今回は令和4年度上期 理論科目 A問題3を解説します。環状鉄心の2つのコイル(自己インダクタンス40mHと10mH)を端子2-3で接続したときの合成インダクタンスが86mHのとき、2コイルの結合係数kを求める問題です。
直列接続の合成インダクタンスはL=L1+L2±2Mです。測定値86 mHは単純和50 mHより大きいため加極性の+2Mを選び、M=18 mHを得ます。最後にk=M/√(L1L2)で結合係数を求めます。
令和4年度上期 理論科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、令和4年度上期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和4年度上期 A問題3
図のような環状鉄心に巻かれたコイルがある。図の環状コイルについて、端子1-2間の自己インダクタンスを測定したところ40mHであった。端子3-4間の自己インダクタンスを測定したところ10mHであった。端子2と3を接続した状態で端子1-4間のインダクタンスを測定したところ86mHであった。このとき、端子1-2間のコイルと端子3-4間のコイルとの間の結合係数kの値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.81 (2)0.90 (3)0.95 (4)0.98 (5)1.8

出題のポイント:単純和と比べれば、和動か差動かが即決する
接続図を読む必要はありません。測定値86 mH が、単純和の50 mH より大きいか小さいか——それだけで和動接続と分かります。大きければ和動(+2M)、小さければ差動(−2M)です。
この問題の流れは「合成値 → \(M\) → \(k\)」の3ステップです。どのステップも計算は軽いのですが、2つ目で「2M の2」を落とすと、最後の \(k\) が1を超えて破綻します。その破綻に気づけるかどうかが分かれ目です。


解説:3ステップで答えに届く
測定値86 mH はこれより大きい → 和動接続
2で割るのを忘れない
\(\sqrt{400}=20\)
\(\sqrt{40\times10}=\sqrt{400}=20\) ときれいな数字になるのは、出題者が計算しやすいように値を選んでいるからです。ルートの中が平方数にならないときは、どこかで読み違えている可能性を疑ってください。
検算:\(40+10+36=86\;\mathrm{mH}\) ✓ 測定値と一致します。ちなみにもう一方の接続(差動)で測れば \(40+10-36=14\;\mathrm{mH}\) になるはずです。




誤答の正体:選択肢(5)の1.8 は「物理的にあり得ない値」
| 誤り方 | 得られる \(M\) | 得られる \(k\) | 選択肢 |
| \(2M\) の2を忘れて \(M=36\) とする | 36 mH | 1.8 | (5) |
| 正しい計算 | 18 mH | 0.90 | (2) ◎ |
結合係数は必ず \(0\le k\le1\) です。1.8 という値が出た時点で、計算が間違っていると断定できます。選択肢に1.8 が置いてあるのは、この検算をしない人を拾うためにほかなりません。
この「範囲チェック」は本番で非常に有効です。結合係数は1以下、効率は1以下、力率は1以下——電験には「1を超えたら間違い」と分かる量がいくつもあります。答えを出したら必ず範囲を確認してください。
⚠️ よくある間違い
「コイルが2つだから \(L_1+L_2\)」までは正しいのに、\(M\) を \(2M\) にし忘れるのが最頻出のミスです。相互インダクタンスは「1→2」と「2→1」の2方向で効く——だから2倍になります。
深掘り:結合係数は何を表しているか
結合係数 \(k\) は、片方のコイルが作った磁束のうち、何割がもう片方を貫くかを表します。\(k=1\) なら全部が貫き(完全結合)、\(k=0\) なら1本も貫きません(無結合)。
| 結合の状態 | \(k\) の目安 | 具体例 |
| 完全結合 | 1.0 | 理想変圧器(漏れ磁束ゼロ) |
| 密結合 | 0.95〜0.99 | 実際の変圧器(閉じた鉄心) |
| 本問 | 0.90 | 環状鉄心だがやや漏れがある |
| 疎結合 | 0.1〜0.5 | 空心コイル、離して置いたコイル |
| 無結合 | 0 | 直交配置(磁束が鎖交しない) |
環状鉄心なら本来 \(k\) は1に近くなります。本問の0.90 は少し低めですが、2つのコイルが鉄心の別の場所に巻かれていて、一部の磁束が漏れていると考えれば妥当な値です。
2つのコイルを直角に置くと \(k=0\) になります。片方の磁束がもう片方の面を貫かなくなるからです。ノイズ対策でコイルを直交配置するのは、この性質を利用しています。
💡 覚え方
「\(M\) は必ず \(\sqrt{L_1L_2}\) 以下」と覚えてください。本問なら \(M\le20\;\mathrm{mH}\)。36 mH は明らかに超えているので、その時点で誤りに気づけます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 単純和と比べる。大きければ和動、小さければ差動。図を読まなくてよい。
❷ 差を2で割る。\(2M=86-50\) から \(M=18\)。
❸ \(k\le1\) を必ず確認。1を超えたら計算ミス。
❹ ルートの中が平方数になるか。ならなければ読み違いを疑う。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 極性判定 | 86>50なので加極性 |
| 直列合成 | L=L1+L2+2M |
| M | (86−50)/2=18 mH |
| √(L1L2) | 20 mH |
| k | 18/20=0.90 |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・インダクタンスの関連問題:【理論】平成29年度A問題3

コメント