磁気・電磁力19【電験3種 理論】環状鉄心の2コイルの結合係数を直列インダクタンスから求める!令和4年上期 A問題3 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 令和4年度上期 A問題3 2つのコイルの結び付き!結合係数kはいくつ?

今回は令和4年度上期 理論科目 A問題3を解説します。環状鉄心の2つのコイル(自己インダクタンス40mHと10mH)を端子2-3で接続したときの合成インダクタンスが86mHのとき、2コイルの結合係数kを求める問題です。

直列接続の合成インダクタンスはL=L1+L2±2Mです。測定値86 mHは単純和50 mHより大きいため加極性の+2Mを選び、M=18 mHを得ます。最後にk=M/√(L1L2)で結合係数を求めます。

目次

令和4年度上期 理論科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、令和4年度上期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 令和4年度上期 A問題3 問題文
令和4年度上期 理論科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和4年度上期 A問題3

 図のような環状鉄心に巻かれたコイルがある。図の環状コイルについて、端子1-2間の自己インダクタンスを測定したところ40mHであった。端子3-4間の自己インダクタンスを測定したところ10mHであった。端子2と3を接続した状態で端子1-4間のインダクタンスを測定したところ86mHであった。このとき、端子1-2間のコイルと端子3-4間のコイルとの間の結合係数kの値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)0.81 (2)0.90 (3)0.95 (4)0.98 (5)1.8

図 環状鉄心に巻いた端子1-2のコイル(巻数N)と端子3-4のコイル(巻数N')(問題図)
図 環状鉄心に巻いた端子1-2のコイル(巻数N)と端子3-4のコイル(巻数N’)(問題図)

出題のポイント:単純和と比べれば、和動か差動かが即決する

接続図を読む必要はありません測定値86 mH が、単純和の50 mH より大きいか小さいか——それだけで和動接続と分かります。大きければ和動(+2M)、小さければ差動(−2M)です。

この問題の流れは「合成値 → \(M\) → \(k\)」の3ステップです。どのステップも計算は軽いのですが、2つ目で「2M の2」を落とすと、最後の \(k\) が1を超えて破綻します。その破綻に気づけるかどうかが分かれ目です。

直列接続の合成インダクタンスと結合係数
$$L=L_1+L_2\pm2M\qquad(\;+\;\text{が和動}、\;-\;\text{が差動}\;)$$$$k=\frac{M}{\sqrt{L_1L_2}}\qquad(0\le k\le1)$$

\(2M\) であって \(M\) ではありませんコイル1がコイル2に及ぼす分と、その逆の分で2回ぶん効くからです。

二つの結合コイルの測定値86ミリヘンリーと単純和50ミリヘンリーを比較して加極性を選ぶ図
86 mH>L₁+L₂=50 mHなので、合成式はL=L₁+L₂+2Mです。
二つの結合コイルの測定値86ミリヘンリーと単純和50ミリヘンリーを比較して加極性を選ぶ図
86 mH>L₁+L₂=50 mHなので、合成式はL=L₁+L₂+2Mです。

解説:3ステップで答えに届く

$$L_1+L_2=40+10=50\;\mathrm{mH}$$
❶ まず単純和を出す
測定値86 mH はこれより大きい → 和動接続
$$2M=86-50=36\;\Rightarrow\;M=18\;\mathrm{mH}$$
❷ 差から \(M\) を求める
2で割るのを忘れない
$$k=\frac{M}{\sqrt{L_1L_2}}=\frac{18}{\sqrt{40\times10}}=\frac{18}{20}=0.90$$
❸ 結合係数
\(\sqrt{400}=20\)

\(\sqrt{40\times10}=\sqrt{400}=20\) ときれいな数字になるのは、出題者が計算しやすいように値を選んでいるからです。ルートの中が平方数にならないときは、どこかで読み違えている可能性を疑ってください。

検算:\(40+10+36=86\;\mathrm{mH}\) ✓ 測定値と一致します。ちなみにもう一方の接続(差動)で測れば \(40+10-36=14\;\mathrm{mH}\) になるはずです。

加極性と差極性の直列合成式及び相互インダクタンスと結合係数の関係を示す図
M=k√(L₁L₂)より、結合係数はk=M/√(L₁L₂)で求めます。
加極性と差極性の直列合成式及び相互インダクタンスと結合係数の関係を示す図
M=k√(L₁L₂)より、結合係数はk=M/√(L₁L₂)で求めます。
答え\(k=0.90\) → 選択肢(2)
相互インダクタンス18ミリヘンリーと基準値20ミリヘンリーから結合係数0.90と正答2を求める図
M=18 mH、√(L₁L₂)=20 mHよりk=18/20=0.90、公式正答は(2)です。
相互インダクタンス18ミリヘンリーと基準値20ミリヘンリーから結合係数0.90と正答2を求める図
M=18 mH、√(L₁L₂)=20 mHよりk=18/20=0.90、公式正答は(2)です。

誤答の正体:選択肢(5)の1.8 は「物理的にあり得ない値」

誤り方得られる \(M\)得られる \(k\)選択肢
\(2M\) の2を忘れて \(M=36\) とする36 mH1.8(5)
正しい計算18 mH0.90(2) ◎

結合係数は必ず \(0\le k\le1\) です。1.8 という値が出た時点で、計算が間違っていると断定できます選択肢に1.8 が置いてあるのは、この検算をしない人を拾うためにほかなりません。

この「範囲チェック」は本番で非常に有効です。結合係数は1以下、効率は1以下、力率は1以下——電験には「1を超えたら間違い」と分かる量がいくつもあります。答えを出したら必ず範囲を確認してください。

⚠️ よくある間違い
「コイルが2つだから \(L_1+L_2\)」までは正しいのに、\(M\) を \(2M\) にし忘れるのが最頻出のミスです。相互インダクタンスは「1→2」と「2→1」の2方向で効く——だから2倍になります。

深掘り:結合係数は何を表しているか

結合係数 \(k\) は、片方のコイルが作った磁束のうち、何割がもう片方を貫くかを表します。\(k=1\) なら全部が貫き(完全結合)、\(k=0\) なら1本も貫きません(無結合)

結合の状態\(k\) の目安具体例
完全結合1.0理想変圧器(漏れ磁束ゼロ)
密結合0.95〜0.99実際の変圧器(閉じた鉄心)
本問0.90環状鉄心だがやや漏れがある
疎結合0.1〜0.5空心コイル、離して置いたコイル
無結合0直交配置(磁束が鎖交しない)

環状鉄心なら本来 \(k\) は1に近くなります。本問の0.90 は少し低めですが、2つのコイルが鉄心の別の場所に巻かれていて、一部の磁束が漏れていると考えれば妥当な値です。

2つのコイルを直角に置くと \(k=0\) になります。片方の磁束がもう片方の面を貫かなくなるからです。ノイズ対策でコイルを直交配置するのは、この性質を利用しています。

💡 覚え方
「\(M\) は必ず \(\sqrt{L_1L_2}\) 以下」と覚えてください。本問なら \(M\le20\;\mathrm{mH}\)36 mH は明らかに超えているので、その時点で誤りに気づけます。

⏱️ 本番での進め方
❶ 単純和と比べる。大きければ和動、小さければ差動。図を読まなくてよい。
❷ 差を2で割る。\(2M=86-50\) から \(M=18\)。
❸ \(k\le1\) を必ず確認。1を超えたら計算ミス。
❹ ルートの中が平方数になるか。ならなければ読み違いを疑う。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

極性判定86>50なので加極性
直列合成L=L1+L2+2M
M(86−50)/2=18 mH
√(L1L2)20 mH
k18/20=0.90
答え(2)

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・インダクタンスの関連問題:【理論】平成29年度A問題3

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