今回は平成26年度 理論科目 A問題10を解説します。交流回路に関する5つの記述(平均値・周期・位相・共振・力率)のうち、誤っているものを選ぶ問題です。
平均値・周期・位相・共振の記述は正しく、力率の定義がポイントです。力率cosθは有効電力Pを皮相電力Sで割った値(P/S)であり、S/Pではありません。
平成26年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問10)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像と5つの記述は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成26年度 A問題10
交流回路に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、抵抗R〔Ω〕、インダクタンスL〔H〕、静電容量C〔F〕とする。
(1)正弦波交流起電力の最大値をEm、平均値をEaとすると、Ea=2Em/π≒0.637Emと表される。
(2)ある交流起電力の瞬時値がe=100sin100πt〔V〕であるとすると、この起電力の周期は20msである。
(3)RLC直列回路にωの交流電圧を加えたとき、ωL>1/(ωC)なら電流の位相は電圧より遅れ、ωL<1/(ωC)なら進む。
(4)RLC直列回路でωL=1/(ωC)のとき、Z=Rとなり電圧と電流は同相になる(共振状態)。
(5)RLC直列回路のインピーダンスZ、電力P、皮相電力Sを使うと、力率cosθ=R/Z、cosθ=S/Pの関係がある。
出題のポイント:力率は \(P/S\)。\(S/P\) では1を超えてしまう
誤りは(5)の後半です。\(\cos\theta=R/Z\) は正しいのですが、\(\cos\theta=S/P\) は逆——正しくは \(\cos\theta=P/S\) です。
定義域からしてあり得ないことに気づけます。\(\cos\theta\) は0以上1以下ですが、\(S\ge P\) なので \(S/P\) は必ず1以上になります。1を超える力率は存在しません。

各記述の判定
| 記述の内容 | 判定 | 根拠 | |
| (1) | 平均値 \(E_a=2E_m/\pi\approx0.637E_m\) | ◎ 正しい | 正弦波の半周期平均 |
| (2) | \(e=100\sin100\pi t\) の周期は20 ms | ◎ 正しい | \(T=2\pi/\omega=2\pi/100\pi=0.02\;\mathrm{s}\) |
| (3) | \(\omega L>1/\omega C\) なら電流は遅れる | ◎ 正しい | 誘導性なら電流が遅れる |
| (4) | \(\omega L=1/\omega C\) なら \(Z=R\) で同相 | ◎ 正しい | 直列共振の定義 |
| (5) | \(\cos\theta=R/Z\)、\(\cos\theta=S/P\) | × 誤り | 後半が逆。正しくは \(P/S\) |
(1)の 0.637 は「平均値」です。実効値の 0.707 と混同しないでください。平均値は \(2E_m/\pi\)、実効値は \(E_m/\sqrt2\)——どちらも0.6〜0.7台で紛らわしいので、値だけでなく式で覚えることをおすすめします。
(2)は \(\omega=100\pi\) から周波数50 Hzと分かります。周期は \(1/50=0.02\;\mathrm{s}=20\;\mathrm{ms}\)——日本の東日本の商用周波数です。


正弦波の3つの値を整理する
(1)で登場した平均値は、実効値・最大値と混同しやすい量です。3つまとめて整理しておきましょう。
| 式 | \(E_m\) に対する比 | どこで使うか | |
| 最大値 \(E_m\) | — | 1.000 | 波形の頂点。絶縁設計 |
| 実効値 \(E\) | \(E_m/\sqrt2\) | 0.707 | 電圧計・電流計の指示値 |
| 平均値 \(E_a\) | \(2E_m/\pi\) | 0.637 | 整流回路の直流出力 |
「交流100 V」と言うときの100 V は実効値です。最大値は \(100\sqrt2\approx141\;\mathrm{V}\)——絶縁を設計するときはこちらを使います。
平均値が使われるのは整流回路です。全波整流した波形を平滑せずに直流として使うと、その値は平均値になります。機械科目のパワーエレクトロニクスで必ず出てきます。
| 定義 | 正弦波での値 | |
| 波形率 | 実効値 ÷ 平均値 | \(0.707/0.637=1.11\) |
| 波高率 | 最大値 ÷ 実効値 | \(1/0.707=1.414=\sqrt2\) |
波形率1.11、波高率1.41——正弦波を特徴づける2つの数字です。波形がひずむとこれらの値が変わるので、波形の判別に使えます。
(3)の「遅れる・進む」を確実に覚える
誘導性か容量性かで、電流の位相が変わります。ここは符号を間違えやすいので、覚え方を決めておくのが有効です。
| 条件 | 回路の性質 | 電流の位相 | 力率 |
| \(\omega L>1/\omega C\) | 誘導性 | 電圧より遅れる | 遅れ力率 |
| \(\omega L=1/\omega C\) | 共振(純抵抗) | 同相 | 1 |
| \(\omega L<1/\omega C\) | 容量性 | 電圧より進む | 進み力率 |
💡 覚え方
「コイルは電流が遅れる、コンデンサは電流が進む」——コイルは電流の変化を嫌がる(=立ち上がりが遅い)、コンデンサは電圧が上がる前に電流が流れ込むとイメージすると腑に落ちます。「ELI the ICE man」(L では E が I より先、C では I が E より先)という語呂もよく使われます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 力率は必ず1以下。\(S/P\) は1以上なのであり得ない。
❷ 平均値0.637と実効値0.707を区別する。式で覚える。
❸ \(\omega=100\pi\) は50 Hz、\(120\pi\) は60 Hz。
❹ 「誤っているもの」を選ぶ問題。正しい記述に印をつけて消していく。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
深掘り:平均値が \(2E_m/\pi\) になる理由
(1)で出てきた \(0.637E_m\) という値は、積分から出てきます。正弦波の半周期にわたって平均を取ると、この値になります。
1周期だとゼロになるので半周期
\(\approx0.637E_m\)
1周期で平均すると、正の半周期と負の半周期が打ち消し合ってゼロになります。だから「平均値」というときは半周期(または全波整流した波形)の平均を指します。
実効値も同じように積分から出ます。\(E=\sqrt{\dfrac{1}{2\pi}\displaystyle\int_0^{2\pi}(E_m\sin\theta)^2d\theta}=\dfrac{E_m}{\sqrt2}\)——2乗してから平均し、平方根を取るので RMS(Root Mean Square)と呼ばれます。
なぜ実効値を使うのか
実効値は「同じ熱を発生させる直流の値」として定義されています。抵抗に流したとき、同じ発熱をもたらす直流電流の大きさ——それが実効値です。
電力は電流の2乗に比例するので、2乗の平均を取る
電力が電流の2乗に比例するため、単純な平均では意味を持ちません。2乗の平均の平方根=実効値なら、そのまま \(P=I^2R\) に代入できます。
| 波形 | 実効値/最大値 | 平均値/最大値 | 波形率 |
| 正弦波 | 0.707 | 0.637 | 1.11 |
| 方形波 | 1.000 | 1.000 | 1.00 |
| 三角波 | 0.577 | 0.500 | 1.15 |
波形が変わると、実効値と平均値の比(波形率)も変わります。可動鉄片形の電流計は実効値を、整流形の計器は平均値を測ります——整流形は正弦波の波形率1.11 を掛けて実効値目盛りにしてあるので、ひずみ波では誤差が出ます。
💡 覚え方
「実効値は熱、平均値は整流出力」——用途で覚えると混同しません。電圧計・電流計が示すのは実効値、整流回路の直流出力は平均値です。
まとめ
| (1)平均値 | 2Em/π→正しい |
| (2)周期 | 20ms→正しい |
| (4)共振 | Z=R→正しい |
| 答え | (5)cosθ=S/Pは誤り |
▼あわせて解きたい関連問題
・交流電力・力率の関連問題:【理論】平成27年度A問題8

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