今回は平成22年度 理論科目 A問題3を解説します。0.6m間隔の平行導線に10Ωの抵抗をつなぎ、磁束密度B=6×10-2Tの磁界中を導体棒PQが速度v=4m/sで動くとき、抵抗に流れる電流I(向き付き)を求める問題です。
誘導起電力の大きさはe=BLv、電流の大きさはI=e/Rで求めます。符号は向きを確認してから付けます。棒が右へ動くと紙面手前向きの磁束が増えるため、誘導電流は時計回りです。したがって左側の抵抗では下から上へ流れ、問題図の矢印と同じ正方向になります。
平成22年度 理論科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、平成22年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成22年度 A問題3
紙面に平行な水平面内において、0.6〔m〕の間隔で張られた2本の直線状の平行導線に10〔Ω〕の抵抗が接続されている。この平行導線に垂直に、図に示すように、直線状の導体棒PQを渡し、紙面の裏側から表側に向かって磁束密度B=6×10-2〔T〕の一様な磁界をかける。ここで、導体棒PQを磁界と導体棒に共に垂直な矢印の方向に一定の速さv=4〔m/s〕で平行導線上を移動させているときに、10〔Ω〕の抵抗に流れる電流I〔A〕の値として、正しいのは次のうちどれか。ただし、電流の向きは図に示す矢印の向きを正とする。また、導線及び導体棒PQの抵抗、並びに導線と導体棒との接触抵抗は無視できるものとする。
10Ωの抵抗に流れる電流I〔A〕の値として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ(電流の向きは図に示す矢印の向きを正とする)。
(1)−0.0278 (2)−0.0134 (3)−0.0072 (4)0.0144 (5)0.0288

出題のポイント:大きさは簡単。勝負は「符号」
大きさの計算は \(e=BLv\) と \(I=e/R\) だけ——2行で終わります。本問の勝負どころは、電流の向きが問題図の矢印と同じか逆かです。
選択肢5つのうち3つが負の値です。大きさが合っていても符号を間違えると不正解——レンツの法則で向きを丁寧に追う必要があります。

大きさを求める
\(L\) は導線の間隔
導線と棒の抵抗は無視できる
\(6\times10^{-2}\times0.6=3.6\times10^{-2}\)、これに 4を掛けて \(0.144\)——暗算でも出せます。選択肢に0.0144 と 0.0288 があるので、大きさだけなら2択に絞れます。
符号を決める:レンツの法則を3段階で
向きの判定は必ず3段階で進めてください。途中を飛ばすと間違えます。
紙面手前向きの磁束が増える
紙面の奥向きの磁束
回路を時計回りに流れる
回路が時計回りなら、左側にある抵抗では下から上へ流れます。これが問題図の矢印と同じ向き——したがって符号は正です。
「面積が増えるのか減るのか」を最初に確認するのがコツです。棒が磁界を横切りながら、囲む面積を広げていく方向に動いている——ここが出発点になります。


誤答の正体:符号と2倍のミス
| 誤り方 | 値〔A〕 | 選択肢 | 何を間違えたか |
| 符号を逆にする | −0.0144 | 選択肢になし | レンツの法則の判定ミス |
| 2倍にする | 0.0288 | (5) | 起電力を2倍に数えるなど |
| 正しい計算 | +0.0144 | (4) ◎ | — |
興味深いのは、−0.0144 という選択肢が用意されていないことです。(1)−0.0278、(2)−0.0134、(3)−0.0072 はいずれも大きさも違います——「符号だけ間違えた人」を拾う肢がないのです。
これは受験者にとって有利な設計です。0.0144 という値が出た時点で、正の(4)を選ぶしかありません。大きさの計算に自信があれば、符号で悩む必要は実質ないということになります。
⚠️ よくある間違い
\(L\) に導体棒の全長を使ってしまうミスに注意してください。起電力を生むのは「回路の一部として磁界を横切る部分」だけ——本問では平行導線の間隔0.6 m です。棒が導線からはみ出していても、その部分は回路に入っていないので関係ありません。
深掘り:この回路が発電機そのもの
この構成は「単極発電機」の最も単純な形です。導体棒を動かすと起電力が生じ、抵抗に電流が流れて電力が消費されます。
電流が流れると、棒には運動を妨げる力が働く
電気的な消費電力と一致 ◎
機械的な仕事率と電気的な消費電力がぴったり一致します。これがエネルギー保存則の現れです。棒を動かすのに必要な力の正体は、レンツの法則による制動力——電流を取り出すほど重くなります。
発電所の発電機も、原理はこれと同じです。電力需要が増えると発電機が重くなり、タービンにより多くの蒸気が必要になります。この1問が、電力システム全体の基礎になっていると言えます。
💡 覚え方
「\(e=BLv\) → \(I=e/R\) → \(F=BIL\) → \(P=Fv\)」——4つの式が一巡して、機械的仕事と電気的仕事が一致します。この流れを一度たどっておくと、発電機の理解が一気に深まります。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(L\) は導線の間隔。棒の全長ではない。
❷ 大きさを先に出す。0.0144 か 0.0288 かで2択に絞れる。
❸ 向きは3段階:面積の増減 → 妨げる磁束 → 右ねじで電流。
❹ 符号の付いた選択肢に注意。大きさが合っていても符号で落とす問題がある。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 有効長 | L=レール間隔=0.6m |
| 起電力 | e=BLv=0.144V |
| 回路抵抗 | R=10Ω(その他は無視) |
| 電流の大きさ | I=e/R=0.0144A=14.4mA |
| 向き | 時計回り、抵抗では上向き(正) |
| 公式正答 | (4) +0.0144A |
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