自動制御18【電験3種 機械】K・T付きフィードバック制御系のボード線図(折線近似)!令和5年度下期 A問題13 完全解説

電験3種 機械科目 自動制御 令和5年度下期 A問題13 折線近似で描くボード線図!正しいのはどれ?

今回は令和5年度下期 機械科目 A問題13を解説します。比例要素Kと積分要素1/(jωT)を直列につないだフィードバック制御系の閉ループ周波数伝達関数W(jω)=C(jω)/R(jω)について、そのボード線図の折線近似ゲイン特性を選ぶ問題です。

ブロック線図から等式を立ててW(jω)=1/(1+jω(T/K))の形に整理すると、低域ゲイン0dB、折れ点角周波数K/T、高域で-20dB/decの下りという典型的な一次遅れ要素の折線近似になります。

目次

令和5年度下期 機械科目 A問題13:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 自動制御 令和5年度下期 A問題13 問題文
令和5年度下期 機械科目 A問題13 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題13

電験3種 機械科目 【自動制御】 令和5年度下期 A問題13

 図に示すようなフィードバック制御系がある。閉ループ周波数伝達関数W(jω)=C(jω)/R(jω)のボード線図の折線近似ゲイン特性として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし,ωは角周波数[rad/s]を表す。

(1)折れ点1/Tで0dBから20log10Kの高さから下降開始(低域ゲイン20log10K,折れ点角周波数1/T,-20dB/dec)
(2)折れ点T/K,0dB水平線から下降(低域ゲイン0dB,折れ点T/K,-20dB/dec)
(3)折れ点T,20log10Kの高さから下降(低域ゲイン20log10K,折れ点T,-20dB/dec)
(4)折れ点K/T,0dB水平線から下降(低域ゲイン0dB,折れ点K/T,-20dB/dec)
(5)折れ点K/T,20log10Kの高さから下降(低域ゲイン20log10K,折れ点K/T,-20dB/dec)

図 フィードバック制御ブロック線図(問題図)
図 フィードバック制御ブロック線図(問題図)

出題のポイント:積分要素を閉じると一次遅れになる

比例K と積分1/(jωT) を直列にして、単位フィードバックで閉じる——この形は制御工学の最も基本的な構成です。

\( W(j\omega)=\dfrac{K\cdot\dfrac{1}{j\omega T}}{1+K\cdot\dfrac{1}{j\omega T}} \)
閉ループの公式
G/(1+G)
\( \phantom{W(j\omega)}=\dfrac{K}{j\omega T+K} \)
分母分子に jωT を掛ける
\( \phantom{W(j\omega)}=\dfrac{1}{1+j\omega\dfrac{T}{K}} \)
分母の実部を1 にそろえる
★標準形に直す

結果は時定数 T/K の一次遅れ要素になりました。積分要素を負帰還で囲むと一次遅れになる——覚えておくと計算が速くなる形です。

読み取る項目標準形からボード線図では
低域ゲイン分子が1★0 dB
時定数T/K
折れ点角周波数その逆数★K/T
高域の傾き一次遅れ−20 dB/dec
図 フィードバック制御ブロック線図(問題図)
図 フィードバック制御ブロック線図(問題図)
比例要素Kと積分要素1/(jωT)を直列にした単位負帰還ブロック線図と閉ループ伝達関数
前向き経路は積分要素、閉ループ全体は一次遅れ要素です。
令和5年度下期機械A問題13、閉ループ伝達関数とボード線図の要点、正解は選択肢4
低域0 dB・折れ点K/T・高域-20 dB/decなので(4)です。
答え正解は (4) 低域0 dB、折れ点K/T、−20 dB/decです。分子が1 なのだから低域は必ず0 dB——K が分子に残らない点が最大の注意点です。

⚠️ よくある間違い
低域ゲインを20log10K としている選択肢が3つあります——最も多い誤りです。開ループなら確かに K が効きますが、閉じたら分子が1 になる——ここが引っかけどころです。
折れ点を T/K としている(2)逆数を取り忘れたもの。時定数が T/K なら折れ点はその逆数の K/Tです。
直流で考えれば低域ゲインは即座に分かります——ω→0 で積分要素のゲインが無限大無限大を閉じれば1(=0 dB)になるからです。

なぜ閉じると低域ゲインが0 dB になるのか

これは偶然ではなく、積分要素を含む制御系の重要な性質です。「定常偏差が0 になる」ということと同じ意味を持っています。

前向き要素ω→0 でのゲイン閉ループの低域ゲイン定常偏差
比例のみ KK(有限)K/(1+K)(1 より小さい)★残る
積分を含む K/(jωT)★無限大1(=0 dB)★0

閉ループゲインが1 ということは、出力が入力とぴったり一致するということ——つまり定常偏差が0です。PID制御のI動作が定常偏差を消す理由が、ここでも確かめられます

制御工学では、前向き経路に含まれる積分要素の数で「型」を分類します。0型は定常偏差が残り、1型はステップ入力に対して偏差0——本問は1型の制御系にあたります。

K を大きくするとどうなるか

折れ点角周波数が K/Tですから、K を大きくすると折れ点が高周波側へ動きます

K時定数 T/K折れ点 K/T応答
小さい大きい低い遅い
大きい小さい★高い速い

K を大きくすれば応答が速くなる——広い周波数帯域まで追従できるようになるからです。低域ゲインは0 dB のまま変わりません

この構成では、K をいくら大きくしても不安定にはなりません——一次遅れは位相が90°までしか遅れないからです。実際の制御対象にはもっと多くの遅れがあるので、そこで K の上限が決まってくることになります。

⏱️ 本番での進め方
① 閉ループ公式 G/(1+G) に G=K/(jωT) を入れる。
② 整理すると 1/(1+jωT/K)。★分子は1。
③ だから低域は0 dB。20log10K ではない。
④ 時定数T/K の逆数=折れ点K/T。

💡 覚え方
「積分を閉じると一次遅れ、低域は必ず0 dB」——分子が1 になるからそして「時定数の逆数が折れ点」——T/K と K/T を取り違えないことです。

低域0デシベル、折れ点K/T、高域マイナス20デシベル毎デカードのボード線図折線近似
0 dBからK/Tで折れ、以後-20 dB/decで低下します。

ボード線図の折線近似はなぜ使えるのか

本問は「折線近似」のゲイン特性を選ぶ問題でした。なぜ曲線を直線で近似してよいのかを確認しておきましょう。

角周波数正確な値折線近似誤差
ω=0.1ωc−0.04 dB0 dBわずか
ω=ωc−3.01 dB0 dB★最大3 dB
ω=10ωc−20.04 dB−20 dBわずか

誤差が最大になるのは折れ点で、そこでも3 dB しかずれません——それ以外の周波数では誤差はもっと小さいのです。

3 dB は振幅で1.41倍(1/√2)——制御系の設計では十分な精度だと言えます。だから手描きでも設計の見当をつけられるのがボード線図の実用的な価値です。

折線近似なら、要素ごとの線を足し合わせるだけで全体が描けます。掛け算が足し算になる——これが対数目盛りを使う最大の理由です。

位相特性も同様に近似できます0.1ωc から 10ωc にかけて直線的に0°から−90°へ——折れ点でちょうど−45°を通るという近似が使われます。

この構成が実際に使われる場面

比例+積分を直列にして単位フィードバックで閉じる——これは速度制御や位置制御の基本形です。

制御対象積分要素の正体出力
位置制御速度を積分すると位置位置
速度制御トルクを積分すると速度(慣性)速度
タンクの液位流量を積分すると液位液位

「量の変化率を操作すると、その量そのものが制御される」——こういう対象は自然に積分要素をもちますだから本問の構成は、机上の想定ではなく実在する形なのです。

積分要素を含むおかげで、定常偏差が0 になる——位置決めが正確にできる理由がここにあります。制御器にI 動作を入れなくても、対象自体が積分特性をもっていれば偏差は消えるのです。

まとめ

W(jω)1/(1+jω(T/K))
低域ゲイン0dB
折れ点角周波数K/T
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・T,K付きブロック線図から周波数伝達関数とボード線図を求める:【機械】平成27年度B問題17
・水力発電所の始動シーケンス(ラダー図)を読み解く:【機械】平成30年度B問題18

📚 次に解くべき関連問題
【機械】令和3年度A問題13(自動制御6)
【機械】令和4年度下期B問題15(自動制御5)
【機械】平成18年度A問題13(自動制御14)
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