今回は平成28年度 理論科目 B問題17を解説します。金属床と2枚の平板電極でつくる2つの空気コンデンサが並列接続された回路で、(a)スイッチを閉じてから開いたときの合計電荷、(b)電極間隔xを広げて火花放電が生じたときの絶縁破壊電圧を求める問題です。
(a)は並列なので合成容量C=C1+C2、電荷Q=CV0で求まります。(b)では、スイッチ開放後も2枚の上部電極は導線でつながっていますが、電源からは孤立するため、上部電極群の合計電荷Qが保存されます。xを広げるとC2が減り、共通電圧V=Q/Cが上昇します。
ほぼ同じ問題が 【理論】令和6年度下期B問題17 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成28年度 理論科目 B問題17:問題文と選択肢
「スイッチを一旦閉じてから開いた」——この一文が問題全体を決めます。開いた後は電圧ではなく合計電荷が固定されます。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題17
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成28年度 B問題17
図のように、十分大きい平らな金属板で覆われた床と平板電極とで作られる空気コンデンサが二つ並列接続されている。二つの電極は床と平行であり、それらの面積は左側がA1=10-3m2、右側がA2=10-2m2である。床と各電極の間隔は左側がd=10-3mで固定、右側がx〔m〕で可変、直流電源電圧はV0=1000Vである。次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、空気の誘電率をε=8.85×10-12F/mとし、静電容量を考える際にコンデンサの端効果は無視できるものとする。
(a)まず、右側のx〔m〕をd〔m〕と設定し、スイッチSを一旦閉じてから開いた。このとき、二枚の電極に蓄えられる合計電荷Qの値〔C〕として最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)8.0×10-9 (2)1.6×10-8 (3)9.7×10-8 (4)1.9×10-7 (5)1.6×10-6
(b)上記(a)の操作の後、徐々にxを増していったところ、x=3.0×10-3mのときに左側の電極と床との間に火花放電が生じた。左側のコンデンサの空隙の絶縁破壊電圧V〔V〕として最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)3.3×102 (2)2.5×103 (3)3.0×103 (4)5.1×103 (5)3.0×104

出題のポイント:スイッチを開いた後は「合計電荷」が保存される
2つの空気コンデンサが並列につながれています。スイッチを開いた後に何が固定されるか——ここが本問の骨格です。
| 状態 | 電源との関係 | 固定される量 | 共通する量 |
| スイッチを閉じている | つながっている | 電圧 \(V_0\) | 電圧 |
| スイッチを開いた後 | 孤立している | 合計電荷 Q | 電圧(並列のまま) |
スイッチを開いても2枚の上部電極は導線でつながったままです。だから並列の関係は続き、電圧は共通——しかし電源から切り離されたので、合計電荷が動かせなくなります。
この「並列のまま孤立する」状態が本問の要です。間隔を広げると容量が減り、電荷が同じなら電圧が上がります。

(a) の解説:並列合成容量から電荷を求める
STEP1 各容量を計算する
面積が10倍だから
STEP2 合成して電荷を求める

(b) の解説:電荷保存から共通電圧を求める
右側の間隔 \(x\) を \(3.0\times10^{-3}\;\mathrm{m}\)(\(3d\))まで広げます。合計電荷は \(9.735\times10^{-8}\;\mathrm{C}\) のままです。
\(C\propto1/x\)
1000 Vの約2.5倍


なぜ左側が先に放電するのか
問題文は「左側の電極と床との間に火花放電が生じた」と書いています。なぜ左側なのか——理由を確認しておきましょう。
間隔が狭い
左の1/3
電圧は共通(並列だから)ですが、間隔が違うので電界が違います。左側は右側の3倍の電界——だから左側が先に絶縁破壊します。
「電圧が同じでも、狭いほうが危ない」——これが並列配置の重要な性質です。広げたのは右側なのに、壊れるのは左側という一見逆説的な結果になります。
| 左側(固定) | 右側(可変) | |
| 間隔 | 1 mm | 3 mm(広げた) |
| 電圧 | 2538 V(共通) | 2538 V(共通) |
| 電界 | 2538 V/mm | 846 V/mm |
| 結果 | 先に放電 | 余裕がある |
誤答の正体:どの段階で止まるか
| 問 | 誤り方 | 得られる値 | 判定 |
| (a) | 左側 \(C_1\) だけで計算 | \(8.85\times10^{-9}\) | ×(2つあることを見落とし) |
| (a) | 右側 \(C_2\) だけで計算 | \(8.85\times10^{-8}\) | ×(小さいほうを無視) |
| (a) | 正しい計算 | \(9.735\times10^{-8}\) | ○ 選択肢(3) |
| (b) | 電圧一定と誤解 | \(1000\;\mathrm{V}\) | ×(スイッチを開いた意味を無視) |
| (b) | 右側の電界を答える | \(846\;\mathrm{V}\) | ×(問われているのは左側の破壊電圧) |
| (b) | 正しい計算 | \(2538\;\mathrm{V}\) | ○ 選択肢(2) |
(b)で最も危険なのは「電圧は1000 Vのまま」と考えることです。スイッチを開いた=電源から切り離したので、電圧はもう固定されていません。「スイッチを一旦閉じてから開いた」という一文を読み飛ばすと、この誤りに直行します。
電荷保存を使うか電圧一定を使うか——この判断が本問の最大の分岐点です。
この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています
本問は令和6年度下期 理論科目 B問題17と同一の問題です。問題文・数値・5つの選択肢・正答((a)(3)、(b)(2))まで、すべて同一です。
電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に「並列コンデンサの電荷保存と絶縁破壊」という定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。
ただし選択肢の番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。
あわせて解いておきたい記事:令和6年度下期 理論科目 B問題17
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 「スイッチを閉じてから開いた」=電荷保存。電圧は固定されない
② 並列のままなので電圧は共通、合計電荷を合成容量で割る
③ \(C\propto A/d\)——面積10倍なら容量10倍、間隔3倍なら容量1/3
④ 電圧が共通でも間隔が違えば電界が違う。狭いほうが危ない
⑤ 問われているのがどちら側の電圧・電界かを確認する
💡 覚え方
「開いたら電荷が residence(居座る)」。スイッチを開くと電荷は行き場を失い、合計値のまま固定されます。容量が減れば電圧が上がる——\(V=Q/C\) がそのまま効きます。
⚠️ よくある間違い
スイッチを開いた後も電圧が1000 Vのままと考えるのが最頻出のミスです。開いた=電荷一定。また広げた右側が壊れると思い込むのも誤りで、電界が強いのは間隔の狭い左側です。
まとめ
| C1・C2 | 8.85×10-12・8.85×10-11F |
| (a)電荷Q | (C1+C2)V0≒9.7×10-8C …(3) |
| (b)x=3mm | C2‘≒2.95×10-11F |
| (b)破壊電圧 | Q/(C1+C2‘)≒2.5×103V …(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・コンデンサの合成と電荷の関連問題:【理論】令和6年度下期B問題17

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