今回は平成18年度 理論科目 A問題8を解説します。e₁=E sin(ωt+θ)とe₂=√3E sin(ωt+θ+π/2)が直列のとき、合成電圧vの最大値(e₁の何倍か)と位相を求める問題です。
e₂はe₁よりπ/2(90°)進んでいます。フェーザ(複素数)でe₁を実軸、e₂を虚軸方向に置いて合成すると、大きさと位相が求まります。
平成18年度 理論科目 A問題8:問題文と選択肢
平成18年度の公式問題を収録した下の問題画像で、2電源の向き、正弦波式、5つの組合せを確認しながら進めます。公式問題画像と既存の問題図は原資料として保持します。電気技術者試験センターの現在の第三種過去問題一覧と照合方針も確認しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成18年度 A問題8
図のように、二つの正弦波交流電圧源 e₁〔V〕、e₂〔V〕が直列に接続されている。e₁=E sin(ωt+θ)、e₂=√3E sin(ωt+θ+π/2)であるとき、合成電圧v〔V〕の最大値はe₁の最大値の(ア)倍となり、位相は(イ)〔rad〕の(ウ)となる。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいのは次のうちどれか。
(ア)倍 (イ)〔rad〕 (ウ) (1) 1/2 π/3 進み (2) 1+√3 π/6 遅れ (3) 2 2π/3 進み (4) √3 π/6 遅れ (5) 2 π/3 進み

出題のポイント:90°ずれた2つのベクトルは三平方の定理で合成する
\(e_2\) は \(e_1\) より \(\pi/2\)(90°)進んでいます。90°ずれているということは、ベクトル図では直角——合成は三平方の定理で求まります。
大きさを単純に足してはいけません。\(1+\sqrt3=2.73\) は選択肢(2)に用意されていますが、向きが違うベクトルをスカラーのように足した誤りです。

フェーザで合成する
\(e_1\) を基準(実軸)に置くと、\(e_2\) は90°進みなので虚軸方向になります。複素数で書けば足し算だけです。
実軸に置く
虚軸方向
大きさ2倍、位相 \(\pi/3\) 進み
\(\tan^{-1}\sqrt3=60^\circ\)——\(60^\circ\) は \(\pi/3\;\mathrm{rad}\) です。度数法とラジアンの換算も確実にしておいてください。\(180^\circ=\pi\) なので \(60^\circ=\pi/3\)、\(30^\circ=\pi/6\) です。
「進み」になる理由も押さえておきましょう。\(e_2\) が進んでいるので、合成した \(\dot V\) も \(e_1\) より進む側に寄ります。しかも \(e_2\) のほうが大きい(\(\sqrt3\) 倍)ので、90°の半分より進み側(60°)に寄る——計算結果とも一致します。


誤答の正体:スカラーとして足すか、角度を取り違えるか
| (ア) | (イ) | (ウ) | この肢に落ちる誤り | |
| (1) | 1/2 × | \(\pi/3\) | 進み | 大きさが1未満はあり得ない |
| (2) | \(1+\sqrt3\) × | \(\pi/6\) × | 遅れ × | スカラーとして足した |
| (3) | 2 | \(2\pi/3\) × | 進み | 角度を120°と誤る |
| (4) | \(\sqrt3\) × | \(\pi/6\) × | 遅れ × | \(e_2\) の係数をそのまま答える |
| (5) | 2 | \(\pi/3\) | 進み | ◎ 正解 |
(2)の \(1+\sqrt3\) が最も典型的な誤りです。\(2.73\) という値そのものは計算できますが、90°ずれたベクトルには使えません。ベクトルは必ず成分に分けてから合成してください。
(3)の \(2\pi/3\)(120°)は、\(\tan^{-1}\) を取り違えた場合です。\(\tan60^\circ=\sqrt3\)、\(\tan120^\circ=-\sqrt3\)——符号が違います。第1象限にあるベクトルの角度は0〜90°の範囲ですから、120°はあり得ません。
⚠️ よくある間違い
「進み」と「遅れ」の判定も落とし穴です。\(e_2\) が進んでいるのだから、合成も進む——これを逆にすると(2)(4)に着地します。基準より進んだベクトルを足せば、合成も進む側へ回ると覚えてください。
深掘り①:三角比の代表値を確実にする
交流の問題では、特定の角度が繰り返し登場します。その値を暗記しておくと、計算が一気に速くなります。
| 角度 | ラジアン | \(\sin\) | \(\cos\) | \(\tan\) | 対応する直角三角形 |
| 30° | \(\pi/6\) | 0.5 | 0.866 | 0.577 | \(1:\sqrt3:2\) |
| 45° | \(\pi/4\) | 0.707 | 0.707 | 1 | \(1:1:\sqrt2\) |
| 60° | \(\pi/3\) | 0.866 | 0.5 | \(\sqrt3\) | \(1:\sqrt3:2\) |
本問は \(\tan\phi=\sqrt3\) なので60°——表を見れば一瞬です。逆に \(\tan\phi=1/\sqrt3=0.577\) なら30°になります。
力率との対応も覚えておくと便利です。位相差60°なら力率 \(\cos60^\circ=0.5\)、45°なら0.707、30°なら0.866——電験ではこの3つがほとんどです。
\(\sqrt3\) は三相交流でも頻出します。線間電圧が相電圧の \(\sqrt3\) 倍になるのも、120°ずれた2つのベクトルを合成した結果です。本問の合成と同じ考え方が使われています。
深掘り②:なぜ瞬時値ではなくフェーザで計算するのか
本問を瞬時値のまま合成しようとすると、三角関数の加法定理が必要になります。フェーザ(複素数)を使えば、単なる足し算で済みます。
加法定理が必要で面倒
複素数の足し算だけ
フェーザが使えるのは、すべての量が同じ角周波数だからです。\(\omega\) が共通なら、時間的な回転を取り除いて「大きさと位相」だけで表せます。
逆に言えば、周波数が違う成分が混ざっている場合はフェーザが使えません。ひずみ波の問題では、成分ごとに分けて計算する必要があります——これは別の年度で問われるテーマです。
💡 覚え方
「90°ずれたら三平方、同相なら足し算」——ベクトル合成の基本です。中間の角度なら余弦定理ですが、電験で出るのはほとんど0°・90°・120°です。
⏱️ 本番での進め方
❶ 90°ずれ=直角。三平方の定理で合成する。単純な足し算は不可。
❷ \(1:\sqrt3:2\) を思い出す。\(\tan^{-1}\sqrt3=60^\circ=\pi/3\)。
❸ 進みか遅れかは「大きいほうに引っ張られる」。\(e_2\) が進みなら合成も進み。
❹ 度とラジアンの換算。\(60^\circ=\pi/3\)、\(30^\circ=\pi/6\)、\(45^\circ=\pi/4\)。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
★重要:令和6年度下期に「選択肢を入れ替えて」再出題された
令和6年度下期A問題8は、本問とまったく同じ問題です。問題文の数式も選択肢の中身も同じ——違うのは選択肢(3)と(5)が入れ替わっていることだけです。
| 本問(平成18年度 A問題8) | 令和6年度下期 A問題8 | |
| 問題文・数式 | 完全に同一 | 完全に同一 |
| 答えの中身 | 2倍・\(\pi/3\)・進み | 2倍・\(\pi/3\)・進み(同じ) |
| 選択肢(3) | \(2\) / \(2\pi/3\) / 進み | \(2\) / \(\pi/3\) / 進み ←正答 |
| 選択肢(5) | \(2\) / \(\pi/3\) / 進み ←正答 | \(2\) / \(2\pi/3\) / 進み |
| 正答番号 | (5) | (3) |
18年の時を経て再出題され、しかも選択肢の順序が変えられています。答えの中身はまったく同じなのに、正答番号は(5)から(3)へ移りました——番号暗記の危険性を示す明確な実例です。
⚠️ よくある間違い
古い過去問だからと侮れません。原理を問う短い問題は表現を変えようがないので、そのまま再出題されます。ただし選択肢の並びは変わる——「2倍・\(\pi/3\)・進み」という中身で覚えてください。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和6年度下期A問題8
まとめ
| e₁,e₂ | E∠0°, √3E∠90° |
| 合成 | E+j√3E |
| 大きさ | √(1+3)=2倍 |
| 答え | 2倍・π/3進み …(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同型の2電源合成の問題:【理論】令和6年度下期A問題8

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