過渡現象7【電験3種 理論】時定数が一致して電流が一定になる2次過渡回路!令和4年度下期 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 令和4年度下期 A問題10 時定数が揃うと電流が一定に!その条件とは?

今回は令和4年度下期 理論科目 A問題10を解説します。1V電源・1Ω・1Hコイル・1Fコンデンサ・1Ωからなる回路で、スイッチSをt=0で閉じたときの電流iSの波形を選ぶ問題です(閉じる直前は定常状態)。

重ね合わせで電源分(0→1A、τ=L/R=1s)と放電分(1→0、τ=CR=1s)を足します。今回はC=1Fで両方の時定数が等しいため、iS=(1−e−t)+e−t=1で一定になります。

目次

令和4年度下期 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

コイルとコンデンサが両方ある回路——2つの過渡現象が同時に進行します。しかも本問は時定数がぴたりと一致し、指数項が完全に相殺する特別なケースです。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 令和4年度下期 A問題10 問題文
令和4年度下期 理論科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 令和4年度下期 A問題10

 図の回路のスイッチSをt=0〔s〕で閉じる。電流iS〔A〕の波形として最も適切に表すものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、スイッチSを閉じる直前に、回路は定常状態にあったとする。

上の図(1)〜(5)から、電流iSの波形として最も適切なものを一つ選べ。

図 1V電源・1Ω・1H・1F・1Ωとスイッチの回路(問題図)
図 1V電源・1Ω・1H・1F・1Ωとスイッチの回路(問題図)

出題のポイント:2つの過渡現象が同時に起きている

この回路にはコイルとコンデンサの両方があります。スイッチを閉じると、2つの過渡現象が同時並行で進行します。

成分何が起きるか電流の変化時定数
RL成分電源からコイルへ電流が立ち上がる0 → 1 A(増える)\(\tau_1=L/R\)
RC成分充電済みのコンデンサが放電する1 A → 0(減る)\(\tau_2=CR\)

そしてこの2つの電流はどちらもスイッチを同じ向きに流れます。だから \(i_S\) は2つのになります。

片方が増え、もう片方が同じだけ減る——もし増減が完全に釣り合えば、合計は変化しません。本問はまさにその「完全に釣り合う」ケースです。

公式の1V・1Ω・1H・1F・1Ω回路で、スイッチ投入前の定常状態からコイル電流0Aとコンデンサ電圧1Vを求め、投入直後のスイッチ電流1Aを示す解説
投入直後はiL=0A、vC=1Vを引き継ぎ、RC放電電流1Aだけがスイッチを下向きに流れるためiₛ(0+)=1Aです。

スイッチを閉じる直前の状態を確定する

過渡現象の問題は「直前の状態」から始まります。ここを間違えると全部が崩れます。

$$i_C=0\;\Rightarrow\;\text{回路に電流が流れない}$$
❶ 定常状態のコンデンサは開放
スイッチが開いているので経路はC枝だけ
$$v_R=0\;[\mathrm{V}]$$
❷ 電流0なら抵抗の降下も0
$$v_C=1\;[\mathrm{V}]$$
❸ コンデンサは電源電圧まで充電済み
これがRC放電の初期条件
$$i_L=0\;[\mathrm{A}]$$
❹ コイルにはまだ電流が流れていない
これがRL立上りの初期条件

2つの初期条件が揃いました。\(v_C=1\;\mathrm{V}\) と \(i_L=0\;\mathrm{A}\)——どちらも急変できない量なので、スイッチを閉じた直後もこの値のままです。

問題の解説:重ね合わせて指数項が消えることを確かめる

使う公式:重ね合わせの理と2つの時定数
$$i_S(t)=\underbrace{\frac{V}{R}\left(1-e^{-t/\tau_1}\right)}_{\text{RL成分}}+\underbrace{\frac{V}{R}e^{-t/\tau_2}}_{\text{RC成分}},\qquad \tau_1=\frac{L}{R},\quad \tau_2=CR$$

RLは \(L/R\)(割る)、RCは \(CR\)(掛ける)——形が違うので必ず区別します。

STEP1 両端の値を確かめる

$$i_S(0^+)=0+1=1\;[\mathrm{A}]$$
❺ 投入直後
RL成分は0、RC成分が1 A
$$i_S(\infty)=1+0=1\;[\mathrm{A}]$$
❻ 十分後
RL成分が1 A、RC成分は0

出発点と到達点がどちらも1 A——この時点で「山型か、谷型か、一定か」の3択まで絞れます。両端が同じ値なので、単調増加や単調減少の波形は消せます。

STEP2 2つの時定数を計算する

$$\tau_1=\frac{L}{R}=\frac{1}{1}=1\;[\mathrm{s}]$$
❼ RL側
Lを Rで割る
$$\tau_2=CR=1\times1=1\;[\mathrm{s}]$$
❽ RC側
Cと Rを掛ける
$$\tau_1=\tau_2=1\;[\mathrm{s}]$$
❾ 一致した
これが本問の仕掛け

STEP3 足して指数項が消えることを見る

$$i_S(t)=\left(1-e^{-t}\right)+e^{-t}$$
❿ 代入
同じ \(e^{-t}\) が現れる
$$=1-e^{-t}+e^{-t}=1\;[\mathrm{A}]$$
⓫ 完全に相殺
時間に依存しない=一定

実際に各時刻の値を計算して確認しました。どの瞬間でも合計はぴったり1.0000 Aです。

時刻 t [s]RL成分RC成分合計 \(i_S\)
00.00001.00001.0000
0.250.22120.77881.0000
0.500.39350.60651.0000
1.000.63210.36791.0000
2.000.86470.13531.0000
5.000.99330.00671.0000
1V・1Ω・1HのRL立上りと1F・1ΩのRC放電を閉回路へ分け、両時定数1秒と電流方向を確認して加える解説
RL成分は1−e⁻ᵗ、RC成分はe⁻ᵗです。両方ともスイッチを下向きに流れ、同じ時定数なので指数項が完全に相殺します。
答え\(i_S(t)=1\;[\mathrm{A}]\) で常に一定 → 選択肢(5)(水平な直線)
RL立上り電流とRC放電電流を代数・代表時刻の表・三曲線グラフで検算し、合計が常に1Aとなることを示す解説
t=0、t=1秒、t→∞のすべてで合計1Aです。一般式でもiₛ=1−e⁻ᵗ+e⁻ᵗ=1Aと証明できます。
RL成分とRC成分の振幅および時定数が一致する条件を一般式から導き、Cが異なる場合の山型・谷型と比較する解説
完全相殺には振幅と時定数の両方の一致が必要です。今回はL/R=RC=1秒かつ各振幅1Aなので一定になります。

もし時定数がずれていたら——山型になる

「完全相殺」は偶然ではなく、出題者が仕組んだ特別な条件です。どれくらい特別かを見るために、Cだけを2 Fに変えて計算してみました(\(\tau_2=2\;\mathrm{s}\) になります)。

時刻 t [s]RL成分RC成分合計様子
00.00001.00001.0000出発点は同じ
0.500.39350.77881.17231 Aを超えた
1.000.63210.60651.2387山の頂上あたり
2.000.86470.36791.2325下り始める
4.000.98170.13531.11701 Aへ戻りつつある
8.000.99970.01831.0180ほぼ1 A

放電がゆっくりになったぶん、まだ減りきらないうちに立上りが加わって山ができます。両端は1 Aのままなのに、途中で1.24 Aまで膨らむ——これが時定数がずれたときの姿です。

逆に\(\tau_2<\tau_1\)(放電のほうが速い)なら谷型になります。つまり波形は3種類あり、どれになるかは2つの時定数の大小だけで決まります

条件波形理由
\(\tau_1=\tau_2\)一定(水平)増える分と減る分が常に釣り合う
\(\tau_1<\tau_2\)(放電が遅い)山型減りきる前に増加分が乗る
\(\tau_1>\tau_2\)(放電が速い)谷型先に減ってから増加が追いつく

完全相殺には「時定数の一致」と「振幅の一致」の両方が必要です。本問は \(L/R=CR=1\;\mathrm{s}\) かつ両成分の振幅がどちらも \(V/R=1\;\mathrm{A}\)——二重に条件が揃っているから一定になります。

誤答の波形はどんな勘違いから生まれるか

描かれている波形何を間違えたか
0から増えるコンデンサの初期充電(1 V)を見落とし、RL成分だけを考えた
1 Aから減って0へコイルの立上りを見落とし、RC放電だけを考えた
山型時定数が一致することに気づかなかった(\(L/R\ne CR\) と思った)
谷型2成分を引き算してしまった(向きの判定を誤った)
2 Aから始まる投入直後にRL成分も流れると考えた

最も多いのは「片方だけを考える」誤りです。回路にLとCの両方があるのに、慣れた片方だけに目が行ってしまいます。素子を数えて、過渡現象がいくつ起きるか確認するのが対策です。

「谷型」を選ぶのは向きの誤りです。2つの電流がスイッチを同じ向きに流れるかどうかは回路図で確認が必要で、逆向きなら引き算になります。本問は同じ向きなので足し算です。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① LとCが両方ある回路は、過渡現象が2つ起きると認識する
② スイッチを閉じる直前の \(v_C\) と \(i_L\) を先に確定する(これが初期条件)
両端の値(t=0とt=∞)を先に出す。同じ値なら山型・谷型・一定の3択
\(\tau_1=L/R\) と \(\tau_2=CR\) を比べる——一致なら一定、\(\tau_1<\tau_2\) なら山型
⑤ 2成分が同じ向きか逆向きかを回路図で確認(足すのか引くのか)

💡 覚え方
「RLは割る、RCは掛ける」——\(\tau_1=L/R\)、\(\tau_2=CR\)。この2つが一致すると \((1-e^{-t})+e^{-t}=1\) で指数項が消えて一定。数式が最もきれいに決まる、印象に残る問題です。

⚠️ よくある間違い
片方の過渡現象だけを考えるのが最頻出のミスです。また\(\tau_2=CR\) を \(C/R\) としてしまうと一致に気づけません。RLだけが割り算(\(L/R\))で、RCは掛け算(\(CR\))——形が違うことを意識してください。

同じ回路でコンデンサだけが違う姉妹問題が出題されています

本問は \(C=1\;\mathrm{F}\) で \(\tau_1=\tau_2=1\;\mathrm{s}\) となり、指数項が完全に相殺して一定になりました。ところがまったく同じ回路図でCだけを2 Fにした問題が、令和6年度上期と令和7年度上期に出題されています。

条件\(\tau_1=L/R\)\(\tau_2=CR\)波形出題
C=1 F(本問)1 s1 s(一致)1 Aで水平令和4年度下期 A問題10
C=2 F1 s2 s山型(最大1.25 A)令和6年度上期・令和7年度上期 A問題10

「見たことがある回路だ」で答えを決めるのが最も危険な組合せです。回路図が同じでも、Cの値ひとつで波形が「水平」から「山型」へ変わります。必ず2つの時定数を計算して大小を比べてください。

あわせて解いておきたい記事:令和6年度上期 理論科目 A問題10(C=2 Fで山型になる版)

まとめ

初期/最終ともに1A
τ₁L/R=1s
τ₂CR=1s
答え一致→一定1A …(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・時定数の異なる2次過渡(山型):【理論】令和7年度上期A問題10

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