今回は平成18年度 理論科目 A問題9を解説します。抵抗RとインダクタンスLを直列接続した回路に角周波数ωの交流電圧Ėを加えたとき、電圧に対する電流İの位相を求める問題です。
RL直列回路は誘導性なので、電流は電圧より遅れます。インピーダンスの偏角φ=tan⁻¹(ωL/R)がその遅れ角です。
平成18年度 理論科目 A問題9:問題文と選択肢
平成18年度の公式問題を収録した下の問題画像で、RL直列接続、電流方向、5つの位相表現を確認しながら進めます。公式問題画像と既存の問題図は原資料として保持します。電気技術者試験センターの現在の第三種過去問題一覧と照合方針も確認しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成18年度 A問題9
抵抗R〔Ω〕とインダクタンスL〔H〕を直列に接続した回路に、角周波数ω〔rad/s〕の正弦波交流電圧Ė〔V〕を加えた。このとき、電源電圧に対する回路の電流İ〔A〕の位相として、正しいのは次のうちどれか。
(1)sin⁻¹(R/ωL) 進む (2)cos⁻¹(R/ωL) 遅れる (3)cos⁻¹(ωL/R) 進む (4)tan⁻¹(R/ωL) 遅れる (5)tan⁻¹(ωL/R) 遅れる

出題のポイント:向きを先に決めれば、5択が2択になる
RL直列回路は誘導性なので、電流は電圧より遅れます。この一点だけで「進む」と書かれた選択肢が消えます。残るのは式の形の判断だけです。
位相角はインピーダンスの偏角で、\(\tan\phi=\omega L/R\) です。リアクタンスが分子、抵抗が分母——ここを逆にすると選択肢(4)に着地します。

2段階で選択肢を絞る
| 式 | 向き | 判定 | |
| (1) | \(\sin^{-1}(R/\omega L)\) | 進む × | 向きが誤り |
| (2) | \(\cos^{-1}(R/\omega L)\) | 遅れる | 式が誤り(分母が \(|\dot Z|\) でない) |
| (3) | \(\cos^{-1}(\omega L/R)\) | 進む × | 2か所誤り |
| (4) | \(\tan^{-1}(R/\omega L)\) | 遅れる | 分子分母が逆(最も惜しい) |
| (5) | \(\tan^{-1}(\omega L/R)\) | 遅れる | ◎ 正解 |
まず「遅れる」で(1)(3)が消えます。次に \(\tan^{-1}\) の中身で(2)(4)が消えます——実質2ステップで正解にたどり着きます。
(2)(3)の \(\cos^{-1}\) は式として成立しません。\(\cos\phi=R/|\dot Z|\) であって、分母は \(\omega L\) ではなく \(|\dot Z|\) だからです。三角比の分母は必ず斜辺——ここを確認すれば見抜けます。



インピーダンス三角形を描いて確認する
横軸に \(R\)、縦軸に \(\omega L\)、斜辺が \(|\dot Z|\)——この直角三角形を描けば、3つの三角比がすべて読み取れます。
| 三角比 | 式 | 分母は何か |
| \(\tan\phi\) | \(\dfrac{\omega L}{R}\) | 抵抗(横) |
| \(\sin\phi\) | \(\dfrac{\omega L}{|\dot Z|}\) | インピーダンス(斜辺) |
| \(\cos\phi\) | \(\dfrac{R}{|\dot Z|}\) | インピーダンス(斜辺) |
\(\tan\) だけが斜辺を使いません。だから \(|\dot Z|\) を計算しなくても位相角が求まる——位相を聞かれたら \(\tan\) を使うのが定石です。
\(\cos\phi\) は力率そのものです。位相角と力率は表裏一体——片方が分かればもう片方も決まります。
⚠️ よくある間違い
「\(\tan^{-1}(R/\omega L)\)」も一見もっともらしく見えます。これは「電圧が電流より進む角」を表しているようにも読めますが、値そのものが違います。\(\tan^{-1}(R/\omega L)\) は \(90^\circ-\phi\)——補角です。
深掘り:ELI と ICE で向きを覚える
コイルとコンデンサで、電圧と電流のどちらが先行するか——これを覚える語呂が広く使われています。
| 語呂 | 意味 | 覚えること |
| ELI | \(E\)(電圧)→ \(L\) → \(I\)(電流) | コイルでは電圧が先=電流が遅れる |
| ICE | \(I\)(電流)→ \(C\) → \(E\)(電圧) | コンデンサでは電流が先=電流が進む |
「ELI the ICE man」と続けて覚えるのが定番です。\(L\) の左に \(E\)、右に \(I\)——左が先行すると読みます。
物理的にも説明できます。コイルは電流の変化を妨げるので、電圧をかけてもすぐには電流が流れません——だから電流が遅れます。コンデンサは電圧が上がる前に充電電流が流れ込む——だから電流が進みます。
💡 覚え方
「コイルは腰が重い、コンデンサはせっかち」——このイメージでも十分です。向きさえ決まれば、あとは \(\tan^{-1}\) の中身を確認するだけになります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 向きを先に決める。RL なら遅れる。これで2肢消える。
❷ インピーダンス三角形を描く。\(\tan\phi\) の分子はリアクタンス。
❸ \(\cos^{-1}\) の分母は斜辺。\(R\) や \(\omega L\) が分母の \(\cos^{-1}\) はあり得ない。
❹ ELI the ICE man で向きを即断する。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
位相角から回路の姿を読み取る
位相角 \(\phi\) が分かると、回路の中身がどうなっているかが見えてきます。\(\tan\phi=\omega L/R\) という関係は、抵抗とリアクタンスの比を表しているからです。
| 位相角 \(\phi\) | \(\omega L/R\) | 力率 \(\cos\phi\) | 回路の姿 |
| 0° | 0 | 1 | 純抵抗(\(L\) がない) |
| 30° | 0.577 | 0.866 | 抵抗が優勢 |
| 45° | 1 | 0.707 | \(R=\omega L\) |
| 60° | 1.732 | 0.5 | リアクタンスが優勢 |
| 90° | ∞ | 0 | 純リアクタンス(\(R\) がない) |
実際の電動機は力率0.8前後(位相差約37°)です。コイル成分が抵抗成分より少し小さいくらいの構成になります。位相角が分かれば、回路の性格がつかめるわけです。
位相角が45°を超えると、リアクタンスのほうが大きい——「無効分のほうが多い」状態です。力率が0.707 を下回るので、実務では改善の対象になります。
位相角の求め方を式で確認する
複素数で書くと、位相角は偏角そのものです。\(\dot Z=R+j\omega L\) の偏角を求める作業になります。
\(\phi\) が偏角
虚部が分子、実部が分母
「虚部 ÷ 実部」という形を覚えておけば、RC回路でも同じように使えます。\(\dot Z=R-jX_C\) なら \(\phi=\tan^{-1}(-X_C/R)\)——負の角=電流が進むことを表します。
電流の位相は電圧より \(\phi\) だけ「遅れる」のが誘導性、「進む」のが容量性です。インピーダンスの偏角が正なら電流が遅れる——符号と向きの対応も押さえておいてください。
💡 覚え方
「インピーダンスの偏角=電流の遅れ角」——符号がそのまま向きを表します。正なら遅れ、負なら進み。複素数で扱えるようになると、交流回路の問題は一気に楽になります。
まとめ
| Z | R+jωL |
| 偏角 | tan⁻¹(ωL/R) |
| 電流 | 電圧より遅れ |
| 答え | tan⁻¹(ωL/R)遅れる …(5) |
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