今回は平成27年度 理論科目 A問題8を解説します。R=10Ωの抵抗と誘導性リアクタンスXのコイルを直列に100V交流電源へ接続し、電流I=5Aが流れたときの有効電力P〔W〕を求める問題です。
交流回路の有効電力(消費電力)は、抵抗で消費される電力だけです。P=I²Rで直接求まります。別解としてP=VIcosφ(力率cosφ=R/|Z|)でも同じ結果になります。
平成27年度 理論科目 A問題8:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問8)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像と選択肢は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成27年度 A問題8
R=10Ωの抵抗と誘導性リアクタンスX〔Ω〕のコイルとを直列に接続し、100Vの交流電源に接続した交流回路がある。いま、回路に流れる電流の値がI=5Aであった。このとき、回路の有効電力Pの値〔W〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)250 (2)289 (3)425 (4)500 (5)577〔W〕
出題のポイント:有効電力は「抵抗で消費される電力だけ」
\(P=I^2R\) を書けば、それで終わりです。リアクタンス \(X\) の値は与えられていませんが、そもそも必要ありません——コイルは電力を消費しないからです。
コイルは1周期のうち、前半でエネルギーを蓄え、後半で電源に返します。差し引きゼロなので、平均すると電力を消費しません。実際に熱になるのは抵抗の分だけです。

解説:1行で終わる
電流の2乗×抵抗
電源電圧100 V という情報は、この計算には使いません。「与えられた数値をすべて使う」とは限らない——電験の問題では、こうした余分な情報がしばしば含まれます。
ただし電圧を使う別解もあります。力率を経由する道です。
位相差60°
◎同じ答え
力率が0.5 と分かるので、この回路は \(R:X:|\dot Z|=10:17.3:20=1:\sqrt3:2\)——30-60-90度の直角三角形です。\(X=10\sqrt3\approx17.3\;\Omega\) と求まります。


誤答の正体:3つの電力を取り違える
| 誤り方 | 計算 | 値 | 選択肢 | 何を答えたか |
| 皮相電力を答える | \(EI=100\times5\) | 500 VA | (4) | 見かけの電力 |
| 無効電力を答える | \(I^2X=25\times17.3\) | 433 var | (3) 425 に近い | 往復するだけの電力 |
| 正しい計算 | \(I^2R=25\times10\) | 250 W | (1) ◎ | 実際に消費される電力 |
選択肢(4)の500 は皮相電力です。\(EI\) をそのまま計算すると出てくる値——「有効電力」と聞かれているのに、力率を掛け忘れたケースにあたります。
3つの電力の違いを、単位で見分ける習慣をつけてください。有効電力は W、無効電力は var、皮相電力は VA——問題文の単位が答えの種類を示しています。
⚠️ よくある間違い
「回路の電力」という表現があいまいに感じられたら、単位を見てください。本問は「有効電力 \(P\) の値〔W〕」と明記されています。W なら有効電力=抵抗の消費分だけです。
深掘り:なぜリアクタンスは電力を消費しないのか
コイルに流れる電流と、コイルにかかる電圧は位相が90°ずれています。瞬時電力 \(p=vi\) を1周期にわたって平均すると、ちょうどゼロになります。
| 1周期の区間 | 電圧と電流の符号 | 瞬時電力 \(p=vi\) | エネルギーの流れ |
| 第1四半期 | 同符号 | 正 | 電源 → コイル(蓄える) |
| 第2四半期 | 異符号 | 負 | コイル → 電源(返す) |
| 第3四半期 | 同符号 | 正 | 電源 → コイル |
| 第4四半期 | 異符号 | 負 | コイル → 電源 |
正の区間と負の区間が完全に打ち消し合うので、平均電力はゼロです。エネルギーは往復しているだけで、消費されていません。
これが「無効電力」と呼ばれる理由です。仕事をしないのに電流は流れる——線路には確かに電流が流れるので、線路の抵抗で損失が生じます。だから力率改善が必要になるのです。
抵抗では電圧と電流が同相なので、瞬時電力は常に正——一方通行でエネルギーが熱に変わります。この違いが、有効電力と無効電力を分けています。
💡 覚え方
「抵抗は消費、リアクタンスは往復」——有効電力を聞かれたら抵抗だけを見る。本問のようにリアクタンスの値が与えられていなくても解けるのは、この理由からです。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(P=I^2R\) を書く。抵抗と電流が分かれば即答。
❷ 単位で確認。W なら有効電力、var なら無効電力、VA なら皮相電力。
❸ 使わない数値があってよい。本問では電圧が不要。
❹ 別解も持っておく。\(P=EI\cos\phi\) でも同じ答えになるか確認できる。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
深掘り:3つの電力を1つの図で整理する
交流回路の電力は3種類あり、それぞれ単位が違います。単位を見れば、何を聞かれているかが分かります。
| 電力の種類 | 記号 | 単位 | 式 | 意味 |
| 有効電力 | \(P\) | W | \(I^2R=EI\cos\phi\) | 実際に熱や仕事になる分 |
| 無効電力 | \(Q\) | var | \(I^2X=EI\sin\phi\) | 往復するだけの分 |
| 皮相電力 | \(S\) | VA | \(EI=\sqrt{P^2+Q^2}\) | 見かけ上の電力 |
本問の回路では \(P=250\;\mathrm{W}\)、\(S=500\;\mathrm{VA}\)、\(Q=\sqrt{500^2-250^2}\approx433\;\mathrm{var}\) です。力率0.5 なので、送っている電力の半分しか仕事になっていません。
変圧器や発電機の定格が「VA」で表されるのは、機器の容量を決めるのが電流と電圧であって、力率ではないからです。力率が悪いと、同じ有効電力を供給するのに大きな容量の機器が必要になります。
瞬時電力から平均電力へ
「有効電力」がなぜ \(EI\cos\phi\) になるのか——瞬時電力を1周期にわたって平均すると導けます。
一定項と、2倍の周波数で振動する項に分かれる
振動項は平均するとゼロ
瞬時電力は「一定値 \(EI\cos\phi\)」と「2倍の周波数で振動する項」の和になっています。振動項は平均するとゼロなので、残るのが有効電力です。
単相交流では瞬時電力が脈動する——これが三相交流を使う理由のひとつでもあります。三相なら、3つの相の瞬時電力の和が一定になり、電動機のトルクが滑らかになります。
💡 覚え方
「有効電力=瞬時電力の平均値」と理解しておくと、なぜリアクタンスが電力を消費しないのかも自然に分かります。位相差90°なら \(\cos90^\circ=0\)——平均がゼロになるからです。
まとめ
| |Z| | 100/5=20Ω |
| cosφ | R/|Z|=0.5 |
| P | 5²×10=250W |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・交流電力・力率の関連問題:【理論】令和5年度上期A問題9

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