今回は平成19年度 理論科目 B問題15を解説します。線間電圧200V・周波数50Hzの対称三相電源に抵抗RとコイルLからなる平衡三相負荷を接続し、有効電力P=2.4kW・無効電力Q=3.2kvarのとき、(a)負荷電流と、(b)各線間にコンデンサC(Δ接続)を入れて力率を1にするCの容量を求めるB問題です。
(a)は皮相電力S=√(P²+Q²)から線電流I=S/(√3×V)。(b)は力率1にするため、Δ接続コンデンサの進み無効電力Q_Cを負荷の遅れ無効電力Q=3.2kvarに等しくします。Δコンデンサには線間電圧200Vがかかるので Q_C=3V²ωC。
平成19年度 理論科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題15
電験3種 理論科目 【電気回路(三相交流)】 平成19年度 B問題15
線間電圧200V、周波数50Hzの対称三相交流電源に、抵抗RとコイルLからなる平衡三相負荷を接続したところ、有効電力はP=2.4kW、無効電力はQ=3.2kvarであった。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)負荷電流の大きさ〔A〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)2.3 (2)4.0 (3)6.9 (4)9.2 (5)11.5〔A〕
(b)各線間に同じ静電容量のコンデンサCをΔ接続して、電源からみた力率を1にした。静電容量Cの値〔μF〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)48.8 (2)63.4 (3)84.6 (4)105.7 (5)146.5〔μF〕
出題のポイント:電力の三角形から電流を出す
与えられているのは有効電力 \(P=2.4\ \mathrm{kW}\) と無効電力 \(Q=3.2\ \mathrm{kvar}\)——回路の素子値は一切与えられていません。
それでも電流は求まります。\(P\) と \(Q\) から皮相電力 \(S\) が出て、\(S=\sqrt3V_lI_l\) から電流が逆算できる——電力の三角形が使えるからです。
\(2400\) と \(3200\) は \(3:4\) です。だから \(S=4000\ \mathrm{V\!\cdot\!A}\)(\(5\) にあたる)——またしても3:4:5で、電卓なしで求まります。

(a) の解説:3:4:5 で皮相電力を出す
3:4:5
❶で \(2400:3200=3:4\) に気づけば、\(S=4000\) は暗算です。\(800\times(3,4,5)=(2400,3200,4000)\)——800倍の3:4:5になっています。
力率は \(\cos\phi=\dfrac{2400}{4000}=0.6\) です。遅れ力率0.6の誘導性負荷——実務でもよく見る値です。

(b) の解説:無効電力をコンデンサで打ち消す
力率を1にするには、負荷の遅れ無効電力3200 varを、コンデンサの進み無効電力で完全に打ち消します。コンデンサはΔ接続なので、各コンデンサには線間電圧200 Vがかかります。
線間電圧を使う
最も近いのは84.6
計算値は約84.9 µFで、選択肢(3)の84.6 µFが最も近い値です。選択肢を代入して \(Q_C\) を計算し直すと約3190 var——3200 varにほぼ一致します。
もしY結線なら、各コンデンサにかかるのは \(200/\sqrt3=115.5\ \mathrm{V}\) なので、必要な容量は3倍の約255 µFになります。Δのほうが小さな容量で済む——だから進相コンデンサはΔ結線が主流です。

誤答の正体:選択肢から逆算して確かめる
各選択肢の容量で、どれだけの無効電力が出るかを計算すれば、正解が一目で分かります。
| 選択肢 | \(C\)〔µF〕 | \(Q_C=3\omega CV_l^{2}\)〔var〕 | 判定 |
| (1) | 48.8 | 1840 | ×(不足) |
| (2) | 63.4 | 2390 | ×(不足) |
| (3) | 84.6 | 3190 | ◎(3200に一致) |
| (4) | 105.7 | 3985 | ×(過剰) |
| (5) | 146.5 | 5523 | ×(過剰) |
(4)105.7 µFは \(1.25\) 倍、(2)63.4 µFは \(0.75\) 倍——いずれも中途半端な値です。3200 varぴったりを作れるのは(3)だけです。
⚠️ よくある間違い
Y結線で計算すると約255 µFとなり、選択肢のどれとも合いません。「合う選択肢がない」と気づいたら、コンデンサの結線を疑ってください。
☝️ ひっかけの作り方:「力率を1にする」=「無効電力をゼロにする」です。「力率を0.9にする」なら、必要な \(Q_C\) は \(Q-P\tan(\cos^{-1}0.9)\)——全部は打ち消しません。問題文をよく読むことが大切です。
深掘り①:素子値が分からなくても解ける理由
本問には \(R\) も \(L\) も与えられていません。それでも解けるのは、電力の情報だけで十分だからです。試しに素子値を逆算してみましょう。
6:8:10
一致 ✓
\(6+j8\)、大きさ10 Ω——やはり3:4:5です。電験の三相問題は、ほぼ例外なくこの三角形で作られています。
素子値が分かれば \(Q=3I^{2}X=3\times133.3\times8=3200\ \mathrm{var}\)——問題文の条件を再現できます。電力から入っても素子から入っても、同じ回路にたどり着くわけです。
深掘り②:力率改善の効果を数字で確認する
コンデンサを入れると何がどう変わるかを、本問の数値で整理しておきましょう。
| 改善前 | 改善後(力率1) | |
| 有効電力 \(P\) | 2400 W | 2400 W(不変) |
| 無効電力 \(Q\) | 3200 var | 0 var |
| 皮相電力 \(S\) | 4000 V·A | 2400 V·A |
| 力率 | 0.6 | 1.0 |
| 線電流 | 11.55 A | 6.93 A |
電流が11.55 Aから6.93 Aへ、4割も減ります。送電線の損失は電流の二乗に比例するので、損失は \(0.6^{2}=0.36\)、つまり64 %も削減できます。
負荷の枝には相変わらず11.55 Aが流れています。減るのは電源から見た電流だけ——無効電流はコンデンサと負荷の間を循環しているのです。
電気料金の力率割引は、この効果に対する対価です。力率が良い需要家は電力会社の設備を効率よく使うので、基本料金が割引されます。
深掘り③:必要なコンデンサ容量の一般式
「力率を \(\cos\phi_1\) から \(\cos\phi_2\) に改善したい」という実務的な問題では、必要な無効電力を先に求めます。
力率0.6
問題の値と一致 ✓
力率を0.9までにしたい場合なら、\(\tan\phi_2=\dfrac{\sqrt{1-0.81}}{0.9}=0.484\)、\(Q_C=2400\times(1.333-0.484)=2038\ \mathrm{var}\)——必要な容量は約54 µFと小さくて済みます。
実務では力率1を狙いません。負荷が軽いときに進み過ぎて電圧が上がるおそれがあるためで、0.95〜0.99程度に収めるのが一般的です。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(P\) と \(Q\) から \(S=\sqrt{P^{2}+Q^{2}}\)——3:4:5 なら暗算。
❷ \(I=S/(\sqrt3V_l)\)——皮相電力から電流を逆算。
❸ Δコンデンサは \(Q_C=3\omega CV_l^{2}\)——線間電圧を使う。
❹ 選択肢を代入して \(Q_C\) を再現——最も確実な検算。
💡 覚え方
\(2400\) と \(3200\) を見たら \(3:4\)——\(S=4000\) が即座に出ます。電験の交流問題は3:4:5 で作られていると思って数字を眺めると、計算がぐっと速くなります。
出題履歴:力率改善は毎年のように問われる
進相コンデンサの容量計算は、理論・電力の両科目で頻出です。無効電力を求める→打ち消す容量を出すという2段階さえ押さえれば、数値が変わっても確実に解けます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成25年度B問題15(コイルの無効電力をコンデンサで打ち消す)/【理論】令和6年度下期B問題15(力率1にするコンデンサ)
まとめ
| S | √(2400²+3200²)=4000VA |
| (a)I | 4000/(√3×200)≒11.5A …(5) |
| Q_C | =Q=3200=120000ωC |
| (b)C | ≒84.6μF …(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・三相の力率改善(Δコンデンサ):【理論】平成25年度B問題15

コメント