今回は令和5年度上期 理論科目 A問題13を解説します。コレクタ接地増幅回路(エミッタホロワ)の特徴に関する5つの記述のうち、誤っているものを選ぶ問題です。
コレクタ接地は電圧増幅度が約1、入力インピーダンスが大きく出力インピーダンスが小さいのが特徴で、緩衝増幅器(バッファ)に使われます。強い負帰還がかかるためひずみは小さい点がポイントです。
令和5年度上期 理論科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 令和5年度上期 A問題13
図のコレクタ接地増幅回路に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)電圧増幅度は約1である。
(2)入力インピーダンスが大きい。
(3)出力インピーダンスが小さい。
(4)緩衝増幅器として使用されることがある。
(5)増幅回路内部で発生するひずみが大きい。

ポイント解説:エミッタフォロワは高入力・低出力のバッファ

コレクタ接地増幅回路は、ベースへ入力しエミッタから出力するエミッタフォロワです。電圧増幅度は約1ですが、入力インピーダンスが大きく出力インピーダンスが小さいため、前段と負荷をつなぐ緩衝増幅器として働きます。出力変化がベース・エミッタ間電圧の変化を打ち消す100%負帰還により、ひずみは小さくなります。したがって「ひずみが大きい」とする選択肢(5)が誤りです。
核心解説:100%負帰還がひずみを小さくする

| 選択肢 | 内容 | 判定 | 根拠 |
| (1) | 電圧増幅度は約1 | ○ | 出力が入力に追従するので1倍 |
| (2) | 入力インピーダンスが大きい | ○ | 前段から電流をほとんど取らない |
| (3) | 出力インピーダンスが小さい | ○ | 後段へ大きな電流を供給できる |
| (4) | 緩衝増幅器として使う | ○ | インピーダンス変換が目的 |
| (5) | ひずみが大きい | × | 100 %負帰還なのでひずみは【小さい】(★誤り) |
(2)(3)がエミッタフォロワの存在意義です。入力側は高インピーダンス、出力側は低インピーダンス——ちょうどインピーダンスを変換してくれます。
(4)の「緩衝増幅器(バッファ)」は、この変換機能を使った用途です。高インピーダンスの信号源と、低インピーダンスの負荷をつなぐ——間に挟むだけで信号の劣化を防げます。
問題の解説:5つの特徴を照合し誤りの選択肢(5)を判定

電圧増幅度が1しかない——これを「性能が悪い」と誤解すると、「ひずみも大きいのだろう」と思ってしまいます。
実際は正反対です。電圧を増幅しない代わりに、ひずみが小さく特性が安定——「電圧増幅を捨てて、他のすべてを手に入れた」回路です。
| 性質 | エミッタフォロワ | 理由 |
| 電圧増幅度 | 約1(低い) | 出力が入力に追従するため |
| ひずみ | 小さい | 帰還率 \(\beta=1\) の負帰還 |
| 帯域幅 | 広い | 負帰還の効果 |
| 安定性 | 高い | 負帰還の効果 |
⚠️ よくある間違い
負帰還は「増幅度を犠牲にして他をすべて改善する」技術です。エミッタフォロワは帰還率100 %——増幅度は1まで落ちますが、ひずみ・帯域・安定性は最高になります。
☝️ ひっかけの作り方:「電流」は大きく増幅しています。電圧増幅度が1でも、電流増幅度は \(h_{fe}+1\) 倍——だから電力は増幅されており、立派な「増幅回路」です。
深掘り①:3つの接地方式を対比する
トランジスタ増幅回路には3つの接地方式があります。それぞれ得意分野が違うので、対比して覚えましょう。
| エミッタ接地 | ベース接地 | コレクタ接地 | |
| 別名 | — | — | エミッタフォロワ |
| 電圧増幅度 | 大 | 大 | 約1(増幅しない) |
| 電流増幅度 | 大 | 約1 | 大 |
| 入力インピーダンス | 中 | 小 | 大 |
| 出力インピーダンス | 中 | 大 | 小 |
| 位相 | 逆相 | 同相 | 同相 |
| 主な用途 | 一般的な増幅 | 高周波増幅 | バッファ(緩衝) |
エミッタ接地が最も一般的です。電圧も電流も大きく増幅できる——「増幅回路」といえばまずこれです。ただし出力が逆相になります。
コレクタ接地(エミッタフォロワ)は電圧を増幅しませんが、入力インピーダンスが高く出力インピーダンスが低い——回路と回路をつなぐ緩衝役です。
ベース接地は高周波向きです。入力と出力の間の容量結合が小さく、高い周波数まで動作します——アンテナ直下の増幅などに使われます。
深掘り②:なぜインピーダンス変換が必要なのか
高インピーダンスの信号源に低インピーダンスの負荷を直結すると、信号が大きく減衰します。その間に緩衝増幅器を入れるのが解決策です。
\(R_s\gg R_L\) なら大幅に減衰
1 %しか届かない
ほぼ全部届く
エミッタフォロワの入力インピーダンスは非常に高いので、信号源からほとんど電流を取りません——だから信号源の電圧がそのまま入ってきます。
出力インピーダンスは非常に低いので、負荷に大きな電流を供給できます——結果として、信号を劣化させずに次の段へ渡せます。
深掘り③:エミッタフォロワの入出力インピーダンス
なぜ入力が高く、出力が低くなるのか——式で確認しておきましょう。
| 式 | \(h_{fe}=100\)、\(R_E=1\ \mathrm{k\Omega}\) のとき | |
| 入力インピーダンス | \((1+h_{fe})R_E\) | 約101 kΩ(高い) |
| 出力インピーダンス | \((R_s+h_{ie})/(1+h_{fe})\) | 数十 Ω(低い) |
\(h_{fe}\) が100なら、インピーダンスが約100倍・約1/100に変換されます。4桁近い変換——これがエミッタフォロワの威力です。
オペアンプのボルテージフォロワも同じ発想です。電圧増幅度1、入力インピーダンス極大、出力インピーダンス極小——用途もまったく同じです。
深掘り④:接地方式の名前の由来
「エミッタ接地」「コレクタ接地」という名前は、どの端子が入力と出力の共通端子になっているかを表しています。
| 方式 | 入力端子 | 出力端子 | 共通(接地)端子 |
| エミッタ接地 | ベース | コレクタ | エミッタ |
| ベース接地 | エミッタ | コレクタ | ベース |
| コレクタ接地 | ベース | エミッタ | コレクタ |
「接地」といっても直流的に接地されているとは限りません。交流的に共通(コンデンサで接地)であればよく、信号の基準点になっている端子を指します。
FETでも同じ分類があります。ソース接地・ゲート接地・ドレイン接地——それぞれエミッタ接地・ベース接地・コレクタ接地に対応します。
ドレイン接地は「ソースフォロワ」と呼ばれ、エミッタフォロワと同じくバッファとして使われます。
⏱️ 本番での進め方
❶ エミッタフォロワ=電圧増幅度1・入力Z大・出力Z小——バッファ。
❷ 帰還率100 %の負帰還——だからひずみは【小さい】。
❸ 3つの接地方式を表で対比——どの性質を聞かれても答えられる。
❹ 「増幅しない」=「性能が悪い」ではない——電流は大きく増幅する。
💡 覚え方
「フォロワ=追従する=出力が入力にそっくり」——そっくりということは、ひずみがないということです。名前が性能を保証しています。
出題履歴:接地方式の対比は頻出
3つの接地方式の特徴を問う出題は、電子回路分野の定番です。対比表を一度作っておけば、どの方式のどの性質を聞かれても対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成28年度A問題13(エミッタ接地増幅回路)/【理論】令和元年度A問題13(負帰還増幅回路)
まとめ
| (5)誤り | 負帰還でひずみは小さい |
| (1) | 電圧増幅度≈1(正) |
| (2)(3) | 入力Z大・出力Z小(正) |
| (4) | 緩衝増幅器に利用(正) |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・エミッタホロワの入力インピーダンス(電子回路4):【理論】令和7年度上期 B問題18

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