今回は令和3年度 理論科目 A問題5を解説します。熱電対の二つの接合点に温度差を与えたときに生じる現象・起電力の名称、および高温側・低温側の接点の呼び方を問う穴埋め問題です。
熱電対は異なる2種類の金属を接合したもので、接合点に温度差を与えるとゼーベック効果により熱起電力が発生します。高温側を温接点、低温側を冷接点と呼ぶことを押さえれば解けます。
令和3年度 理論科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題5
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 令和3年度 A問題5
次の文章は、熱電対に関する記述である。
熱電対の二つの接合点に温度差を与えると、起電力が発生する。この現象を(ア)効果といい、このとき発生する起電力を(イ)起電力という。熱電対の接合点の温度の高いほうを(ウ)接点、低いほうを(エ)接点という。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) ゼーベック 熱 温 冷 (2) ゼーベック 熱 高 低 (3) ペルチェ 誘導 高 低 (4) ペルチェ 熱 温 冷 (5) ペルチェ 誘導 温 冷
出題のポイント:効果の名前と接点の呼び名
2種類の金属をつないで、両端の接合点に温度差を与えると起電力が発生——これがゼーベック効果です。温度を電圧に変える現象で、温度計として広く使われています。
接合点の呼び名も問われています。温度の高いほうが「温接点」、低いほうが「冷接点」——「高接点・低接点」という言い方は存在しません。
この起電力を「熱起電力」と呼びます。「誘導起電力」は電磁誘導によるもので、熱電対とはまったく別の現象です。

解説:4つの空欄を順に埋める
| 空欄 | 答え | 根拠 |
| (ア) | ゼーベック | 温度差から起電力を生む現象 |
| (イ) | 熱 | 熱によって生じる起電力=熱起電力 |
| (ウ) | 温 | 温度の高いほう=温接点 |
| (エ) | 冷 | 温度の低いほう=冷接点 |
(ア)でペルチェを選ばないようにしてください。ペルチェ効果は「電流を流すと熱が出入りする」——ゼーベックとちょうど逆向きの現象です。
(イ)の「誘導起電力」は電磁誘導です。コイルを磁界中で動かすと生じるもので、温度とはまったく関係ありません。


誤答の正体:ゼーベックとペルチェを逆にする
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ)(エ) | 判定 |
| (1) | ゼーベック | 熱 | 温・冷 | ◎ |
| (2) | ゼーベック | 熱 | 高・低 | ×(呼び名が誤り) |
| (3) | ペルチェ | 誘導 | 高・低 | × |
| (4) | ペルチェ | 熱 | 温・冷 | ×(効果名が誤り) |
| (5) | ペルチェ | 誘導 | 温・冷 | × |
(2)が最も惜しい誤答です。(ア)(イ)は正しいのに、接点の呼び名が「高・低」——正式には「温接点・冷接点」です。用語の正確さが問われています。
(4)は効果名だけの誤りです。「温度差 → 起電力」はゼーベック——ペルチェは逆向きだと覚えてください。
⚠️ よくある間違い
ゼーベックとペルチェは互いに逆の現象です。「温度差が電圧を生む」のがゼーベック、「電流が温度差を生む」のがペルチェ——入力と出力を入れ替えた関係です。
☝️ ひっかけの作り方:接点の呼び名は「温接点」「冷接点」です。「基準接点」という呼び方もあります(冷接点のこと)が、「高接点」「低接点」とは言いません。
深掘り①:3つの熱電気現象を対比する
熱と電気が関係する現象は3つあります。名前と内容をセットで覚えておきましょう。
| 効果 | 内容 | 向き | 用途 |
| ゼーベック効果 | 温度差 → 起電力 | 熱 → 電気 | 熱電対(温度測定)・熱電発電 |
| ペルチェ効果 | 電流 → 熱の吸収・発生 | 電気 → 熱 | ペルチェ素子(電子冷却) |
| トムソン効果 | 温度勾配のある1本の導体に電流 → 熱の吸収・発生 | 電気 → 熱 | — |
ゼーベックだけが「熱 → 電気」——残る2つは「電気 → 熱」です。この向きの違いで区別できます。
ペルチェ素子は、電流を流すと片面が冷えて反対面が熱くなるデバイスです。小型冷蔵庫やCPUクーラー、車載クーラーボックスなどに使われています。電流の向きを逆にすれば、冷却と加熱が入れ替わります。
深掘り②:熱電対の実務
熱電対は工業用温度計の主力です。金属の組合せによって、測定範囲と特性が変わります。
| 記号 | 組合せ | 測定範囲 | 特徴 |
| K | クロメル/アルメル | −200〜1200 ℃ | 最も一般的・安価 |
| T | 銅/コンスタンタン | −200〜350 ℃ | 低温で精度が高い |
| R | 白金ロジウム/白金 | 0〜1600 ℃ | 高温・高精度だが高価 |
熱電対は「温度差」しか測れません。だから片方(冷接点)の温度を知る必要があります——氷水(0 ℃)に浸すか、電子回路で補償します。
この「冷接点補償」が実務上の要点です。現代の計測器では、冷接点の温度をサーミスタで測って自動補正しています。
深掘り③:熱電発電という応用
ゼーベック効果は発電にも使えます。温度差さえあれば電気が得られる——可動部がないので故障しにくいのが利点です。
| 用途 | 熱源 | 特徴 |
| 宇宙探査機(RTG) | 放射性同位体の崩壊熱 | 数十年動き続ける |
| 工場の廃熱利用 | 炉や配管の余熱 | 捨てていた熱から発電 |
| 体温発電 | 人の体温と外気の差 | ウェアラブル機器向け |
ボイジャー探査機は打ち上げから40年以上、熱電発電で動き続けています。太陽から遠すぎて太陽電池が使えないため、プルトニウムの崩壊熱を電気に変えています。
変換効率は数 %と低いのが弱点です。それでも「可動部がない」「メンテナンス不要」という利点が、特殊な用途では決定的になります。
⏱️ 本番での進め方
❶ ゼーベック=熱から電気、ペルチェ=電気から熱——向きで区別。
❷ 接点は「温接点」「冷接点」——高・低とは言わない。
❸ 「誘導起電力」は電磁誘導——熱とは無関係。
❹ 熱電対は温度差しか測れない——冷接点補償が必要。
💡 覚え方
「ゼーベックのゼは『絶対温度』のゼ」——などと語呂で覚えるより、「温度差→起電力」という向きを図でイメージするほうが確実です。ペルチェは矢印が逆——それだけです。
出題履歴:熱電気現象は用語問題の定番
ゼーベック効果とペルチェ効果の区別は、数年に一度は問われるテーマです。計算がなく、知っていれば30秒で解ける——取りこぼしたくない1問です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和5年度上期A問題12(ゼーベック効果)
深掘り④:熱電対はなぜ「小さな電圧」しか出ないのか
熱電対の出力は、100 ℃の温度差でもわずか数ミリボルトです。K形熱電対なら約41 µV/℃——1000 ℃の差でようやく約41 mVにしかなりません。
| 熱電対 | ゼーベック係数 | 100 ℃差での出力 |
| K形(クロメル/アルメル) | 約41 µV/℃ | 約4.1 mV |
| T形(銅/コンスタンタン) | 約43 µV/℃ | 約4.3 mV |
| R形(白金ロジウム/白金) | 約10 µV/℃ | 約1.0 mV |
これほど小さい電圧なので、増幅回路とノイズ対策が欠かせません。配線にはシールド線を使い、補償導線で計器まで引く——途中で別の金属を挟むと、そこにも熱起電力が発生してしまうからです。
「補償導線」は熱電対と同じ熱起電力特性を持つ電線です。高価な熱電対材を長く引かずに済む——実務では必ず使われます。
出力が小さい代わりに、熱電対には大きな利点があります。電源が要らない、応答が速い、広い温度範囲、丈夫——だから工業計測の主力であり続けています。
⚠️ よくある間違い
熱電対に電源は不要です。温度差そのものが起電力を生む——測定対象の熱エネルギーが電気に変わっています。測温抵抗体(Pt100など)は電流を流す必要があるので、この点が大きく違います。
まとめ
| (ア) | ゼーベック効果 |
| (イ) | 熱起電力 |
| (ウ)(エ) | 温接点・冷接点 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・ゼーベック効果(半導体7):【理論】令和5年度上期 A問題12

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