単相交流61【電験3種 理論】位相の異なる2電源の合成電圧の大きさと位相を求める!平成18年度 A問題8 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(単相交流) 平成18年度 A問題8 位相のずれた2つの電源!合成電圧は何Vで何度?

今回は平成18年度 理論科目 A問題8を解説します。e₁=E sin(ωt+θ)とe₂=√3E sin(ωt+θ+π/2)が直列のとき、合成電圧vの最大値(e₁の何倍か)と位相を求める問題です。

e₂はe₁よりπ/2(90°)進んでいます。フェーザ(複素数)でe₁を実軸、e₂を虚軸方向に置いて合成すると、大きさと位相が求まります。

目次

平成18年度 理論科目 A問題8:問題文と選択肢

平成18年度の公式問題を収録した下の問題画像で、2電源の向き、正弦波式、5つの組合せを確認しながら進めます。公式問題画像と既存の問題図は原資料として保持します。電気技術者試験センターの現在の第三種過去問題一覧と照合方針も確認しています。

電験3種 理論科目 単相交流 平成18年度 A問題8 問題文
平成18年度 理論科目 A問題8 問題文

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成18年度 A問題8

 図のように、二つの正弦波交流電圧源 e₁〔V〕、e₂〔V〕が直列に接続されている。e₁=E sin(ωt+θ)、e₂=√3E sin(ωt+θ+π/2)であるとき、合成電圧v〔V〕の最大値はe₁の最大値の(ア)倍となり、位相は(イ)〔rad〕の(ウ)となる。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいのは次のうちどれか。

(ア)倍(イ)〔rad〕(ウ)
(1)1/2π/3進み
(2)1+√3π/6遅れ
(3)22π/3進み
(4)√3π/6遅れ
(5)2π/3進み
図 e₁とe₂(√3倍・π/2進み)が直列接続された回路(問題図)
図 e₁とe₂(√3倍・π/2進み)が直列接続された回路(問題図)

出題のポイント:90°ずれた2つのベクトルは三平方の定理で合成する

\(e_2\) は \(e_1\) より \(\pi/2\)(90°)進んでいます90°ずれているということは、ベクトル図では直角——合成は三平方の定理で求まります

大きさを単純に足してはいけません\(1+\sqrt3=2.73\) は選択肢(2)に用意されていますが、向きが違うベクトルをスカラーのように足した誤りです。

直交する2つのベクトルの合成
$$|\dot V|=\sqrt{E^2+(\sqrt3E)^2}=\sqrt{4E^2}=2E\qquad\phi=\tan^{-1}\frac{\sqrt3E}{E}=\frac{\pi}{3}$$

\(1:\sqrt3:2\) は30-60-90度の直角三角形です。\(\sqrt3\) が出てきたら、この三角形を思い浮かべるのが定石になります。

平成18年度理論科目A問題8の出題ポイント。同じ向きに直列接続された電圧源e1とe2、およびe1を横E、e2を縦√3Eとして合成し2E・π/3進みを示すフェーザ図
π/2だけ位相が異なる電圧は直角方向のフェーザとして合成します。横E、縦√3Eから合成は2E、e1よりπ/3進みです。

フェーザで合成する

\(e_1\) を基準(実軸)に置くと、\(e_2\) は90°進みなので虚軸方向になります。複素数で書けば足し算だけです。

$$\dot E_1=E\angle0^\circ=E$$
❶ 基準ベクトル
実軸に置く
$$\dot E_2=\sqrt3E\angle90^\circ=j\sqrt3E$$
❷ 90°進み
虚軸方向
$$\dot V=E+j\sqrt3E\;\Longrightarrow\;|\dot V|=2E,\;\phi=60^\circ=\frac{\pi}{3}$$
❸ 合成
大きさ2倍、位相 \(\pi/3\) 進み

\(\tan^{-1}\sqrt3=60^\circ\)——\(60^\circ\) は \(\pi/3\;\mathrm{rad}\) です。度数法とラジアンの換算も確実にしておいてください。\(180^\circ=\pi\) なので \(60^\circ=\pi/3\)\(30^\circ=\pi/6\) です。

「進み」になる理由も押さえておきましょう。\(e_2\) が進んでいるので、合成した \(\dot V\) も \(e_1\) より進む側に寄りますしかも \(e_2\) のほうが大きい(\(\sqrt3\) 倍)ので、90°の半分より進み側(60°)に寄る——計算結果とも一致します。

e1=E sin(ωt+θ)、e2=√3E sin(ωt+θ+π/2)をフェーザEとj√3Eへ変換し、2E∠π/3から合成波形へ戻す図
共通位相θを保ったまま相対フェーザを加えると、合成波形はv=2E sin(ωt+θ+π/3)になります。
答え(ア)2倍 (イ)\(\pi/3\) (ウ)進み → 選択肢(5)
平成18年度理論科目A問題8の解説1枚目。2電源の加算極性を確認し、各正弦波の最大値と相対位相をフェーザEおよびj√3Eへ読み替える図
問題の解説1/3。公式図の加算極性と共通位相を確認し、時間領域の2電圧を相対フェーザへ変換します。

誤答の正体:スカラーとして足すか、角度を取り違えるか

(ア)(イ)(ウ)この肢に落ちる誤り
(1)1/2 ×\(\pi/3\)進み大きさが1未満はあり得ない
(2)\(1+\sqrt3\) ×\(\pi/6\) ×遅れ ×スカラーとして足した
(3)2\(2\pi/3\) ×進み角度を120°と誤る
(4)\(\sqrt3\) ×\(\pi/6\) ×遅れ ×\(e_2\) の係数をそのまま答える
(5)2\(\pi/3\)進み◎ 正解

(2)の \(1+\sqrt3\) が最も典型的な誤りです。\(2.73\) という値そのものは計算できますが、90°ずれたベクトルには使えませんベクトルは必ず成分に分けてから合成してください。

(3)の \(2\pi/3\)(120°)は、\(\tan^{-1}\) を取り違えた場合です。\(\tan60^\circ=\sqrt3\)、\(\tan120^\circ=-\sqrt3\)——符号が違います第1象限にあるベクトルの角度は0〜90°の範囲ですから、120°はあり得ません。

⚠️ よくある間違い
「進み」と「遅れ」の判定も落とし穴です。\(e_2\) が進んでいるのだから、合成も進む——これを逆にすると(2)(4)に着地します。基準より進んだベクトルを足せば、合成も進む側へ回ると覚えてください。

深掘り①:三角比の代表値を確実にする

交流の問題では、特定の角度が繰り返し登場しますその値を暗記しておくと、計算が一気に速くなります

角度ラジアン\(\sin\)\(\cos\)\(\tan\)対応する直角三角形
30°\(\pi/6\)0.50.8660.577\(1:\sqrt3:2\)
45°\(\pi/4\)0.7070.7071\(1:1:\sqrt2\)
60°\(\pi/3\)0.8660.5\(\sqrt3\)\(1:\sqrt3:2\)

本問は \(\tan\phi=\sqrt3\) なので60°——表を見れば一瞬です。逆に \(\tan\phi=1/\sqrt3=0.577\) なら30°になります。

力率との対応も覚えておくと便利です。位相差60°なら力率 \(\cos60^\circ=0.5\)、45°なら0.707、30°なら0.866——電験ではこの3つがほとんどです。

\(\sqrt3\) は三相交流でも頻出します。線間電圧が相電圧の \(\sqrt3\) 倍になるのも、120°ずれた2つのベクトルを合成した結果です。本問の合成と同じ考え方が使われています。

深掘り②:なぜ瞬時値ではなくフェーザで計算するのか

本問を瞬時値のまま合成しようとすると、三角関数の加法定理が必要になります。フェーザ(複素数)を使えば、単なる足し算で済みます。

$$v=E\sin(\omega t+\theta)+\sqrt3E\sin\left(\omega t+\theta+\frac{\pi}{2}\right)$$
瞬時値のまま
加法定理が必要で面倒
$$\dot V=\dot E_1+\dot E_2=E+j\sqrt3E$$
フェーザなら
複素数の足し算だけ

フェーザが使えるのは、すべての量が同じ角周波数だからです。\(\omega\) が共通なら、時間的な回転を取り除いて「大きさと位相」だけで表せます

逆に言えば、周波数が違う成分が混ざっている場合はフェーザが使えませんひずみ波の問題では、成分ごとに分けて計算する必要があります——これは別の年度で問われるテーマです。

💡 覚え方
「90°ずれたら三平方、同相なら足し算」——ベクトル合成の基本です。中間の角度なら余弦定理ですが、電験で出るのはほとんど0°・90°・120°です。

⏱️ 本番での進め方
❶ 90°ずれ=直角。三平方の定理で合成する。単純な足し算は不可。
❷ \(1:\sqrt3:2\) を思い出す。\(\tan^{-1}\sqrt3=60^\circ=\pi/3\)。
❸ 進みか遅れかは「大きいほうに引っ張られる」。\(e_2\) が進みなら合成も進み。
❹ 度とラジアンの換算。\(60^\circ=\pi/3\)、\(30^\circ=\pi/6\)、\(45^\circ=\pi/4\)。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

★重要:令和6年度下期に「選択肢を入れ替えて」再出題された

令和6年度下期A問題8は、本問とまったく同じ問題です。問題文の数式も選択肢の中身も同じ——違うのは選択肢(3)と(5)が入れ替わっていることだけです。

本問(平成18年度 A問題8)令和6年度下期 A問題8
問題文・数式完全に同一完全に同一
答えの中身2倍・\(\pi/3\)・進み2倍・\(\pi/3\)・進み(同じ)
選択肢(3)\(2\) / \(2\pi/3\) / 進み\(2\) / \(\pi/3\) / 進み ←正答
選択肢(5)\(2\) / \(\pi/3\) / 進み ←正答\(2\) / \(2\pi/3\) / 進み
正答番号(5)(3)

18年の時を経て再出題され、しかも選択肢の順序が変えられています答えの中身はまったく同じなのに、正答番号は(5)から(3)へ移りました——番号暗記の危険性を示す明確な実例です。

⚠️ よくある間違い
古い過去問だからと侮れません原理を問う短い問題は表現を変えようがないので、そのまま再出題されますただし選択肢の並びは変わる——「2倍・\(\pi/3\)・進み」という中身で覚えてください

あわせて解いておきたい記事:【理論】令和6年度下期A問題8

まとめ

e₁,e₂E∠0°, √3E∠90°
合成E+j√3E
大きさ√(1+3)=2倍
答え2倍・π/3進み …(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・同型の2電源合成の問題:【理論】令和6年度下期A問題8

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