三相交流19【電験3種 理論】Y結線平衡三相回路の基本式の正誤を判定する!平成22年度 A問題9 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(三相交流) 平成22年度 A問題9 線間は相の√3倍!三相の基本式で誤りはどれ?

今回は平成22年度 理論科目 A問題9を解説します。Y結線の対称三相電源にY結線の平衡三相抵抗負荷を接続した回路について、線間電圧V_ℓ・線電流I_ℓ・相電圧V_p・相電流I_p・各相抵抗R・消費電力Pの関係式のうち、誤っているものを選ぶ問題です。

Y結線の基本関係を押さえれば解けます。線間電圧=√3×相電圧、線電流=相電流、消費電力P=3×相電圧×相電流=√3×線間電圧×線電流。この電力の式で係数(3と√3)を取り違えた選択肢が誤りになります。

目次

平成22年度 理論科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 三相交流 平成22年度 A問題9 問題文
平成22年度 理論科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題9

電験3種 理論科目 【電気回路(三相交流)】 平成22年度 A問題9

 Y結線の対称三相交流電源にY結線の平衡三相抵抗負荷を接続した場合を考える。負荷側における線間電圧をV_ℓ〔V〕、線電流をI_ℓ〔A〕、相電圧をV_p〔V〕、相電流をI_p〔A〕、各相の抵抗をR〔Ω〕、三相負荷の消費電力をP〔W〕とする。

このとき、誤っているのは次のうちどれか。

(1)V_ℓ=√3V_p が成り立つ。
(2)I_ℓ=I_p が成り立つ。
(3)I_ℓ=V_p/R が成り立つ。
(4)P=√3V_p I_p が成り立つ。
(5)電源と負荷の中性点を中性線で接続しても、中性線に電流は流れない。

出題のポイント:\(\sqrt3\) が付く式と付かない式を仕分ける

Y結線の基本公式を5つ並べ、誤りを1つ選ばせる問題です。計算はほとんど不要で、公式を正確に覚えているかだけが問われます

急所は電力の式です。相電圧・相電流で書くなら \(P=3V_pI_p\cos\phi\)線間電圧・線電流で書くなら \(P=\sqrt3V_lI_l\cos\phi\)——\(\sqrt3\) が付くのは後者だけです。

三相電力の2つの表し方
$$P=3V_pI_p\cos\phi=\sqrt3\,V_lI_l\cos\phi$$

「3が付くのは相、\(\sqrt3\) が付くのは線」混ぜて \(\sqrt3V_pI_p\) と書くのは誤りです。

なぜ両方が同じ値になるのか——Y結線では \(V_l=\sqrt3V_p\)、\(I_l=I_p\) なので、\(\sqrt3V_lI_l=\sqrt3\times\sqrt3V_p\times I_p=3V_pI_p\)——ぴたりと一致します。

Y結線の平衡三相抵抗負荷について、各線から中性点Nへ接続された3個の抵抗R、線電流と相電流の一致、相電圧と線間電圧のルート3関係を示す解説
Y結線の基本はV_ℓ=√3V_p、I_ℓ=I_pです。線間電圧は相電圧のベクトル差、線電流は各相を流れる電流そのものです。

解説:選択肢を1つずつ検証する

選択肢内容判定理由
(1)\(V_l=\sqrt3V_p\)Y結線の電圧関係
(2)\(I_l=I_p\)Y結線では枝=線
(3)\(I_l=V_p/R\)相電流 \(=V_p/R\) かつ \(I_l=I_p\)
(4)\(P=\sqrt3V_pI_p\)×正しくは \(3V_pI_p\)
(5)中性線に電流は流れない平衡なら \(\dot I_a+\dot I_b+\dot I_c=0\)

(3) はやや紛らわしいですが正しい式です。各相の抵抗 \(R\) に相電圧 \(V_p\) がかかるので相電流は \(V_p/R\)Y結線では線電流=相電流——したがって \(I_l=V_p/R\) です。

本問は純抵抗負荷なので、力率 \(\cos\phi=1\) です。だから選択肢の電力の式に \(\cos\phi\) が書かれていません——それでも \(3\) と \(\sqrt3\) の区別は変わりません

選択肢1から3について、Y結線の線間電圧と相電圧、線電流と相電流、抵抗負荷のオームの法則を順に導出し、すべて正しいと判定する解説
(1) V_ℓ=√3V_p、(2) I_ℓ=I_p、(3) I_ℓ=V_p/RはいずれもY結線の基本式から正しいと確認できます。
1相電力V_pI_pを3相分足してPイコール3V_pI_pを導き、線間値ではPイコールルート3V_ℓI_ℓになることから、選択肢4の係数ルート3が誤りと判定する解説
相電圧・相電流を使う電力式はP=3V_pI_pです。√3が付くのは線間電圧V_ℓと線電流I_ℓを使うときなので、(4)が誤りです。
平衡三相の相電流I_a、I_b、I_cが120度ずれてベクトル和0となり、中性線電流I_Nも0であることをKCLで示し、全選択肢を整理して正解4と公式解答を照合する解説
平衡時はI_a+I_b+I_c=0なので中性線電流も0です。(5)は正しく、誤っているものは(4)で公式解答とも一致します。
答え誤っているのは \(P=\sqrt3V_pI_p\) → 選択肢(4)

数値を入れて確かめる

抽象的な式のままでは不安なら、具体的な数値を入れてみるのが確実です。\(V_p=100\ \mathrm{V}\)、\(R=10\ \Omega\) としてみましょう

$$I_p=\frac{V_p}{R}=\frac{100}{10}=10\ \mathrm{A}=I_l$$
❶ 相電流=線電流
$$V_l=\sqrt3\times100\fallingdotseq173.2\ \mathrm{V}$$
❷ 線間電圧
$$P=3V_pI_p=3\times100\times10=3000\ \mathrm{W}$$
❸ 相で計算
正しい
$$P=\sqrt3V_lI_l=\sqrt3\times173.2\times10=3000\ \mathrm{W}$$
❹ 線で計算
一致 ✓
$$\sqrt3V_pI_p=\sqrt3\times100\times10\fallingdotseq1732\ \mathrm{W}$$
❺ 選択肢(4)の式
合わない ×

❺だけが3000 Wになりません\(1732\ \mathrm{W}\) は正解の \(1/\sqrt3\) 倍——\(\sqrt3\) を1回余分に割ってしまった値です。

実際の電力を \(3I_p^{2}R\) で確かめると \(3\times100\times10=3000\ \mathrm{W}\)——やはり3000 Wが正しいと分かります。3通りで確認できれば確信が持てます

⚠️ よくある間違い
「三相だから \(\sqrt3\) を掛ける」という覚え方は危険です。\(\sqrt3\) が出るのは、線間電圧と線電流を使うときだけ。相の値を使うなら素直に3倍——1相分を3つ足すだけだからです。

☝️ ひっかけの作り方:(5) の中性線の話も要注意です。平衡なら電流はゼロですが、不平衡なら流れます本問は「平衡三相抵抗負荷」と明記されているので正しい記述です。

深掘り①:三相電力の式を4通り書けるようにする

三相電力の式は、与えられた情報に応じて使い分けます4通りすべて書けるようにしておきましょう

使う量使う場面
\(P=3V_pI_p\cos\phi\)相電圧・相電流1相等価回路から
\(P=\sqrt3V_lI_l\cos\phi\)線間電圧・線電流測定値から(最も実用的)
\(P=3I_p^{2}R\)相電流・抵抗電流と抵抗が分かるとき
\(P=3\dfrac{V_p^{2}}{R}\)相電圧・抵抗純抵抗負荷のとき

実務で最もよく使うのは2番目です。電力量計や計器が測るのは線間電圧と線電流——中性点は取り出せないことも多いためです。

Y結線の純抵抗負荷なら \(P=\dfrac{V_l^{2}}{R}\) という形も便利です。\(3\times\dfrac{(V_l/\sqrt3)^{2}}{R}=\dfrac{V_l^{2}}{R}\)——3も \(\sqrt3\) も消えます

深掘り②:なぜ中性線に電流が流れないのか

平衡三相では、3つの相電流の和がぴたりとゼロになります。これが中性線に電流が流れない理由です。

$$\dot I_a=I\angle0^\circ,\quad \dot I_b=I\angle-120^\circ,\quad \dot I_c=I\angle-240^\circ$$
❶ 3つの相電流
大きさ同じ・120°ずつ
$$\dot I_a+\dot I_b+\dot I_c=I(1-0.5-j0.866-0.5+j0.866)=0$$
❷ 合計
完全にゼロ

3つのベクトルが正三角形を閉じる——だから和がゼロです。中性線があっても、そこを流れる電流はないので、電線を1本節約できます

これが三相3線式が使われる理由です。単相を3組送るなら6本必要ですが、三相なら3本で済む——電線量を半分にできます

方式電線の本数備考
単相2線式2本家庭用
単相3線式3本100 Vと200 Vが取れる
三相3線式3本動力用の標準
三相4線式4本不平衡に備えて中性線を持つ

不平衡が生じる可能性がある場合は、中性線を設けます照明などの単相負荷を混在させると不平衡になるためで、そのときは中性線に電流が流れます

深掘り③:Y結線とΔ結線の公式を完全対比

本問はY結線でしたが、Δ結線の公式もセットで押さえておきましょう選択肢の正誤を判断する土台になります。

Y(スター)結線Δ(デルタ)結線
電圧\(V_l=\sqrt3V_p\)\(V_l=V_p\)
電流\(I_l=I_p\)\(I_l=\sqrt3I_p\)
1相の電流\(I_p=\dfrac{V_l/\sqrt3}{Z}\)\(I_p=\dfrac{V_l}{Z}\)
三相電力\(\dfrac{V_l^{2}}{Z}\cos\phi\)\(\dfrac{3V_l^{2}}{Z}\cos\phi\)
中性点あるない

電力の欄を見ると、同じ \(Z\) でもΔのほうが3倍です。これは三相交流で最も重要な結論のひとつ——スターデルタ始動の原理にもつながります。

\(P=\sqrt3V_lI_l\cos\phi\) の式だけは、Y・Δ共通です。線間電圧と線電流で書けば結線によらない——だから実務ではこの式が標準になっています。

⏱️ 本番での進め方
❶ 「3が付くのは相、\(\sqrt3\) が付くのは線」——電力の式の合言葉。
❷ 迷ったら数値を代入——\(V_p=100\)、\(R=10\) で3通り計算すれば分かる。
❸ Y結線は「電圧に \(\sqrt3\)」、Δ結線は「電流に \(\sqrt3\)」
❹ 平衡なら中性線電流はゼロ——不平衡なら流れる。

💡 覚え方
\(P=3V_pI_p\cos\phi\) が原点です。「1相分の電力を3つ足す」——これがそもそもの定義で、\(\sqrt3\) の式はそれを線間の量で書き直しただけ原点を押さえれば、\(\sqrt3\) の位置で迷いません

出題履歴:公式の正誤を問う出題は落とせない

計算不要で公式の理解だけを問う問題は、知っていれば10秒、知らなければ解けないタイプです。Y・Δの公式表を暗記しておけば確実に得点できます。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】平成26年度A問題14(電力計の指示と三相電力)

まとめ

V_ℓ√3V_p …(1)正
I_ℓI_p=V_p/R …(2)(3)正
P3V_p I_p=√3V_ℓ I_ℓ
誤り(4)P=√3V_p I_p

▼あわせて解きたい関連問題
・三相電力の基本式:【理論】平成29年度B問題16

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