今回は平成23年度 理論科目 A問題10を解説します。2E電源でCを充電後、t=0でE電源側へ切り換えたときのコンデンサから流れ出る電流iの波形を選ぶ問題です。
切り換え直後、コンデンサは2Eに充電されています。E側の回路でキルヒホッフより初期電流i(0)=(2E−E)/R=E/R。定常でコンデンサ開放となり電流は0へ指数関数的に減衰します。
平成23年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
2電源の切り換え問題は、切り換え直前のコンデンサ電圧さえ確定できれば道が開けます。そして「放電=0 Vまで下がる」とは限らないことにも注意が必要です。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成23年度 A問題10
図のように、2種類の直流電源、R〔Ω〕の抵抗、静電容量C〔F〕のコンデンサ及びスイッチSからなる回路がある。この回路において、スイッチSを①側に閉じて回路が定常状態に達した後に、時刻t=0〔s〕でスイッチSを①側から②側に切り換えた。②側への切り換え以降の、コンデンサから流れ出る電流i〔A〕の時間変化を示す図として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
上の図(1)〜(5)から、コンデンサから流れ出る電流iの波形として最も適切なものを一つ選べ。

出題のポイント:切り換え直前のコンデンサ電圧が全てを決める
2つの電源を切り換える問題です。難しく見えますが、手順は3ステップに固定されています。
| 手順 | やること | 本問での答え |
| ① | 切り換え直前のコンデンサ電圧を求める | \(v_C(0^-)=2E\) |
| ② | その電圧は急変できないので、切り換え直後にそのまま持ち込む | \(v_C(0^+)=2E\) |
| ③ | 切り換え後の回路で初期値と最終値を出す | \(i(0)=E/R\)、\(i(\infty)=0\) |
①で「2E」と確定できるかどうかが最初の関門です。①側で十分時間が経つと、定常状態のコンデンサは開放になります。電流が流れない → 抵抗Rでの電圧降下が0 V → だからコンデンサには電源電圧2Eがそのままかかっています。

見落としやすい事実:コンデンサは0 Vまで放電しない
「放電」と聞くと、電圧が0 Vまで下がる様子を思い浮かべがちです。しかし本問では違います。
| コンデンサ電圧 \(v_C\) | 電流 i | Rにかかる電圧 | |
| t=0(切換え直後) | 2E | E/R | \(2E-E=E\) |
| t=τ | \(E+E/e\approx1.37E\) | 0.368 E/R | 0.368 E |
| t=∞(新しい定常) | E(0 Vではない) | 0 | 0 |
コンデンサは②側の電源電圧Eに落ち着きます。2EからEへ——差の分だけ放電して止まるのです。「放電=0 Vになる」と決めつけると、初期電流も最終値も間違えます。
正確に言えば、電流を流す原動力は「コンデンサ電圧と電源電圧の差」です。差がEのときに電流がE/R、差が0になったら電流も0。この差が指数関数で消えていく——それがこの問題の全体像です。
最終値E+減っていく差分E
差分だけが電流を作る
問題の解説:初期値・最終値・向きの3点で波形を決める
STEP1 切り換え直前の電圧を確定する
Cが開放なので電流0、Rでの降下も0
ここが全ての出発点
STEP2 切り換え直後の電流を求める
t=0で②側へ切り換えても、コンデンサ電圧は2Eのままです。②側の電源はEなので、差の分がすべて抵抗にかかります。
2EでもE/2でもなくE
問題の矢印の向き(正)に流れる
STEP3 最終値と減衰の様子
Cが開放になり電流が止まる
常に正のまま0へ指数減衰
初期値の36.8 %




誤答の波形はどんな勘違いから生まれるか
選択肢は電流波形の図です。どこを間違えるとどんな図になるかを整理しました。初期値については実際に計算して確認しています。
| 描かれている波形 | 何を間違えたか | その値 |
| 初期値 2E/R から減衰 | 切換え先の電源Eを引き忘れた(コンデンサ電圧だけ見た) | 2E/R |
| 初期値 E/(2R) から減衰 | 電圧差ではなく抵抗を2倍と勘違い | E/(2R) |
| 0から増える波形 | 充電と放電を取り違えた(RL回路の形) | — |
| 負の向きの電流 | 電流の向きを逆に取った | — |
| 0まで一気に落ちる | 「切り換えたら電流0」と考えた | — |
最も多いのは初期値を2E/Rとする誤りです。「コンデンサは2Eに充電されている」までは正しいのですが、②側にも電源Eがあることを忘れて、コンデンサ電圧をそのまま抵抗にかけてしまいます。
電流を作るのは「差」——この一点さえ意識すれば防げます。もし②側が短絡(0 V)だったなら初期電流は確かに2E/Rですが、本問はE Vの電源につながっています。
「0から増える」波形も要注意です。RC回路の充電では電流は最大値から減るのが基本形。0から増えるのはRL回路の電流(またはRC回路のコンデンサ電圧)です。何のグラフかを必ず確認してください。
エネルギーで検算する:熱になるのは3分の1だけ
波形が正しいことは、エネルギーの収支からも確かめられます。E=10 V、R=100 Ω、C=100 μFとして計算しました。
\(2E\to E\) で \(\tfrac32CE^2\) 放出
放出分の3分の1
放出分の3分の2
合計すると \(\tfrac12CE^2+CE^2=\tfrac32CE^2\) ——コンデンサが放出した分とぴったり一致します ✓(数値では 0.005 J+0.010 J=0.015 J)
興味深いのは放出エネルギーの2/3が電源へ回収されることです。抵抗を通した単純な放電(令和元年度A問題10)では100 %が熱になりましたが、行き先に電源があると、その電源を充電する形でエネルギーが戻ります。
これは回生ブレーキと同じ考え方です。電車がブレーキをかけるとき、運動エネルギーを熱として捨てる代わりに発電機として使い、架線へ電力を戻す。「捨てるか、戻すか」は行き先に電源があるかどうかで決まります。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 切り換え問題は「直前の電圧」を最初に確定する。ここが出発点
② 定常状態でCは開放 → 抵抗の電圧降下は0 → コンデンサ電圧=電源電圧
③ 初期電流は(コンデンサ電圧)−(新しい電源電圧)を R で割る。差がすべて
④ 最終値は新しい電源電圧。0 Vとは限らない
⑤ 波形は初期値・最終値・向きの3点で決まる。指数関数の計算は不要
💡 覚え方
「電圧は引き継ぎ、電流は差で決まる」。コンデンサ電圧は切り換えをまたいでそのまま持ち越し、電流はその電圧と新しい電源の差から生まれます。2E − E = E ——引き算を一つ入れるだけです。
⚠️ よくある間違い
最頻出は初期電流を 2E/R とする誤りです。②側の電源E分を引き忘れています。次に「最終的に0 Vまで放電する」という思い込み。落ち着く先は②側の電源電圧Eです。また電流が0から増える波形を選ぶのも定番のミスで、これはRL回路の形です。
まとめ
| vC(0) | 2E |
| i(0) | (2E−E)/R=E/R |
| 最終 | 0 |
| 答え | (3) |
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