今回は平成22年度 理論科目 A問題14を解説します。内部抵抗10mΩ・最大目盛0.5Aの直流電流計に抵抗R1・R2を組み合わせ、最大目盛1Aと3Aを切り換えられる多重範囲電流計(アイルトン分流器)の空欄を埋める問題です。
分流器は電流計と並列に置いて電流を分け、測定範囲を広げます。倍率m=1+r/R(rは電流計の内部抵抗、Rは分流器)。使用する端子によって分流器になる抵抗が変わる点がポイントです。
平成22年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成22年度 A問題14
次の文章は、直流電流計の測定範囲拡大について述べたものである。内部抵抗r=10mΩ、最大目盛0.5Aの直流電流計Mがある。この電流計と抵抗R1[mΩ]及びR2[mΩ]を図のように結線し、最大目盛が1Aと3Aからなる多重範囲電流計を作った。この多重範囲電流計において、端子3Aと端子+を使用する場合、抵抗(ア)[mΩ]が分流器となる。端子1Aと端子+を使用する場合には、抵抗(イ)[mΩ]が倍率(ウ)倍の分流器となる。また、3Aを最大目盛とする多重範囲電流計の内部抵抗は(エ)[mΩ]となる。
空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる式又は数値の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) R2 R1 (10+R2)/R1+1 20/3 (2) R1 R1+R2 (10+R2)/R1 25/9 (3) R2 R1+R2 10/(R1+R2)+1 5 (4) R1 R2 10/(R1+R2) 10/3 (5) R1 R1+R2 10/(R1+R2)+1 25/9

出題のポイント:大きいレンジほど分流器の抵抗は小さい
アイルトン分流器では、\(R_1\) と \(R_2\) の直列が計器に並列になっており、端子を変えると「どこまでが分流器か」が変わります。
3 A 端子(大きいレンジ)ほど、たくさん分流させたいので分流器は小さい——だから \(R_1\) だけ。1 A 端子では \(R_1+R_2\) の全部が分流器になります。

解説:4つの空欄を順に埋める
(ア)(イ) どちらが分流器になるか
| 使う端子 | 分流器(並列側) | 計器側 | レンジ |
| 3 A 端子 | \(R_1\) | \(r+R_2\) | 大きい |
| 1 A 端子 | \(R_1+R_2\) | \(r\) | 小さい |
大きいレンジほど分流器を小さくする——より多くの電流を計器の外へ逃がす必要があるからです。\(R_1<R_1+R_2\) なので、\(R_1\) が 3 A 側と決まります。
(ウ) 1 A 端子での倍率
並列だから電圧が等しい
\(r=10\ \mathrm{m\Omega}\)
(エ) 3 A レンジでの内部抵抗
誤答の正体:分流器の割り当てと倍率の式
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | 判定 |
| (1) | \(R_2\) | \(R_1\) | \((10+R_2)/R_1+1\) | \(20/3\) | (ア)(イ)が逆 |
| (2) | \(R_1\) | \(R_1+R_2\) | \((10+R_2)/R_1\) | \(25/9\) | (ウ)が誤り |
| (3) | \(R_2\) | \(R_1+R_2\) | \(10/(R_1+R_2)+1\) | \(5\) | (ア)(エ)が誤り |
| (4) | \(R_1\) | \(R_2\) | \(10/(R_1+R_2)\) | \(10/3\) | 3つ誤り |
| (5) | \(R_1\) | \(R_1+R_2\) | \(10/(R_1+R_2)+1\) | \(25/9\) | ◎ 正解 |
(4)の(ウ)は「+1」が抜けています。倍率は \(1+r/R_s\)——計器を流れる分も含めるので必ず「1+」が付きます。
(2)は(ウ)だけが違う形です。\((10+R_2)/R_1\) は 3 A 端子の倍率に近い式——どちらの端子の話かを取り違えています。
⚠️ よくある間違い
アイルトン分流器では、レンジを変えると計器側の抵抗も変わります。3 A 端子では計器側が \(r+R_2\)——\(r\) だけではありません。単純な分流器の公式 \(R_s=r/(m-1)\) をそのまま当てはめると外します。
深掘り①:アイルトン分流器の利点
普通の分流器では、レンジ切替の瞬間に接点が離れると、計器に全電流が流れて焼損する危険があります。
アイルトン形は分流抵抗が常に計器に並列につながったままで、タップの位置だけが変わります——切替中も計器が保護されます。
だから「ユニバーサル分流器」とも呼ばれます。実用の多重範囲電流計はほぼこの方式です。平成19年度B問題16でも同じ形式が出題されています。
深掘り②:内部抵抗はレンジによって変わる
大きいレンジほど内部抵抗が小さい——大電流を測るときほど回路への影響を抑える必要があるので、理にかなっています。
検算:1 A レンジで 1 A 流すと \(1\times5\ \mathrm{m\Omega}=5\ \mathrm{mV}\)、3 A レンジで 3 A なら \(3\times25/9=8.3\ \mathrm{mV}\)——どちらも計器の 0.5 A×10 mΩ=5 mV とは違うことに注意(計器を流れるのは 0.5 A のまま)。
深掘り③:分流器と倍率器の対比
| 分流器(電流計) | 倍率器(電圧計) | |
| つなぎ方 | 並列 | 直列 |
| 役割 | 電流を逃がす | 電圧を分け合う |
| 式 | \(R_s=\dfrac{r_a}{m-1}\) | \(R_m=(m-1)r_v\) |
| 10倍にするなら | \(r_a/9\) | \(9r_v\) |
| 内部抵抗は | 小さくなる | 大きくなる |
どちらも「\(m-1\)」が出てくるのが共通点です。並列だから割る、直列だから掛ける——この対応で式を思い出せます。
電流計は内部抵抗が小さいほど、電圧計は大きいほど良い。分流器を付けると内部抵抗はさらに下がり、倍率器を付けると上がる——どちらも良い方向です。
💡 覚え方
大きいレンジほど分流器は小さい(たくさん逃がすから)。倍率は必ず「1+」が付く(計器を流れる分を含めるから)。アイルトン形はレンジで計器側の抵抗も変わる——この3点で解けます。
深掘り④:単純な分流器との違いを式で
レンジごとに独立した \(R_s\)
3 A 端子の場合
アイルトン形では、分流器の一部(\(R_2\))が計器側に回り込みます。だから式が変わり、連立して解く必要が出てきます。
本問が「多重範囲」とわざわざ書いているのは、この違いを意識させるためです。単一レンジの分流器なら1行で終わります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 大きいレンジ=分流器が小さい——これで(ア)(イ)が決まる。
❷ 倍率は \(1+r/R_s\)——「1+」を落とさない。
❸ 2つの端子で式を立てて連立——\(R_1+R_2=10\) から始める。
❹ 内部抵抗は \(R_1\parallel(r+R_2)\)——計器側に \(R_2\) が入る。
出題履歴:多重範囲電流計は繰り返し出題
アイルトン分流器は、平成19年度B問題16でも計算問題として出題されています。「レンジごとに計器側の抵抗が変わる」という一点さえ押さえておけば、どちらの形式でも解けます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (ア) | 3A端子の分流器=R1 |
| (イ)(ウ) | 1A端子=R1+R2、倍率10/(R1+R2)+1 |
| R1,R2 | R1=10/3、R2=20/3mΩ |
| (エ) | (50/3)∥(10/3)=25/9mΩ |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
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