今回は平成25年度 理論科目 B問題18(選択問題)を解説します。NOT IC・コンデンサC・抵抗を用いた非安定マルチバイブレータについて、(a)回路に関する三つの記述の正誤、(b)コンデンサ端子電圧VCの時間変化の波形を選ぶ問題です。
非安定マルチバイブレータはNOT ICで構成される発振回路で、動作には電源が必要です。発振周波数はf∝1/(R1C)。コンデンサはNOT出力の反転ごとに充放電を繰り返し、VCは指数関数的に正負へ振れるのがポイントです。
平成25年度 理論科目 B問題18:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題18
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成25年度 B問題18
図は、NOT IC、コンデンサC及び抵抗を用いた非安定マルチバイブレータの原理図である。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) この回路に関する三つの記述(ア)〜(ウ)について、正誤の組合せとして正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア)この回路は電源を必要としない。
(イ)抵抗R1[Ω]の値を大きくすると、発振周波数は高くなる。
(ウ)抵抗器R2は、NOT1に流れる入力電流を制限するための素子である。
(ア) (イ) (ウ) (1) 正 正 正 (2) 正 正 誤 (3) 正 誤 誤 (4) 誤 正 誤 (5) 誤 誤 正 (b) コンデンサCの端子間電圧VC[V]の時間tの経過による変化の特徴を最もよく示している波形として、正しいものを上の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、いずれの図も1周期分のみを示している。


解説①:(a) 3つの記述を判定する

NOT ICは能動素子なので電源が必要です。時定数はR1Cで、R1を大きくすると周期が長くなり周波数は低下します。R2はNOT1の入力電流を制限する保護抵抗です。よって(a)は誤・誤・正の(5)。VCは正から0 Vを横切って負まで指数的に変化し、負で折り返して正へ戻るため(b)は(2)です。
解説②:発振を繰り返す流れを理解する

(ア) この回路は電源を必要としない → 誤
NOT IC の中身はトランジスタ(またはMOSFET)です。能動素子は電源から電力を供給されて初めて増幅・反転ができます。回路図では電源線が省略されることが多いのですが、無いわけではありません。
(イ) \(R_1\) を大きくすると発振周波数は高くなる → 誤
発振周波数を決めているのはコンデンサ \(C\) と抵抗 \(R_1\) の時定数です。\(R_1\) を大きくすると充放電に時間がかかり、1周期が長くなります——周波数は低くなります。
「大きくすると高くなる」という記述は、比例と反比例を取り違えた形です。時定数と周波数は必ず逆向き——ここを押さえてください。
(ウ) \(R_2\) は NOT1 に流れる入力電流を制限するための素子 → 正
コンデンサの電圧が反転する瞬間、NOT1 の入力端子には電源電圧を超える電圧がかかります。そのままでは保護ダイオードに過大な電流が流れて IC を傷めます。
\(R_2\) はその電流を制限する保護抵抗です。発振周波数には直接関係せず、あくまで IC を守るための部品——役割がはっきり分かれています。
解説③:(b) コンデンサ電圧の波形を選ぶ

コンデンサの電圧は、抵抗を通した充放電なので必ず指数関数の形になります。直線でも、途中で平らになるのでもありません。
1周期の動きを追うと——❶正の値から出発し、❷指数的に減少して 0 V を横切り負まで下がり、❸出力が反転した瞬間に折り返して、❹指数的に増加して正へ戻る。
| 選択肢 | 波形の特徴 | 判定 |
| (1) | 0 V で折り返し、負にならない | × 0 を横切るはず |
| (2) | 正→0を横切って負→折り返して正へ、どちらも指数形 | ◎ 正解 |
| (3) | 途中で平らになる(飽和する) | × 平らな区間はできない |
| (4) | 0 V から出発して0 V に戻る | × 出発点が正のはず |
| (5) | 上がり方が下に凸(加速する) | × 指数充電は上に凸 |
見分けのコツは2つ——❶0 V を横切って負まで下がるか、❷曲がり方が「上に凸」(傾きがだんだん緩やかになる)か。指数関数の充放電は必ず傾きが緩やかになっていきます。
誤答の正体:指数関数の形を知っているかどうか
(5)がいちばん紛らわしいです。形は似ていますが、上がり方が「下に凸」=時間とともに加速している——抵抗とコンデンサの充電では絶対に起こりません。
(3)の「途中で平らになる」は、電圧が飽和した形です。非安定マルチバイブレータは飽和する前に反転するので、平らな区間はできません。
☝️ ひっかけの作り方:波形選択の問題は「不可能な形」を消していくのが確実です。❶コンデンサの電圧は不連続に飛べない、❷指数充放電は必ず上に凸、❸飽和前に反転する——この3つのルールで4つ消せます。
⚠️ よくある間違い
「\(V_C\) は0 Vより下がらない」と思い込むのが典型的な誤りです。\(V_C\) はコンデンサの【両端の電位差】なので、向きが逆になれば負の値を取ります。非安定マルチバイブレータでは、出力が反転するたびに極性が入れ替わります。
深掘り①:CR回路の充放電を式で押さえる
初期値 \(V_0\)、最終値 \(V_{\infty}\)
\(1-e^{-1}=0.632\)
\(1-e^{-5}=0.993\)
この式は「最終値へ向かって、差が指数的に減っていく」と読みます。だから傾きは必ずだんだん緩やかになる=上に凸——波形問題で(5)を消せる根拠です。
時定数 \(CR\) は「およそどのくらいで落ち着くか」の目安です。\(C\) か \(R_1\) を大きくすれば時定数が伸び、発振周波数は下がります。
深掘り②:NOT IC 2個で発振する仕組み
NOT を2個つなぐと、入力と出力は同相になります(反転を2回で元に戻る)。そこに \(C\) と \(R_1\) の帰還路を付けると、位相条件が満たされて発振します。
NOT1 の入力がしきい値を超えると出力が反転し、その変化が \(C\) を通じて入力に伝わって、また逆方向へ充放電が始まります——この繰り返しが発振です。
出力は方形波、コンデンサの電圧は指数波形——同じ回路の中で違う波形が同時に存在します。どこを測るかで見える波形が変わるのがこの回路の面白いところです。
周波数はおよそ \(f\fallingdotseq1/(2.2CR_1)\) 程度になります。正確な係数はしきい値電圧によりますが、\(CR_1\) に反比例することは変わりません。
深掘り③:3つのマルチバイブレータと用途
| 種類 | 安定状態 | 外部入力 | 動作 | 用途 |
| 非安定 | 0個 | 不要 | 勝手に発振し続ける | クロック・点滅・ブザー |
| 単安定 | 1個 | 1つ | トリガで一定時間だけ反転 | パルス幅整形・遅延 |
| 双安定 | 2個 | 2つ | 入力があるまで保持 | 記憶・カウンタ |
安定状態の数がそのまま名前です——非(0個)・単(1個)・双(2個)。本問は外部入力がない=非安定、と回路図から即断できます。
コンデンサの有無も決め手です。コンデンサがある=時間が経つと勝手に戻る(非安定・単安定)、コンデンサがない=ずっと保持(双安定)。
💡 覚え方
時定数 \(CR\) が大きい → ゆっくり → 周期が長い → 周波数が低い。この鎖を一息で言えるようにしておけば、(イ)のような正誤問題は即断できます。
⏱️ 本番での進め方
❶ (ア)「電源不要」は即誤り——これで3つ消える。
❷ (イ)は時定数と周波数が反比例——大きくすれば低くなる。
❸ (b)は「0を横切るか」「上に凸か」の2点で4つ消せる。
❹ コンデンサの電圧は不連続に飛べない——垂直な線がある波形は誤り。
出題履歴:マルチバイブレータは動作の理解を問う
平成23年度A問題13ではトランジスタ版、令和元年度B問題17ではNAND版と、素子を変えて繰り返し出題されています。「コンデンサの充放電で自動的に反転する」という核だけ押さえれば、どの形でも対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (ア) | 電源が必要→誤 |
| (イ) | f∝1/(R1C)、R1大で周波数低下→誤 |
| (ウ) | R2はNOT入力電流の制限→正 |
| (a) | 誤・誤・正→(5) |
| (b) | Vcは指数関数で正負に振れる→(2) |
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