なら線間は \(\sqrt3\) 倍、Δ電源なら線間=相電圧——この一手を飛ばすと全部ずれます。
☝️ ひっかけの作り方:(a) と (b) で電圧の値が違います(210 Vと200 V)。「同じ負荷」と書かれているのは \(R\) と \(X\) のことで、電源は別です。問題文を読み飛ばさないでください。
深掘り①:電力を3通りで検算する
(b) の19.2 kWを、別の式でも確かめておきましょう。一致すれば計算ミスがないと確信できます。
\(I_l=\sqrt3\times23.09=40\)
❸では線電流が \(\sqrt3\times23.09=40\ \mathrm{A}\) になります。Δ結線では線電流が枝電流の \(\sqrt3\) 倍——ここでも \(\sqrt3\) が登場します。
3通りとも19200 W——どの式を使っても同じです。本番では1通りで十分ですが、時間が余ったら別式で検算すると安心できます。
深掘り②:スターデルタ始動の原理そのもの
「Δにすると電力3倍」という本問の結論は、実務のスターデルタ始動に直結します。三相誘導電動機の始動法として最も普及している方式です。
| 始動時(Y結線) | 運転時(Δ結線) | |
| 1相にかかる電圧 | \(V_l/\sqrt3\) | \(V_l\) |
| 相電流 | \(1/\sqrt3\) 倍 | 基準 |
| 線電流 | \(1/3\) 倍 | 基準 |
| トルク | \(1/3\) 倍 | 基準 |
始動時はYにして電流を \(1/3\) に抑え、回転が上がったらΔに切り替える——電源設備への負担を減らすのが目的です。ただしトルクも \(1/3\) になるので、重い負荷では使えません。
本問の数字で言えば、Δで19.2 kW消費する負荷が、Yなら6.4 kW——ちょうど \(1/3\) です。機械科目でも同じ計算が問われます。
深掘り③:どちらの結線を選ぶかは何で決まるか
同じ負荷でも、YとΔのどちらでつなぐかで動作が変わります。選択の基準を整理しておきましょう。
| 観点 | Y結線が有利 | Δ結線が有利 |
| 1相の電圧 | 低くて済む(絶縁が楽) | 高い電圧が必要 |
| 1相の電流 | 線電流と同じ | 線電流より小さい |
| 中性点 | 取り出せる(接地できる) | ない |
| 第3高調波 | 中性線に集中 | 内部を循環して外に出ない |
変圧器ではΔ-Y結線がよく使われます。Δ側で第3高調波を循環させて外に出さず、Y側で中性点を接地——両方の長所を取る組合せです。
負荷側では、同じ電源で大きな電力が欲しければΔ、電圧を抑えたければY——本問はまさにその比較を計算させています。
⏱️ 本番での進め方
❶ 相電圧÷相電流でインピーダンス——\(\sqrt3\) が約分されることが多い。
❷ 力率0.8なら 12:9:15——3:4:5 の暗記で計算不要。
❸ 「電源の相電圧」はY電源なら線間の \(1/\sqrt3\)——結線を確認。
❹ Δ負荷の電力はY負荷の3倍——スターデルタ始動の原理。
💡 覚え方
\(\sqrt3\) は「電源側で1回、負荷側で1回」——本問はY電源+Δ負荷なので両方で働きます。回路図の左から右へ順にたどれば、掛け忘れも掛けすぎも起きません。
★重要:令和5年度下期にそのまま再出題された
令和5年度下期B問題15は、本問と完全に同一の問題です。数値も選択肢の並びも、正答番号(a)(3)(b)(4)まですべて同じ——17年の時を経ての再出題でした。
| 本問(平成18年度 B問題15) | 令和5年度下期 B問題15 | |
| (a) の条件 | Y結線・線間210 V・線電流 \(14/\sqrt3\) A・力率80 % | 完全に同一 |
| (b) の条件 | Δ結線・電源の相電圧200 V | 完全に同一 |
| 選択肢 (a) | 4/5/9/12/15 | 並びも同じ |
| 選択肢 (b) | 8/11.1/13.9/19.2/33.3 | 並びも同じ |
| 正答番号 | (a)(3) (b)(4) | (a)(3) (b)(4) |
当サイトで確認している「完全同一ペア」はこれで4組目です。B問題は作問コストが高いため、良問がそのまま再利用される——古い年度の過去問こそ次に出る可能性があると考えてください。
⚠️ よくある間違い
「平成18年度は20年近く前だから飛ばそう」という判断は危険です。原理を問う良問は色あせません。特にY・Δの比較のような基本テーマは、繰り返し出題されます。
出題履歴:Y・Δのつなぎ替えは定番
同じ負荷を結線し直して比較させる出題は、三相交流の核心を突く良問です。「Δにすると電力3倍」という結論を、計算で導けるようにしておくことが大切です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和5年度下期B問題15(完全に同一の問題)
まとめ
| (a)|Z| | (210/√3)/(14/√3)=15Ω |
| (a)X | 15×0.6=9Ω …(3) |
| (b)Δ枝 | 線間346V,枝電流23.1A |
| (b)P | 3×23.1²×12≒19.2kW …(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・Δ結線と三相電力:【理論】平成21年度B問題16

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