今回は令和7年度下期 理論科目 A問題9を解説します。未知抵抗Rと誘導性リアクタンスXの直列回路へ100 Vを加えると10 A、さらに11 Ωの実抵抗を直列追加すると5 Aになる条件から、抵抗Rを求めます。
直列RL回路では、抵抗成分とリアクタンス成分が直交するため、|Z|=√(R²+X²)です。各条件の|Z|をE/Iで求め、二乗した式の差を取れば、両条件に共通するX²を計算せずに消去できます。
令和7年度下期 理論科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題9
電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 令和7年度下期 A問題9
図1のような抵抗R〔Ω〕と誘導性リアクタンスX〔Ω〕との直列回路がある。この回路に正弦波交流電圧E=100Vを加えたとき、回路に流れる電流は10Aであった。この回路に図2のように、更に抵抗11Ωを直列接続したところ、回路に流れる電流は5Aになった。抵抗R〔Ω〕の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)16.7 (2)5.5 (3)11.4 (4)8.6 (5)8.1〔Ω〕

出題のポイント:リアクタンス \(X\) は変わらない
抵抗11 Ωを直列に追加しても、コイルのリアクタンス \(X\) は変わりません。周波数も電源電圧も同じだからです。変わるのは抵抗成分だけ——ここが解法の鍵になります。
未知数は \(R\) と \(X\) の2つ、条件は「10 A流れた」「11 Ω足したら5 Aになった」の2つです。2つの式を連立すれば解けます。
二乗の形で立式するのがコツです。平方根のまま連立すると計算が煩雑になりますが、両辺を二乗すれば単なる二次式の引き算で済みます。

解説:2式を二乗して引き算する
式その1
式その2
\(X^{2}\) が相殺
❸が本問最大の工夫です。\(X^{2}\) が両方の式に共通して現れるので、引き算するだけで消える——\(X\) を求める必要すらありません。
\((R+11)^{2}-R^{2}=22R+121\) という展開も確認しておきましょう。\((a+b)^{2}-a^{2}=2ab+b^{2}\) の形で、\(2\times R\times11+11^{2}\) です。



誤答の正体:「電流が半分=抵抗が2倍」ではない
電流が10 Aから5 Aへ半分になった——ここから「インピーダンスが2倍になった」までは正しいです。問題はその先です。
| 選択肢 | \(R\)〔Ω〕 | どんな考え方から出るか | 判定 |
| (1) | 16.7 | 比例配分の誤り | × |
| (2) | 5.5 | 追加抵抗の半分 \(11/2\) | × |
| (3) | 11.4 | 「抵抗が2倍」と考える(\(R+11=2R\Rightarrow R=11\)) | × |
| (4) | 8.6 | 正解に近い値(計算途中の丸め誤り) | × |
| (5) | 8.1 | 正解 | ◎ |
(3)の11.4は「インピーダンスが2倍なら抵抗も2倍」と考えた結果です。\(R+11=2R\) から \(R=11\)——もっともらしく見えますが、リアクタンスの存在を無視しています。
実際には \(X\) があるため、抵抗を2倍にしてもインピーダンスは2倍になりません。だから \(R\) は11 Ωより小さい値になる——この向きだけでも(3)は切れます。
⚠️ よくある間違い
交流では \(|\dot Z|=\sqrt{R^{2}+X^{2}}\) であって \(R+X\) ではありません。抵抗とリアクタンスは直角に足す——この原則を忘れると、直流の感覚で計算してしまいます。
☝️ ひっかけの作り方:(4)8.6と(5)8.1は近い値です。途中で丸めると判別できなくなるので、\(179/22\) という分数のまま最後まで持っていくのが安全です。\(179\div22=8.136\ldots\) で、8.1のほうが近いと確定できます。
深掘り①:\(X\) と力率も求めておく
\(R\) が出たら、\(X\) も求めて回路の全体像をつかんでおきましょう。検算にもなります。
ぴたり ✓
正しい ✓
| 図1(追加前) | 図2(11 Ω追加後) | |
| 抵抗 | 8.14 Ω | 19.14 Ω |
| リアクタンス \(X\) | 5.81 Ω | 5.81 Ω(不変) |
| インピーダンス | 10.0 Ω | 20.0 Ω |
| 電流 | 10.0 A | 5.0 A |
| 力率 \(R/|\dot Z|\) | 0.814 | 0.957 |
| 消費電力 \(I^{2}R\) | 814 W | 479 W |
抵抗を足したら力率が0.814から0.957へ改善しています。抵抗成分が増えれば回路は「抵抗寄り」になるためです。ただし電力は814 Wから479 Wへ減っています——電流が半分になった影響のほうが大きいのです。
力率が良くなっても電力が増えるとは限らない——これは力率改善の意味を考えるうえで重要な視点です。力率改善は「同じ電力をより少ない電流で送る」ためのものであり、抵抗を足して電流を減らすのとは目的が違います。
深掘り②:二乗して引く手法はいろいろ使える
「共通する未知数を二乗の引き算で消す」手法は、交流回路の定番テクニックです。似た場面をいくつか挙げておきます。
| 場面 | 共通して残るもの | 引き算で消えるもの |
| 抵抗を直列追加 | \(X\) | \(X^{2}\) |
| 周波数を変える | \(R\) | \(R^{2}\) |
| 三電圧計法 | — | 個々の電圧の二乗 |
| 三電流計法 | — | 個々の電流の二乗 |
三電圧計法・三電流計法も、二乗の関係から電力を求める手法です。\(P=\dfrac{V_3^{2}-V_1^{2}-V_2^{2}}{2R}\) という形で、やはり二乗の引き算が出てきます。
交流回路で二乗が出てきたら、引き算で消せないかを疑う——この視点を持つだけで解法が見えやすくなります。電気及び電子計測の分野でも同じ発想が使われます。
深掘り③:条件を変える問題の共通の型
「条件を変えたら測定値がこう変わった。素子の値を求めよ」というタイプは、単相交流の主力パターンです。解き方の型が決まっています。
| 手順 | やること |
| ❶ | 変わるものと変わらないものを仕分ける(本問では \(X\) が不変) |
| ❷ | 各条件で \(|\dot Z|=E/I\) を計算する |
| ❸ | 二乗の式を立てて連立する |
| ❹ | 引き算で共通項を消す——一次方程式になる |
| ❺ | 求めた値を元の式に代入して検算する |
❶の仕分けが最も大切です。「周波数が同じならリアクタンスは同じ」「素子を替えなければ抵抗は同じ」——当たり前のようでいて、ここを意識しないと未知数が増えて解けなくなります。
❺の検算は必ず行ってください。本問なら \(R=8.14\)、\(X=5.81\) を図2に代入して電流が5 Aになるか——30秒で確かめられます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 変わらない量を最初に特定——本問は \(X\)。それが連立の軸になる。
❷ 二乗のまま立式——平方根を残すと計算が重い。
❸ 引き算で二次の項を消す——一次方程式に落ちる。
❹ 分数のまま最後まで——\(179/22\) を早く丸めると(4)と迷う。
💡 覚え方
「電流が半分になった=インピーダンスが2倍」までは正しい——しかし抵抗が2倍とは限りません。リアクタンスが直角方向に居座っているからです。交流はベクトルで考えるという基本に立ち返ってください。
出題履歴:素子を追加するパターンは頻出
「スイッチを閉じる」「抵抗を追加する」「並列につなぐ」——回路を変化させて未知の素子値を求める出題は毎年のように登場します。直列なら二乗の引き算、並列なら電流の分配と、接続の形で解法が決まります。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成29年度A問題8(電流比から抵抗を求める)/【理論】令和6年度下期A問題9(周波数を変えたときの電流)
まとめ
| 図1 | |Z1|=10 Ω、R²+X²=100 |
| 図2 | |Z2|=20 Ω、(R+11)²+X²=400 |
| 二式の差 | 22R+121=300 |
| 検算値 | R=8.136…Ω、X≈5.814 Ω |
| 令和7年度下期の答え | 8.1 Ω …(5) |
問題文は試験センター公式問題PDF(理論 問9、本文と図が2ページに分かれて掲載)、正答(5)は公式解答PDFで照合しました。
▼あわせて解きたい関連問題
・インピーダンス・力率の関連問題:【理論】令和5年度上期A問題9

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