電気及び電子計測24【電験3種 理論】ディジタル計器(A-D変換・量子化・オシロスコープ)の正誤を判定する!平成28年度 A問題14 完全解説

電験3種 理論科目 電気及び電子計測 平成28年度 A問題14 A-D変換とオシロスコープ!記述の正誤を判定

今回は平成28年度 理論科目 A問題14を解説します。ディジタル計器に関する記述のうち、誤っているものを選ぶ問題です。

ディジタル計器はA-D変換で連続量を数値化して表示します。二重積分形A-D変換・量子化・オートレンジといった基本用語と、ディジタルオシロスコープの特徴を押さえましょう。

目次

平成28年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電気及び電子計測 平成28年度 A問題14 問題文
平成28年度 理論科目 A問題14 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14

電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成28年度 A問題14

 ディジタル計器に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)ディジタル計器用のA-D変換器には、二重積分形が用いられることがある。
(2)ディジタルオシロスコープでは、周期性のない信号波形を測定することはできない。
(3)量子化とは、連続的な値を何段階かの値で近似することである。
(4)ディジタル計器は、測定値が数字で表示されるので、読み取りの間違いが少ない。
(5)測定可能な範囲(レンジ)を切り換える必要がない機能(オートレンジ)は、測定値のおよその値が分からない場合にも便利な機能である。

出題のポイント:単発現象こそディジタルの得意分野

誤りは(2)「周期性のない信号波形を測定することはできない」です。むしろ逆で、単発の現象を捉えられるのがディジタルオシロスコープの最大の利点です。

アナログオシロは、繰り返し波形を残像で見せる装置でした。ディジタルオシロは波形をメモリに記録するので、一度きりの現象でも保存して何度でも見られます

ディジタル計測の3ステップ
$$\text{標本化(サンプリング)}\ \rightarrow\ \text{量子化}\ \rightarrow\ \text{符号化}$$

標本化=時間を飛び飛びにする、量子化=値を段階に分ける、符号化=2進数にするこの順番で覚えてください

解説:5つの記述を順に確かめる

(1) A-D変換器に二重積分形が用いられる → 正しい

二重積分形は、入力電圧を一定時間積分し、次に基準電圧で逆向きに積分して戻る時間を測る方式です。変換に時間はかかりますが、精度が高く雑音に強い——ディジタルマルチメータの定番です。

(2) 周期性のない信号波形は測定できない → ★誤り

ディジタルオシロスコープは、A-D変換した波形データをメモリに書き込みますトリガがかかった瞬間の前後を丸ごと記録できるので、単発のサージやノイズも捉えられます

むしろアナログオシロのほうが単発現象に弱いのです。ブラウン管の残光が消える前に見るしかない——記録も再生もできません

(3) 量子化とは連続的な値を何段階かの値で近似すること → 正しい

量子化の定義そのものです。8ビットなら256段階、12ビットなら4096段階——段階が細かいほど元の波形に近づきます

(4) 数字で表示されるので読み取り間違いが少ない → 正しい

アナログ計器は目盛りを読むときに、視差や目盛りの間の推定で個人差が出ますディジタルなら誰が見ても同じ数字——読み取り誤差が原理的に発生しません

(5) オートレンジは概略値が不明でも便利 → 正しい

測定値に応じて自動でレンジを切り替える機能です。手動なら「振り切れたら1段上げる」という手間がかかります——オートレンジならその手間が不要です。

答え誤っているのは(2)

誤答の正体:どれも正しそうに読める

選択肢内容判定見分けの決め手
(1)二重積分形A-D変換器DMMの定番方式
(2)非周期波形は測れない×◎ メモリに記録できる
(3)量子化の定義定義そのまま
(4)読み取り間違いが少ない数字表示の利点
(5)オートレンジは便利常識的に正しい

(2)以外は「そうだろうな」と素直に読める記述です。(2)だけが「できない」という否定形——否定形の肢は疑ってかかるのが正誤問題のコツです。

☝️ ひっかけの作り方:「〜できない」「〜に限る」といった強い否定・限定の表現は、誤りの肢に使われやすいです。本問の(2)がまさにそれ——内容が分からなくても、表現の強さで当たりを付けられます

⚠️ よくある間違い
アナログオシロとディジタルオシロを混同すると(2)を正しいと思ってしまいます。「記録できるかどうか」が決定的な違い——ディジタルはメモリがあるから単発でも捉えられると押さえてください。

深掘り①:A-D変換の3ステップ

ステップ何をするか決めるもの誤差の種類
標本化一定間隔で値を取り出すサンプリング周波数折返し(エイリアシング)
量子化値を段階に丸めるビット数(分解能)量子化誤差
符号化2進数に変換する符号の形式

標本化定理(サンプリング定理)元の信号に含まれる最高周波数の2倍を超える周波数で標本化すれば、元の波形を完全に復元できます

これを下回ると、実在しない低い周波数が現れます——折返し(エイリアシング)です。だからA-D変換の前にローパスフィルタを入れます

CDの標本化周波数が 44.1 kHz なのは、人間の可聴上限 20 kHz の2倍強を確保するためです。身近な例で覚えると忘れません

深掘り②:量子化誤差と分解能

$$\text{分解能}=\frac{\text{フルスケール}}{2^n}$$
❶ \(n\) ビットのとき
段階の細かさ
$$\text{量子化誤差}\leqq\frac{1}{2}\times\text{分解能}$$
❷ 丸め誤差
いちばん近い段階に丸める
ビット数段階数フルスケール 10 V での分解能
8ビット25639 mV
10ビット10249.8 mV
12ビット40962.4 mV
16ビット655360.15 mV

1ビット増えるごとに分解能は半分になります。10ビット増えれば約1000倍細かく——\(2^{10}=1024\) です。

深掘り③:A-D変換器の方式を比べる

方式速度精度特徴用途
二重積分形遅い非常に高い雑音(商用周波)に強いディジタルマルチメータ
逐次比較形高い1ビットずつ確定させる汎用・計測機器
並列比較形(フラッシュ)非常に速い比較器を大量に使う高速オシロ・映像
ΔΣ形遅い非常に高い過標本化とノイズシェーピングオーディオ

速度と精度はトレードオフです。二重積分形は1秒に数回しか変換できませんが、その代わり6桁以上の精度——用途で使い分けます

二重積分形が雑音に強いのは、一定時間の積分=平均を取っているからです。積分時間を商用周波の周期の整数倍にすれば、電源雑音がきれいに消えます

深掘り④:ディジタル計器の長所と短所

ディジタル計器アナログ計器
読み取り数字なので個人差なし視差・目測の誤差あり
変化の追従数字がちらついて読みにくい針の動きで傾向が分かる
入力インピーダンス非常に高い方式による
記録データとして保存できるできない
電源必要不要な方式もある

アナログにも長所があります「値が増えているか減っているか」は針のほうが直感的——ピークを探すような作業はアナログのほうが速いことも。

💡 覚え方
ディジタル=標本化・量子化・符号化の3ステップ。メモリがあるから単発波形も記録できる——これがアナログとの決定的な違いです。

⏱️ 本番での進め方
❶ 否定形・限定表現の肢を最初に疑う——「できない」は誤りの合図。
❷ ディジタルの利点を思い出す:記録・再生・数値表示・自動化。
❸ 用語の定義(量子化・標本化)はそのまま覚える
❹ 残った肢が常識的に正しいなら、そのまま○にしてよい

出題履歴:ディジタル計測は出題が増えている分野

A-D変換・量子化・標本化定理は、近年出題が増えているテーマです。語句の定義を正確に押さえるだけで得点できるので、優先して固めておきたい単元です。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

(2)誤りディジタルオシロは非周期波形も測定できる
(1)A-D変換に二重積分形(正)
(3)量子化=段階で近似(正)
(4)数字表示で読み取り誤差小(正)
(5)オートレンジは便利(正)

▼あわせて解きたい関連問題
・有効数字と単位の取扱い(電気及び電子計測23):【理論】平成29年度 A問題14

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